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五島で臨場感のある読書体験

五島最終日。「あのね、ちょっと、空港までね、行かなきゃいけなくなったのね、だから、お店の前にあるね、〇〇の車ね、乗っていっていいからね〜」と、予約したレンタカー屋のおばあちゃんから留守電が入っていた。ゆるい。

五島のシンボル的な教会だという堂崎天主堂は静かできれいなところだった。駐車場にあった立て看板が良い。

何人かの人に勧められた半泊にはジンの蒸留所がある。キリンビールを退職した3人が移り住み、昨年末に蒸留所をオープンしたそう。

蒸留所は半泊教会の横にあり、天井がアーチだったりステンドグラスがあったりと教会をイメージした作りになっている。Webページも含めて見せ方が上手だなと思っていたら、やはりマーケティング担当者が参画していた。

蒸留所の雰囲気がどことなくわたしが滞在しているおうちに似ているなと思ったら、やはりどちらも同じ建築士の手によるものだった。素人にもわかるくらい、こんなに色がでるものなのか。

帰りがけには先日飲み屋のカウンターで居合わせた人と再会。島は狭い。

一緒に釣りに行った女の子から「お店の人と合いそう」と近くの塩のお店を勧められたので、そちらにも行ってみる。お店の前の海から汲んだ海水で作られた塩を売っている。

お店には「新月」と書かれた、文字通り新月に炊かれた塩があった。そういうリクエストがお客さんからあり、実際に作ってみたら好評だったらしい。

「波動が高いから敏感な人はビリビリくるらしい」「難産になりそうだった妊婦は毎日白湯に新月の塩を少し溶かして飲んだことですぽんと産まれたらしい」「新月の塩でにぎったおにぎりを食べた子が新記録を出したらしい」

これらの客さんからの声を「わたしはよくわからないんですけどね」「でもまぁそういう目に見えないものが宿ることもあるのかもしれないですね」と、フラットに淡々と話すお店の人の温度感がちょうど良かった。

ぐるっと島を反時計回りに運転してこれまた複数人にオススメされたちゃんぽん屋へ向かうも臨時休業。

遣唐使が旅立った場所

他にお昼ごはんを食べられそうな場所はないので何か買って浜辺で食べることにする。近くのスーパーの駐車場の車は全部同じ色だった。軽トラまで水色。

ぷよぷよだったら消える

高浜海水浴場は遠浅で砂が白くて海もきれい。すてきなところだったけど、どうもわたしは浜辺より岩場が好き。いろいろ回ったけど、先日の鐙瀬熔岩海岸が一番好きだった。

お昼ごはん
サービスショット

読んでいる小説のテーマがサンゴ漁だったので、舞台である富江を再訪し、前回やっていなかったサンゴ資料館へ。作中に出てくるサンゴやサンゴ漁の網などの実物を見れた。

小説は明治の時代のサンゴバブルに一攫千金を求めて海に出た男たちの話で、実話をベースにしたフィクション。小さな船で沖合まで出るサンゴ漁は危険で、台風や竜巻に巻き込まれて数百人もの死者が出ることもあったそう。

作中に出てくるアカイロサンゴやモモイロサンゴ、ボケと言われる最高品質のモモイロサンゴの加工品がたくさん展示されていた。 

真ん中がボケサンゴ
モモイロサンゴ

現在もサンゴ漁は行われており、曾根といわれるサンゴがいる岩礁が最近新たに見つかったことで、再びサンゴバブルが到来しつつあるそう。ただ新規参入はできず、古くから権利を持っている5船ほどのサンゴ船しかサンゴを取ることはできないため、潤っているのはごく一部な様子。

案内してくれたお姉さんは「サンゴは日本で唯一の宝石」と言っていた。他にもサンゴが獲れる地域はあるものの、日本のサンゴが最も質が高いらしい。

大きなサンゴが撮れなくなってきていることもあり、サンゴの仕入れ価格も高騰。下の写真は昔仕入れたものだが、今の相場だと700万円くらいとのこと。

彫り途中で職人が辞めちゃったらしい

サンゴは1メートルに達するまでに3000年かかるとも言われており、最近はサンゴ漁自体への風当たりも強いとお姉さん。わたしもサンゴ漁自体は否定的だけど、小説と現実が交差する臨場感ある読書体験ができたのは純粋に楽しかった。

なお、通常のサンゴ漁は水深100〜150メートル程度。最近では新たなサンゴを求めて深海にまで漁の手は及んでいるものの、深海のサンゴは引き上げる際の水圧に耐えきれずにひび割れてしまうと聞いた。人間がどれだけ欲深くても届かないものもあることに少し安堵。

夜は部屋で小説を読み切る。滞在先のおうちの本なので、旅立つ前に読めてよかった。

お刺身が激安

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