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篭城戦

「殿、篭城してから早四十日になりますが、敵は未だ城を取り囲み、退陣する気配は微塵もありません!一方我が城はもはや兵糧は尽き兵の中に餓死するものが続出しています!殿もはや打って出るしか道はありませぬ!殿御自ら馬で御出陣めされば兵は勇気づけられ、一瞬で敵の大軍を蹴散らしましょうぞ!殿御決断を!」

 家臣の訴えを聞いた主君は口を閉じタブつきすぎたお腹をさすりながら沈黙した。白塗りの頬から汗が吹き出し、彼は剃った眉毛のあたりをポリポリ掻き始めた。しばらく沈黙した後主君はポツリと言った。

「麻呂馬乗れないんだけど……。今から特訓すればどれぐらいで乗れるようになれるでおじゃるか?」

 家臣は医者を呼んでデブリ過ぎの公家かぶれの主君を見てもらった。医者は主君を診察してこう言った。

「かなり厳しい食事制限をして、まともに歩けるようになるまで一ヶ月。それからまた一ヶ月厳しい運動をしてようやく鎧をつけても耐えられる体になります。そして馬とコミュニケーションをまた一ヶ月とってもらってそれから乗馬となりますが、まともに乗れるようになるまで半年はかかります。さらに戦場で乗りこなせるようになるまで一年ぐらいはかかりましょう!」

 それを聞いた主君は目を潤ませて家臣一同に言った。

「麻呂頑張る!頑張ってお馬さんに乗れるようになるからみんな頑張る麻呂を最後まで見ていてね!」

 家臣一同顔を見合わせておのおの心の中で呟いた。

『やっは俺降伏するわ!』



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