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【海のはじまり】第12話(最終話):こまかすぎる感想

よかった。本当に観てきてよかった。
12話+特別編+スピンオフと、「海のはじまり」をじっくりと見守ってきた私たち視聴者の気持ちをまるっとあたたかく包み込んでくれて、ごほうびみたいな幸せな瞬間も見せてくれた、本当に大拍手の最終回でした。
ただただ幸せで、よくわからない涙がずっと流れっぱなしの最終回でした。
この夏、この物語に出会えてよかった。

食べて、眠る。
生きて、つながる。

どんな幸せも、どんな後悔も、どんな間違いも、全部生きてこそであり、健やかでいるからこそ、人と向き合い、自分と向き合い、悩んで流れて生きていくことが出来る。
作品全体を通じてたくさんのメッセージが込められた作品だったけれど、最後の最後にストンと心で思ったものは、そんなシンプルなことでした。
でもそのシンプルなことが、難しいんですよね。
そういう難しいことを軽々とドラマチックに乗り越えていってしまうキャラクターが一人もいなくて、みんなが不器用にもがいてなんとか生きてる、そんな人たちの物語だったから、好きでした。
さまざまな境遇で必死に生きるすべての人へのエールが、丁寧に丁寧にずっと紡がれてきた、そんな物語だったと思います。

最終回放送前に、主演の目黒蓮さんが更新されたInstagram、見ましたか?
この投稿が素晴らしくて。
最終回を観る前に、この投稿を読んで、もう泣いていました(笑)


作品や役柄への理解度が高く、それをきっとしっかりと自分のお腹に落とし込む力があって、さらにはお芝居の表現やこうした言語化を出来る力があって。
その「力」って、技術的な力ではなくて、心だと思うんです。
きっと本当に丁寧に、真摯に、ひたむきに、ずっと作品の真ん中に立ってやって来られたんだろうな。
こういう人が心をつかって創り届けてくれるからこそ、こんなに心を持っていかれるような、そしてじんわりと心に染み入るような作品が出来るのだなと感じました。

じっくり視聴する人もいれば、流し見する人もいる、見ない人もいる、"地上波の月9で目黒蓮主演!"ということだけでさまざまな意見が寄せられる作品、きっと多くの人の心に残った一方で、どうしても理解出来ない人や拒絶する人もいただろうし、きちんと観なければわからない簡単ではない作品ではあったかもしれないけれど、少なくとも出演者の方々を含めた制作サイドの皆さんの、登場人物一人、台詞一つ、感情一つに対する理解が本当に深くて本当に高いレベルで一致していたのだろうなと思います。
ちょっとした小物、食事、衣裳、口調、表情、仕草、その一つ一つすべてに1mmも手が抜かれていなくて、考え抜かれていて、愛があって、その解釈や温度が全員で一致しているからこそ、ぶれずにずっとそこにこの作品ならではの世界観があった。
きっと本当にたくさんの心が注がれて紡がれた物語だから、細かいところまで1シーン1シーン観るのが愛おしくて。
出来るだけその世界を知りたくて、近づきたくて、受け取りたくて、あれこれと考えながら視聴してきた日々が本当に楽しかったです。

今回「海のはじまり」に関して自分の書いた記事をマガジンにまとめているのですが、なんかもうすでに30本くらい記事があるんです。
話数に対して記事数おかしいですよね?(笑)
愛が重すぎて(笑)
こまかすぎる感想、第12話、ラスト。
すみません、今回も長々と語らせてください!!



