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2022年のステージコーチ(Stagecoach Festival)で一際人気を集めていた若手カントリーシンガーがいた。

ザック・ブライアン、1996年生まれ、オクラホマ出身でカントリー、ネオトラディショナルカントリー、オルタナカントリーに位置付けられているシンガーソングライターだが、ナッシュビルでは現在トップシンガーソングライターチャートで数ヶ月一位をキープしている。カントリーミュージックの聖地であるミュージックロウが公式発表するソングライターチャートでモーガン・ウォレンやルーク・コムズを抑えての首位キープとなればその人気は想像できるだろう。

海軍で仕事をしていた両親が日本の沖縄にいた時に彼は生まれた。ほどなくオクラホマに移り住み、17歳で米軍に入隊。空いている時間で曲を作るようになり21歳の時、iphoneを使って自作の曲をYoutubeで発信することを始めた。2017年、その中の曲が注目されて2019年に1枚目のアルバム「DeAnn」をリリース(亡くなった母の名前をタイトルにした)、このアルバムが注目され、2020年に2枚目のアルバムをリリースし、2021年にはカントリーミュージックの聖地であるグランドオールオプリにゲスト出演をし、本格的なデビューとなった。(1枚目、2枚目は正確にはダウンロード配信となっている)

この時、ワーナーと正式に契約をし2021年に音楽業に専念するために米海軍を名誉除隊。2021年にツアーを行い2022年にメジャーレーベルから「アメリカン・ハートブレイク」をリリース。彼の楽曲はカントリー、フォーク、ロックチャートで1位、ビルボードチャートで5位を獲得。(アルバムは34曲2時間にわたる大作)

彼がここまで急速にファンを獲得したのは、愛の物語、剥き出しの心、人生について語る歌詞を時に声を荒げて歌うところに共感する人が多かったのだと思う。時折その辛さに寄り添うようなフィドルとスティールが彼の楽曲には欠かせず、また、かつて世界的に有名になったガース・ブルックスの歌のように、ザックが仲間、愛国心といった彼自身や家族が米兵であった思いを歌詞に重ねてくるところが今の不安定な世界情勢の中で米国人の琴線に触れたのかもしれない。アルバム全体は洗練された雰囲気はなく、彼の素朴で飾り気のない感じがそのまま重なっているようにも思える。そこがまた現代の飾り尽くされた音楽を聞き飽きた人たちの心を掴んだのかもしれない。

ここで彼のコンサートの面白い動画を紹介したい。彼のファンたちが撮影した動画を重ねあわせてコンサート全てをまとめたものだ。彼を夢中にさせこのようなコンサート動画ができているあたり、(特に、レッドロックの雪の中の11月といったら!!)この熱気、そして観客も一緒になって歌っている様子は、まだメジャーアルバム1枚しか出していない歌手としては異例と言えるだろう。

ちなみに私としてはこの大雪の中演奏しているミュージシャンに拍手を送りたい(このバンドは最初からこのメンバーで構成されているのだがフィドルとスティールが入っているので好き)つぎはぎの動画なので音質も映像も良いとは言い難いですがコンサートの雰囲気は味わえると思う。

2022年のコンサート後、2023年は大規模なツアーはしばらくしないとコメントがあるようだが、曲作り、小規模なフェス、ナッシュビルのライブハウスに出演といったことは行っているので今後の活躍も期待できそう。ちなみにこの間のグラミー賞の最優秀「カントリーソロパフォーマンス」部門で初めてノミネートされた。この業界に入ったばかりのアーティストとしては大成功だろう。彼の曲を聴いていると、現在のいわゆるナッシュビルの洗練されて商業路線に乗ったカントリーミュージックとは一線を画する感じではあるが、そこがまたカントリー以外の音楽が好きな人たちを取り込んでファン層を広げているのだと思う。しかし寒そう。。。


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