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皮肉はおしまい!

I LOVE ペッカー(1998/アメリカ)
監督:ジョン・ウォーターズ 
出演:エドワード・ファーロング クリスティーナ・リッチ

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「お下劣の帝王」と呼ばれるジョン・ウォーターズ監督は、私の好きな監督の1人だ。そう言うと私がすごいマニアックな人間みたいだけど(まあ、そう言われても全否定はできないけど)、彼の一体どこがお下劣なんだろうねえ。

私が好きなのは、既成概念をナナメからちゃかしているところ。特にこの映画は、身もだえしながら見てしまった。もうサイコー!

ジョン・ウォーターズの作品は、過激な内容でありながらトーンはゆるめ。皮肉っぽいが、シニカルに構えているのとは違う。わざとダサくしてるのかそれしかできないのかわからないアカ抜けなさと、毒と笑いと愛が絶妙に交じり合うサジ加減がツボにはまる。

ペッカーは、ボルチモアに住む写真好きな少年。街で目にするものは何でも(ネズミの交尾まで)撮りまくるカメラ小僧だ。

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そんな彼がバイト先のハンバーガー店で個展を開いたところ、ニューヨークの画廊経営者の目にとまり、あれよという間に大スターになってしまう。そして一躍アート界の寵児となるのだが、その状況がよくわかっていないペッカーとその家族が面白い。

もちろん、作品はヘンなものだらけだ。なのにそういうのがハイソな人たちに「素晴らしい!」と大ウケし、高値で売れたりするわけである。

無意味ですました権威に対する皮肉が、実に愉快。それも、例えば超一流スタイリストにヘアメイクしてもらったペッカーのお母さんが、「いや~!こんなマヌケなの」と本気で嫌がるとか、そういう描き方なのである。いいねいいね。

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ペッカーを演じたエドワード・ファーロングは、美形だがトロンとした目がやや危ない俳優で、その昔『ターミネーター2』で華々しくデビューを飾った大注目株だったのだが、いまや見る影もない。でもこの作品は、ハマリ役だと思うよ。

何も考えていないようでいて、やっぱり何も考えていないような男の子。おばあちゃん想いっていうのも、イメージにピッタリだ。

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恋人役のクリスティーナ・リッチともお似合いである。いつも夢心地なエドワード・ファーロングと、いつも不機嫌そうなクリスティーナ・リッチ。その組み合わせに好感が持てる。さすがはジョン・ウォーターズ(単なる偶然の産物だろうけど)。

個人的には、リリー・テイラーやマーサ・プリンプトンといったクセ者俳優が出ていているのも嬉しかった。

もし「ジョン・ウォーターズにちょっぴり興味があるけど、カルトぽくて見るのがコワイ」という人がいたら、とりあえずこの作品からどうぞ。彼の作品の中ではかなり見やすい部類に入る作品なので、大丈夫(だと思う)。

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