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【旅行記⑧】花の都パリへ。ムッシュ・イヴ・サン=ローランをたずねて。

前回の旅行記から間が空いてしまいました。理由は2つあります。1つは、すっかりヨーロッパの時間に体がなじみ、10時間くらい余裕で寝られるようになったこと。もう1つは、だんだんとタスクが溜まってきて、空き時間で仕事をしていたためです。

これまでは朝の3時とかに起きていたのでブログを書く時間があったのですが、10時間も寝ているとなかなか時間が取れず。その代わりに、1日2万〜2万5000歩くらい歩き回って写真を撮りまくっておりました。

というわけで、今日の旅行記はパリで過ごす2日目・3日目です。

パリでは丸4日を過ごす計画だったので、1日目・2日目はとりあえず有名な観光地を回って、ベーシックな写真を撮ることに決めました。1日目は朝〜昼、2日目は夕方〜夜を撮る作戦です。

泊まっていたホテルはパンテオンの近くだったので、ひとまず凱旋門、エッフェル塔、コンコルド広場、ルーヴル美術館、などなどを見にいくことにしました。

まずは押さえるべき写真を押さえてから、
撮りたいイメージを探っていきます。

川沿いを歩いていったのですが、やはり川のほとりはいろいろな人の生活が垣間見られて楽しかったです。

パリに来て思ったのは、事前に聞いていた情報どおり、本当に人々が英語を話さないこと。学生のころにTinderでマッチしたフランス人が「私の国ですから、他の国の言葉で話しかけられるのは気分が悪いです」と言っていたのがn=1ではないことを思い知らされました。

※なお、そのフランス人は「一言目だけ『Bonjour!』と言ってくれれば、二言目からは許しますよ」と言っていましたが、実際のところは許してくれない人のほうが多かったような……。私の服装がモッサリしていて、パリに似つかわしくなかったせいかもしれませんが。

驚くべきことに、この態度はホテルスタッフですら例外ではありません。いや、そのスタッフさんは特別に態度がハードだったのですが、他のスタッフもそこそこ塩対応。

ちょっぴりテンションが下がりそうになりましたが、ものは考えようで、逆にそういうテーマパークだと思い込むとかえって楽しくなりました。「OKOK、パリジャン/パリジェンヌの演技に徹してくれてありがとな」ってなもんです。

ただ、ねえ。外に出て写真を撮っていると、彼ら/彼女らのプライドの源泉が分かる気もしてしまうんです。だって、すべてがこんな調子なんですよ。

穏やかな陽の光に照らされる歴史的な建築の数々、フラリと立ち寄れる巨大な美術館。古い宮殿を眺めながらチルできる環境、それらすべてを見守るようにそびえるエッフェル塔。

すべての要素が思索やインスピレーションを刺激するようで、チクッとした経験もすっかり忘れてしまうくらい美しい街でした。

さて、そんなパリから輩出されたアーティストの中で、私がぜひともたずねたかったのがイヴ・サン=ローランの足跡です。

「モードの帝王」と呼ばれた彼は、弱冠21歳にしてDiorのデザイナーに抜擢されたのち、さまざまな苦難と頽廃を乗り越えながらも女性のワードローブを豊かにしてゆきました。

たとえば、今では普通になった女性のパンツスタイルも、もととなったのはサン=ローラン。

オートクチュール(1人1人に合わせて仕立てた服)の世界を飛び出し、プレタポルテ(既製服)を始めることで、ファッションを万人に開かれたものへと変えたのも彼です。

そんなサン=ローランがなぜ好きかというと、革命的な思想で女性にパワーを与えつつも、ちょっと享楽的なイメージも持ち合わせているから。「人生もっと楽しもうよ」と励まされるような気がして大好きなのです。

「昼間の服には落ち着いた色を使うのが好きだ。カラフルな色はパリの街に似合わない。けれども夜には、まるで楽園の鳥のように街を彩ってほしい」

彼がそう言ったのもむべなるかな、と感じる光の中を無計画に歩いていると、偶然にもイヴ・サン=ローラン美術館を発見しました。小ぢんまりとした佇まいですが、すでに行列ができています。

「CHASE YOUR DREAMS」(夢を追いかけろ!)とは、力強いですね(落書きはダメです)

