まゆ毛の内側に鼻水がくる病気
左の眉毛のあたりが、ぷくーって腫れてる人が来たんですよ。
主訴はその腫れじゃなくて、通ってた眼科が閉院したということで、うちで白内障手術してほしいと来院されました。
たしかに白内障自体は結構進行してたんですが、散瞳はいいのでまあ手術はできるやろうと、手術日の予約とったりしてました。
しかし、まゆ毛のあたりの膨らみが気になる。触っても、むにゅってした感じで、発赤もないし、痛みも言われない。
腫瘍?とりあえず画像とるか?
ちょうどなんか奇跡的にグッドタイミングで教授がうちの病院に来てたので、
「すみません、ちょっと診てくれませんか?」
とお願いしました。
うちの教授、ドラマに出てくる教授とかと違ってめちゃくちゃいい人なので、二つ返事でOKしてくれました。
「これは蜂窩織炎(ほうかしきえん)だね。MRIとって、入院して点滴だね。」
蜂窩織炎?痛みなしで、発赤もなしで蜂窩織炎??
蜂窩織炎って、皮膚の下の脂肪とかで細菌感染が起こって、赤くなったり、痛みが出たり、熱が出る病気なんですよ。
今回はどれも当てはまらない。触った感じのむにゅってした感じは確かに蜂窩織炎のそれだけど。
とにかく言われた通り、すぐにMRI撮りました。
そしたらもう凄い。
上顎洞から鼻腔、前頭洞までぜーんぶ膿みでぎっしり。
通常僕たちの頭をCTとかMRI撮ると、お鼻のところは空気が通るために真っ黒に映るんです。その他、上顎洞って言って、両目の下辺りの骨の中に空洞があるんですよ。
同じような感じで、前頭洞という、おでこの骨の中にも空間がある。
これらの空間を副鼻腔って言って、CTやMRIでは黒く映るんです。
それが全部まっしろ。
ウルトラ副鼻腔炎(からの蜂窩織炎)だったんですね。
まゆげの辺りのぷくーっとした腫れは、おでこの膿みがはみ出して、まゆ毛の下まで来てたんですね。僕は皮膚の上からそれを触ってたようです。
こりゃ耳鼻科にも相談だ!とすぐにコンサルトしました。
そしたら骨の一部が膿で破れてるから、うちで手術はできない。大きい病院に紹介して手術してもらうよ。と。
早々に紹介状書いて転院となったのですが、なんで教授はすぐ分かったのか気になりました。
「発赤も痛みもないのに何で蜂窩織炎だと分かったんですか?」
そしたら、
「感触と部位、あと強めに押したら痛がったからだよ。」
と。なるほど、もう少し強めに押さないと痛みが出ないことがあるんだ。
「発赤が無いのはどうしてですか?」
「そういうやつもあるんだよ。」
そんなもんなのかと思っていたら、近くにいた超ベテランの看護師さんが、
「貧血だからじゃないですか?」
と。とりあえず入院して抗生剤行く気満々だったので、採血検査もしてたんですよね。
そしたら確かに貧血でした。
実際貧血で蜂窩織炎の発赤が薄くなるかどうかって文献的な証拠とか僕は知らないんですが、妙に納得がいきました。そりゃ赤血球少ないと赤くならんかもしれん。
ベテランの先輩方の経験ってやっぱすげーなーと思った出来事でした。
とりあえず副鼻腔炎&蜂窩織炎がよくなって帰ってきたら白内障手術がんばろうと思います。
ではまた。
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