番組情報

「海のはじまり」公式サイト


第12話 夏くんへ

三人家族

"もしも"の暮らしの回想シーン。
朝、おにぎりを握る水季と、起きてリビングにやって来た海。
テーブルには3人分の朝食。
牛乳と、トーストと、ジャムと、スクランブルエッグと、ウィンナーと、レタスとトマト。
「ママ髪やって」と頼む海に対して、「手離せないからパパにやってもらって」と水季。
ネクタイを締めながらリビングにやってきた夏が海の髪の毛を三つ編みにしてやろうとすると、「パパやだ。ママがいい。」とごねる海。
夏が髪の毛を結ぼうとすると、笑っていやだと首を振る海。
笑い合う三人家族の、しあわせな朝。

え、え、え、もう号泣(涙)(涙)(涙)

この直後、水季と夏の目が合って、二人の笑顔がふっと消えそうになった瞬間、画面が真っ暗になり、現在に切り替わり夏が一人で目覚めるシーンになるので、これは夏が見ていた夢だったのかな。
水季も夢見たことがある景色だったようにも思うし、私たち視聴者が見たかった景色でもあって。
すごくあたたかい気持ちになると同時に、やっぱりどうしたってもう水季はそこにいないという事実に胸が締め付けられるような、そんなオープニングでしたね。

"もしも三人家族だったら"の設定もとても細かくて。
水季が握っていたおにぎり、海との二人暮らしの時は具材の無い塩むすびだったけれど、今回は梅干しや漬物の具材があって。
暮らす家も、水季や夏がそれぞれ住むアパートよりはグレードアップした家族暮らしらしいマンションで。
きっと共働きなのかな、わからないけれど、二人の親で働き築いた三人の家として、経済的にも現実より少し良い環境にあることが伺えて。
紙粘土で作られたような家族三人が並んだお人形が置いてあったり、海モチーフのインテリア、壁には写真。
もしも三人で暮らしていたら、こんな未来があったのかなと、リアルに想像させるシーンでした。

それぞれの朝

アパートで一人目覚めた夏。
床に敷いた布団に寝ていたものの、隣のベッドには海の姿は無く、代わりに水色とピンク色のイルカがお布団をかぶっています。
さきほどの回想シーンからの、この一人きりの描写。
水季と海の2ショット写真にフォーカスが合うことで、一人になってしまった夏の姿が強調されました。

一方、南雲家で目覚めた海、「夏くん」と呟き目をこすりながらリビングに現れます。
「いないよ」と翔平さん、「自分が帰らないって言ったんでしょ」と朱音さん、何も言えずに俯く海ちゃん。

この物語のテーマのひとつとしてずっとあった「選択」。
海ちゃんは夏と二人で暮らすという選択をして、でもいざ暮らしてみたら、その結果は想定していたものとは違って。
その選択は間違いだったのかもしれないと思ったからこそ、南雲家に戻るという選択をした海ちゃん。
夏くんの家には戻らないことを選択したけれど、その結果もやっぱり寂しくて。
海ちゃんなりに自分の頭で考えて意思で決めてきた選択、だからこそ、目覚めて夏くんがいなくて寂しかったけれど、何も言えない海ちゃんです。

一方、月岡家、ゆき子さんが丁寧にロールキャベツを調理中。
「夏んとこ行くの?大和には大和の好きなごはんつくるから。夏のごはんだなと思って。」と和哉さん。
夏くん、ロールキャベツ好きなんだね。
ベーコンを丁寧に巻いて煮込んでいるあたり、本当にゆき子さんってこうやって手間暇かけたお料理を作る方で。
コロッケの描写でもあったように、別に手間暇かけた手作りがいいとかお惣菜が悪いなんてことは全くないけれど、ひとつの愛情のかたちとして、ゆき子さんの手料理というのはいつも月岡家にあって、この家族をつないでつくってきたんだろうな。

また、コロッケとかロールキャベツとか、手間暇かけた手料理の中でも、夏や大和が小さい頃から美味しい美味しい言って食べてたんだろうなと、そういう温もりが伝わってくる、絶妙で素晴らしいチョイス。
すき焼きとかだと特別過ぎるし、手作りスイーツとかでもない、男の子二人が子どもの時から大きくなっても好きだったもの、そして家族みんなで美味しいねって笑って食卓を囲んで食べていたんだろうなっていう風景が想像出来るもので、とても好き。
ロールキャベツ、美味しそうでした。

