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Fujii Kaze Stadium Live "Feelin' Good" Day2

 Fujii Kaze Stadium Live "Feelin' Good" Day2 真夏の日産スタジアムへ。
 蒸し暑い快晴の一日。台風は「お席外した」のだろう、風仲間への気が利いている。
 朝早くのアプリ通知でマネージャーずっずさんから朝活のスゝメ、行く時間を少しだけ前倒しにした。
 

 前日のDay1、YouTube無料生中継。ネタバレを厭わず観ていた。
 配信には配信の良さがある。どのような状況にある人も、環境と時間の都合さえあえば見ることができる。それがベッドの上でも、イヤホンをしての移動中でも。カメラワークの技、プレイの手元や細かな表情までも美しい映像で見ることがかなう。
 ただ、生には生の圧倒的な良さがある。音圧、一体感、場を包む熱の渦。空気を震わせて伝わってくるもの。人と人が同じ場所で分かち合うもの。
 演出やセットリストを知ってもなお、彼なら存分に、いや予想を遥かに超えて楽しませてくれるはずだ。その確信を胸に抱いて会場へ向かう。

 小机駅からの道はわかりやすかった。みなが同じ方向に歩いていくのもあるが、マリノス本拠地だけあってサッカーにまつわる看板が向かう先をずっと導いてくれる。

風フラッグ

 予想以上に美味しいベジカレーのエリア、足を踏み入れた時に流れていたのはOfficial髭男dism。知らなかったが、この日メンバーふたりが来場していたらしい。
 相席してくださったのは魚民さんで、先頃行われた全国ツアー「turn」の話になった途端に会場BGMがサカナクションというミラクル。
 祝福じゃん、の言葉に笑みが漏れる。

噂の「藤井風(ふう)しあわせベジカレー」


 その後、長い待ち時間に両脚の筋痙攣、Ⅰ度熱中症の症状が出たので救護のお世話になった。冷えたOS-1を飲みながら、扇風機の強い風に吹かれる。
 真夏、炎天下の長丁場を経験したことは幾度もあるのに、加齢や病後もあってか今年の暑さには白旗を上げざるを得なかった。深く感謝。

 前日に客席から登場したので、混乱を避けて普通にあらわれるのかと思いきや、まさかの「笑点スタイル」再びで沸くスタジアム。観客にもスタッフにも確固とした信頼があるからこそできることだろう。
 スタスタと中央に設けられた芝生エリアのピアノへ。ヤマハだ。
 3年ほど前のあの日、秋の入り口、コロナ禍により無観客で開催された"Free" Liveを思わせる演出。続きがここにある。
 あの日画面の前で固唾を飲んではじまりを見守った人も、あの日はまだ彼を知らなかった人も、何の隔てもない空の下で同じ時を共有している。

 「Summer Grace(grace)」の美しいピアノソロで穏やかに始まったライブは、圧巻のエンターテインメントだった。

 「花」「ガーデン」と近作からボタニカルな会場装飾に添うように進み、「特にない」へ。
 「みんなが抱えとる、モヤモヤした気持ちとか、ネガティブな感情。全部この日産スティディアムの空に飛ばしてほしいけど。」
 驕らず隔てずポジティブに。抱えこんだ不必要なものは、フィンガースナップやクラップでそっと手放す。

 会いに行きます、と自転車に乗って会場をぐるりと回っての「さよならべいべ」、見切れ参加席でしばし留まる心配りにじんとくる。どんなに有名になろうとも、感謝を表す姿勢よ。


今回も謎CM風繋ぎタイム

 ヒットチューン「きらり」の高揚、ダンスクルーとの息もぴったり。MV やツアーでお馴染みのロボットがスクリーンに大きく映し出され、「キリがないから」のクールなダンス。「燃えよ」ではLAATツアーでも披露したキーターで会場が燃える。
 バンドセットはデビュー後はじめての「風よ」、同じくバンドではこの2公演が初となる「ロンリーラプソディ」。ピアノを奏で歌う藤井風と、虚ろにステージを彷徨う映像の藤井風。どこまでいっても孤独であるという一点においては、実はみなが同じなのだ。

 湘南乃風「恋時雨」を挟んで世界的な人気を決定付けた「死ぬのがいいわ」、サックスでひとしきり魅了しての「Workin' Hard」。
 労働歌から派生してきた音楽ルーツを存分に活かしたゴリッゴリのサウンド、映像では検品ベルトコンベアに流れていくWindyちゃんとの演技が、コミカルな中にもペーソスを演出する。
 ライブで盛り上がり必至の「damn」は、曲中の過去曲引用をコーラスが聴かせる粋なアレンジがいい。

damn定番の変顔

 力むことなくふわっとにこにこしていたかと思えばキレッキレ、フェイクがきまりまくるボーカル。でも印象はといえば、あくまでも自然体。

 バンドもリラックスムードが漂いつつ流石の演奏力、音響もあの広さの野外というのに申し分ないクオリティ。
 ジャジーであったり凝った大人なライブアレンジが光る中で、「旅路」はまさしく青春といった疾走感あるガレージロックテイスト。衣装も高校時代を彷彿とさせる。

まるで満天の星空だ

 「満ちてゆく」の熟した多幸感から、「青春病」の眩いような青さへ。「何なんw」の得も言われぬ一体感。
 「どうせうまく行くんだから、最後には。言うて。」
 「すべては心からスタートするから。思い、感情からスタートするから。あんたがFeelin' Goodな気持ちでいてくれることは、あんたのまわりのすべての世界を変えてくれると思うんで。マジでひとりひとりのパワーが必要なみたい。ここにいるみんなも、これからも、力を合わせて、ポジティブに頑張っていきましょうや。」
 誰かがちょっといい気持ちになれたら。動機は愛、それはずっと同じ。微動だにせず、微塵も変わらない強力な軸。

 「でも次の曲やらんとさ、ワシらの夏、終わらんくね?」
 湧き上がる歓声はそのまま、クライマックス「まつり」の祝祭へと雪崩れ込む。日本の夏を絶妙にモダナイズしたまつりダンスの渦に、映像と現実の花火が華を添える。
 緩急も音もパフォーマンスも、多彩さを存分に楽しんだ。

 優れたミュージシャンを続々とフックアップしているのも彼の素晴らしいところ。今回参加したふたりのコーラスもまたそのあらわれだろう。新進気鋭のASOUNDからARIWA、そしてEmoh Lesはメジャーデビューもしていた元Sky's The Limitメンバーで実力派のシンガーだ。
 前日同様にMichael Jacksonへのリスペクトと見られる静止シーンもあり、俄かにMichael が善導を歌にしていたことを思い出す。身に纏った影響力はつとめて優しく、より良き方へと。ただのパフォーマンスではなく、音楽やエンターテイナーとしての憧れのみでもなく、根源への敬意を強く感じる。

 サプライズや変顔はしても、露悪に一切走らず奇をてらわない。常に楽しませること、ともに楽しむことを掲げ続けている。真っ直ぐな潔さが爽快だ。シンプルなことが、本当はいちばん難しい。
 人々が巻き込まれていく規模が、ぐんぐん大きくなっていく。上昇気流が圧倒的な風の力で空気を巻き上げていくように、彼は上へ上へとその魅力でオーディエンスごとのぼっていくのだ。しかも、あくまでやわらかく。

 音楽愛と人間愛、graceに溢れfeelin' goodな一夜だった。人が心惹かれるすべての理由が同じ空間にある。
 満ちてゆくそれを至福と呼ばずに、いったい何と言おうか。


なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」