遺書No.702 外国人観光客とオニギリとおじいちゃん。
----------------------------------------
2006.6.10
----------------------------------------
俺には嫌いなものが3つある。
前時代的な差別と紛れなき理不尽、
そして、思考停止した普通信者だ。
そして俺の人生を振り返って言えることは、
善悪是非は問わずそれらに対する憤怒こそが、
俺を苦しめ且つ生きるエネルギー足り得たこと。
こんばんわ、みーくんです。
今日、仕事のために自転車で浅草に向かう途中、
隅田川を渡ろうとしたら川辺にあるベンチに、
非常に体の大きな外国人のお兄さんがいた。
大きなリュックを抱えているので、
おそらく旅行に来ている人なのだろうが、
少し様子がおかしい。
よく見ると、
手にはセブンイレブンのオニギリ。
そのオニギリをくるくると回しては、
色々な方向から見たり角度を変えたり。
ラベルにじっと顔を近付けて、
おそらくは注意書きを読もうとしている外国人。
どうやら、開け方が分からないらしい。
開け方を教えようか迷っていたら、
突然、
「ん。」
と、小さな声が聞こえた。
声の主は外国人の隣に座っていた、
日本人のちっちゃなおじいちゃんだった。
おじいちゃんは自分を指差し、
オニギリを指差し、
外国人の目をじっと見て、
「ん」
と、もう一度言った。
どうやら「俺が開け方を教えてやる」という、
ジェスチャーのようだ。
外国人はおじいちゃんを見て
オニギリを見て、
おそらく得心したのだろう。
少し迷ってから、
オニギリをおじいちゃんに渡した。
おじいちゃんはそれをまた
「ん」
と呟いて受けとる。
おじいちゃんはまず、
真ん中のビニール(①と書いてある)を縦、
に途中まで裂き、
「ん?」
と外国人に確認した。
こくこくと頷く外国人。
次におじいちゃんは、
オニギリの両端(②と③)を持って、
横にクイクイと引っ張るジェスチャーをし、
また
「ん?」
と確認。
こくこくこくこくとさらに頷く外国人。
デカい体を丸めて見つめる、
その真剣な顔が可愛い。
おじいちゃんは外国人が頷くのを確認すると、
そこからはちょっと勿体ぶって、
ズッ、
ズッ、
とゆっくりビニールをずらしていく。
「オゥ……オォゥ…オゥ…!」
ビニールの動くのに合わせて、
小さく歓声をあげる外国人。
「んふ……んふふ…ふふ」
そんな外国人のリアクションが嬉しくて、
自然と笑みのこぼれるおじいちゃん。
そしてついに、
バリリッッッ!
「オオオオオオオオゥッ!!」
まっ二つに裂けるオニギリビニール。
ひときわ大きな歓声をあげる外国人。
おじいちゃん、
そんな外国人に満面の笑顔。
ニコーッ。
「アーッハハァー!ヒョウ!(・∀・)」
オニギリが裂けたのが嬉しくて、
仕方の無い様子の外国人。
テンションが上がりまくってるのか、
おじいちゃんの肩や腕を、
ベタベタベタベタと触りまくる。
「んっふふ、んふふふふふ」
クシャクシャの笑顔で、
触ってくる外国人を肘でツンツンとつっつき返すおじいちゃん。
本当に幸せそう。
なんだか今日の一日、
俺もずっと笑顔だった。
過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。