おにぎり

南雲家、縁側に寝そべったままで朝食を食べようとしない海。
食べたくないとごねる海を見て、海のお茶碗に盛ったごはんをおにぎりにしてやる朱音さん。
このおにぎりを握る時の朱音さんの表情、何かを思い出しているような、少し苦しそうな、そんな表情です。
これ、水季が亡くなった日の朝のことを、きっと思い出していたんですよね。

握ったおにぎりを海に差し出す朱音さん。
海の横に一緒に寝そべりながら、海に話しかけます。

「お箸持つ元気がなかったら、おにぎり食べるの。食べなきゃだめ。生きていかなきゃいけないから。おじいちゃんとおばあちゃんね、ママが死んじゃった日も、ごはん食べたの。海のために、生きなきゃいけないから。おにぎりにして食べたの。元気ない時は、お行儀悪いの許す。」

「海のはじまり」第12話(最終話) - 南雲朱音


寝そべったまま、おにぎりをぱくっと食べ始める海。
その話をじっと聞いていた翔平さん、海ちゃん用のペンギンのお皿に、卵焼きを二切れ取り分けてやり、海のそばに置いてやります。

水季は元気な時もお行儀悪かったと笑う海と朱音さん。
朱音さんも、海の横で寝そべったまま、卵焼きをぱくりと食べます。

もう(号泣)
おにぎりおにぎりおにぎり(号泣)

水季が亡くなった日の朝、食べたおにぎり。
普段だったらきっと、ちゃんとお茶碗にごはんをよそっていただきますして朝食を食べているでしょうから、その日の朝は相当どたばたしていたり、食べる気力もないほどだったんだろうな。
そんな中で、生きるために握ったおにぎり。
どんな想いで握って、どんな想いで食べたんだろう。
味なんてきっとしなくて、でも、生きるために食べたおにぎり。

海ちゃんのためにおにぎりを握ってやった時の朱音さんの表情から、きっと朱音さんにとっておにぎりって、ひとつのトラウマみたいになってしまっているというか、きっとその日以来、握ることも食べることもなかったんじゃないかなと想像しました。
それでも、海が生きるため、そして海と生きるために、握ったおにぎり。
普段からテレビに夢中にならないでとか手を洗ってとか、わりとしつけには厳しい朱音さんが、ごろんと海の横に寝そべりながら、一緒に食べる。
海に、何があったのかとか、いつ帰るのかとか、そんなことを聞くこともせず、ただ、ごはんを食べる。
生きることと食べること。
食べて生きていくということ。
生方さんの作品では度々出てくる描写ですが、やっぱり何度観ても、心を打ちますね。

南雲家の食卓は和食が多くて、果物や野菜も季節物がよく取り入れられていて。
月岡家は洋食が多かったり、夏や弥生世代はちょいちょい買ってきたごはんも登場して。
世代ごと、家庭ごとの食卓の描写も、一貫してずっと丁寧な物語でした。
過去形で言うの、本当に終わっちゃったんだなと、寂しくなりますね。

亡くなった水季のことを朱音さんが海と話す時って、水季のことをちょっといじるっていうか、あんなことが出来なかった、こんなことも出来なかったって、愛を込めてそんな風に話して、二人で笑い合って。

朱音さんや翔平さんが水季の死を乗り越える日なんて、一生来ないと思うんです。
やっぱり、どうしたって埋まるわけのない喪失だから。
思い出す度に辛くなったり泣いてしまうような思い出もきっとあるだろうけれど、懐かしんで愛おしく思えるような思い出も、きっとたくさんあるはず。
この南雲家だって、「娘を先に亡くした夫婦」ではなくて、「幸せな三人家族」だった日々が確実にあるし、そんな時間の方が多かったはずだから。
水季のことを笑って思い出して、「まったくあの子はね」って、朱音さんや翔平さんが笑える日が、これからもっと増えていけばいいなと願います。


