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新しい先生は、いい先生

※主に新任の先生向け
※その他の先生方にも一年目の気持ちを思い出してもらい、新しい先生を大切にしてもらいたいです
※教育関係以外の方も、職場に置き換えてみると当てはまることも多いと思います
※7000字程度



新しい学校に赴任する先生、それを待ち構える先生。

共に不安なことも多い三月末ですが、どちらかというとわくわくしている先生も多いのではないかと思います。


「どんな学校だろう。どんな先生と出会えるのだろう」


春は別れもありますが、出会いのある季節。

新しい先生との出会い、子どもたちとの触れ合い、楽しみな気持ちを増やしながら、新年度の授業計画を進めてほしいです。


筆者はすっかり、学校の運営や教育界に対して、いろいろ文句を言うほど(指図できる立場ではないが)の経験を積んでしまいましたが、初任者の頃はそれなりにピュアそうなフレッシュガールでした。

ただ、教育に対しての、目標や理想が人一倍高かったので、同期よりもよく物事を観察していたのは確かだと思います。

「どうすればうまくいくか」「いい先生になれるか」を、必死で模索してきたつもりなので、この記事を読んでくださるみなさんに、少しでも役に立つ情報を伝えられたらなと思っています。

新年度スタートまで、さまざまな不安を抱える初任者へのメッセージでもありますし、これからの教育界を担う先生たちにも、もう一度フレッシュな気持ちを思い出してもらい、初任者に優しく接してもらいたいということも伝えたいです。


新しい学校で働く不安は、さまざまあると思います。
・挨拶
・職員会議
・飲み会
などの対応については、以下の記事にまとめたので、以下の記事も参考にしてくださると嬉しいです。




ベテランと若手は、個性が違うだけ

ベテラン教員と、若手教員の違いは、「経験」の違いが大きいと考える人も多いかもしれませんが、それだけにとらわれてはいけません。


「私は、まだこのベテラン先生みたいになれない」
「ベテラン先生の後を引き継ぐなんて、失望されそうで怖い」


というような、不安を抱えてしまう先生はたくさんいると思います。しかし、ベテラン先生にも足りないところはあるし、イマイチなところもあるのです。

ベテラン先生は、授業に関しては何度も経験して、スムーズに進行できるかもしれませんが、「一生懸命さ」「最新の教育を受けてきた世代である点」などは、若い先生にかなうわけがないのですから、それを利点と考えることで自信をつけましょう。


どうせ、どんなイケメンでも言われます。

「前の先生の方がよかった」
「〇〇先生はこれで提出物OKにしてくれた」
「あの先生のノートの書き方と違うから、嫌」

……ほんと、どうせ言われるんですよ。どんな先生も通る道なんですよ。

(わたしだって、引き継いだ次の先生がイケメンだったけど、そう言われてて申し訳なかったですよ)(いや、一年目の自分も言われすぎたので死ぬほどわかるだけなのですが)

子どもに限らず、人間は長く続けてきたやり方を変えるのを拒みたがります。自分の経験したやり方が正しいと信じています。それは、まだ視野の狭い子どもなら、とくにそうです。

わたしの一年目も、「前の先生と変わってほしい」なんて、散々言われてきました。その言葉に深く悩んだ時期もありました。

悩んでるだけでは、ダメ教員です。何かを人から言われたなら、行動して変わるチャンスだと捉えるべきです。


「前の先生がよかった」と子どもに言われたとき、わたしが行動したのは、以下の通りです。

①その先生の授業を見学させてもらう
②前の先生のよかった点を子どもから聞き出す
③前の先生に合わせるのでなく、自分の授業内容を一貫する

①その先生の授業を見学させてもらう 
授業を引き継いだ先生が同じ学校にいるなら、授業見学をぜひ頼むべきです。今受け持ってる子がどんな授業を受けてきたかを知ることによって、打ち合わせだけでは見えない、子どもが求めていることが見えると思います。

そして、「私も、〇〇先生の授業受けて勉強させてもらったよ」ということを、子どもに伝えるのもいいと思います。先生が自分たちのために努力していることを知ると、子どもはいい加減な態度はとらなくなります。

