見出し画像

私は旅に出た。君は好きにしろ。17

◆旅の終わり

妹を空港で見送って、もう後は私も日本に帰るだけになりました。南米から日本への直行の飛行機はないので、帰りにニューヨークに寄ることにしました。そこに大学の友人が一人で来て、一緒にニューヨークを周りました。インターネットやテレビで見ていたタイムズスクエアや、映画の舞台にもなった博物館、憧れの地であったニューヨークで、旅の最後を締めくくることができて本当に良かったと思います。タイムズスクエアで写真撮りたかったミーハーなので。

最後に旅を共にしたその友達は、大学に入って初めて一緒に海外へ行った友達でした。彼女は色々な事情により長期で海外に出ることが難しかったので、共に憧れた世界一周という夢を結局私は勝手に、2人分背負って出国しました。出国直前まで、私を応援してくれて、旅の間もずっと日本から見守ってくれていた大切な友達と、世界一周の締めくくりの時間を共有できたことが、本当はどれほど嬉しかったことか!まあ、なんだか照れくさかったので直接は伝えられていないんですけど。読んでいてくれてるはず。笑

***

ニューヨークという街は、最後にして最高でした。というのも、今までどこか自分のいる場所を外側の目線から見てきたのですが、初めて「内側にいる」という感覚を味わいました。それほど、ニューヨークという街全体が、新鮮な輝きに満ちていたからです。大抵絶景はその外側から眺めて感動するものです、大抵の場合自分はその絶景にお邪魔している形で、自分無しでも絶景は絶景として成り立っています。ただ、ニューヨークがとても記憶に残る街だった理由は、「人」ありきで成り立っていたのも大きな要因だと思います。今目の前に見えているこの景色は、外側から眺めるだけでなくて、自分がそこに溶け込んでいることで「人」も景色の一部になり、ニューヨークという街全体を内側から眺めることができるという、初めての感覚でした。そこに人がいて、人の熱気があって、人の足音があって、人が使っている明かりがあって、それらが絶妙なバランスを保って作り上げられた街だったんです。例えるならば、りんごという物体を外側から、あの赤いつやつやの皮や光の反射を眺めるのか、自分が種子になり内側から、そのぎっしり詰まった蜜やみずみずしい果肉を味わって、同時に外側からの見た目を想像するのか、の違いです。なんじゃその表現、わかりづらいわ!という苦情は受け付けません。笑

内側からも外側からも同時に世界をみるこの視点は、結果的にどんな仕事をするにおいてもやっぱりとても重要なんじゃないでしょうか。自分の立場からモノを見るのと同時に、相手の立場からどう見えるかを想像することによって、本当に求められていることがわかるんだろうなと思っています。たぶんね。

***

そういえば、ニューヨークから夜行バスで行ったナイアガラの滝がつっこみどころ満載でした。というのも私たちがそこへ向かったのは3月半ば。ニューヨークとカナダの間に位置するそれは、氷と雪に覆われていました。ごうごうと音を立てながら落ちる水は滝壺から白煙をあげ、その煙と雪と氷によって正直、全部真っ白になってどれが滝なのかよくわからない。イメージと違う。夏だと滝のすぐ裏まで行けるようでしたが、冬は危険なので遊覧船もろもろ全部運休。テンションをあげて「あいのり」チックにカナダーアメリカ国境の橋の境目で、「せーの、カナダ!」なんてやってはみたものの、寒すぎてその後テンションがどんどん下がる二人。その時の気温、実にマイナス12度。結局カナダに3時間ほど入国して、滝もろくに見ず、メープルクッキーを買って帰りましたとさ。自然物の絶景系は夏に行こう、という最後の教訓でした。

***

5日ほど観光し、先に友達を空港で見送ってから、その翌日の早朝便だった私は、改めて一人で旅の最後を噛みしめることになりました。何度したかわからない空港泊も今日で一旦おしまい。毎日が新鮮な輝きに満ちていて、スリルと興奮でわくわくする明日もしばらくお預け。世界一周最後の記念に買ったNYタイムズを読めないのにぼーっと眺めながら、脳裏に浮かぶ一年間の最高に生きていた時間。早く日本に帰りたいという気持ちと、まだ旅を続けたいという気持ちが入り混じって、すごく切ない気持ちになりました。最後のフライト、車輪が滑走路を離れ、あとは日本に帰るだけというときにipodから流れてきた曲は「イージュー☆ライダー」でした。それはまぎれもなく、「海外なんて不安だな、本当に私なんかに行けるのかな」と思った時にいつも私の背中を押し続けてくれた曲でした。涙が出ました。必死でこらえてたけど、多分隣のおっちゃんにはバレてた。

懐かしい、中部国際空港の案内板を見て、私の旅は無事に終わりを告げました。帰国してゲートから出た瞬間に飛びこんできた家族の顔がちょっと切ない表情だったのは、「出国したとき私の長女はもう死んだものと思ったから」と後から聞いた母の言葉で納得できました。心配をかけながらも、最高の経験をさせてくれた周りの人には未だに恩を返しきれていないので、少しずつこうして私は言葉を綴ることによって、次の旅人へのエールに変えることができればいいなと思っています。

***

つづく。



===
著者:山口夏未
リアルタイムに旅を発信中!
ブログ「ナツタビ。」→http://www.natsutabi.com/

無料メルマガ好評配信中!登録はこちら
LINE@登録してくださいっ♪→@nnt0147i で検索!
ここには書けない裏話や、質問受け付けます!

サポートありがとうございます!ありがたく、仕事しながらポップコーンとチョコレート食べます。いっぱい貯まったら、本出します。