冷蔵庫

夏のアパートを訪ねて来たゆき子さん。
ゆき子さんがロールキャベツなどの作って来たお惣菜を冷蔵庫に入れるシーン、冷蔵庫の中に、みかんヨーグルトが2つ、ありましたよ!
水季が好きだったやつ、きっと海ちゃんがママと食べたやつ、海ちゃんのお気に入りヨーグルトを、夏くんが買ってあげて冷蔵庫に入れておいたんだろうな。
一人で食べるには大きそうなプリンと、なんだろう、ケーキかな?スーパーで買えるスイーツのようなものと、ドアポケットにはオレンジジュースもありました。

ドアポケットといえば、第1話で夏が水季の訃報を受けたシーンで、電話をしながら冷蔵庫を開ける夏に弥生さんが「マヨ取って」と声をかける場面があったのですが、その時は半分くらい使ってあってくたっとした感じだったマヨネーズ、今回冷蔵庫の中にあったマヨは、買ったばかりの感じのマヨでした。
そのマヨがいつ買ったものなのかはわからないけれど、ヨーグルトとかジュースとか、もしかしたらマヨとか、二人暮らしになった夏の家に訪れたちょっとした生活の変化が、こういう細かいところからも垣間見える気がします。
すみません、冷蔵庫考察ヲタクなもので(笑)
冷蔵庫とか本棚とか引き出しとか、その人の生活が丸出しになるところが丁寧に作り込まれている作品は絶対信頼出来ます。
そういう場面は大体一時停止してしっかり見るタイプです(笑)

元気のない様子の夏に、「食べな」とかぼちゃの煮物を差し出すゆき子さん。
夏の前で「うま」と食べて見せ、再び「食べな」と差し出すと、ようやく夏もぱくりと一口。
朱音さんと海ちゃん、そして、ゆき子さんと夏くん。
生きるために、食べる。
みんな、食べて、今日を生きる。

ゆき子さん、夏も幼い頃に父親のことを聞いたり寂しがっていたよ、と話し始めます。

「無邪気に聞いてくんの。もういないよって言いくるめちゃった。夏があの人のこと覚えてなかったの私のせいかも。いないことにさせたから。」

この時のゆき子さん、冷蔵庫にお惣菜をしまいながら話していて、夏の方は見ないんですよね。
その距離感が適切すぎて良くて。
海ちゃんがどうこうとか、夏に聞くことも何かを提案することもしないけれど、自分はこうだったと、その少しの後悔を、それとなく話す。
この言葉を受けて、夏はきっと自分が幼い時のことを思い出しましたよね。
ゆき子さんも、その時々で都度、考えて、夏のためにと選択をして、育ててきたんだろうな。
いろんな選択肢があって、いろんな選び方があって、いろんな答えがあって、いろんな間違いがある。
みんなそうやって自分を生きて、誰かと生きていくんだよね。


コメッコ

一方、弥生宅。
がさごそとキッチンを漁ってコメッコを食べる弥生。
コメッコ、多分これです、ホタテ味。見すぎ(笑)
えー弥生さんこれ好きなのかな?可愛い。買う!
ノンフライでお米のスナックっていうのが弥生さんらしいですよね。
オーガニックとかまではこだわらないところも弥生さんぽくて好き!


弥生さんがふと目をやった先には、使いきれずほとんど残った状態のパン粉。
多分先日夏と海と三人でこの家でコロッケを作って食べた時以来、使ってないんじゃないかなっていう残り具合。
パン粉ってね、全然減らないんですよね。
たまに唐突に張り切って何か作る時に買うけれど、大体使いきれずに終わります。

スマホに着信があり、「南雲さん」と表示された画面を見た弥生、少し緊張しながら応じると、「弥生ちゃん?」と海の声。
この後、海ちゃんからの伝言を伝えるために弥生さんは夏に電話をかけて、電話を切った後にコロッケを作るんですよね。
多分この日って休日だと思うのですが、たぶんちょっと小腹が空いたから適当に何か食べられるもん…とキッチンを漁ってコメッコを食べて済ませようとした弥生さんが、海ちゃんと話して、夏と話して、コロッケをわざわざ自分のために作って、食べる。
弥生さんも、生きるために食べる。
最終回、なんだかやっぱりそういう、生きよう、暮らそうっていう、人間の基本のパワーの強さと尊さみたいなものが、愛おしくあたたかく描かれていたなと思います。
涙に暮れてごはんも食べられない、喉も通らない、そういう日もあるかもしれないし、そういうドラマも多いけれど、何が起ころうが、食べて、生きる、それこそがリアルで、私は共感出来ます。だから好きです、生方さん。

