THE 有頂天ホテル

　THE 有頂天ホテル（2005/日本）
　　監督：三谷幸喜　
　　出演：役所広司 松たか子 佐藤浩市 香取慎吾 西田敏行

期待が大きければ大きいほど、はずれた時の情けなさや悔しさは、なんていったらいいのやら…。

気恥ずかしい。笑いのツボがミエミエ。どうしたんだ。三谷幸喜！

確かに期待は大きすぎた。でも、このタイトルといい、魅力的なキャスティングといい、耳をふさいでも漏れ伝わってくるストーリーといい、これで期待しないという方がムリだろう。

しかも私は、これでも一応三谷幸喜ファン。なので、見る前から「もしかして、三谷幸喜の最高傑作かも」というトキメキで胸がパンパンだったのも、いけなかった。

ところが、バカ受けして、これ以上ないっていうくらい大笑いの連続だった人もいたらしいので、問題があるのは私の方かも…なんてことを、心にもなく考えてしまった。

だって、三谷幸喜は、もっと面白いコメディを作れるはずだもん。それを知ってるもん。

もしや、策におぼれたか。

この映画の最大の敗因は「ねらったウケが、ことごとく滑る」ではなく、「ウケをねらっているのがバレバレだ」ということに尽きる。

コメディでそれは致命的だと思う。

伊東四朗の白塗り。逃げ出したアヒル（＆その名前）。鹿の交配に関する学会（＆その被り物）。あちこちに移動する慎吾のぬいぐるみ。

笑いを引き起こすためのこういった仕掛けが、どれも予定調和的でつらい。この居心地の悪さと恥ずかしさ。コメディでこれをやられると、拷問だ。

つくづくもったいないよなあ。こんなに豪華メンバーなのに。

だいたい、エピソードをつめ込み過ぎである。盛り上げようとしすぎ。もしかして、舞台なら成功していたかもしれないけど。

とはいえ、松たか子と佐藤浩市と西田敏行は、さすがに見ごたえあった。この３人のお陰で、何とか救われた。

特にしょっちゅう落ち込んで自殺しようとする演歌歌手の西田敏行が、サイコー。ドラマ「タイガー＆ドラゴン」でも再認識したのだけど、この人は本当にうまいね。もう降参。私が今、絶対的に信頼している数少ない日本の男優である。ニッポンの宝！

彼のエピソードを、もっと見たかったなあ。アヒルと探偵はいらん。唐沢寿明もオダギリジョーも、悪いけどいらん。

余計なお世話だけど、三谷幸喜は自分で脚本書いて映画撮るのをもうやめたらどうだろう。

芝居で出来ることは芝居でやってほしい。自作の芝居を映画化することも、やめて。よろしくお願いします。