「〇〇先生の授業面白いよね」と、見学させてもらった先生のことも話すといいと思います。先生の評判は、子どもたちの中で広がっていい効果になっていきます。自分たちも、「〇〇先生の授業受けられて得だったんだ」とも思えます。

さらに、「先生もこれからいい授業をするために頑張る」という目標を伝えると、子どもも授業者のよくないところやいいところを、伝えてくれるようになります。受け身の授業でなくなっていきます。


仕事量も多く、授業見学されることを煩わしく思う先生もいるのですが、「いつもの授業の、一部で構いませんので」と、勉強のため見学をお願いする一生懸命な姿勢を持つことは、好印象に違いないと思います。

たとえ断られても、お願いする姿勢があるだけで、変わることはあると思います。ベテランの先生も、どんどん授業見学受け入れてほしいと思います。強制はしてほしくないけど。


②前の先生のよかった点を子どもから聞き出す
「前の先生とは替わることができないから、一年間我慢するしかないのよ」なんて言っても何もいいことはないので、文句を言う子は自分の成長に利用すべきだと思ってください。

クレームを言うお客は、その企業が好きだから注文をつけているというのは有名な話で、おそらく「前の先生の方がよかった」と言ってくる子は、あなたのことを気に入っているから話し掛けているのです。少しでも授業時間を価値のあるものにしたいと思っているから、そう発言するのです。

「どこがよくないかな?先生を助けてくれる?」「前の先生のよかったところ、先生も参考にしたいからぜひ教えてほしい」と、話しかけてみましょう。

過去には、職員室にわざわざやってきて、一時間以上わたしのために、授業の改善点を話してくれた生徒もいました。(授業改善のために、生徒とこんなに話すなんて、熱心な先生だと周りの先生に思われたに違いない)


③前の先生に合わせるのでなく、自分の授業内容を一貫する
「提出物の出し方が変わって、嫌」「ノートの取り方が違う」ということも、授業者が替われば必ず起きることなので、「前の先生がやり方がよかった」というわがままをきくのではなく、「この授業はこのスタンスである」ということを貫いて、指導してほしいです。

授業内のルールをコロコロ変えたり、自分らしくなくペース配分が狂った授業になったりすると、子どもも困りますし、信用をなくしていきます。

一年間同じルールを貫くというのは難しいかもしれないので、「一学期だけこれを試させてね。うまくいったら続けるね」「今日の授業、ここを守ってくれたら次回から考え直すね」という、期間限定での提案などをしてみるのもいいかもしれません。


「担当の先生が変われば、変えなきゃいけない部分もある。『数学』と『音楽』の授業のやり方は同じ?それと近いことだと考えてほしい」

「前の先生と同じやり方と違うからって、みんなを苦しめたいわけではない」という気持ちが伝わるように、声を掛けてほしいです。


何かしら行動していけば、ちょうど一年後には、「先生の授業が一番!」「わかりやすくて、生徒思いの授業でした」「先生の授業を受けられてよかったです」と、どうせ言ってきます。ええ、これもどうせ言うんです。最後には、びっくりするほど態度が翻ります。


大丈夫です、ベテランと比べられることを恐れないでください。どうにもならない経験の差に怯えているなら、新任のあなたの良さをこの数年のうちに発揮してください

忙しいけれども、若いうちにできるだけ「授業見学」をしましょう。自分の専門以外も見ることをおすすめします。若手同士で見に行き合うのもいいです。教育実習生が来たら、一緒に見にいくのも最高です。

他の授業をたくさん見に行くことで、他のクラスの子どものことを知れるのがいいです。教壇の前に立つだけではわからない、子どもの様子に気づくこともできます。多くの授業の種類を抱えて、子どもの顔を覚えられないという先生も、見学をする側になることで見えてくるものもあると思います。

何より、一生懸命勉強している姿は子どもの心を打ちます。「先生も勉強しに来てるんだ。俺も頑張ろう」なんて思う子がたくさんいることもないですが、ゼロなこともないです。

