見出し画像

このバランスの白が好き!ネブリナワインのはなし

あらかじめ白状すると、私はお酒に詳しくない。
目の前の一杯が、美味しいか、料理に合うか、好きか嫌いか、しかわからない。
ちなみに、気に入った銘柄を覚えようとしても、成功率は三割を超えたことがない。

特に最上級に難しく思えるのがワイン。
なにせ、ブドウ品種から、産地から、ブランドから、極めつけは年代まで、複雑怪奇に絡まっているからだ。

カベルネ・ソーヴィニヨン?メルロー?シラー?
シャルドネ?ソーヴィニヨン・ブラン?
ピノって赤白どっち?
(最近やっと、これらの呪文がブドウ品種のことだと覚えられた。味の系統が似てくるので、品種を覚えるのは選択の手助けになるかもしれない)

香りを評して、革や苔や鉛筆の芯やらという全く馴染みのない表現があり、
色について色見本のような細々としたチャートがあり、
さらには第一印象から余韻まで味わいの変化の分析がある。

どう考えても、覚えることが多すぎる。
まあ、お酒に限らず趣味嗜好は掘れば掘るほど深まっていくものだけど、それにしても。
それだけ情熱的に偏愛的に語られてきたワインという文化は圧倒的で、敬意を抱きつつ、どうしても腰が引けてしまう。
せめて日本酒ならお米の品種や地域性の特徴など食らいつけるのだけど、ワールドワイドには叶わない。


前置きが長くなってしまったけれど、そんな私もだんだん好みというのがわかってきて、
自宅で飲む際にもワインにチャレンジするようになってきた。
(身も蓋もない話をすると、美味しいレストランで出されるワインはだいたい美味しい。
レストランは「美味しい」のセレクトショップなので、料理に合う選りすぐりのリストが揃えてあるし、
なんなら好みや予算で相談もできる。私はこれで苦手意識をすこしだけ克服した)


街の小さな酒屋さんで、たまたまワゴンセールしていたチリワイン。ネブリナ シャルドネ [ 白ワイン 辛口 チリ ]、
オレンジ色のラベルに大きく「n」の一文字で、デザインが気に入って手に取った。
白ワインだからうんと冷やして、 一口。

第一印象は癖のなさ。する~っと滑り込んできた滑らかさにびっくりする。

これまで、これは果実味がある、と言われて飲めば酸味がツンと勝ちすぎたり、
逆にブドウジュースのように甘みが強く料理に合わせづらかったり、
ドライだよ、と言われればミネラル感強めの硬質な味わいだったりした。

その、どれでもなかった。
これは。どっちかというと日本酒だ、と思ったことをよく覚えている。
それも新潟辺りの辛口淡麗。飲み込むとふわっと爽やかに酸味が抜けていく。
メインの感想はフレッシュさ、そして甘い辛いのバランスの良さ。
ぐい~っ、と飲める軽さ。ちびちび含んでも味わえる重さ。肩の力を抜いて、カジュアルに料理に合わせられる柔らかさ。

「ネブリナとは、スペイン語で「霧」という意味。このワインの産地で発生する深い霧が、良質の葡萄を育んでいることから名付けられました。
トロピカルフルーツやシトラスのような生き生きとした果実味と、バターのニュアンスが感じられるフレッシュで柔らかな口当りのワイン。辛口。」

ほう、ほう。解説を読んで納得する。トロピカルフルーツ、シトラス、なるほど。
フルーツのフレッシュさ、洗練されすぎない力強さ。キレの良い辛さは酸味や甘さを引き立てて、すうっと体に落ちていくような清涼さがある。
たぶん、誰しもが唸るような高級な味、というわけではない。
でも、ハウスワインとしてポテンシャルは素晴らしいものがある。
赤はまあまあだったから、私の好みピンポイントへクリティカルヒット。このバランスの白が好き。

温度が上がってぬるくなると酸味が増すような気がするから、ストレートで飲むならキンキンが好き。
でも、例えば白桃を軽くつぶしたり、ライムを絞ってみたり、風味を加えてもばっちり受け止めてくれそうな愛想の良さがある。

懸念事項は取り扱い店頭。今のところ出会いの一軒のみで、どうか仕入れ続けてくれますように、祈るような気持ちでお店に通っている。お酒あるある、ネットのダース販売は保管場所に困る。一本だけでは送料に弱る。

お酒は「美味しい」の振れ幅が非常に大きいジャンル。
巡り合った縁は大切にしたい。