所在なく桜が舞っている
高架を走る電車の窓際に立って景色を眺めると、ビルや家屋の、それぞれ大きさも形も違う四角形がひしと肩を寄せた街の姿がよく見える。
東京の土地はどこも残らず、誰かが何かのために使っているようである。
しかし、この季節、それらの隙間で度々目を引くものがある。
あたかもコンクリートの継ぎ目から生えるタンポポのように、建物の合間にピンク色の柔らかい房が覗いている。
思えば不思議なことにこの花は、街に君臨する実用性の規律を割って、食う実もつけずに街のあちらこちらに咲いている。役割を問