何人も、「先生が頑張ってるから、俺も頑張ろうと思いました」という生徒に出会っています。大人が努力すれば、子どもは変わります。努力は、こっそりするのでなく、見せつけていいと思います。



何かに気づいたときは、根拠ある指摘をしよう

一つの授業を一緒に組んでいる先生たちがいました。一人は、ベテランの主婦先生。もう一人は新しく配属された講師くん

講師くんは二十代半ばですが、今までスポーツ選手をしていたため、会社のような組織で働く経験がまだない人でした。

主婦先生は毎日育児に大忙し。できるだけ、仕事は早く切り上げたいけど、教員経験がない講師くんのために、授業計画を指導しなければいけません。一生懸命形にした授業計画を、講師くんに伝えて打ち合わせをしています。すると、講師くんが、


「俺、これはこう習ったんで、違うと思います。俺はこう教えます」


と、声を荒げました。ムキムキマッチョな講師くんの威圧は、若いとは言えなかなかのものでした。主婦先生は、これまで教えてきた経緯があるので、自分が正しいことを主張しますが、講師くんも自分の考えを曲げません。

しかし、さっさと帰りたかった主婦先生は、「じゃあ、あなたの好きなようにやればいい」と言って、講師くんの言い分に合わせてしまいました。


あとでググってみたわたしですが、主婦先生の話が正しいと気づきました。講師くんは、おそらく自分の過去の曖昧な記憶だけで発言してしまっており、プライドが高い性格も影響して今回のトラブルが起こってしまったものと思います。

職場の人間関係がこじれると、子どもが受ける授業に影響してしまうかもしれないという例を出しました。あってはならないことだと思います。


わたしも、よく「この先生の言ってること間違いじゃね?」「前言っていたことと違うんだが、大丈夫か?」と思うことがあります。本当によくあります()

先生たちも人間であり、神でも何でもないんだから、うっかりミスをしたり、記憶力が低下しているということはよくあります。

しかし、子どもに間違いを教えるのはいけません。

ベテランの言うことが必ず正しいなんてこともないし、若い人の記憶が正しいということもないです。気をつけてください、相手を信じすぎても一緒に仕事をする自分が、被害を被る可能性もあります。

クラスで配ったプリントにミスがあると、「もう先生、しっかりしてよ!」と、ミスをした先生ではなく先生全員が責められるし、子どもの目の前にいる自分が、まるで間違った人かのように訂正するはめになります。


ミスを起こさないために、「おや?おかしいな」と思うことがあれば、その場ですぐ調べましょう。今やスマートフォンですぐ、検索することができます

年配の先生は、スマホで調べるという癖はなかなか身についていません。職員室でスマホを使うなんて、知識がないと思われそうだし、何だか触りにくい……と思ってしまうかもしれませんが、そんな遠慮はいりません。ゲームをしているわけではないのですから、電子辞書代わりに堂々と使ってください。

間違いに気づいた時は、「検索してみたんですが、その表現はヒットしないみたいです」「三つのHPを見ても、この言葉しかなかったです」などと、根拠を明確にして相手に伝えましょう。本当に、これを気をつけるだけでかなり話はスムーズに進みます。


人間の知識の方が頼りになりません。

知識は、多く持っている人が偉いのではありません。正しく使える人が立派だと思います。


たいていのミスは、知識不足で起こるのではなく、確認不足で起こります。少しでも違和感があったらすぐ調べましょう。子どもたちに、嘘の情報はあたえないようにしてほしいです。



「先生」だけど「後輩」。子どもに対しても謙虚に

どの先生も、一生懸命教員免許をとるために勉強し、教養を身につけて社会人になったと思います。人一倍、勉強してきた自負があると思います。

「オラオラ、俺はお前らより勉強してきたんだぜ〜」という偉そうな態度は、口に出さなくても滲み出てしまいます。「この先生、偉そう」と一度思うと、子どもはなかなか言うことをきいてくれなくなります


「大学では◯◯学を専攻して、大学院にも行ったので6年以上これを専門にやってきました。わからないことは何でも質問してください」

そう言う先生よりも、

「まだ大学を出たばかりで、みなさんとそんなに年が離れていません。勉強不足なところも多いですし、みなさんのほうがこの学校の先輩なので、いろいろなことを教えてください」

