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好きなことで食べていきたい人達

ここ数年「好きなことして生きていく」みたいなキャッチコピーが増えた気がする。
怪しいセミナーでは相変わらず「夢を叶える方法教えます」といった謳い文句を使っているし、そこに人が集まり高額のセミナー料を落としていく。
その一方で、「好きなことは仕事にしないほうが良い」という意見も耳にする。

一体どちらが正解なのか。



「好きなこと」で稼げる時代

2021年3月に第一生命保険が行った「大人になったらなりたいものベスト10」というアンケート調査によると、小学生男子の部の2位にYouTuberがランクインした。
ちなみに小学生女子の部ではYouTuberがベスト10圏外だったところから、女子のリアリズムな視点がうかがえてちょっと切ない。

YouTubeのパートナープログラムが一般的に解放されたのが2011年なので、世間にYouTuberが認知されるようになってから10年ほど経つ。
その間にTikTokが出現したり「顔出ししなくても良い」Vtuberが現れたり、ライブ配信で投げ銭をもらうライバーが台頭したりと、ネットで手軽にできる職業がどんどん増えていった

さらに「鬼滅の刃」が社会現象を起こしたことにより声優の認知度が高まり、アニメ関連の仕事も以前より特殊な職業ではなくなりつつある。

昔は「好きなことを仕事にする」のは才能に恵まれた一部の人の特権だったが、今はチャンスされあればそれが叶う。
だから「好きなことを仕事にする」はもう夢の話ではなくなったのだが…。



現実は厳しい

数ヶ月前に見たドキュメンタリー番組に、声優志望の30代の女性が登場していた。

彼女は地元で安定した職に就いていたが、趣味で所属していた劇団で「声を褒められた」ことに自信を持ち、単身上京して声優を目指す。
しかしオーディションにまったく受からない。

自分が認めてもらえない原因をどうしても知りたかった彼女は、無謀にも自分を落とした事務所に「落ちた理由」を聞きに行く。
そこで面接担当者から聞かされたのは、容赦のない「事実」だ。

「例えばお医者さんになりたかったら医師免許を取るために勉強しますよね?弁護士になりたかったら弁護士資格を取るために頑張りますよね?でも声優は資格が要らないんです。だからあなたのように安易に声優を目指す人が多いんです」

先程挙げたYouTuberなどの職業の共通点は、資格が要らないことである。
勉強しなくても、知識がなくてもなれる仕事。

別に「だから間違っている」というわけではない。
ただ努力をした証が見えづらいのだ。


好きを仕事にしたくない人もいる

10代の頃、私には橋本くんという走り屋の知り合いがいた。
当時「頭文字D」という漫画が流行っていて、「私も走り屋と付き合いたい!」という短絡的で幼稚な発想から一緒にいたのだ。

彼はカーメンテナンスが得意で、自前で車検ができるほどの腕前だった。
しかし橋本くんは車と全く関係のない仕事に就いていたのだ。

ある日、彼の古いローレルに乗りながら「車関係の仕事にすればもっと楽しいんじゃないの?」と聞いてみた。
すると「うーん」と唸った末にこんなふうに答えたのだ。

「車いじってる時って、スゲー楽しいんだけど、それって息抜きなんだよね。だってこれが仕事だったら他の息抜き見つけなきゃなんねーじゃん」

橋本くんにとっては、好きなこと=息抜きだった。
だから仕事と趣味を完全に分けていたのだろう。

たとえ技術やスキルがあっても、それを仕事にすれば責任や重圧が生じる。
元々好きだったことも、仕事にした結果、やがて嫌いになるかもしれない。



仕事を好きでいられるかどうか

お笑い芸人「東京03」の飯塚さんが、ちょっと良いことを言っていた。

「好きなことは仕事にしないほうが良い、とか聞くじゃん?あれ絶対違うと思う。だって俺お笑いが好きで仕事にしたけど、すごい楽しいもん。全然後悔してない」

好きなことをして稼いでいる人の努力というのは、とても見えづらい。
何かと批判のある前澤社長も、人知れず努力と思考を重ねたから成功したのだと思う。

「これで生きていくぞ!」という気合いだけではダメなのだ。
成功するための努力とアイデアが、好きなことをして生きていくためには必要不可欠である。

そして「好きを仕事にする」が全てではない。

最初は嫌いだった仕事も、続ける内に好きになることだってあるのだ。

好きを仕事にできた人も、できなかった人も、結局続けられるかどうかが一番大切なのである。

あなたは今の仕事が好きですか?
嫌いなら何故その仕事を続けているのですか?
お金のため、家族のために辞められないのなら、今の仕事をもっと好きになってみてはどうですか?

好きを仕事にするって、仕事を好きになる、と同じ意味ではないでしょうか。

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