伝言

南雲家へと向かって足早に歩く夏。
結構な早足で、海ちゃんのもとへ急ごうとする夏の真剣さや切実さが伝わってくる背中でした。

そこに弥生から着信。
弥生はキッチンでコロッケを手作りしながら、スマホをハンズフリーにして、夏に海から預かった伝言を託します。

「ママは夏くんの話たくさんしてくれた。夏くんといたことなかったけど、いない時から夏くんのこと好きだった。だからママいないけど、夏くんとママの話したかったんだって。」

頷いて、「今向かってる」と夏。
夏くん、もう海ちゃんの気持ち、自分で考えて見つけていたんだろうな。

弥生さんから伝言を聞いた時の夏くんの表情は、はっとしたような様子はなく、ただそのことを噛みしめて同意しているような感じで。
前回南雲家で海ちゃんのまっすぐな言葉により特大ダメージをくらった夏くんですが、きっとその時に海ちゃんの本当の気持ちを理解して、そこからどうしていけばいいのか一人で考えて、何か見つけたから、その想いを持って、海ちゃんを迎えに行こうとしていたのだと思います。

しかし夏くんって、どこか頼りないしもさっとした感じで、完璧じゃないし間違えることもあるけど、溜まりに溜まった末に実父の前で椅子を蹴ったくらいしか感情が大爆発したことってなくて(かなり独特な感情表現(笑))、基本、人に対しても出来事に対しても、わりと動じない感じで受け止められる人ですよね。
いや、もちろん、表に出さないだけで悲しみも苦しみも苛立ちもあるし、優しいがゆえに自分の感情を発露しないっていう性格なのだけれど、わりと人や出来事を淡々と受け止めて、何かのせいにしたり逃げたりせず、粛々と向き合っていく、そういう強さを持った人でもあったなと、振り返って思います。
それがきっと、一緒にいる心地よさだったり、信頼感に繋がる面もあって。
だから弥生さんや水季、そして朱音さんたちとも、関係を築いてこれたんだろうな。

夏くんが「今向かってる」と言って引き続き足早に歩いて行くシーン、青信号の横断歩道をまっすぐに進んでいくのですが、なんだかこの時、第1話冒頭で二つの分かれ道で迷ってしまい、日陰の方の道を少し進んでから戻り、もうひとつの日なたの方の道を歩き直した夏くんのシーンがよぎりました。
あの時は、分かれ道に対して間違えかけたり、歩き直した方も合っているのかちょっと不安そうだったりしたけれど、今このシーンでは、夏くんは迷いなく、海ちゃんの方へ向かってる。
12話かけて、やっぱり父親ってなんなのか、父性ってなんなのか、そこに明確な答えはないけれど、夏くんの中での確かな変化、その強さが、海ちゃんの元へと歩いて行く背中から、しっかりと伝わってくるシーンでした。
なんかあの分かれ道とか、もう本当に遠い昔のことのよう。
踏ん張ってきたね、夏くん。
思い出すだけで勝手に泣いてます。情緒が行方不明です(笑)

続けて自分の話しを始める弥生。

「お腹の子がいなくなった後、すごい寂しくなってね、頑張って忘れようとしたら、もっと寂しくなった。だから、いたって事実は大切にしようって思ったの。お墓作って、写真、まあエコー写真だけど、大事に残して、忘れないことにしたの。時々ああやって罪悪感の蓋がばーんって開いちゃうときはあってご迷惑はおかけしたけど、でも、忘れなくていいって思うと、安心して忘れる時間がつくれたの。だから他の子のお母さんになろうって本気で思ったんだよ。」

