資料紹介:【私訳】社説「アメリカは、日本の軍事的正当化の動きを支持するべきだ」『ワシントン・ポスト』(2022年7月11日(月))

安倍晋三元首相が金曜日に狙撃され、日本中に衝撃が走ったことを表現するのは難しい。あらゆる種類の銃撃がほとんどないこの社会で、ましてや大物政治家が巻き込まれた致命的な銃撃であれば、なおさらである。また、別の意味で表現しがたいのは、日本の民主主義がいかに見事に回復してきたかということだ。悲劇からまだ立ち直れない有権者が、日曜日、参議院の新議員を選出するために大勢集まった。安倍氏が持病のために2020年後半に退任した後、その後継者として首相に就任した岸田文雄氏は、「選挙を実施したことは非常に意義があった」、さらに「民主主義を守るための我々の努力は続く」と述べた。

 2006年から2007年、2012年から2020年まで、日本の近現代史で最長となる2度の首相在任期間を含む、安倍氏自身のキャリアを定義する使命は、日本とその民主主義を守ることであった。安倍氏は退陣後も、保守系与党である自民党の政治的影響力のあるリーダーであり続け、攻撃されたときも、同党の候補者の選挙運動をしていた。しかし安倍氏は、第二次世界大戦後の日本の発展を守るためには、アベノミクスと呼ばれる積極的な景気刺激策によって、低迷する経済を振興し、アメリカ、インド、オーストラリアと共同で「インド太平洋」(安倍氏の造語)の新しい戦略ビジョンを明示し、日本の軍事的近代化を図る必要があると見抜いていた。これらはすべて、中国の台頭と台湾への脅威、そして北朝鮮の核の潜在力に対抗するために必要なことだと、安倍氏は正しく理解していたのである。

 安倍氏が亡くなった時点で、彼や後継者もその計画を完成させることはできなかった。環太平洋経済連携協定(TPP)は、アメリカと日本の経済を、他の9カ国の経済と一緒に、より徹底的に結びつけるものだった。しかしドナルド・トランプ氏は、安倍氏の積極的な働きかけにもかかわらず、大統領としてTPPを頓挫させ、そしてバイデン大統領も、アメリカのTPP復帰を実現させてはいない。しかし、もう一つの重要な点として、日曜日の選挙は、日本の軍隊の合法性を明確にするために、御年75歳の憲法を改正するという安倍氏のアジェンダを前進させた。改憲支持者は現在、国民投票を経て、憲法を改正するために必要な衆参両院の3分の2の議席を握っている。その理念は、時代遅れの法的あいまいさを終わらせることである。第二次世界大戦後、アメリカの指導の下で作成されたこの憲法は、「永久に戦争を放棄し」、「陸海空軍」を「決して」保持しないと約束する。しかし日本は、25万人の「自衛軍」に年間約500億ドルを費やしている。

 アメリカや他の民主主義諸国は、民主的な日本の軍事力の正当化を支持するべきである。確かに日本の多くの人々は、軍国主義が残したひどい遺産を念頭に置きながら、この考えに反発している。韓国や中国の人々には、日本統治時代の苦い記憶がある。また、安倍氏が長らく代表してきた日本の保守的なナショナリストの間では、改正案への支持が最も強いのは間違いないだろう。

 とはいえ、この改正案は、日本が陸海空軍を保有しているという、すでに現実となっていることを合法化するだけのものである。戦争放棄を廃止するわけではないが、集団安全保障への日本の協力が容易となり、おそらく台湾の防衛も含まれることになるだろう。21世紀の日本は、国際社会の信頼できる一員であり、ロシアのウクライナ侵略以前よりも、世界の安全保障への貢献が必要になっているのである。安倍氏はあまりにも早く逝ってしまった。彼が日本と世界に与えたインパクトを忘れてはならない。

https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/07/11/us-should-support-japans-move-legitimize-its-military/


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