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桐島あお
2022年1月15日 19:37
第一話マスクを息苦しいと思ったことはなかった。顔を半分覆うだけで、呼吸はずっと楽になる。「前の方、空いてるんじゃない?」身軽な足取りで席を取りに行った千紗は、すぐに戻ってきて「荷物置いてあった」としょんぼり言った。薄いピンクのマスクに睫毛の影が落ちる。「開演前でも結構人居るね」辺りを見回し、後ろにある一段高くなった立ち見エリアに陣取った。ここには椅子がないけれど、体重を預けられ
2022年1月22日 14:07
第二話三回目の公演を途中まで見て、千紗と一緒に劇場を出た。空はすっかり暗いのに、大きな家電量販店が集まっているから辺りは煌々とあかるい。劇場を出てすぐに入場料と写真代を千紗に差し出すと、千紗は三千円をわたしの手に戻した。「毎回言ってるけど、入場料はいいってば。私も楽しんでるし。スタンプカードだって持ってるんだよ?」「でも……」「もう、じゃあアイスおごって」ストリップ観たあとアイス
2022年4月24日 21:25
第三話みなとはとても優しい。指でふれるときも、舌をつかうときも、からだのパーツではなく「わたし」を見ているのがちゃんとわかる。みなとは目を合わせるのがすきじゃないみたいだけれど、たとえ視線が合わなくても意識がちゃんとこっちを向いている。「くすぐったいよ」靴擦れのあとを舐めてくれるみなとはわたしと目が合うと、照れくさそうに目を細めて笑う。いつもマスクで覆われている頬は上気して、普段から