この話を聞く時の夏くん、歩みが少しゆっくりになって、しっかりと弥生さんの話を聞いています。
ここも、弥生さんに対する誠実さ、夏くんらしさが感じ取れますね。


-月岡夏「海ちゃん、弥生さんが寂しがってるってまだ気にしてる。」
-百瀬弥生「私の寂しい決めつけないで。月岡くんがちゃんとパパやってくれないとさ、せっかく今伸び伸びと生きてる私に新たな罪悪感が生まれちゃうわけ。」
-月岡夏「それは困るね。」
-百瀬弥生「困る。だから、しっかりしてくれ。」
-月岡夏「はい。」

「海のはじまり」第12話(最終話)より


ここの会話、超絶良かった。本当に良かった。
あ、当然泣いています、私。

弥生さんのチャーミングさ。
「それは困るね」の時の夏くんの笑顔。
この時の夏くんの引きのカットが、いつか弥生さんが「私がお母さんやるのって」と電話で夏に聞いた時のカットとどこか似ていて。
あれから色々あったけど、恋人ではなくなったけど、確かなつながりがある二人、この二人だからこその会話であり、弥生さんだからこそ夏くんに送ることが出来る最大限のエール。

「しっかりしてくれ」

夏が家の鍵がポケットにあるのを忘れてあたふたと探していた時にも言ってましたね、弥生さん。
愛情たっぷりのエールを受けて、曖昧ではないしっかりとした「はい」と答えて、夏は海の元へと向かいます。

経堂の駅で別れた時、弥生さんの「頑張れ」のエールを受けた時の夏くんは、お母さんに置いて行かれる子どもみたいな、そんな頼りなさと寂しさと孤独があって。
でも今ここで「はい」と答えた時の夏くんは、堂々としていて、清々しい表情で、しっかりと一人で立っていて。

弥生さんと夏くんって、付き合っていた時はいつも弥生さんがお姉さんっぽくお母さんっぽく夏くんを引っ張って行っている感じで、仮に二人が両翼のエンジンだったとしたら、弥生さん120・夏くん80みたいな感じに見えたんです。
でもこの電話の時は、弥生さん100・夏100に見えたというか。
言い方が適切じゃないかもしれないけれど、弥生さんと夏が対等に並んだように見えたんですよね。
この二人が復縁するのは無いと思うし、別にあってもいいと思う。
お互い今何かを考えてるわけではないだろうし、別の人と出会って、いつかその先で何かあるかもしれないし、全然関わらなくなるかもしれないし、それはもうこの二人がよければ私はなんでもいいのだけれど、お互いに手を離したことで、甘えを断ったことで、あたらしい関係で二人らしく並んで向き合うことが出来る、そんな明るさを感じるシーンで、すごく好きでした。


寂しいよ

南雲家、縁側で「くまとやまねこ」の絵本を読む海。
夏の訪れを知らせるチャイムの音に一瞬振り向きますが、いつものように「夏くん!」と駆け寄ることはせず、絵本を再び読み始めます。

朱音に迎え入れられてやってきた夏。
朱音さんは少しだけ微笑んで頷いて、翔平さんとそっと遠くで見守ります。
朱音さんと翔平さんのこの距離感、夏と海の二人の関係への信頼が伝わって来て、素敵。
縁側に海の背中を見つけ、ふっと気合を入れて、海の元へと近づいていく夏。
頑張れ、パパ!!
しっかりね!!
私の中の弥生が全力でエールを送ります(は?)

