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ゆるゆら音楽映画放談

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レビューやつらつらっと書いた感想置き場的マガジン。音楽関係はだいたいここ。
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#音楽レビュー

ride on Mix Wave

ride on Mix Wave

 Deep Sea Diving Club(以下「DSDC」)のメジャー1stEP「Mix Wave」がリリースされて、今日で一週間が経った。
 今回はこの作品について個人的な印象を書いていこうと思う。(文中敬称略)


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 新曲。メンバーの中でG.Vo.谷颯太以外ではただひとり、単独名義の作詞があるBa.鳥飼悟志。日常の中にあるロマンティックの表現がすこぶるいい。甘すぎないギリ

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review 「もういいよ」に燃えよ

review 「もういいよ」に燃えよ

 かつて「言葉の持つイントネーションと旋律がぴたりと重なると気持ちいいんだよ」と仰ったのは、昭和を代表する歌謡曲のひとつをお作りになったあの優しい先生だっただろうか。音楽と歌詞が自然に寄り添う楽曲は、広く愛されるという。だから歌う時もそれを大切にするといいのだ、と。
 その言葉は、なぜか今も不思議と鮮やかに胸に残っている。

 藤井風さんの新曲「燃えよ」、サビの「燃えよ」は「もうええよ」と連なり、

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藤井 風、深化するモチーフとサーガ

藤井 風、深化するモチーフとサーガ

初の武道館ライブの中で発表された、藤井 風さんの新曲『へでもねーよ』『青春病』は、曲調こそ対称的でありながら根底で繋がっている。今回は、その歌詞世界をわたしの視点で紐解いていきたい。

そもそも、1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』に収められた楽曲の歌詞は、そのいずれをとっても「藤井 風」という一個人の思想や心象風景を色濃く反映するものだった。
「誰々さんがどのように恋をして

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review 藤井 風「帰ろう」にみる救い

review 藤井 風「帰ろう」にみる救い

17世紀初頭のヨーロッパ。苛烈な宗教戦争をはじめ数々の闘争が巻き起こった、破壊と変革溢れる混沌の時代。それは、死が身近に存在した時代とも言える。

すべては虚無であるとする「vanitas(ヴァニタス)」
その中にあって常に死を思う「memento mori(メメント・モリ)」
だからこそ現在を大切に生きる「Carpe diem(カルペ・ディエム)」

世相を反映した3つのバロック精神は、ポール・

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review温故知新「Sorrow and Smile」高野寛

review温故知新「Sorrow and Smile」高野寛

良質なポップスの中に見え隠れするsorrowsmileの前にsorrow、このアルバムのタイトルはまさに絶妙。
本作に漂う音楽的な充実感、突き抜けた職人芸や明るさの裏側に通底する、そこはかとない悲しみや迷いの存在。

内省的な歌詞は時に甘く、ちょっとかじり聴いたくらいならばただありふれた光景にも見える。しかしそのありふれた光景こそが大切なのだというモチーフが繰り返され圧巻のラストに連なっていくこと

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review温故知新「The Piano It's Me」SUEMITSU & THE SUEMITH

review温故知新「The Piano It's Me」SUEMITSU & THE SUEMITH

えっ、いま?

そう言われたらどうしよう、そんな、2007年の作品。
しかし稀代の名作。

SUEMITSU & THE SUEMITHと言ってわからない人でも、木村カエラさんの「butterfly」はご存知なのではなかろうか。
あの光さすド名曲、結婚式にかければまず間違いない美しい愛のアンセム、それを作曲したのがソロユニットSUEMITSU & THE SUEMITHの末光 篤さんだ。

メジャ

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review「HELP EVER HURT NEVER」藤井 風

review「HELP EVER HURT NEVER」藤井 風

アーティストを問わず、1stアルバムには独特の煌めきがある。
デビューまでの蓄積、作りためた楽曲のうちの選りすぐり。そして初々しさに満ちている。
逆に言うと、華々しい船出の先はいずれ未開の地だ。ストックにキリがないわけではない。

わたしがここのところずっと聴いているのが、藤井 風さんの1stフルアルバム「HELP EVER HURT NEVER」である。
ここにあるのは漕ぎ出した小舟の可愛らしさ

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