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トラックカーナビがより良いユーザー体験のために取り組んでいること

この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2020の10日目の記事です。

はじめに

こんにちは、茶田です。
ナビタイムジャパンで「トラックカーナビ」のAndroid/iOSアプリの開発・運用を担当しています。

突然ですが、あなたは何かサービスの開発をしていますか?
ローンチしたサービスの運用をしていますか?
運用しているサービスについて、ユーザー体験の向上について考えることがありますか?

この記事ではそんな方に向けて、トラックカーナビの開発チームにおいて、ユーザー体験を向上させるために日々取り組んでいることをまとめさせていただきました。サービスのユーザー体験を考えるにあたって、何か少しでも参考になることがあれば幸いです。

そもそも「トラックカーナビ」とは?

2016年の3月に提供を開始した、トラックドライバーのためのトラック専用カーナビアプリです。普通乗用車向けのカーナビと比べて、貨物車両の区分ごとの通行止め・車高・車幅・重量制限等を考慮したルート検索、ナビゲーションが可能な点が最大の特徴となります。その他にも、配送業務のサポートに特化した機能を数多く搭載しています。

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「トラックカーナビ」が大事にしていること

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前提として、「トラックカーナビ」の開発チームはユーザー目線をとても大事にしています。ナビタイムジャパンは最適なルートを探索するコア技術と、それを支える莫大な道路ネットワークデータ・地点データ等を保有しています。そして、それらをトラックドライバーにとって最大限価値のある状態で提供することは、サービス開発において非常に重要です。

そこでキーワードとなるのはユーザー体験です。

ユーザー体験とは、ざっくり言ってしまえばサービスの利用を通して得られる経験の総称です。このユーザー体験の向上を図ることができれば、それはユーザーにとって価値のある状態です。そして、それがそのまま提供しているサービスの価値といえます。

それでは、「トラックカーナビ」ではユーザー体験の向上のためにまず何を考えるかというと、トラックドライバーが業務上で困っているどんな課題を解決できるか?というところに主眼を置きます。そして、そもそもユーザーが何に困っているのか正しく認識するためには、上述したユーザー目線が重要であり、開発チームは大事にしているという訳です。

ユーザーボイスの収集

それでは、ユーザー目線でサービスの価値を考えたいとした時に、どのような手段があるでしょうか?色々なアプローチがあるかと思いますが、「トラックカーナビ」ではサービスの使い勝手について、ユーザーボイスを収集しています。今回は代表的なユーザーボイスとして、収集しているものを2種類ご紹介します。

📩ご意見箱
・アプリの使い勝手について、包括的にフィードバックを受ける。
・ユーザーは関連する機能や分類を選択した上で、自由入力で要望等を送信できる。
・送信されたご意見は担当者を振り分けた上でリアルタイムでslackへbot通知されており、常にユーザーの意見について開発者が議論可能な状態になっている。
🚛ルート指摘
・ルート検索で引かれた経路について、気になったことを指摘できる。
・違和感がある経路や安心して通れない道に遭遇した場合に、直近のルート検索設定を含めて指摘を送ることができる。
・送信されたルート指摘は自動で課題チケット化され、内容に応じて担当チームへ振り分けられる。

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これらは、基本的にいつでも開発チームが参照できるようになっており、サービスの仕様検討時に大いに参考にしています。

ユーザーボイスから何が求められているか考える

それでは、2種類のユーザーボイスについて、どのように機能の検討がされているかを下記の3つの観点で説明いたします。
・日頃からユーザーの課題を議論する文化
・ユーザーボイスが送られた背景を考える
・チーム横断で『安心して運転できる経路』の見せ方を考える

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📌日頃からユーザーの課題を議論する文化
まず前段でも記述したように、ユーザーボイスはいつでも開発者が参照できるようになっています。特にご意見箱については、リアルタイムで着信したご意見がslack通知されます。そのため、着信したご意見に対して、日頃からこのユーザーは何に困っているのか?どうして欲しいのか?という議論をslack上で行う文化がチームに根付いています。そのため、メンバーから自発的に改善案の提案がされることも珍しくありません。

📌ユーザーボイスが送られた背景を考える
slack上での議論はどちらかというと発散の場となっていますが、それらを棚卸しして、案件化/優先度付けを行うを開発アイテム定例というのを週1回行っています。ここでは、開発のロードマップの確認や開発進捗の確認などが主に行われますが、着信したご意見について、特に着信数が多かった内容や、クリティカルに不便な場面に遭遇したユーザーが居た場合、議題として挙げられます。

ここで重要なのは、ユーザーからのご意見を額面通りに受け取るのではなく、ご意見を送った背景にどんな課題が潜んでいるのかを考えることです。ありがたいことに、今では非常に沢山のユーザーにサービスを利用いただいているので、多種多様なご意見が日々着信します。それらは個別に見ると対応が明確な要望だったりしますが、何故その対応を行うのか?というのを掘り下げると、要望としては別のものであっても根本的には同様の問題なことがあるのです。そのため、少数のユーザーだけ使いやすい暫定的な対応にならないようにチーム内で議論を重ね、最終的に多くのユーザーに使ってもらえる本質的な対応となるように定例を実施しています。

