よこゆき

小説・脚本を書いてます。ハートウォーミングからノワールまで、自分のスキなジャンルにトラ…

よこゆき

小説・脚本を書いてます。ハートウォーミングからノワールまで、自分のスキなジャンルにトライしてます。よろしくお願いします。

最近の記事

ノワール長編小説             「水面下」 第2話

 平成九年~平成一八年  東京地検特捜部が東西銀行を家宅捜索してから、しばらく新聞紙面は関連ニュースで賑わった。『東西銀行頭取以下24名そろって退陣』『供出額125億円!時効前にも300億超―裏には大和田組フロント企業社長N氏の存在』等々。  長尾が会長を務める経世研究会に捜査の手が伸びたのは、信也が東京地検に出頭したひと月ほど後だった。普段は物静かなインテリ風の長尾だが、連行されていくシーンだけはふてぶてしく居直った表情に見えた。それは報道各社がそういう瞬間を切り取ったた

    • ノワール長編小説         「水面下」 第1話

      【あらすじ】  バブル崩壊後の平成。平凡な銀行員・武田信也の父親が自殺。荻原組の経済ヤクザ比嘉航平の追い込みと断じた信也はフェンシングの剣で彼を襲うが、原因が航平と敵対する大和田組の企業舎弟・長尾の仕業と知らされて、ふたりは共闘して仇討ちを実行する。長尾の会社を奪い取った航平は、信也を投資顧問に据え外資系証券会社WGIを発足させる。ITバブルと荻原組の暴力を背景に雪だるま式に会社を発展させていくが、信也も航平も何もかもうまくいくことに言いようのない倦怠を感じはじめる。平成二十

      • 「ミコマイ犯科帳(リポート)~今も私は、昔の男に恋してる」 第2話   [ねずみ小僧次郎吉に関する考察②]

        ○御子柴神社・拝殿    舞と意義。 舞「『鼠賊白状記』に書いてあるとおりだ。では、江戸を所払いになったあと一時上方に身を寄せていた、というのも?」 意義「はい。大坂(現大阪市)のさる私塾で一から学び直しました。白状記に書かれているのは、私自身の事です」 舞「でも裏金運びをやめたのに、どうしてまた7年後に捕まったの?」    真吾が呻き始める。    意義の姿も薄くなっていく。 舞「これ以上は、無理ね。意義さん。大坂のあとは、どこへ?」 意義「しも、む、ら…」    と言

        • 「ミコマイ犯科帳(リポート)~今も私は、昔の男に恋してる」 第1話     [ねずみ小僧次郎吉に関する考察①]

          【第1~3話のあらすじ】  シャーマン(降霊)の能力を持つ歴女・御子柴舞は、鼠小僧について調べるうちに、同時代を生きた遠山金四郎と水野忠邦が関係していると推論立てていた。「ねずみ小僧」とは、忠邦と金四郎が裏金を運ぶために生み出した架空の盗人ではないかと。舞は田沼意次の末裔・真吾と知り合い、彼の身体を触媒にして意次の孫・意義の霊魂と接触する。舞の推理はあたっていて、彼がねずみ小僧のようだ。意義は従者の渡辺良左衛門の手を借り、農民たちを救うべく忠邦の蔵から一万両の裏金を盗み出す。

        ノワール長編小説             「水面下」 第2話

        • ノワール長編小説         「水面下」 第1話

        • 「ミコマイ犯科帳(リポート)~今も私は、昔の男に恋してる」 第2話   [ねずみ小僧次郎吉に関する考察②]

        • 「ミコマイ犯科帳(リポート)~今も私は、昔の男に恋してる」 第1話     [ねずみ小僧次郎吉に関する考察①]

          「キミとずっと喋っていたい」

          【前書き】  イラストレーターの綾瀬寧は、ポテやんという喋る犬を飼っている。ポテやんの愛の告白に立ち会ったり、一緒に海までドライブしたりと楽しい日々だ。そして、寧にも恋の話が。さぁ、この恋どーなる?  「話中話」の形式なので、A面(第1〜5話)とB面のトーンがガラッと変わります。戸惑われるかもしれませんが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。 【本編】 A面「喋る犬の飼い方」    第1話 ポテやん、喋る    桜の薄桃色が青い空に映えている。春満開の舗道を散歩する、

          「キミとずっと喋っていたい」

          ドラマ脚本「同葬会」

          【あらすじ】  門前町の寂れかけた商店街。堀口彬は、その路地裏で葬儀屋を細々と営んでいる。ある日中学時代の恩師・本村公平が終活の相談に訪れた。公平先生はどうやら生前葬を希望しているようなのだが、半年後あっけなく亡くなる。公平の告別式。彬の同窓生でバンド仲間だった井上亘や山倉健介・真弓夫妻も参列する。同じバンド仲間の佐藤慎二の居酒屋で昔話に花を咲かせる彬たち。公平が生前葬をやりたがっていたことを知ると一同も興味津々。恩師が果たし得なかった生前葬を、同窓会形式でできないかと企画す

          ドラマ脚本「同葬会」

          ドラマ脚本「心の窓」

          【あらすじ】  ネトカ住民の中島駿は窓拭きのバイトに応募し、ゴンドラから見た都会の景色に惹かれる。職場には心優しい指導員・古謝とお節介な元キャバ嬢の明日花がいた。人間不信からコミュ障になっていた駿だが、ふたりの間で少しずつ心の窓を開き始める。明日花の方も駿に好意を持つようになるが、ある誤解からふたりは決別する。折しも東京に黄砂が降ってきて、契約しているビルの窓拭きを引き受ける駿。彼は心の窓を拭いて、明日花へあるメッセージを伝えようとする。 【主な登場人物】 中島駿(

          ドラマ脚本「心の窓」