なつめ

読み散らかし、書き散らかし、撮り散らかす日々の落とし物置き場。 心にうつりゆくよしなし…

なつめ

読み散らかし、書き散らかし、撮り散らかす日々の落とし物置き場。 心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書き綴るサバイバー。     Twitter→@natsumex0087  無断転載はお断り致します/各種御連絡はTwitter(X)アカウントまで

マガジン

  • 然れどキャラバンは進む

    日々の中であつめた光、そのささやかな記録。 The dogs bark, but the caravan goes on.

  • survive,and thrive

    いちサバイバーとして考えたよしなしごとを綴るマガジン。

  • こざかなノート

    有象無象、日々の雑感を纏めたマガジン。小賢しいって嗤わば嗤え。

  • 推せる時が推し時だ

    レビューやつらつらっと書いた感想置き場的マガジン。音楽関係はだいたいここ。

  • きょうのZenbrush

    手本のない指書きゆるゆるデジタル書道。 気儘に好きな言葉などを書き付けます。

最近の記事

あるシーン

 「本当の親よりも、そっちの親のほうが実の親みたいだ」  と言われて、思わず涙ぐんでしまった。  人目の多い待合室だしすぐ隣にいるから、おおっぴらに泣くこともできなくて必死にこらえた。雑誌を探すふりをして立ち上がり、素早く涙を拭った。  思いが伝わっていることも、伝わっているからこそ悲しいことも。  ずっとそう思っていたよ、思っていたけれど言えなかっただけだ。  わたしは彼に自由とまっとうな医療をもたらした。しかしその過程でわたしがPTSDになるくらいで決して穏当ではなかっ

    • 無題 20240417

      ずっと負のループから抜け出せずにいる 見なければいいのにSNSを開いたら、働いていない人が90万人いるから活用しよう、とある 精神疾患だけで400万人以上いて、そのうち大半は働いているのに 難病やがん患者もそう 雇い止めが深刻ながんは1年に100万人が診断されるけれど、4割は働いている 活用ってなんだろう、機械か何かだと思っているのかな 涙が出る 「あいつら義務を果たしていませんからね」 国民の三大義務はそういう意味ではないし憲法は国を縛るのに ドクターストップがかかって

      • a taster

         若くして病で立ちゆかなくなったり、若くして亡くなった、と呼ばれる範疇にいる人。理由はそれぞれだけれど、実はまわりに何人もいる。  人は誰も必死に生きていると思う。上手くいかなくて立ち止まったりしていても動けなくても、その姿も認めて尊重していたい。もしみんなの前で笑っていても、それはなけなしの力を振り絞って這々の体でひねり出した表情だったりするから。  頑張っていないとまわりから思われたりすることもあるから盾になっていたいけれど、正直生身なので毎日つらい。当然本人のほうがずっ

        • update,outdated

           わたしが好んで聴いているバンドのボーカリストは、よく自らを指して「ただの音楽好きのあんちゃんだからさ」と言う。決して自らと大衆を切り離して語ろうとはしない、自他を見つめる目線のシビアさが好きだ。  大きな影響力を持ち、複数の会社を経営して、常に幾つものプロジェクトを走らせているのだから、その意味では「ただのあんちゃん」であるわけがない。だがおそらく意図的にそう楔を打ちつつ、人一倍世の動きや人心に気を配っている様子を受け取ってきた。時には躓きながらも現状に留まらずアップデート

        あるシーン

        マガジン

        • survive,and thrive
          154本
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          78本
        • こざかなノート
          204本
        • 推せる時が推し時だ
          201本
        • きょうのZenbrush
          26本
        • ハンドメイド
          21本