📌チーム横断で『安心して運転できる経路』の見せ方を考える
上述した内容はどちらかというとアプリ上の見せ方にフォーカスした議論が多いですが、ナビゲーションサービスとして欠かせないルート探索で引かれる経路品質についても、週1回でルート品質定例というものを行っています。
こちらでは、
・「トラックカーナビ」アプリ開発チーム
・ユーザーボイスの管理・調査・分析チーム
・ルート探索エンジン開発チーム
の3つのチームが集まって、主に経路に関する課題について議論を行います。経路品質を上げることを目的に実施していますが、トラックが安心して運転できる経路をユーザーへわかりやすく伝えるという観点で話をしています。そのため、ルート探索エンジンの改善案は勿論、アプリ上での見せ方についてもチーム横断で議論を行い、そのアイディアを開発アイテム定例へ持ち込むこともあります。アプリの見せ方、着信しているユーザーボイスの調査、ルート探索エンジンそれぞれでスキルを持っているメンバーが集まって話し合うため、効果的な改善施策を提案できる場として重宝しています。

実際にユーザーボイスがサービスへ反映された事例

「トラックカーナビ」では、ナビゲーションに対してスカイビュー切り替え機能というものがあります。これは地図を垂直に見下ろすトップビューの状態から、ナビ開始時に自動でスカイビュー(地図を傾けて斜めに見たような状態)へ切り替える機能です。地図を傾けると奥側の地図がよく見えるため、特に進行方向が常に画面の上になる(ヘディングアップ)ようにナビをしているユーザーへ向けた機能でした。

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😢地図を元の平面に戻せない!!
このスカイビュー切り替え機能はナビゲーションの設定項目として存在していましたが、設定するUIがチェックボックスのみのセルでした。その時の仕様が下記です。

・チェックボックスがON→自動でスカイビューへ切り替わる
・チェックボックスがOFF→地図の傾きを切り替えない(現状の傾きを維持)

ここで何が起きたかというと、一度スカイビューへ切り替えたユーザーが、ナビ終了後に地図の傾きを元に戻そうと設定をOFFにしてもトップビューへ戻らないため、地図の傾きの戻し方がわからず不満へ繋がっていました。一応、地図の傾きの変え方として、二本指で地図を同時に上下にスワイプするというものもありますが、この操作は伝わりづらいものであり、認識していないユーザーが大半でした。そのため、「地図を元の平面に戻せない!!」のような、スカイビュー切り替え機能に関連していそうなご意見が月に数回は着信していました。

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📝ユーザーが何に困っているのか考える
この課題に対して開発チームで議論したところ、チェックボックスをOFFにしたときの挙動がユーザーの期待値と異なっているのではないかという軸で仮説を2つ立てました。

仮説1. 設定のON⇔OFFとスカイビュー切り替え機能の挙動が連動していない設定口のチェックボックスですが、原則としてON⇔OFFを表現するものです。これが自動切り替え機能という概念に対して、ONの場合にスカイビューにするのに対して、OFFの場合はスカイビューへ切り替えない=トップビューに戻ることが期待されているのではないかという説です。また、付随してスカイビュー or トップビューへ自動で切り替えるという概念があるならば、地図の傾きを自動で切り替えないという概念もあるべきで、状態が3種類ある時点でチェックボックスでは表現がしきれないという意見も出ました。

仮説2. 自動でトップビューへ切り替えたいユーザーもいるのではないか
従来のスカイビュー切り替え機能は、主にヘディングアップでナビをしているユーザーに向けた機能ですが、同様にトップビューでナビをしたいユーザーもいるのではないか?という意見が出ました。実際、画面の上が常に北になる(ノースアップ)ようにナビをしているユーザーがいるとした場合に、スカイビュー状態で南側へ進もうとすると地図の表示領域が狭いため、とても見づらいです。そのため、このケースについても同時にケアをできないかという議論へ発展しました。

⭐️明示的に地図の傾きを設定できるように改善
前段の2つの仮説に対して、スカイビュー切り替え機能の設定口のUIについて下記のような改善を行いました。

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チェックボックスをやめて、
・スカイビュー
・トップビュー
・OFF(自動切り替えしない)
と、アプリ挙動への誤解が生じづらいように選択肢を選定しました。この改善により、スカイビューからトップビューへ戻したいユーザーは、この設定を見直すことで元に戻すことができます。また、常にノースアップでナビをしているユーザーへ対しても、明示的にトップビューへ自動切り替えする機能を提供できるようになりました。

この改善が入ったアプリをリリースしておおよそ10ヶ月程度経過していますが、それまでは月に数回は着信していたご意見は、以降1度も着信していないので、効果があったのではないかと考えています。

まとめ

以上、「トラックカーナビ」の開発チームが、ユーザーのために普段から取り組んでいることの例として、下記を紹介させていただきました。

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「トラックカーナビ」もローンチから4年以上が経過し、プロダクトとしても成熟した段階へと突入しています。

そのため、今後より一層サービスについて、何を変えるべきで、何を変えないべきか?という判断を迫られる場面が増えてくると予想しています。
そこで精度の高い取捨選択を行うためには、物流業界の動向に注意を払いながらも、よりトラックドライバーの目線に寄り添っていくことが必要不可欠です。そのために現状では、ユーザーからの指摘ベースで改善や新機能の検討を行っています。さらに、アクセスログの蓄積及び分析によるユーザーの「声なき声」を拾う取り組みについても、力を入れていきたいです。

今後、より良いユーザー体験の提供のために我々は何ができるのか?

引き続き、取り組んでいこうと思います。