新卒1年目社員がコロナ禍前後の交通分析をしてみた
こんにちは、新卒1年目のらむです。
ナビタイムジャパンの交通データ事業に所属しています。
今回は、コロナ禍前後の交通分析について紹介します。
経緯
配属から数日で、OJTの一環で先輩に次のタスクを渡されました。
タスク:「事業の業務理解のために自社ツールを用いて、最近のニュースと絡めた分析をしてほしい」
私はコロナ禍の交通を分析の対象にしました。コロナは旅行客の減少、地方への移住、移動手段の変化、テレワークの推進など様々な影響を与えました。そのため、交通にも何らかの影響を与えているのではないかと考えました。
データを見てみた
当社ではナビタイムジャパンが提供するカーナビアプリから利用者の同意の元取得した位置情報を分析に利用し、『道路プロファイラー』として提供しています。このツールでは、任意期間の平均走行速度と走行台数を道路単位で分析する機能があります。
コロナの影響により、自動車の数に変化がみられると考えました。しかし、経年で比較する場合アプリのユーザー数の増減の影響も無視できません。そのため、自動車の速度の変化でコロナ禍前後の交通を分析する方針で進めることにしました。
分析方法
自社ツールである『道路プロファイラー』とBIツールの『Tableau』を使用しました。
データの取得
データの加工
可視化
まずは分析してみた
一般に、自動車数が増加すると渋滞が発生しやすく速度が低下しやすいことが知られています。自動車数の減少を確認するために、渋滞が発生しやすい箇所をターゲットに設定しました。
分析は以下の条件で行いました。
駒沢大学駅付近の国道246号線の交差点付近(国土交通省のデータを参考に渋滞の多い箇所を選定)
毎年7月第1月曜日の7~19時
これにより、以下の結果が得られました。
2017年、2019年は他の年と比べ速度が大きいことがわかります。しかし、この結果ではコロナによる影響があるとはいうには不十分です。さらに、その1週間前の月曜日のデータを追加で見てみるとまったく異なる値を示していました。そのため、後続の分析では日ごとのばらつきを減らしたデータで分析する必要があると考えました。
第1案として、1週間分のデータにまとめてデータをとる方法を考えました。先輩に上記方針を相談したところ、以下の助言をいただきました。
先輩「⽇ごとのばらつきを減らす⽅向性は良いという回答とともに、曜日や時刻も交通状況に影響を与えるのではないか」
そのため、曜日や時刻を絞ってデータを取得する方向性で進めていくことにしました。
日時を限定して分析してみた
日時を限定するという助言をうけ、通勤の影響が出やすい朝のピーク時間帯(7~9時)に限定しました。各曜日ごとでデータを集計し、傾向を確認できるようにしました。また、日ごとのばらつきを減らすため、1か月分のデータを集計しました。
分析は以下の条件で行いました。
駒沢大学駅付近の国道246号線の交差点付近(国土交通省のデータを参考に渋滞の多い箇所を選定)
毎年6月各曜日の7~9時
その結果、次の結果が得られました。
この結果からは年ごとの傾向が確認できませんでした。速度の平均値と中央値を比較すると、平均値が中央値の半分以下と大きく乖離していました。今回は交差点付近で、データを集計したため、信号による待ち時間の影響を大きく受けているのではないかと考えられます。そのため、今回の速度を使用した分析を行うには交差点付近を避ける必要があると考えました。
信号の影響を受けにくい道路で分析してみた
信号の影響を受けにくい高速道路の一定区間を対象に分析を行いました。
分析は以下の条件で行いました。
首都高速の上り区間
毎年6月各曜日の7~9時
次のような結果が得られました。
まず、平日のデータについては速度が遅く、年毎の変化が少ないことがわかります。この要因としては、コロナによる数の変化が起きにくい通勤や運送などのビジネス目的で自動車が多いことで渋滞が発生し速度が押し下げられている点が考えられます。
反対に、日曜日については他の曜日と比較しても速いことがわかります。これは、平日に多く存在していたビジネス目的で使用する自動車が減少しているためだと考えられます。そのため、コロナによる自動車減少の影響を確認するには不適切と判断しました。
また、土曜日については2020年、2021年は自動車の速度が向上していることがわかります。土曜日のユーザの内訳は平日と比べ大型車の割合が低いといわれています。そのため、プライベートで出かける自動車が減少したことで、混雑が緩和され平均速度が増加したと考えられます。この時期は緊急事態宣言の期間に近く、外出自粛が影響していたためだと考えられます。
さいごに
データ分析を行うにあたり、データの特徴をつかんで条件を絞って分析を行うのは重要だと感じました。自動車の速度を分析した結果から、コロナによる外出自粛の影響が大きかったことが確認できました。2022年以降は交通がコロナ以前と同等に戻ってきてることがいえます。そのため、これらの傾向から2023年の夏は渋滞が予想されるので、安全運転と熱中症対策に気を付けてください。