と言った方が、子どもウケはいいと思います。「いい先生どっち?」と聞くと、後者だと思います。

もちろん、専門性の高さを求めてくる生徒が多い学校なら、キャラの使い分けが必要ですが、いずれにしろ、子どもに対しても職員に対しても「謙虚な姿勢」は持っておくべきです。

先生の中でもいるんですよね、「院卒なんで、学歴は俺のが上っすね」という人。同じ職場で働く先生に、そう言われると不愉快だと思います。学歴も、職歴も関係ありません。

勤務年数が浅い側は、質問することが多いと思うので、はじめのうちは謙虚にいった方がいいというだけで、長い方を敬えということではありません。


「先生は何でもできる」というイメージを守るのではなくて、「先生も成長したい」という態度でいることが大事だと思います。

とくに、「一年目だから、間違っていることをしたら教えてほしい」という一言は、まず始めに子どもに伝えておいた方がいいと思います。授業スタートの日でも、集会での自己紹介でも。

そして、何かを子どもから指摘されたら、必ず受け止めてください。たとえ、「そ、それはさすがにわかってるよ」というようなことを言われたとしても、そのまま返すと子どもは二度と教えてくれない場合があるので、話しかけてくれたときは、「ありがとう」と言うようにしてください。


わたしが新任の頃は、「この字の書き順が違う!」と、ある生徒に言われ続けました。直したつもりでも、提出物の片隅に「また先生間違えていましたよ」と書かれています。

その子に影響を受けて、ボールペン字講座的なテキストを買って、自分の字を整えることを努力した時期もありましたが、これまで身についてしまった書き順は、大人になってからではなかなか全て直りません。

書き順はおそらくほとんど直っていませんが、今はそんな指摘を子どもから受けることは全くありません。むしろ、教員歴を重ねているというだけで、子どもは細かいことは気にせずに勝手に信頼してくれます。


つまり、若いうちは、細かいことを何でも言われるのです。完璧でないところを、人はつついてくるのです。

黒板の字のバランス、声の大きさ、話し方の癖、それだけでなくスカートの丈、化粧の濃さ、眉毛の形……何でも、何でも、言われます。そんなところどうでもいいじゃんってところを、見つけてやりたいんだと思います。

これは仕方ないです。だから、その一つ一つの欠点探しの言葉に傷ついてもあまり意味はありません。

「言うけど、じゃあ君のこれはどうなんだね」などと、逆に問い質したりしては、もっといけません。

「先生の未熟なところは直すよ。一緒に成長していこう」という姿勢で頑張っていくしかない。わたしも、書き順を指摘されたことがきっかけで字を見直せたのだから、どんなキツいことを言ってきた子のことも感謝しています。



いろいろ、新任のうちは迷いや悩みは尽きませんが、きっときっとその何倍も楽しくて輝いた経験ができるはずなので、あまり不安に思わず過ごしてください。

先生方の働く職場が素敵なところであるよう願います。良好な人間関係を築き、集中して授業計画ができる環境が維持されるよう祈っております。

とくに、赴任一日目はとても疲れると思うので、定時に帰るようにしてくださいね。周りの先生がまだ残っているからというのではなく、定時を過ぎたら「おつかれさまです。これからよろしくお願いします」と気持ちよく挨拶をして、家でしっかり休息をとってください。


働き始めてすぐに、疲れてどうしようもなかったり、傷ついたり、おかしいなと思ったりすることがあれば、誰かに相談しましょう。


新しい先生だからダメなんだと、落ち込むことはゼロとは言えません。いろいろある仕事です。いろいろあっても、とりあえず一年、前向きに働いてみてください。「働いてみる」という気持ちでいるのがいいと思います。

新しい先生だからこそ、できることは多い。新しい先生は、先生になってくれたいい先生。大切にされるべき先生です。

どんな先生の新年度も、幸せなものになりますように。



わたしは、これからも「先生になってくれた」「先生を続けてくれた」人を応援し続けます。

相談ごとがあれば、Twitter(@natsumi451)のDMなど送っていただいて構いません。

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