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映画 #3 ムーンライト

こんばんは。毎日1つ投稿をすると言っていましたが、久しぶりの投稿になってしまいました。


今日は、こちらの映画『ムーンライト』について書いていこと思います。


製作は2016年。アカデミー賞で8部門にノミネートし、3部門を受賞した作品で既に観た方も多いと思います。製作総指揮としてブラット・ピットが参加していることで注目もされています。


感想としては、観終わってから、じんわりと感じるものがありました。


すべてがハッキリと描かれていくわけではなく、見逃してしまうような細かい描写があるので自分で考えていくことでこの映画を楽しめると思います。

楽しめると言っても、華やかでワクワクして心躍る映画!ではないですが、後味の悪さはなくタイトルの様に"月の光"の様な温かさのある映画です。


ちなみに、後から知ったのですがタレル・アルヴィン・マクレイニーによる "In Moonlight Black Boys Look Blue" を原案とした作品だそうです。


作品の冒頭で、主人公シャロルの父親的存在だったフアンがシャロルに言ったセリフが繋がっています。海で老女に会い、その老女が自分に言った言葉として、"月の光の下では、黒人の男の子がブルーにみえる"と。


なので、この映画では、しばしば色の使い方も注目してみてほしいと思いました。私が印象的だったのは、シャロルが思いを寄せた男性が蛍光灯の光の下でブルーに映っていたことです。そこのブルーの使い方にはどんな意味が込められているんだろうと思いました・・


あらすじ

少年期、青年期、成人期の三部構成で、シャロンという一人の成長を描く物語。様々な問題「性別」、「人種問題」、「薬物」、「貧困」などのマイノリティな部分にスポットを当てシャロンという人間がどう生きていくのかを、静かに描いていきます。

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三部構成の間に(あえて?)描かれていない大きな出来事が2つあります。どちらも感情を揺さぶるような激しい出来事ですが、そんな大事な出来事を描かなかったのは、わざとだと思います。

なぜなら、この映画は先ほども言いましたが、全体が月の光のように静かに、夜の海のように進んでいくから、感情的になる激しいシーンを入れなかったのではないかと思うからです。


そして、シャロンは感情をほどんど表に出しません。口数が少なく笑っているシーンはほとんどないです。そのおかげで、最後にとても楽しそうに笑っている場面が際立ち非常に印象に残りました。(それは最後でも触れたいと思います。)


Ⅰ: little (少年期)


第一章はシャロンの少年期です。痩せた黒人の少年が"リトル"というあだ名をつけられいじめられ、「おかま」と言われ悩んでいるシーンがあります。

父親的存在となったフアンと出会ったのもこのころです。

シャロンの実の母親が薬物の問題を抱えていてネグレクトのようなシーンがあります。フアンがシャロンをその悲しい現実から救い出し進んでいくストーリなのかと思いきや、フアンは売人でシャロンの母はそこのルートで薬物を手に入れているという衝撃の展開でした。


ですが、フアンは悪者ではないし、その問題に直面したときに見せた、いら立ちや悔しみが、貧困で売人になるしかない地域で生活することという社会問題があることを思い起させました。


また、フアンはシャロルに、"自分の道は自分で決めろよ、周りに決めさせるな"という指針を与えます。きっとシャロルはフアンに言われたことを胸に大切にしまっていたと思いますが、大人になりフアンと同じ売人の道を選んだのはどういう意味なのでしょう。


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私には大人になったシャロルが、フアンそっくりに見えました。シャロルは自らの覚悟で、父親のようなフアンの背中を追いかける道を選んだのでしょうか。疑問がたくさんです。


ここの章で印象に残ったシーンがあります。それは、シャロンとフアンのダイニングでの会話です。シャロンは、フアンの家のダイニングで座ろうと椅子を引きます。ドアの前の席に座ろうとしたシャロンにフアンが「そこの席に座るな!」と注意します。「ドアに背を向けるな。襲われたら困るだろ」と、シャロンを反対側の席に移動させます。そして、「ここなら全体が見渡せる」という一連の流れがありました。

黒人への差別社会問題に着目したシーンだなと思い非常に印象的でした。


Ⅱ: Sharon (青年期)


ここでは、シャロンの恋が描かれています。黒人の同性愛というのはほとんど題材にさせることはないようで、また、そのような作品が賞を受賞することはないという映画界の暗黙の了解があるみたいです。

ですが、この作品は、「ラ・ラ・ランド」を抑え受賞したようで、そういった社会問題を題材としたものという意味でも注目されていたようです。



シャロンはリトルというあだ名で呼ばれていましたが、彼が恋をしたケビンは"シャロル"と名前で呼びます。それがこの章のタイトルが、"シャロル"となった理由じゃないかなと私は考えます。この瞬間にシャロルは恋に落ちたんじゃないかなあと。

想いは通じ合ったのですが、色々あって二人は結ばれることなく第2章は終わります。

ネタバレになるので詳しく書きませんが、この章の二人の恋はとても切なく悲しいです。


Ⅲ : Black


先ほどの章で、ケビンがシャロルを名前で呼んだと書きましたが、ケビンは"ブラック"というあだ名でも呼んでいます。

男同士があだ名で呼ぶかよと嬉しそうにふざけていた二人が印象的です。


この章では、大人になったシャロルが母親を許すシーンがあります。シャロルは感情を表すことがないですが、母親と話し、涙を流します。そして彼女の謝罪を受け入れ、母が流した涙を拭います。最悪な母親を許すという愛が静かに描かれています。

また、十年以上音信不通だったケビンから連絡があり再会します。

ケビンに会う前に、車の窓ガラスに映る自分の髪型を確認するシャロンの姿はちょっと共感しました(笑)ありますよね、そういう時。(笑)


再会したシャロンは、"これまで自分に触れたのは、一人だけだ"と告白します。

10年以上の月日がたっているし、ずっと音信不通だったのに、相当な純愛だと思います。どうか結ばれてほしいなと思いました。


そしてここでは、最初にも書いた通り、シャロルがとても楽しそうに笑っているシーンがあります。これまでのストーリーが悲痛なことが多かったのでここでのシャロルの笑顔は温かい気持ちになりました。


終わりに


観終わった瞬間は、結末がはっきりとしていないから、もやもや~と思いましたが、色々と調べたりしていくことでじんわりと来るものがありました。


普通の人が人生のうちで起こる何倍もの困難や悲しみに直面しても、決して腐ることないシャロルの生き方や、何も主張しないただそこにあるだけの"愛"。そのようなものが伝わってきました。


タイトルの月の光っていうのも、この映画にぴったりだと思いました。


たくさんの社会問題を含んだストーリーもそうですが、映像の綺麗さや、色の使われ方などもゆっくりと楽しめると思うので観てみてほしいと思います。

それではおやすみなさい。












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