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京都の夜の世界50年のベテラン女性と人生の話

7時前に目覚める。わたしはたくさんお酒を飲むとたくさん眠れない。案の定酒はまだ体内に残っている。なぜわたしは寝る前に水を飲まないのか。とても起きる気にはなれず3時間くらい布団の中でだらだら。

そういえば昨夜サービスで3杯くらい出していただいた赤バクダンは、赤ワインの酎ハイ割りだと言っていた。そんな大学生の悪ノリみたいな酒、残るに決まっている。

昨日チケットを買ってしまっていたので、体に鞭打って映画スラムダンクを見に行く。早めに見ないとネタバレ踏みそうだし、京都で普通の生活をするのもまた贅沢というもの。

道中購入した二日酔いセット

映画は漫画が動いてるみたいだった。それを人はアニメーションと呼ぶが、そういうことではない。見ればわかる。すごかった。仕事関係の方からIMAXを勧められ初のIMAX鑑賞だったのもよかった。立体的で音が良い。

ATMでお金を下ろそうとしたら「いつもおおきに」とか細い女性の声が聞こえる。どこかに閉じ込められている人が遠くで話しているみたいな雰囲気で空耳かと思ったら「またきておくれやす」と最後に再び声がした。怖かった。

昨夜マスターにせっかく作っていただいた朝ごはんパックを忘れてしまったことへの申し訳なさから、やはりお詫びをせねばなるまいと再び昨日の飲み屋へ。

お店に入ると「おかえり〜!昨日お弁当忘れはったやろ!?」とおばちゃん。どうやら座布団の下にあったそう。マスターにごめんなさいが言えて心の重荷が一つおろせた。

この下にあったらしい

マスターは鳥料理のお店出身と聞いていたので、昨日から気になっていた唐揚げをお願いすると「おいしいで」とマスター。本当においしかった。布団で3時間だらだらしたと話すと「最高やな!」と。

77歳の常連らしきおじいちゃんから帰りがけに投げキッスを送られたので控えめにお返しする。これが有名な投げキッス受け止めたり投げ返したり。

もう一人の常連のおじちゃんはこの後スナックに行くようで、遠回しにお誘いいただいたが気が乗らずカラオケ好きじゃないんです〜とお答えする。おばちゃんはずっとウインクをわたしに送ってきていて、おじちゃんがトイレに行った隙に「わたしも行くから一緒に行こうや〜。あの人大口のお客さんやねん」と。それならまぁ付き合うかと思ったら、わたしが乗り気じゃないのを察しておじちゃんは一人去っていった。

おばちゃんからは「ここのお店のお勘定もスナックも、全部奢ってくれたと思うで」と言われ、奢りはさておきおばちゃんに申し訳なかったかなと思ったら、のちのち人生について話す中で「なんも無理せんでええねん。さっきのスナックもな、行きたくないならそれでええんよ」と優しい。水商売からの飲み屋のおばちゃんと、50年近く夜の世界にいるベテラン女性の心遣い。「モテるでしょ?」と尋ねると「まぁな」とニヤリ。かわいい。

おばちゃんはまぁちゃん。まぁちゃんは20年間毎年梅干しを作っていて「いろんな人に配ってんねん」とわたしにも一つ出していただく。梅と塩だけの梅干しは酸っぱくて余計な味がしなくてとてもおいしい。

全部まぁちゃんからのサービス

こりゃ白いごはんと一緒に食べたいなと思っていたら「なんか作ったろか?親子丼とか」とマスターからご提案いただいたので、「白いごはんを3口くらいください」とお願いしたら「しみったれたばあさんみたいなこと言ってたらあかんで!」と、キムチとごはんを出していただく。ごはんは10口くらいあった。ありがたやありがたや。

まぁちゃんはなかなか毒のある人。シングルマザーでお子さん二人を育てた立派な女。結婚相手に大事な条件は?と聞くと、「人のことを気にしない人」とのこと。たまに愚痴言うくらいならいいけど、いつも周りの人のことをとやかく言う人はあんま良くないね、と。

たしかに自分の人生に集中していれば人のことは気にならないわけで、かつそれができるってことは自分の生き方に納得していることでもあろう。

まぁちゃんは40歳のとき、スナックでなんかいい仕事ないかなぁと話したら「じゃあうちで働いてや」と隣り合わせたマスターから声をかけられたのが今のお店で働き始めたきっかけ。わたしは36歳なので、当時のまぁちゃんの出来事は4年後に起こり得ること。まだまだ何が起きるかはわからない。

マスターは年3日くらいしか休みはないそう。ゴルフは行きたいけど、どこかに行きたい願望はないらしい。「しいていうならスイスやな」とのこと。関口宏の息子の番組見ていいなと思ったのだとか。

これもサービス

お会計をお願いしてから「もうちょっとゆっくりしていきや〜」と、まぁちゃんに赤バクダンをジョッキで2杯、日本酒をおちょこ一杯サービスいただき、今日もまたまぁちゃんが帰るまで居座ってしまった。「ここは〇〇さんの家」「前はここにお店あってん」と街を案内してもらいながら銭湯へ立ち寄り帰宅。

お会計はものすごい安かった。「京都の家やと思ってまた来てや」とマスター。2日間ありがとうございました。

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