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遺書No.702 外国人観光客とオニギリとおじいちゃん。

※この記事は2004年7月6日から2009年7月5までの5年間毎日記録していた「遺書」の1ページを抜粋して転載したものです。

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2006.6.10
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俺には嫌いなものが3つある。
前時代的な差別と紛れなき理不尽、
そして、思考停止した普通信者だ。

そして俺の人生を振り返って言えることは、
善悪是非は問わずそれらに対する憤怒こそが、
俺を苦しめ且つ生きるエネルギー足り得たこと。


こんばんわ、みーくんです。




今日、仕事のために自転車で浅草に向かう途中、
隅田川を渡ろうとしたら川辺にあるベンチに、
非常に体の大きな外国人のお兄さんがいた。

大きなリュックを抱えているので、
おそらく旅行に来ている人なのだろうが、
少し様子がおかしい。

よく見ると、
手にはセブンイレブンのオニギリ。

そのオニギリをくるくると回しては、
色々な方向から見たり角度を変えたり。

ラベルにじっと顔を近付けて、
おそらくは注意書きを読もうとしている外国人。

どうやら、開け方が分からないらしい。

開け方を教えようか迷っていたら、
突然、

「ん。」




と、小さな声が聞こえた。
声の主は外国人の隣に座っていた、
日本人のちっちゃなおじいちゃんだった。

おじいちゃんは自分を指差し、
オニギリを指差し、
外国人の目をじっと見て、

「ん」



と、もう一度言った。

どうやら「俺が開け方を教えてやる」という、
ジェスチャーのようだ。

外国人はおじいちゃんを見て
オニギリを見て、
おそらく得心したのだろう。

少し迷ってから、
オニギリをおじいちゃんに渡した。

おじいちゃんはそれをまた

「ん」


と呟いて受けとる。

おじいちゃんはまず、
真ん中のビニール(①と書いてある)を縦、
に途中まで裂き、

「ん?」

と外国人に確認した。

こくこくと頷く外国人。

次におじいちゃんは、
オニギリの両端(②と③)を持って、
横にクイクイと引っ張るジェスチャーをし、
また

「ん?」

と確認。

こくこくこくこくとさらに頷く外国人。


デカい体を丸めて見つめる、
その真剣な顔が可愛い。

おじいちゃんは外国人が頷くのを確認すると、
そこからはちょっと勿体ぶって、

ズッ、

ズッ、

とゆっくりビニールをずらしていく。


「オゥ……オォゥ…オゥ…!」

ビニールの動くのに合わせて、
小さく歓声をあげる外国人。


「んふ……んふふ…ふふ」

そんな外国人のリアクションが嬉しくて、
自然と笑みのこぼれるおじいちゃん。

そしてついに、


バリリッッッ!


「オオオオオオオオゥッ!!」



まっ二つに裂けるオニギリビニール。
ひときわ大きな歓声をあげる外国人。

おじいちゃん、
そんな外国人に満面の笑顔。

ニコーッ。


「アーッハハァー!ヒョウ!(・∀・)」


オニギリが裂けたのが嬉しくて、
仕方の無い様子の外国人。

テンションが上がりまくってるのか、
おじいちゃんの肩や腕を、
ベタベタベタベタと触りまくる。


「んっふふ、んふふふふふ」


クシャクシャの笑顔で、
触ってくる外国人を肘でツンツンとつっつき返すおじいちゃん。

本当に幸せそう。




なんだか今日の一日、
俺もずっと笑顔だった。

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2022.6.7
毎日遺書を書き始めた当時702日目の投稿内容。
かなり懐かしいな。この日の様子は今もハッキリ覚えてる。


過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。