見出し画像

短編小説『山伏』

ここは、BAR『アンコール』
もう一度来て欲しいという意味を込めてつけられた名前らしい
私は、ここの常連の1人の佐条(サジョー)だ
そしてこの店には、少し変わった噂があった。
その噂とは、『死んだ人間が呑みに現れる』という。
今まで通っていたが私は、霊感がある訳でもないので信じていなかったし、雰囲気もいいしマスターとの付き合いも長いのでよく訪れている。
そして今夜は、初めて見る客で20代のいかにもバー初心者ですといった風なお嬢さんと話していた。

女「憧れてたんです!こういうオシャレなお店!1度は来たかったので!」

佐「それは、良かったね。この店は、当たりだよ。旨い酒にいい雰囲気、それにマスターがたまに出すおつまみも美味いんだ。まぁマスターがたまに変な事言うんだけどね?」

マ「サジさん。あまり変な事、言わないでくださいよ?」

佐「お嬢さんは、この辺の人かい?少しイントネーションが西の方みたいだけど。」

女「そうなんです!こっちには、観光に来ました!」

佐「そうか、色々見て回るといいよ。」

女「もううちの地元、めちゃくちゃ田舎すぎて私しか若い子残ってないんですよ!」

佐「みんな都会に?」

女「20代になるとみんな村から消えるんです」

佐「消える?」

女「はい、夏祭りを境に、、私の村は、夏祭りに山伏の力で山の安全を願うお祭りをしているんです。で、その祈りをする巫女役の人がその祭りの数日後には。」

佐「行方不明なのかい?」

女「分かりません、家族の人達は、気にしてないみたいで。それで私も、昨日巫女役やったんですけどちょっと不安に思って今のうちにしたい事しようと思って逃げて来ました!!笑」

そう言いながらイタズラをしてやったぞと恥ずかしそうに笑った。

佐「巫女役の内容を聞いてもいいかい?」

女「やる事って言っても大してないんですけど、祈祷師の人が葉っぱとかバサバサしてその後、神社の御神酒飲んでふわふわとして、神社の裏の祠に運ばれてる間いつの間にか眠って気づいたら終わってました!」

佐「それは、儀式として大丈夫なのかい?」

女「言われてたのは、運ばれたら目を瞑って待つだけだったのでOKなんです!そろそろ次のお店行きますね!」

佐「そうですか。では、ここは出会いをお祝いして私が出しましょう!では楽しんで」

女「いいんですか!?ありがとうございます!!あ、じゃあ後能瀬(あとのせ)に来た時、奢ります!バイバイ!素敵なおじ様!!」

、、、何時もの静けさに戻ったのだった。

佐「風のように去っていったねマスター。」

マ「しかし、後能瀬ですか、、、」

マスターが深刻な顔で考え込んでいる。

佐「マスター知っているのかい?」

マ「この間、ニュースになっていたような気がするのですが。。」

佐条がスマホで検索してみると、、、
『【悲報】○○市後能瀬、神社境内にて地崩れにより山守 美琴(20)山伏 神一(45)2名の行方不明、生き埋めか?』

佐「マスターこの記事かい?確かにここの、、」

マスターに確認しながら下にスクロールしていくと私は、言葉が出なくなった。
その下には、先程の彼女の顔写真が載っていたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?