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恋するピザサンドイッチと、破局の餃子サンドイッチ

「アメリカ人って何でもサンドイッチにするんだよ」

20代の時に出会ったその人は、アメリカ育ちの日本人だった。彼もあらゆるものをパンに挟むらしい。

「一番『こりゃないな』って思った具材は?」
「ピザかな。全然挟まなくてよかったわ」

泣くほど笑った。「炊き込みご飯を具におにぎり握りました」みたいなこと? そんなバカな食べ物ある??

ゲラゲラ笑って、涙をぬぐいながら恋に落ちた。4日後に付き合って、2週間後に別れた。ピザサンドイッチ以上の面白さが見出せなかった。

友達が彼氏の家に泊まりに行って、夕飯を作った。付き合って日が浅かったから、彼女が手料理を振る舞うのはその日が初めてだったらしい。

メニューは餃子。切ないことに、あまり上手にできなかった。味も手際も悪かった上に、あろうことか大量の餃子を一気に焼いてしまった。当然、数分後には大量の冷めた餃子が誕生する。温かければどうにか食べれたかもしれないけれど、冷めてしまっては箸が進まない。彼も頑張って食べたらしいが、結局、かなりの量の餃子が残ってしまった。

その翌朝。仕事があって慌ただしく準備をする彼がふと台所を見ると、彼女は食パンに餃子を並べていた。朝ごはんの餃子サンドイッチだった。彼は、「ないな」と思ったらしい。以前から何となく感じていた「違う気がする」が確信に変わった瞬間だった。昨晩の残り物を無駄にしたくない彼女の気持ちは完全に裏目に出た。

ピザサンドイッチをきっかけに恋に落ちることもあれば、餃子サンドイッチが決定打となって破局することもある。好いた惚れたは本当にわからない。残り物の餃子を食パンに並べる姿、私は想像するだけでキュンとする。

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