海の隣に座る夏。
夏くんの大きい背中と、海ちゃんの小さい背中。
ふたつ並んだ背中、親子だったな。
今回は背中からのカットが多いですね。

「一緒に読んでいい?」と夏が聞くと、無言でちょっとだけ絵本を夏の方に向ける海ちゃん。
「ありがとう」と夏くん。
夏くん、いつもありがとうってちゃんと言うのいいですよね。

心を決めて話し始めた夏くん。
いつも説明が下手な夏くんだけれど、海ちゃんのために、海ちゃんがわかる言葉で、子どもだからって何かをごまかしたり省略したりすることなく、まっすぐに言葉を紡ぎます。

「ごめん。すぐパパにならなくて。ママがいた時に一緒にいなくて、三人でいれなくて、ごめんね。俺も、お父さんいなくて寂しいって思うことあった。いた人がいなくなったから、寂しかった。でも海ちゃんは、最初からママと二人で、最初から俺はいなかったから、一緒にいた人がいなくなるのと、最初からいないのは違うから。いなくなるのは、いたって知ってるから寂しいんだよ。わかる?海ちゃんよりずっと短いけど、俺も水季といたから。いなくなって、寂しいよ。ごまかしたり無理したりするだけで、ずっと寂しい。」

「海のはじまり」第12話(最終話) - 月岡夏


いなくなって寂しい。
ずっと寂しい。

水季の訃報を受けてから、当たり前のように夏くんだってずっと寂しくて。
でも、その寂しさを、自分よりももっと寂しいはずの人たちの前では、絶対に言えなかった。
誰かがいなくなって、寂しいとか辛いとか、会いたいとか、そういう気持ちと向き合うことって苦しいけれど、絶対に必要な時間。
夏くんはそれにちゃんと向き合うことが出来ず、せず、気持ちをぐっと飲み込んでやってきたんですよね。
ずっと抱え込んできた、寂しいっていう気持ちを、海ちゃんの前で口に出せたこと。
きっとそれが、海ちゃんにとってはもちろん、夏くんにとっても必要だったこと。
この二人が、二人で一緒に水季を想って暮らしていくために絶対必要だったことに夏くんが辿り着いたことで、海ちゃんの心を迎えに行ったようなシーンでした。

いる、いない、いた、いなくなった。
きっと全部繋がっていて、絶対的にもう会うことが出来ない存在があることは確かだけれど、物理的な存在がなくなったからといって消えるわけでもなくて。
いたから、幸せだった。いたから、楽しかった。
いないから、不安。いなくなったから、寂しい。
全部そのまんま抱えたままだって人は歩いていける。
その気持ちを大切にしていくことで、いる、いない、いた、いなくなった、全部大切に感じながら、歩いていくことが出来る。
水季という、確かにいた存在、そしていなくなった存在を通して、残った人たちがつながり合って生きていく、ずっとこの物語に流れていたメッセージが、ちゃんと言葉になったような場面でした。


-月岡海「海、夏くんと二人でいるの、ずっと寂しいままだったらどうすればいい?」
-月岡夏「図書館行って、津野さんに会ってもいいし、弥生さんとまた遊びに行ってもいいし。」
-月岡海「いいの?」
-月岡夏「いいよ。行きたいとこ行って、会いたい人に会えばいいよ。」
-月岡海「夏くんは、どうするの?」
-月岡夏「待ってるよ。海ちゃんが寂しくなくなるまで、待ってる。待ちながら、どうしたら少しでも、寂しくなくなるか考える。」

「海のはじまり」第12話(最終話)より


夏の言葉を受け止めた海。
水季の遺灰が入ったネックレスを外して、「寂しい時貸してあげる」と夏に差し出しながら笑います。
「ありがとう」と笑って、ネックレスを大切そうに受け取った夏、そのネックレスを再び海につけてやります。
夏と海、その二人の間に、水季が確かにいましたね。

「夏くんがいるからもう寂しくないよ」とか海ちゃんに言わせない。
夏も海も、寂しくなる時は何度だって波みたいに寄せては引いて訪れる。
その都度、寂しくなくなるまで寂しがればいいし、夏は親としてずっと待ってる、そばにいる。
誰の存在も感情も否定せず包み込んで、「いる」ということの強さを貫いたような、素敵なシーンでした。

