見出し画像

出会い系サクラの話。

データ入力のバイトを探していた時、ネットで「メールオペレーター募集」の文字をよく見かけた。どれも24時間どの時間帯でも勤務OK、服装見た目全て自由。お菓子食べながら仕事できちゃう!みたいな軽いノリの求人内容だった。
「出会い系サクラ募集!」なんて書けないからメールオペレーターと名前を変えて募集してたのだろう。正直基本人を騙す仕事だし気が進まなかったが、生活の為と割り切れば大丈夫!と思い切って応募した。
すんなり面接の日が決まり、西中島南方駅から歩いて面接場所へ向かった。オフィス街の一角の大きなビルの地下1階。中に入ると広い部屋に、パソコンとキーボードがギッシリ並べられ、何人か私服姿の若者がモニターに向かって何かをタイピングしている。BGMにはFMが流れている。名前を告げるとオフィスの端のテーブルへ案内された。
奥から出て来たのは若い女性。たぶん30代。少し派手な感じだけど美人。夜の雰囲気を感じる。
後で知ったが彼女は元風俗嬢で社長にソープから引き抜かれて幹部のポストに入ったらしい。
簡単な質疑応答、いつから入れるか、シフトの希望など聞かれ、じゃあ明日から宜しくね。との事で採用になった。よく思い出したら面接なのにプードルを抱いていた。
翌日、朝9時にオフィスに出勤した。タイムカードを押し、スーツでの教育担当の男性に挨拶してパソコンモニターの前に座る。近くにパーカーにニット帽の若者が疲れた様子でタイピングしている。24時間稼働しているので、夜勤明けなんだろう。仕事は出会い系サイトからのメールに返信するだけ。シンプルだが、自分の演じる女の子のタイプも様々で、しかも他の人のやり取りを引き継いで返信するので辻褄合わせが中々難しい。さらになかなか返信して来ない男客に課金させて返信が来る様に、微妙にエロい期待を誘う様なメールを送ったりとテクニックが必要な仕事だった。
働いてる人は若い人が多いがミドル層もいて、女性が多かった。夕方頃に出勤の人が多く、仕事帰りのOLといったところだろう。シフトの融通がきくので副業には都合が良いと思う。
とはいえ、サクラであり詐欺行為であるので、自分の中の罪悪感は拭えず、同じ職場の人と会話もできなかった。そんな毎日が続くとメンタルがやられ、途中で行かなくなった。
しかし他にできそうなバイトも見つからず、楽をしたい為に他のサクラバイトに入ってはすぐ辞めるという無駄な行為を繰り返していた。
心斎橋、長堀橋、東心斎橋、南船場、新大阪と出会い系サクラの仕事場は色んな所にあった。あの頃はブームだったのだろうか。
働いてる人も様々で、刺青だらけの人、駄目ホスト、ヒップホップDJ、延々一人言を続けるおばさん、妊婦、オダギリジョー似のイケメンなどなど、癖の多い人から本当に普通の人まで。ふと、今もあるのかと「メールオペレーター」で検索すると普通に求人が出てきた。需要があるから供給がある。いわゆる恋愛市場は、男女がいる限りなくならないのだろう。皆寂しいのだろうか。あの頃は自分も心の穴が埋まらなくて、常に誰かを求めていた。女の子と飲みに行くたびに体を求めていた。もう2度とやる事はないが、何とも言えない気持ちになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?