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2022年2月の振り返り

2月は引退後の隠居老人のような穏やかな生活を送った。『ポケモン アルテウス』と『MOTHER2』をやり、本を読み、近隣を散歩する日々。ここでは読んだ本を振り返る。

『同志少女よ、敵を撃て』/逢坂冬馬

第二次世界大戦時のロシア女性狙撃兵のお話。残念ながら、読み終えた頃に本当に戦争が始まってしまった。

戦時中は英雄と崇められ、戦後なかったものにされた女性兵士。残ったのは人を殺し、仲間を失った事実だけ。

ネタバレになってしまうから詳しくは書けないけど、殺したいほど憎い敵がわかりやすく悪人なわけではなく、好意を持っている味方が善人なわけでもない。そして、許し難い行動をする人も、戦争がなければそうはならなかったのかもしれない。

善悪がはっきりしていれば救われたところもあったのかと思うと、本当にやるせない。戦争なんて、本当にいいこと一つもないじゃないか。時事も相まって、とても印象に残った一冊。

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』/鈴木忠平

『非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術』の著者・齋藤太郎さんが取材の中で「2021年で一番面白かったかも」と言っていたのを聞いて買った。

分厚さと野球への関心のなさから後回しにしていたけど、ラジオで元テレ東の佐久間さんと星野源さんが同時期にお勧めしているのを聞いてついに読んだ。めっちゃ面白かった。

自分で考え、個として、ひとりのプロフェッショナルとして、自分の役割を全うする。チームのためでも、球団のためでも、ファンのためでもなく、自分のために野球をやる。

その道は孤独で不安なものだけど、その先に揺るぎない自分の核たる何かがあるのかも。個として生きるのは本当に苦しいこと。「自分のために仕事をできているのか」に、わたしは胸を張って答えることができない。

印象的だったのは、落合は何も変わらないのに、その周囲が落合の監督退任をめぐって評価やムードを反転させていく様子。どうしたって人の目や周りの評価を気にしてしまうけど、恐れているものの正体はそんな不確かなものなんだよなぁ。

これだけよく人を見て、自分と向き合い考えることを求める人物を取材するって、考えただけで胃が痛い。そこに向き合い、踏み込んでいく著者及び記者の皆さんは本当にすごいと思う。

『多様性の科学』/マシュー・サイド

アルムナビでワンキャリアの卒業生を取材したとき、面白いと聞いて買ったまま積読していた本。

CIAが9.11を防げなかった理由、エベレスト登山隊の大遭難、ダイエットがうまくいかない原因など、掲載されている事例が親しみやすくておもしろい。

特に属性の多様性と認知の多様性の話にスッキリ。男社会で男性化した女性が経営陣に入ることは多様性なのか?の疑問が解けた。

『そして誰もいなくなった』/アガサ・クリスティー

言わずと知れた有名ミステリー。読もう読もうと思って後回しにしていたけど、先月読んだ『硝子の塔の殺人』に触発されてついに手を出した。

とてもシンプルなミステリー小説。こんなうまくいくか?と思ってしまったけど、1939年当時はどう受け止められていたんだろうか。

『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』/水谷竹秀

日本を捨てたのか、それとも日本が捨てられたのか。そのどちらでもあるんだろうなと思う。

困窮邦人の甘さや勝手さには腹が立つ一方、彼らがこうなってしまった背景には家庭環境や社会システムの問題があるわけで、こういう人たちを自己責任論でバッサリ切り捨てる人にはなりたくない。

フィリピンは4カ月滞在したことがあり、人の良さは身を持って知っているし、特に女性たちの明るさ、優しさに救われる気持ちもよくわかる。女性向けのフィリピンクラブ的なものがあったとして、自分が彼らのように絶対ならないと自信を持って言えるだろうか。

『三千円の使いかた』/原田 ひ香

お金のリテラシーの高さが人生を豊かにするよなと改めて。登場人物はきっと今の日本の平均的でリアルな姿であり、日本は本当に貧しく未来が暗い……と鬱々した気持ちにもなってしまった。

わたしは自分でしっかり稼いで、節約せずとも暮らせる生き方をしたい。そして魅力あるクズを躊躇なく選べる経済力のある女でありたい

『ナナメの夕暮れ』/若林正恭

ナナメがモノの見方を変えることで、自分の生を肯定するお話。人は変われるし、年齢を重ねてたことで楽になる部分もある。とてもよかった。希望の本。

そして解説の朝井リョウさんの「人の幸せを願えない」にガーンとなってしまった。


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