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ルネッサンス期にヨーロッパ最大のカルデラ湖にかけられた呪術

イタリア中部、ローマから100kmほど北にあるヨーロッパ最大のカルデラ湖ボルセーナ北岸に八角形の教会廃墟が残っています。聖ヨハネに捧げられた教会で、San Giovanni in Val di Lago(サン・ジョヴァンニ・イン・ヴァル・ディ・ラーゴ)と呼ばれています。訳すと「湖岸の聖ヨハネ教会」。1563年から1590年にかけて建築家ピエトロ・タルタニーノによって建てられました。

この場所にはそれ以前にも洗礼者ヨハネに捧げられた教会跡があったのですが、1563年ある農民の男の子が洗礼者ヨハネから教会を建て直すよう啓示を受け、この八角形の教会が再建されたと伝えられています。

1800年代までは、それまで町の中心であったこの教会の周りで、6月24日の洗礼者ヨハネの日にお祭りが行われていました。しかし、疫病が流行ったことにより、町は移動され、教会も廃れてしまいました。しかし、4kmほど離れた新しくできた町サン・ロレンツォ・ヌオーヴォで、今日でも洗礼者ヨハネのお祭りが行われます。

San Giovanni in Val di Lago「湖岸の聖ヨハネ教会」

教会内部には、太陽や月を表わした神秘的で謎めいたフレスコ画が残っています。

そして、珍しい八角形の身廊に比べ、とても小さな内陣(上の写真奥)です。まるで八角形の身廊部分の方が重要かのようです。あるいは、まさにそうであったかもしれません。

この八角の形は、ボルセーナ湖に浮かぶ島の一つビゼンティナ島にある、ルネッサンス期を代表する建築家アントニオ・ダ・サンガッロ “イル・ジョーヴァネ”が建てた通称ロッキーナ(小さな城塞)と呼ばれる八角形の聖カテリーナ教会からインスピレーションを受けたと言われています。

でも、実はこの一帯に残る八角形の建物は、それだけではありません。

ビゼンティナ島には、今は廃墟となってしまいましたがもう一つ八角形の教会が島の北部にありました。そして、ボルセーナ湖対岸のカーポディモンテには、八角形のファルネーゼ城塞があります。そして前回紹介したサン・ロレンツォ・ヌオーヴォも八角形の広場。

そして、これらの八角形の建物はボルセーナ湖北岸から、島の上、南岸までを通る13kmほどの一直線上にあります!

Google Mapより 緑の旗印をつけた地点が上から
サン・ロレンツォ・ヌオーヴォの八角形の広場。
八角形の湖岸の聖ヨハネ教会
八角形の聖カテリーナ教会(ロッキーナ)
八角形のファルネーゼ城塞

エトルリア文明などを研究されているジョヴァンニ・フェオ氏によると、湖岸の聖ヨハネ教会の場所には、紀元前のエトルリア時代にはエトルリアの神様に捧げられた重要な神殿があったそうです。そして、これらの八角形の建物は、古典古代の哲学が再び論じられるようになったルネッサンス期に、ボルセナ湖にかけられた呪術だと言います。

ボルセーナ湖は火山活動によってできたヨーロッパで一番大きなカルデラ湖です。今でも、周辺では温泉が湧き、硫黄の匂いがする地点があります。

この地に最初に住み着いた人々は、肥沃な大地に、湧き水、鉱物や豊かな動植物を享受してきました。けれども、それと同時に大地の恵みを与えてくれる女神の伴侶の男神が怒りを表わす時、つまり地震を大変恐れていました。

そのために、八角形の建物を建て、天から女神ヴィーナスのエネルギーを取り入れ、男神の怒りを抑えようとしていたのです。それが、ルネッサンス期にボルセーナ湖にかけられた呪術。

この呪術は時代的に一番新しく、古代よりボルセーナ湖には他に3つの呪術がかけられているそうです。それは、また機会があるときに。。。

呪術なんて科学的根拠の全くないただのファンタジー?

でも、教科書に書かれていることを鵜呑みにするだけの現代人に比べ、古代の人は自然、地球、宇宙のことをもっと理解していたと思います。そして、一流の科学者ほど、神様は存在すると信じています。

関連記事:
中世の時代にかけられた古代より3番目の呪術について

参考文献
Giovanni Feo, Il Tempo di Voltumna, Stampa Alternativa, 2009
https://www.tages.eu/2015/11/16/lago-di-bolsena/
https://vimeo.com/295377234


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