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音楽ストリーミングサービスの変遷

2020年夏にRadiotalk出資にかかり、音楽のストリーミングに関しても調べていたのでメモを公開します。なぜ今なのか、先日SpotifyのIRイベントStreami Onで色々なアップデートもあり、状況も変わってきそう、というのもありますし、今はギフティングやオンラインライブなど新たなマネタイズ方法やコンテンツが出てきており、周辺市場はまだチャンスがあるのではと思っています。

音楽業界の人ではないので、もしかしたら勘違いなどもあるかも‥間違いやご意見などあればぜひ教えていただけたら幸いです。

市場規模

音楽のストリーミング市場規模は2019年:128億ドル(約1.35兆円)→2020年:160億ドル(約1.68兆円)の規模で、オーディオコンテンツ市場では最も大きくなっています。

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音楽ストリーミングの変遷

デバイスの進化とともに音楽ストリーミングも進化を遂げました。学生だった自分も原体験があるのでついアツくなってしまう‥。

1999年:P2Pファイル共有ソフトのNapsterが登場
PCのローカルフォルダに保存してある音楽ファイルを交換して無料で楽しめるという事象がありました。Z世代の方にはわからないかもしれない‥当時はレンタルショップでCD借りてPCにDLしてしか聞けなかったのが、「天から音楽ファイルが降ってきた!スゲェェェェェ!」みたいな感じで私も2000年代前半のころよく使ってました‥。まさに音楽が民主化された瞬間‥

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2003年:iTunes登場
そうこうするうちにiTunesが出てきて1曲ごとに曲が買えるようになって、アルバムのシングルカットされるような曲だけ買えるという革命がおこりました。ここでAppleがすごいのは、iPodで築いたユーザー基盤を強みに、4大レーベルと独占的に契約をして音楽を他のプラットフォームに出させないようにしたことです。2003年から2008年まで音楽デジタルコンテンツ市場はAppleがほぼ独占していたと言えるかともいます。

2008年:iPhone3G発売
スマホシフトに。今までPCで音楽を買っていたのが、「iPhoneからそのまま買って聞けるやん」という感じで素人にも革命感ありました。ブロードバンド環境の整っている北欧でSpotifyが生まれたのをはじめとして、ストリーミングサービスが登場。2015年にApple Musicを始めるまでストリーミングは音楽業界をダメにする派としてアーティストなどを通じて妨害活動をしていました(テイラースウィフトがストリーミング反対していたりしましたよね‥)。

ユーザーにとっては当然ストリーミングの方が使い勝手がいいわけで、欧州中心に支持を広げて、2000年代に築いたAppleの牙城を、2010年代にSpotifyが切り崩していきました。

音楽市場規模

実際の市場規模は以下です。ファイル共有ソフトによる違法DLで2000年初頭から市場規模が大きく減少してきて、水色のダウンロード・デジタルコンテンツ(主にiTunes)が普及するも全体の縮小を食い止めるまではいかずでした。足元では紫のストリーミング市場が大きくのびて、2015年から市場規模は増加に転じています。

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プレイヤー

音楽ストリーミングのグローバルシェアは1位Spotify、2位Apple、3位Amazon、4位Tencent、5位GoogleでSpotify以外は全部大手企業です。あとは各国に1プレイヤーいるかどうかという感じです。専業のSpotifyが首位でいてくれてVCとしてはうれしい。

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大手が強い背景

こう大手が強い背景としては音楽業界が4大レーベルが85%シェアを持っていて強すぎることが挙げられます。人気ヒット曲という仕入れが必要になるので、既にユーザーを抱えているAppleやAmazon,Googleなどの大手が強くなってしまいます。Spotifyはなぜ勝てたのか?という問いに対しては、北欧の方がブロードバンド環境が整っていたこと、技術重視で再生までにかかる時間の短さやユーザーデータを用いた再生リストユーザーの支持を得ていたこと、4大レーベルに出資させることでSpotify成長の利益を分け合えるような座組にしたことが挙げられます。

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今後の展望

音楽ストリーミングサービスの普及によって一番メリットを享受したのはユーザーです。たった980円/月であらゆる音楽を楽しめるようになったのはほんの10年前には想像すらできなかったですよね‥。

一方でビジネスチャンスはまだまだあると思っています。音楽ストリーミングは拡大していますが、アーティストが儲かるという点では従前と変わらず、稼げるプラットフォームにはなっていない点に着目しています。

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音楽系のプラットフォームのカオスマップ(抜け漏れ沢山ですみません‥)ですが、投げ銭のマネタイズ可能なプラットフォームが欧米のサービスにはなく、ここがビジネスチャンスなのではと思っています。

投げ銭にはソーシャル要素が必要と言われています。Spotifyはコミュニティ機能を過去入れたこともありましたが、コミュニティ機能よりもパーソナライズ機能の方が有料課金やリテンションにつながってソーシャル機能が落とされたなどの背景があると言われています。ただ、先日のSpotifyのイベントでPodcastのソーシャル機能強化(投票機能、QA機能)なども発表されており、今後に目が離せません。

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参考:Spotifyの業績推移

左図のユーザー数推移では、Spotifyは有料課金ユーザーが45%前後もおり、有料課金前提のサービス設定になっています(Tencentは5%程度)。これは4大レーベルやアーティストから無料再生に対して激しい抵抗があり、業界として、有料課金を前提としたサービス設計にしていったことが背景にあると思われます。

一方、右図の売上粗利率推移ですが、売上は9割が有料課金収入で、広告売上は1割にとどまっています。2017年にロイヤリティの改善があり粗利率が大きく向上、2018年にダイレクトリスティングで上場しています。先日のSpotifyの発表会ではPodcastの広告プログラムなど発表されて、広告収入を強化していく方針のようで、こちらも数字の変化に注目しています。

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同じ内容をSlideshareにもアップしています。最後に、エンタメ市場のビジネスに注目していますのでぜひ情報交換やディスカッションなど頂けたら幸いです。

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