さよならハルツマン

 我らがハルツマン氏はいい人であった。いや、いい人過ぎたのだ。ハルツマン氏は極端すぎる動物愛護主義者で我々人間が動物を犠牲にして生きていることに深く傷つき、なんとか生きとし生ける生命体が誰も傷付かずに済むような方法はないものかと考えていた。動物は生きている。植物も生きている。菌だって生きている。岩も生きているかもしれない。気体だって、いや気体こそがあらゆる生命の起源だ。そこから我々は誕生したのだ。食えぬ。他の生命体を犠牲にして自分だけおめおめと生きてゆくなんて出来ない。ハルツマン氏が下したこの結論は悲劇しか招かぬものだが、悲劇は別のところからやってきた。なんとハルツマン氏はある日突然捕まってしまったのである。

 ハルツマン氏を捕まえた男たちは彼のぷりぷりとした肌を叩いていい肉になるなあと笑いながら語り合っている。ハルツマン氏はこの野蛮人に激怒しブヒーと泣いたがもはや全てが遅かった。その日にはハルツマン氏は解体され、翌日にカルビになった。


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