しばし並び、無事に中へ入ると、初めの部屋にはムシュー(※)の歩みをまとめた年表がありました。

※サンローランのファンは、尊敬と愛情を込めて彼のことを「Monsieur」(ミスター、みたいな感じ)と呼ぶみたいなので、僭越ながら私もそれにならっております。

写真には伝説のモデル・山口小夜子の姿も
説明はフランス語/英語。けっこう混んでいたので、Googleレンズに頼ってある程度スピーディーに読みながら進んでいきました

他の部屋では、彼が魅了された「金」を軸にオーガナイズされた展覧会『GOLD』が開催中でした。

このほかにも美術館では、映像や写真などで彼の足跡をたどることができました。

ムシューのアトリエ

温故知新でパリを席巻した黎明期、既存の型を破り続けた壮年期、まだ見ぬフロンティアを他国の民族衣装に求めた晩年期。

常にクリエイティブであらねばならない環境は想像を絶するストレスだったであろうと推察しますが、まさに「帝王」の名にふさわしい仕事の数々でした。

彼のミューズであり、ソウルメイトでもあったベティ・カトルーとは夜遊びを相当楽しんだようです

(ちなみに、まさに今、ベティ・カトルーにフォーカスした展示が行われています)

(そして2023年9月20日(水)~12月11日(月)には、彼の展覧会が国立新美術館で行われます。行かねば……)

彼の仕事にすっかり魅了され、防犯のためとはいえ、モッサリした格好でいることが恥ずかしくなってきた私。

「いやいやこの旅は安全第一だ、帰ったらメチャ服買おう」と気持ちを落ち着けつつ、エッフェル塔近くでごはんを食べることにしました。

が、ここでは「パリの物価」の洗礼を受けることになります。

たとえば、ホットドッグ+コーヒーのセットがいくらだったと思いますか?

「パリへの入場料」だと思って、お考えください

驚くなかれ、10€(約1500円)です。破産するわ。

エッフェル塔の目の前とはいえ、テーブルも椅子もない屋台メシでこの価格。それも美味しければまだしも、パンは「2日くらい放置した?」と聞きたくなるくらいカスカスで、ソーセージはまったくパリッとしていません。食事にお金をかけたくない性分ゆえ、すっかり滅入ってしまいました。

そんな財布に厳しいパリですが、出費を抑える方法もないわけではありません。

その基本中の基本が、地元のスーパーを利用すること。とくに、モノプリ(MONOPRIX)とフランプリ(marché franprix)はあちこちで見かけた印象。私がたずねた店舗では、お会計はセルフレジで、英語案内もありました。

私はたくさん水を飲むので、evianの1.5Lを2本、よく知らんブランドの500mLペットを1本買いましたが、お会計はたったの2.5€(約360円)でした。

見たことないようなでっけえevian(6L!)が売ってたりします

ミニサイズのパン・オ・ショコラが12個くらい入った袋もたったの3.5€(約500円)。1€のチーズケーキなど、お手頃価格のスイーツもいろいろ並んでいました。

パスタサラダは3€(約430円)

セーヌ川のほとりや宮殿でチルするならば、こういう食品を上手に取り入れるのがおすすめ。ワッフルやクレープなどの屋台は出ていますが、そういうチマチマした出費だけでも、けっこうな金額になってしまいますからね。

人気のチルスポット、テュイルリー宮殿。椅子が無数に並んでおり、自由に座れる。4つ使ってベッド状態の猛者も

ちなみに、お惣菜や冷凍食品は5〜8€(約700〜1200円)程度と、決して安くはない価格でした。ただ、カフェに入るとパスタだけでも最低12〜15€、飲み物(店によっては水も有料です!)も含めれば20€程度かかるので、これでもかなり節約になるはず。

お金の使い方についてはまた別の記事にまとめたいと思いますが、海外旅行で大切なのはメリハリ出費です。「ダラダラと3€〜5€使ってしまう」機会はなるべく減らし、上手に出費をコントロールしながら、ここぞというカフェで30€くらい使うのが満足度を上げるコツだと感じました。

そんなわけで、歩いて写真を撮って、宮殿でのんびりして、歩いて写真を撮って、本当に疲れたらホテルに帰って昼寝して、また気が向いたら歩いて写真を撮って、みたいなことを繰り返していたらあっという間に2日間が経ってしまいました。

思えばずいぶん遠くにきたものです。行き交う観光船で色とりどりにきらめくセーヌ川の水面を眺めながら、少しだけ日本が恋しくなったパリの夜でした。

(以下、夜の写真たち)

とっても嬉しいです。サン宝石で豪遊します。