京都から吉野山へ行き、大阪で飲む
2年前、大学の先輩とその弟と3人で吉野山に登った。寄付というかたちでお金を出せば自分の桜の木を植えてもらえることに気づいたわれわれは資料請求をし、後日東京の自宅でパンフレットを見たわたしはそっと申し込み用紙を資源ゴミに出し、先輩とその弟は吉野山での勢いそのまま桜の木を買った。
今日はその桜を見に行く。人の桜の木を見るために吉野山を登るというのは、かなり雅な遊びではなかろうか。
吉野に向かう電車には明らかに吉野山へ行くのだなという登山ルックの人がたくさん。
東京の通学通勤で培った経験値とノウハウを駆使して最適な車両に乗り、乗り換えの橿原神宮前駅の吉野行き発車ホームで先頭に並ぶことに成功するも、同電車はすでに満員。先頭の意味なし。
立ち飲みなら2時間近く平気で立っていられるのに、電車で1時間弱立ちっぱなしはしんどい。
現地で先輩と合流し、ケーブルカーに乗るための行列を横目に山を登る。先輩は今年トライアスロンに出るらしく、日々走ったり泳いだり自転車を漕いだりしており、ビールを飲みながら余裕で坂道を歩いている。わたしは身の程を知っているのでビールは飲まない。
売店には葛を使ったあれこれが並ぶ。葛湯は「Hot Kuzu」という名称で売られていた。葛湯とはずいぶん印象が変わる。
2時間かけて奥千本まで行き、先輩の桜を探す。奥千本はまだ開花しておらず、さらには折れたり地崩れに巻き込まれたりした桜の木も点在していて、一抹の不安がよぎる。桜を植えればすくすく育つと当然のように思い込んでいたが、そうならない可能性ももちろんある。そんな当たり前のことを完全に忘れていた。
先輩の桜は急斜面の下の方にあり、近くまで行くことはかなわなかった。おそらくあの辺りだろうというエリアに朽ちた木はなかったから、きっと無事。
帰りの電車の混雑を予想し、帰りは寄り道などせずまっすぐ山を降り、確実に座るために電車を1本見送る。そして爆睡。
夜は大阪転勤になった同じく大学の先輩と飲む。同級生はわざわざこのためだけに今日の昼から大阪に来た。桜の先輩と二人で「来いよ!」と誘っておきながら、吉野から帰る電車では「よく来るよね〜」と軽口を叩く。ひどい話。
天満は価格がどうかしている。ハッピーアワーとはいえ、お酒が50円というのは初めて見た。
この界隈には生ビールが50円の店もあるらしい。わたしが知っている生ビールの底値は東京で一番安くてまずい居酒屋のキャンペーン期間の100円だったが、それを大きく下回る。
そしてハッピーアワーの終わりが遅い。なんなんだこの街。
大阪転勤になった上流階級の先輩からえげつない税金額を聞いたり、ポイント運用には税金がかからないと教わったりした。平均年齢40歳くらいのわれわれ、話す内容が一気に大人になった。
そんな話を聞きながら、わたしと桜の先輩はガツガツごはんを食べる。今日は消費カロリーに対して摂取カロリーが足りなかった。動けばお腹が空くのは学生時代と変わらない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?