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盗っていません。誓って。

数年前、
私は小さな会社で経理を担当していました。


程なくして、私以外の従業員の9割が
一斉に退職してしまった事で、
私も流れて、退職する決意を固めました。


新しい経理担当の女性に引継ぎ事項を伝え、
そそくさと会社を後にする私。


数週間がたったある日のこと。
そこの会社から電話がありました。




「通帳が見当たらないのですが…」








所定の場所にはどうしてだか見当たらず、

社長が持ち出した可能性は無いらしく、
ひどく不思議がっている様子でした。




とりあえず、
その日はもう一度確認してみる
ということで終えましたが、

どうして辞めた私に連絡が来たのか、
疑問が残りました。




翌日。


経理の方からまた連絡があり、
朝もう一度確認してみると、


いつもの場所に"あった"というのです。





よかったですね。



と半分うわの空の私。




しかし記帳内容を見てみると、
昨日のうちに十万円が引き出されていたとのこと。




…?



私にどうしろと、、、




とりあえず社長が来たら、
相談してみるということで、
一時連絡を終えました。




夕方頃にまた電話が鳴りました。


私は、もう本当に申し訳ないのですが、
退職した会社の業務に巻き込まないでほしい
という気持ちでいっぱいでした。



ばっとすぐに電話をとると、






「○○警察署、刑事の○○です。」

「会社の件についてお聞きしたいのですが…」






!!!




私の目ん玉は飛んでいきました。





心拍数が急に跳ね上がり、
耳の中いっぱいに心音が轟いています。




はわわ…




自分が最初から疑われていたことに、
ようやく気づきました。





そして同時にある事を思い出しました。





辞める直前、
強引に社長から事務所のスペアキーを
渡されていたということ。
(落ち着くまで持っていてくれとのこと)




私は自室の隅に横たわる、
封筒に入ったままの鍵に釘付けになりました。




あっ…。





「刑事さん、私じゃないですよ!誓って!」






ドラマさながらである。






「会社周辺にすら近づいていませんよ!」


「誓って!」






気付いたら誓っていました。





どうやら、正式に窃盗ということらしく、
身に覚えのない引き出しが以前にも数回あったとのこと。
(社長が引き出すこともあった為、
私には区別がつきませんでしたし、
社長にも区別がついていませんでした。)




銀行の防犯カメラは、画質が荒く、
若めの男性ということしかわからなかったようです。



鍵もってて直近辞めた私が一番怪しい。



ダブルリーチです。






しかし私にはアリバイがありました。

その引き出された時刻には
別の新しい職場にいました。




ありがとう。金田一君。



その旨を伝えると、
私の疑いはすぐに晴れたようで、
また連絡するかもしれないとのことでした。



数日後。



会社と刑事両方から連絡あり、
犯人は私の前任者の経理担当の方でした。



鍵を複製し犯行に及んだそうです。



私はその人と直接面識はなかったのですが、
グルではないかと最後まで疑われていました。



むしろそんなに疑われると、
意識外で体が勝手にやっちゃったのかなとも思いました。



TVのニュースでも取り上げられていて、
何故か私でなくてよかったなと安堵した記憶があります。




ちなみに、
私はお腹が痛い時も、神に誓いがちです。



完。

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