【オススメ小説20】多重人格内の人格同士、不思議な関係『海のカナリア』
「まぁ覚悟していてください。わたしはいつか、世界を破壊してみせます」
はちゃめちゃ少女の城ケ崎と彼女に連れ回される僕
いつまでも続かない関係。なぜなら彼女は世界を破壊するから
こんにちは、名雪七湯です。何とか20回まで続いたオススメ本紹介ですが、今回は入間人間さんの著書『海のカナリア』を取り挙げます。
1、本情報、あらすじ
『海のカナリア』入間人間著 2019 KADOKAWA
入間人間さん、2007年に電撃文庫賞にメンヘラ×サイコパスミステリコメディの問題作『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を送り付け、作家デビュー。同年作『電波女と青春男』がアニメ化、最近では『やがて君になる』のノベルズとアニメ化した『安達としまむら』で百合作家として注目を浴びる。独特のキャラ、宇宙人のような言葉遣い、簡単に言えばぶっ壊れた作風が持ち味の彼。ちなみに彼のマニアをイルマニアと呼ぶそうだ。
入間さんに関しては奇人武勇伝も沢山あり、興味のある方はぜひ調べてみて下さい。眉唾ものもありますが、やっぱり作家は面白いな、と思えます。
以下、あらすじになります。
十七歳の僕と十一歳の城ケ崎君(女児)。僕は家でだらだらしていたいのに、元気一杯はちゃめちゃめちゃくちゃな彼女に連れ回される日々。彼女は奔放な性格とは裏腹に目に闇を宿し「世界を破壊する」と奮闘していて…。
2、コメディとメランコリック
二人は「海野幸」という女子高生の多重人格の人格同士です。
簡単に言えば、同じ人間の中に二人はいます。
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となるのも頷けます。
不思議な世界観が入間さんの特徴ですが、説明しすぎるとネタバレになってしまうのでここら辺でやめておきます。実はもっと複雑な構造をしており、SFにも似た世界観が楽しめる一作となっております。
世界観も作品の魅力ですが、城ケ崎と僕の掛け合いもその一つです。
「死骸を見て目を輝かせるのはどうなんだ城ケ崎」
「お寿司だってご飯に死骸のっけてるようなものでしょう。でもウッキウキですよ」
「ふむ」(P21)
不思議な感性(サイコパス気味)で世界を見る城ケ崎と
突っ込みを放棄する僕のコメディな掛け合い。
決して恋愛物ではありませんが、絶妙な距離感を保つ二人が癖になる一作です。嫌々ながらと言いつつ城ケ崎と悪ノリしている僕。なぜか僕を巻き込むことに尽力する城ケ崎。ずっと二人でいてくれれば……と読者に思わせる反面、「世界をぶっ壊す」と宣言する彼女。変てこ感性のギャグが大好きな入間さんですが、そこに切なさが混ざることで唯一無二の雰囲気があります。
3、最後に
入間さんの作品の雰囲気はどれも独特です。
彼の作るキャラはよくナイフで刺されますが、今作はショッキングなシーンはありませんし、シリアスとギャグの比率が丁度いいです。入間人間さんに最近、興味を持った方にオススメの一冊です。
最後までお付き合いありがとうございました。
またお会いしましょう。
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