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ヤンキー母校に帰って。

私の地元には"龍さん"と呼ばれる、
極太ヤンキーがいました。



話によると、
私らの2.3個上の先輩らしいのですが、
皆口々に

「馬乗りで暴れているところを見た。」

「腕に刺青が入っていた。」

「舌にピアスが開いていた。」


等々、恐怖の噂で持ち切りでした。



当時中学一年生の私。
とにかくゲーセンや商業施設に行くときは、
必ずヤンキーチェックを欠かせませんでした。


というのも、
私の髪の毛は元々明るい茶色で
光が多いところだとひどく目立ちます。



行く道行く道の大小のヤンキーに絡まれ、


「いいえ、染めてません。」


「いいえ、持ってません。」



これのゴリ押しで乗り切ってきました。
(私は真面目なタイプの人間です。)



そんなある日、
"龍さん"が
学区内近辺に出没しているという情報が流れてきました。



直接姿は見たことがありませんでしたが、
金髪ピアスにタオルを頭に結んでいる、
いわゆるDASH村風な出で立ちらしい。




しかし"極太"。




「素人に絡んだりするような事はないよね。」



そう、どこか高を括って
いつも通り過ごしていました。


マシマシラーメン食べるとお腹下します。


数週間後…



そんなことも忘れて、
マラソン大会の自主練を行っていたある日。



暑い真夏の夜。大きな公園にて。


21時だというのに、男女わーきゃー
私を含め15人程がちょこっとだけ走って、
あとはだらだらだべっている。



そんな青春TIMEを過ごしていました。



学校行事の自主練という口実で、
門限、青天井。おっすおっすピーポー。




(女の子とわーきゃーできるゾ!)





興味なさそうなふりして
興味津々の僕たち。



ちょっと悪ぶったりなんかして、
イキッてイキッて
もうどうしようもありません。



そんな中、ふと遠い森影から自転車2台
(二人乗り)
計四人がこちらに向かってくるのが見えました。




「誰か友達呼んだのかな?」




そんなのは友達とは呼べません。




何となしにぼんやり見ていると、

突如こちらに向かってくる火の光線。




「シュバッ!」





「パンッ!!!」








突然の出来事に凍り付く我々。


続けざまに


「シュッ!!」

「パンッ!!!」

「パンッ!!!」

「パンッ!!!」





ロケット花火がこちらに向けて放たれています。






(え~…怖い怖い…何々…)ドキドキ





爆笑しながら近づいてくる、
ヤンキー&バイセコー。


距離100m。




目を凝らしてよく見ると、
そのうちの一人は、
頭にタオルを結んだ金髪です。




僕らの頭の中には瞬時に、
"龍さん"がよぎります。





\暴走族にタコ殴りにされて死ぬ。/




ここまで未来が見えたところで、

刺激するようなことは止めよう。
そしてもう帰ろう。


そう皆が、心を一つにしました。



悟空の呼びかけに反応した人々




すると突然僕らの中の一人が大声を上げました。


「なんだょ~~?」



女の子の前で引き下がれなかったのでしょう。



その声は威勢がないのに
どうしてか大きく響きました。



待っていたとばかりに加速するヤンキー

「んだと!!ごらっ!!」


距離50m。






ここは謝り専門の僕が出番だ。



慎重に謝るぞ。



距離30m。



(メチャクチャ切れてる。)
(まじで怖い。)



圧に押され、後ろの友達に目をやります。
一緒に謝ってくれる人材募集中です。





…?







え…と…
誰も…いない…?






心臓がグミぐらい縮み上がりました。




距離20m。




直前まで調子に乗っていたことを神様に謝りました。

親の財布からお金をくすねたことも謝りました。



距離10m。




(う~わまじで刺青入ってる。)



ドキドキ…



あ…あ…





(やっぱり無理~!!)





私の体は無意識に走り出していました。




振り返ると、
ヤンキーは奇声を上げながら追いかけてきます。




私はこれまで真面目にスポーツをやってきました。
ヤンキーに足で負けるのは悔しすぎます。




無我夢中でコンクリートを駆け、
限界ギリギリの角度でカーブを曲がります。




過ぎる景色が今までのどの時よりも、
早く感じました。




体も軽く、力がみなぎってきます。



風になる私。





がしかし、ヤンキー意外に足が早い。




振り切れない。




咄嗟の判断で飛び込むように
家と家の間に身を潜めます。
(不法侵入です。)



上下黒のウィンドブレーカーを着ていたので、

闇に紛れてくれ!俺~!」

と、祈るような思いで頭を抱えて座り込みました。














通り過ぎていくヤンキーたち。





顔面蒼白の私。





人通りの大きい道路に出て帰ろう。




その前に公園に止めてある自転車回収しなきゃな。





ゆっくりとヤンキーチェックをしながら、
夜の公園に近づきます。




「ガシャン!」


「おらっ!」

「ハハハ!」





ヤンキーたちは私の自転車を叩きつけては、
グシャグシャにして遊んでいました。

















「ヤンキー母校に帰って。」



完。





あとがき

後日、
私の代わりにボコられた自転車を回収し、
茶色い髪は坊主にしました。

この時のやるせない体験が、
後にボクシングをやるきっかけにもなったのですが、それは別の時に。

(減量きつくてすぐやめました。笑)



おしまい。

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