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BLUE GIANT

 アニメーション映画「BLUE GIANT」を観賞。やっと。
 非常にいい音楽映画だった。演奏シーンの素晴らしいこと、実際にプレイヤーの成長を追っているようだ。すっかりJASSのとりこになってしまった。
 
 ライブに行けない人もいるし楽しみ方はそれぞれだけれど、用意された場と生音だからこそ味わえる、ライブならではの独特の良さというものはある。
 演者とオーディエンスの人生が世界の一点で交錯し、火花が飛び散るような輝きを体感する。時に立場は入れ替わり、重なり、または離れて、影響しながら新しい音が生まれていく。そのさまと人間模様、直向きさを鮮やかに切り取ったのが本作だ。

 出来事や言葉に重ねてしまった記憶も幾つか。表現をする/してきた人には、ずしんとくるだろうな。
 わたしもちょうど登場人物と同じ歳から、長く表現にかかわる習い事をしていた。身内が師範で、いずれはその道にと周囲からは目されていたし、わたし自身もそのつもりでいた。
 小手先になっていく表現、失われたのびやかさ、つい勝ち負けで見てしまう思考、ずっとやってきたんだという自負、強烈な批判、高い壁。なんというか身につまされてしまった。
 ──あれほどの才能など、どこにもないにしても。

 人前で涙ぐむことはごく稀にはあっても、涙を流すということは、まずない。それなのに、シアターの暗さも手伝ってか気付けばぽろぽろと声もなく泣いてしまった。
 やだな、顔がハロウィンみたいになっちゃうじゃん。「じゃん」は別に東京だけの方言じゃないからね。ざっくり広域関東圏は言うもんね!

 Jazzが好きな人にはわかる小ネタたち、だが音楽が好きならば予備知識がなくても楽しめるはず。観客たちが心惹かれていく描写もいい、その声にもまた泣ける。音楽愛に満ち満ちた、圧倒的良作。

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なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」