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春を宅配 ふき味噌の炊き込みご飯

チリチリ……ッとはぜるような焦げるようなかすかな音と共に、漂い始めるふくよかで爽やかな香り。じゃっじゃっとお米を研ぎながら、炊飯器を開けた瞬間を想像してわくわく胸を高鳴らせる。
香り高い春の味、ふき味噌の季節がやってきた。


この時期、友人から山菜のおすそ分けが送られてくる。ずっしり持ち重りのする段ボールを開封すると一面の新聞紙の包み。タラの芽、ワラビ、そしてふき味噌の瓶だ。
タラの芽はさっそく今夜天ぷらに。柔らかな新芽はとろっとほこっとして、サクサクの衣にとても合う。
ワラビは重曹で一晩あく抜きして、おひたしにしたり、豚肉と炒めたり。シャキッジャギッとした食感とぬめりはちょっと他では味わえない。

しかし何といってもふき味噌が大本命。
採りたてのふきのとうをザクザク刻み、油で炒めて塩と砂糖と味噌で味付けするふき味噌は、時間がたつと急激にえぐくなるふきのとうを美味しく長く楽しむ天才的な調理法だ。特に友人お手製のふき味噌は塩と砂糖が控えめで市販のものよりくどくなく、そのままでもとびっきりのおかずになる。
アツアツの白いご飯とともに頬張ればぬくもったふき味噌が口の中ではなひらく。みそのしょっぱさ、ふきの苦味、かすかなえぐみ、もりもりご飯が進む味わい。

ふき味噌のすごいところは、白いご飯だけでなく、豚肉に絡めて焼いてみたり、田楽味噌としてこんにゃくや油揚げに塗っても美味しくいただけること。春限定の万能調味料をゲットした気分になる。お味噌汁に少しとかしても風味が増して美味しかった。

中でも一番好きな食べ方は炊き込みご飯。
いつも通りにお米を研いで、仕上げにぽんとふき味噌を入れるだけ。分量はふき味噌の味付けと好みによるからなんとも言えないけれど、大さじで三杯から五杯はたっぷり入れる。

炊き込みご飯はたいていは香りがいいものだけど、ふき味噌ご飯は抜きん出てすばらしい。炒めて味付けまでされているのに、そのまま食べるよりふきのとうの鮮烈でかぐわしい香りがする。そのくせ苦味やえぐみは影を潜め、ふくよかで爽やかな、なんとも言えない風味だけが味わえる。味噌の塩けで味付けされて、ご飯がいっそう甘くて美味しい、もし物足りないなら追加でふき味噌を混ぜ込むと調整できる。ニンジンなどを刻んで入れると彩りもいい。

春行楽のお供に、お弁当やおにぎりにしたくなる味わいだけど、そのまま握ったのではふき味噌の油が回ってパラパラと空中分解してしまう。そこでおススメなのはお稲荷さん。ふきみその大人な味わいにお揚げのコク、甘く煮しめた出汁汁までプラスされ、食べやすいだけでなく美味しさも進化する。

さあ、お米はセット完了。あとは待つだけ、明日の朝のお楽しみ。