        記事

          花見遊歩

           花見をしようか。  治療薬の副作用で体重を減らさなければならないが、さりとて本来の症状のために動くこともままならない──そんな人を連れ出すのに桜は力を貸してくれる。ただそこに咲いているだけで。  土曜日、薄曇りの午後。暑くも寒くもなくて、人出も思ったほどではなかった。ありがたい。  小高い場所に登れば花はすぐ近くで、何枚かを写真におさめた。  儚いものは美しい。光に透ける花びらの、和紙のような薄さもすきだ。でも、葉桜特有の緑もすきなんだよな。  他にもとりどりの花

          花見遊歩

          友愛数 vol.(220,284)

           ツイキャスプレミア配信にて「友愛数 vol.(220,284)」を観た。福島県で開催された企画ライブの同時配信。会場はカフェかいじゅうの森。なお、有料コンテンツなので諸権利に鑑み本記事に画像はない。  小野雄大とPaionia高橋勇成のツーマン。まずは小野雄大から、新潟出身・横浜の天才はモルタルレコードのワンマンで堪能したばかり。  配信でもやはり涙腺にくる。琴線に触れるどころか、最早掴まれている気がする。シンプルに歌の持つ力、ことばの放つ光が強い。歌心、歌手という語彙が

          友愛数 vol.(220,284)

          さくらひらく

           啓翁桜。  もうかなり咲いている枝が、花束3つまとめて格安で売られていた。  RITENUTObytacさんによる漉き込み作品を思い返しつつ、フラワーロスには忍びない美しさを持ち帰る。  ニュースでフラワーロスの話題に触れたばかりだった。それよりも随分と安い。誰かが買わなければ廃棄されてしまうだろうことは容易に推測できた。  枝先には僅かに葉も出ている。その独特の緑がわたしはとてもすきで、花が終わっても葉のためにしばらく生けておくくらいだ。    少し部屋が明るくなった、

          さくらひらく

          伝わりきれないもの、または障壁

           精神疾患持ちや難病持ち、障碍者とともにあるPTSD/DCISサバイバーとして、書き留めておこうと思う。  どんなに大きな疾患を抱えていても、人にはプライドがある。傷ついたり負い目を感じているからこそ、よけいに踏み込んではいけない部分というのはある。  よかれと思ってなされた事が逆効果などということは、それとわかったかどうかを問わなければ多分、たくさんあるのだと思う。

          有料
          500

          伝わりきれないもの、または障壁

          小野雄大、モルタルレコード

           日曜日。  ドタ出でモルタルレコード、小野雄大さんの「桜満開ワンマンライブ」を観た。  インコグニートにジャネット、「四月になれば彼女は」ときて、なんだかふと、足元にぽっかり穴が開いているような気がした。  4月にひとつ楽しみにしてきたことはある。だがぽっかりと、足元がない。空白がいちばんよくないことは経験上知っている。  考えあぐねながら午前中の予定を3つ終えた。もそもそと昼食を作って胃に送り込んだあと、午後の予定がスパーンと飛んで、あれよあれよという間に状況がととの

          小野雄大、モルタルレコード

          the other point of view 四月になれば彼女は【ネタバレあり】

           どうしても行きたかったところに行かなくては、という呟き、Twitter(X)に現アカウントを作ってから何度となく見てきた。美しい写真の数々も覚えている。  目の覚めるような青と砂が眩しいビーチ、美味しそうなカクテル、色とりどりのフルーツ。空港のワンシーン、土産物屋に並ぶ品々の鮮やかさ。  それらがアップされたら羨んだり妬む人もいるのかもしれないが、わたしの立っている場所からは違うものが見える。決まって少し切なくなる。ご無事で、と密やかに祈っている。  何かを知った分だけ、何

          the other point of view 四月になれば彼女は【ネタバレあり】

          四月になれば彼女は

           「四月になれば彼女は」を、レイトショーで鑑賞した。サイモン&ガーファンクルの曲「April Come She Will」や同名別作品の舞台は馴染みがあるが、この映画の原作は未読。  普段恋愛モノはあまり好んで観ない。恋愛は当人同士が好きにすればよく、わたしがそれを眺めるのも覗き込むようで腰がひける。明らかに恋愛を描いただろう予告編に、実は少しだけ怯んでいた。  だが、喪失と惰性によるすれ違いから関係性を取り戻すさま、そこにある克己を描くストーリーはたしかにしっかりとした味

