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定点の白昼夢
半径1キロ少々の空間に封じ込められた
さまざまな事象を同時に定点観測できたとしたならば、それはどんな群像劇として私の網膜に記憶されるのでしょうか。喜劇たる狂言でしょうか? それとも悲劇たる能なのでしょうか?
そのようなことはありえないのですが、半径1キロ以内の空間、前後1時間以内の時間が刻み込まれた36枚を内包した1本のモノクロフィルムを俯瞰して見た時、それは白昼夢として私の脳内に再記録されるのでした。
村田和人の「一本の音楽」ではないですが、1本のフィルムが私にそう語りかけてくるのでした。
フィルムで感じるひとときの旅気分
が、あるとしたならば、それは1本の全コマをコンタクトプリントで焼いて俯瞰で見た時だと思います。
私の場合1日中撮影して通常1〜2本、写真枚数にして20から60枚くらいフィルムを消費します。デジタルカメラの時とは異なり、1箇所で撮影する枚数も大抵1枚だけです。
ですので全コマを俯瞰で一気に見た時、パラパラ漫画のように、自分の記憶の断片を見ているような感覚を覚えるのです。撮影したその時の色、音、匂い、機材の情報。そして感情さえも思い出すことができます。
フィルム写真はランニングコストが掛かります。が、旅に一台フィルムカメラを持っていくと、その旅をより思い出深くしてくれる、かもしれません。なによりも記憶や記録をネガ(ポジ)という物質に転生させてくれる魔導器なのですから。
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