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ヤンキー母校に帰って。
私の地元には"龍さん"と呼ばれる、
極太ヤンキーがいました。
話によると、
私らの2.3個上の先輩らしいのですが、
皆口々に
「馬乗りで暴れているところを見た。」
「腕に刺青が入っていた。」
「舌にピアスが開いていた。」
等々、恐怖の噂で持ち切りでした。
当時中学一年生の私。
とにかくゲーセンや商業施設に行くときは、
必ずヤンキーチェックを欠かせませんでした。
というのも、
私の髪の毛は元々明るい茶色で
光が多いところだとひどく目立ちます。
行く道行く道の大小のヤンキーに絡まれ、
「いいえ、染めてません。」
「いいえ、持ってません。」
これのゴリ押しで乗り切ってきました。
(私は真面目なタイプの人間です。)
そんなある日、
"龍さん"が
学区内近辺に出没しているという情報が流れてきました。
直接姿は見たことがありませんでしたが、
金髪ピアスにタオルを頭に結んでいる、
いわゆるDASH村風な出で立ちらしい。
しかし"極太"。
「素人に絡んだりするような事はないよね。」
そう、どこか高を括って
いつも通り過ごしていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703741308069-uLYgEIf3AE.jpg?width=800)
~
数週間後…
そんなことも忘れて、
マラソン大会の自主練を行っていたある日。
暑い真夏の夜。大きな公園にて。
21時だというのに、男女わーきゃー
私を含め15人程がちょこっとだけ走って、
あとはだらだらだべっている。
そんな青春TIMEを過ごしていました。
学校行事の自主練という口実で、
門限、青天井。おっすおっすピーポー。
(女の子とわーきゃーできるゾ!)
興味なさそうなふりして
興味津々の僕たち。
ちょっと悪ぶったりなんかして、
イキッてイキッて
もうどうしようもありません。
そんな中、ふと遠い森影から自転車2台
(二人乗り)
計四人がこちらに向かってくるのが見えました。
「誰か友達呼んだのかな?」
![](https://assets.st-note.com/img/1703741796400-NxxWEFAtV3.jpg?width=800)
何となしにぼんやり見ていると、
突如こちらに向かってくる火の光線。
「シュバッ!」
「パンッ!!!」
…
突然の出来事に凍り付く我々。
続けざまに
「シュッ!!」
「パンッ!!!」
「パンッ!!!」
「パンッ!!!」
ロケット花火がこちらに向けて放たれています。
(え~…怖い怖い…何々…)ドキドキ
爆笑しながら近づいてくる、
ヤンキー&バイセコー。
距離100m。
目を凝らしてよく見ると、
そのうちの一人は、
頭にタオルを結んだ金髪です。
僕らの頭の中には瞬時に、
"龍さん"がよぎります。
\暴走族にタコ殴りにされて死ぬ。/
ここまで未来が見えたところで、
刺激するようなことは止めよう。
そしてもう帰ろう。
そう皆が、心を一つにしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703742312326-dD3iEtF6Wi.jpg?width=800)
~
すると突然僕らの中の一人が大声を上げました。
「なんだょ~~?」
女の子の前で引き下がれなかったのでしょう。
その声は威勢がないのに
どうしてか大きく響きました。
待っていたとばかりに加速するヤンキー
「んだと!!ごらっ!!」
距離50m。
ここは謝り専門の僕が出番だ。
慎重に謝るぞ。
距離30m。
(メチャクチャ切れてる。)
(まじで怖い。)
圧に押され、後ろの友達に目をやります。
一緒に謝ってくれる人材募集中です。
…?
…
え…と…
誰も…いない…?
心臓がグミぐらい縮み上がりました。
距離20m。
直前まで調子に乗っていたことを神様に謝りました。
親の財布からお金をくすねたことも謝りました。
距離10m。
(う~わまじで刺青入ってる。)
ドキドキ…
あ…あ…
(やっぱり無理~!!)
私の体は無意識に走り出していました。
振り返ると、
ヤンキーは奇声を上げながら追いかけてきます。
私はこれまで真面目にスポーツをやってきました。
ヤンキーに足で負けるのは悔しすぎます。
無我夢中でコンクリートを駆け、
限界ギリギリの角度でカーブを曲がります。
過ぎる景色が今までのどの時よりも、
早く感じました。
体も軽く、力がみなぎってきます。
風になる私。
がしかし、ヤンキー意外に足が早い。
振り切れない。
咄嗟の判断で飛び込むように
家と家の間に身を潜めます。
(不法侵入です。)
上下黒のウィンドブレーカーを着ていたので、
「闇に紛れてくれ!俺~!」
と、祈るような思いで頭を抱えて座り込みました。
…
…
…
通り過ぎていくヤンキーたち。
顔面蒼白の私。
人通りの大きい道路に出て帰ろう。
その前に公園に止めてある自転車回収しなきゃな。
ゆっくりとヤンキーチェックをしながら、
夜の公園に近づきます。
「ガシャン!」
「おらっ!」
「ハハハ!」
ヤンキーたちは私の自転車を叩きつけては、
グシャグシャにして遊んでいました。
…
…
「ヤンキー母校に帰って。」
完。
あとがき
後日、
私の代わりにボコられた自転車を回収し、
茶色い髪は坊主にしました。
この時のやるせない体験が、
後にボクシングをやるきっかけにもなったのですが、それは別の時に。
(減量きつくてすぐやめました。笑)
おしまい。
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