          四月になれば彼女は

          JANET JACKSON TOGETHER AGAIN JAPAN 2024

           Kアリーナ横浜、Janet Jackson & TLCのライブ「JANET JACKSON TOGETHER AGAIN JAPAN 2024」に行ってきた。TLCはジャパンツアー限定のオープニングアクト(Special Guest)だ。  TLCが前座とは、幾らメインアクトがジャネットでも豪勢な話だ。  しかもそのTLC、はじまってみれば45分ものステージでボリュームも内容もたっぷり充実。もうこれだけでチケット代終わったのではないかという感。本当にいいのか、いやいいのだ

          JANET JACKSON TOGETHER AGAIN JAPAN 2024

          困難と感謝、そして定点

           障碍者に対して感謝が足りない、わきまえろといった論調が俄かにSNS上で活発化しており、そのきっかけはともかくとして辟易している。世知辛い。  世の中はすべて分かり合えないもので構成されていると予めわかっているのに、世知辛いなと思うのは矛盾かもしれない。だが当たり前、当然という単語が指し示すものの落差があまりに大きい。  無理や危険がなく自分の許される範囲で何かをして、誰かが幾許か楽になる、スムーズになる。その様子を見て「良かった」と思えたなら、ありがとうの前に何かひとつを

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          満ちてゆく overflowing

          恋愛をテーマにしたら、もっと大きな愛に辿り着く。極めて藤井風さんらしく死生観を内包した、極めて美しい楽曲。賛美歌のようであり、人間への賛歌でもあるように感じた。 映画の主題歌として作られたMVは短編映画のよう。なんて美しい循環なんだろう。 映画のために試写を観て書き下ろされた曲のために短編映画のようなMVが生まれ、その曲がまた映画館で流れる。 映画を観て曲を知った人が、そこからこの短編に出会うかもしれない。同じ作り手から送り出された、ふたつのストーリー。 失った母は母親であり、great motherでもあるのかもしれない。豊穣の女神か、集合的無意識の中に存在する「母なるもの」か。愛の象徴。慈しむもの、包み込んでくれる存在の喪失と重ねる痛み。万物流転、どれほど願ってもすべては移ろい変わりゆく。 しかし人はかならず帰る。その道を辿り、少しずつ老い枯れては手放してゆくことによって、来し方と存在そのものの尊さを見いだして満ちてゆくのだろう。 アリストテレス曰わく、 愛というものは愛されることよりも、寧ろ愛することに存する。

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          all of the long nights - 夜明けのすべて【ネタバレあり】

           「夜明けのすべて」を再び鑑賞してきた。胸がいっぱいになる。ずっと好きな作品として名前を挙げることになるだろう。開始すぐから涙が止まらなかった。  封切りは2月9日だったので、もう1ヶ月も経つ。上映館が減ってくる頃合いだから、そろそろ多少ネタバレを含んだものを書いてもいいのかなと思っていた。  ところが渋谷シネクイントでこの週末から上映されるらしい。リピートしたい人がきっと渋谷に集まるだろう。そういう魅力のある作品だと感じる。  以降の記述にはネタバレを含む。鑑賞前でまっ

          all of the long nights - 夜明けのすべて【ネタバレあり】

          Incognito INTO YOU

           日曜の夜。高崎芸術劇場スタジオシアターにて、Incognito JAPAN TOUR 2024 "INTO YOU"を。BLUE NOTE×高崎芸術劇場のコラボレーションシリーズ。  間に合うギリギリの時間まですっかり日付を勘違いしていて、これまでライブに足を運んでいた時との自分の感覚のズレにちょっと悲しくなるも、何とか10分と少し前に到着。  2022年末に同じこの劇場で、BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRAとのライブを観て以来

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