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愚痴は吐き出すもの、悪口は飲み込むもの

世の夫婦は多かれ少なかれ悩みや問題を抱えている。
どんなに幸せそうに見えるふたりでも、その内情は他者には分からないものだ。

ひとりで不平不満を抱えたまま我慢していると爆発してしまったり、心を病んでしまったりする場合も。

そこで自分の話を友人に聞いてもらったり、SNSに思いを吐露することで気分をスッキリとさせるのは有効な手段だ。
根本的な解決に至らなかったとしても、また新たな気持ちで生活を継続できるのならそれもひとつの方法といえる。

が、しかし。
愚痴ではなく相手の悪口を言ってスッキリするのはよろしくない。

それは自分で自分を貶めているのと同じだからだ。



愚痴と悪口の違い

辞書でそれぞれの意味を引くとこう書いてある。

【愚痴】
言っても仕方がないことを言って嘆くこと。

【悪口】
他人を悪く言うこと。また、その言葉。わるぐち。あっこう。

旺文社国語辞典

波風を立てずに一定速度で航路を進むだけだが、言えば気持ちが楽になるのが愚痴。
他者を攻撃して爽快な気分になるが、嵐を呼んで自らを海中に落としかねないのが悪口。

「口を開けば愚痴ばかり」という人はあまり褒められたものではない。
とはいえ、友人やネット上のコミュニティにたまに吐き出す程度なら、むしろ精神衛生上においては推奨される。

一方、悪口は一時の快楽でしかない。
私は家で野球観戦をしている際、見逃し三振した選手に「打つ気ないなら野球なんかやめちまえ!」と酷い悪口を言っているが、大変よろしくないことだ。
あとで「ごめんね川瀬」と心の中で謝っている。

もっと身近な、たとえば妻や夫の悪口を人に言ったりネット上に書くことで快感を得る人もいるだろう。
その結果、どうなるか。



元ラガーマンのミッチー

確か10年ほど前。
とある既婚男性とお付き合いしていた時のことだ。

彼は「学生時代に及川光博がラグビーをしていたら多分こんな感じ」といったガッチリした風貌で、中々のイケメンだった。
名前をミッチーとしておく(AYAさん方式を採用)。

ミッチーは日頃から奥様に不満を抱いており、私は「ガス抜きになるのなら」と思って愚痴を聞いてあげていた。
最初の頃こそ「それは酷いね」などと彼に同意していたのだが、来る日も来る日も愚痴のオンパレード。

終いにはどう考えても悪口でしかないようなことまで口にし始めた。
さすがに閉口した私は、次第に彼の「妻への評価」に疑問を持ったのだ。

たとえば、ミッチーが「娘さんの入学式に遅刻した日の話」の場合。
元々入学式に仕事の予定が入っていた彼は、前日遅くまで残業することで入学式当日を休みに変更できた。
ヘトヘトに疲れて家へ帰り、そこから爆睡。

翌朝。
目が覚めた時には式の開始時間をとっくに過ぎており、妻と娘の姿もない。
母子は「入学式にお父さんを置いて行く」という選択をしたのだ。

ミッチーは言った。
「なんで一言声掛けて起こしてくれないんだよ。入学式だぞ?ありえないだろ。最低だよあのアマ」

最初に聞いた時は私も「ミッチー可哀想」と思った。
が、その後も次々と出てくる彼と奥様のエピソードを聞くに連れ、「これは彼も悪いのでは」と思い始めたのだ。



物事は多角的に見る

まずミッチーは寝坊が多い。
次に奥様に対して「報連相」が少ない。
更に致命的なのはお互いの意見交換をほとんどしていないということだ。

これは完全な私の妄想なのだが。
奥様は元々、夫が仕事の日だから入学式は自分ひとりで出席しようと決めていたのではないか。
出掛ける前に様子を見ると、夫はぐっすり寝ているのでそのまま寝かせてあげ、母子だけで出席した。

真相は分からないが、私は徐々に奥様の肩を持つようになったのだ。
彼の悪口に対して「でも奥様はそれがベストな選択だと思っていたのかもよ」などと。

不倫相手の奥様の味方をする女。
もう、わけが分からないカオス状態。

「妻に虐げられる自分」を慰めてほしかったミッチーは、私が奥様に肩入れするようになってから引き始めた。
私も人の悪口ばかり聞くことに疲れ始め、お互いにフェードアウトしてこの関係は終了したのだ。



自分自身で選択したこと

世の中には「旦那死ね」みたいなことを臆面もなく言う妻もいる。
積年の恨みつらみがそうさせているのだろうとは思うが、しかしだ。
私はどうしても言いたい。

じゃあなんで離婚しないの?

いや分かっている。

経済事情。
子供の養育。
家族の介護。

それぞれに事情があり、離婚したくてもできない夫婦は多い。
ただ、もうひとつ言わせて頂くなら。

その人と結婚するのを決めたのはあなたですよね?

自分が生涯一緒にいると決めた相手を罵倒するということは、「自分は見る目がありません」と言っているのと一緒だ。
結局自分を貶しているだけである。

さっさと認めて離婚するなら潔い。
しかし結婚したままパートナーの悪口を周囲に言うのはハッキリ言ってダサいし、独身に対して結婚意欲を減少させ、日本の少子化を促進する行為でしかないだろう。

親しい人に愚痴を打ち明けるのなら良い。
けれど対外的には「良いパートナーです」という体面を保つのも既婚者の役目ではなかろうか。

悪口は飲み込んで、吐き出すのは愚痴だけでお願いします。


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