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#3ホームレスなおフランス

割引あり

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第一回
第二回

ホームレスな、おフランス

日本人が「フランス」と聞くと、優美で甘い憧れが真っ先に浮かぶ。

しかし実際に私を待ち構えていたのは、ただのホームレス極貧生活だった。

渡仏まであと2ヶ月ちょっと!という時に、将来の旦那さまは一生懸命2人で暮らす家を探していた。フランスは日本のような「不動産屋」というものがなく、不動産サイトに載っている家に自分で個々に連絡を取って見に行かねばならない。

まずここで大きな関門がある。

連絡が返ってこないのだ。そしてたまに返ってきても、すでに誰かのものになってしまっている。仕方がないので予算よりも高めの物件まで視野に入れなければならない。(日本円で22〜24万円くらい!ヒィっ)

盛らずに言って20件連絡して2~3件から返事があり、実際に見に行けるのがそのうちの1件くらいだったりする。

しかもそれを平気な顔で「内見は平日の12時」とか要求してくるもんだから、彼は貴重な有休を家探しの旅に使わねばならない。かわいそうに。

ようやく、見に行けてなかなかの気に入った物件があったとしてもまた次の大きな関門がある。

「家賃に給与が見合っていない」と断られるのだ。

オーナーは笑顔で、そして冷たくこう言い放つ。
「もう少し安いところ探すことをおすすめするよ!」

………殴ってやr…
(安いのあったらそっち選んでんだよ…無いから予算上げてんだろうが)

もちろん未払いに困るのはオーナーだから考慮に入れたいのは分かる。でも同居人(私)の収入も少しは加味してくれ。

研究者はそんなに世界の悪なのか?
毎日毎日、次の世代の科学のために頭を使い工夫を凝らし、世界中みんなのワクワクを作っている素敵な仕事なのに、お金がもらえない。お金がもらえていない証明をすると、家が借りれない。家が借りれないと恋人とただ暮らすことすらできない。

フランス渡航まで残り3週間を切っても住まいは見つからないままだった。
これは本格的に「ステキな段ボールのお城をどう建築するか?」をいよいよ考えねばならない時が来たようだな。

屋根はかわいい三角がいいよね。六角形の柱とかおしゃれかしら。公園の目星もつけないと。お花が咲いているところがいいわ。そういえば、日本と同じように八百屋さんで段ボールってもらえるのかしら。

「すみません、段ボールを3つもらえますか?」このフランス語だけは覚えておかないとな。

Excusez-moi, puis-je avoir trois boîtes en carton, s'il vous plaît ?
よし、完ぺきだ。

優雅な駐妻ならぬ、糟糠の妻

そもそも、海外で暮らすということはただでさえ、たくさんのリスクがある。治安などの心配はもちろんのこと、医療保険はどうなる?税金はどうなる?住宅は?物価は?

これらの問題は全て、サラリーマンならば優雅でお気楽なものだ。

事務的なことはほとんど会社がやってくれて、その上赴任手当で給料はほぼ倍くらいになったりする。家賃補助どころか全額負担してくれる所も多い上に、いい所を探して手配しておいてくれる。もちろん当然飛行機代だって出してくれる。しかもマイルは自分のものさ!だから旅行の時はそのマイルでだいたい行けちゃう。わ~い!

奥さんは?というと、ただついて行けばいいだけで、メイドさんや運転手さんまでもれなくセットだし、子どもがいれば幼稚園代だって会社が出してくれる。エステや習い事、お買い物三昧してても貯金ができちゃう。

皆が憧れる優雅な駐妻の爆誕である。やったね!

さて、比して研究者を見てみよう。わくわく。

渡航費、家賃は全て自分で出す。これだけで相当な痛手。さらに事務手続き、家探しは全て自分でやり、人種差別に合いながら現地で携帯をゲットし、何か月もかけてようやく現地の銀行口座を手にしたのもつかの間、生活費でほとんど預金が消える。赴任手当?なんすか、それ。現地採用の彼には縁遠い響きで、ボーナスなんてないので余剰分で結婚指輪を買える!という発想も持てない。

現在の格安シェアハウスの家賃を払い、生活用品を整えたクレジットの引き落としで悲鳴を上げ、ついに彼からLINEが来た。

「ごめんなさい…資金が底をつきました…お金をください…」

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