水季がいつか海辺で海に言った「行きたい方へ行きな」という声が、聞こえてくるようでしたね。
水季が夏に残した手紙はこの後に明かされましたが、夏くん、水季の手紙を読んで、それで海ちゃんを迎えに来て、この言葉に至ったんじゃないかなと思っています。
夏くんの部屋で海ちゃんが手紙を見つけて今度一緒に読もうねと言った後、夏くん、海ちゃんの手が届かない引き出しの中に一度その手紙をしまっていました。
その後、海ちゃんが夏くんのアパートに戻った時には写真と一緒に手紙が置かれていて、そこから海ちゃんと一緒に夏が手紙を読むという描写だったので、夏くんきっと海ちゃんと離れて一人だった間に、誰よりも海ちゃんのことを知っているはずの水季を頼ろうと、手紙を開いたんじゃないかなと思います。
水季がいたということといなくなったということをちゃんと向き合って受け止めて、自分がいるということも自分でやっと肯定出来るようになって、その上で、海ちゃんにたくさんの選択肢を与えて、後ろについて見守ってやりながらそばにいること。
そのことを選んだ夏くんの強さと大きな愛情が、きっと海ちゃんにも伝わりました。


「寂しかったら言ってね」「海ちゃんもね」と笑い合う二人。
「これママのでしょ?」と、海ちゃんが最近よくつけている指輪を指さして笑う夏。
この指輪、水季が夏と居酒屋で出会った時にもつけていましたし、夏くんが南雲家ステイで水季の部屋に泊まった時も、アクセサリートレイに入ったこの指輪と、同じく学生時代からつけていたネックレスを、手に取って見つめていましたね。
夏くんがプレゼントしたものとかじゃなくて、水季が自分で選んで気に入っていたアクセサリーなんだなと思うと、水季らしくて、愛おしいです。
この指輪、星モチーフで。
遺灰のネックレスも星モチーフで。
夏が海のためにネックレスを作ってあげた時、きっと水季っぽいからと星モチーフを選んであげたのかなと、優しい気持ちになります。

「ママいたよね」と海。「うん。いたよ。」と夏。
この二人、もう大丈夫だね。
と思っていたら、朱音さんと翔平さん、なんて優しい表情でこの二人を見守っているの(号泣)
そっと頷く翔平さんと、縁側の二人を見つめる朱音さん。
ここの表情が、いつか海辺を歩く夏と海の横に水季の姿を見た日のように、そして台所で笑う水季の姿を見た日のように、眩しそうで、愛おしそうで。
朱音さんにはもしかしたら水季の姿がまた見えていたかもしれませんね。
夏の中にも確かにいる水季を感じたことで、朱音さんの中で夏に対する感情がすーっと晴れていったような、愛する娘が愛した人として、愛する娘を愛した人として、朱音さんが夏をあらためて受け入れたような、そんなシーンに感じました。

夏が海の父になる、その一方でもうひとつ、朱音さんが夏の母になるというのも、物語の軸のひとつだったと思います。
娘がいたこと、いなくなって寂しいこと、それを海ちゃんの前で話す夏の姿が、朱音さんの中にあった何かをやさしく溶かして、この人になら海を、水季を託せる、12週かけて朱音さんがようやくそう思い始めることが出来たようなシーンだったように思います。


コロッケ

弥生の家、綺麗に出来上がったコロッケが8個。
そのうち4つに一気にソースかけちゃう弥生さんが大好き(笑)
テーブルには缶ビールと、味変して食べる用?のお醤油も。
いいねいいね、休みの日、昼間からビール片手に出来たてコロッケ。
暴飲暴食しちゃえしちゃえ~!!!(笑)
美味しそうにコロッケを頬張る笑顔の弥生さんが可愛い。
一人の休日を満喫する弥生さん、幸せそうでよかったです。

いつかの日は、同じ場所で、一人で力無くトーストをかじっていた弥生さん。
その時はちょっと部屋も暗い感じだったし髪も下ろしてぼーっとしていたけれど、今日は髪もまとめて、部屋も明るくて、ごはんを作って、もりもり食べる。
食べて、笑って、弥生さんは弥生さんの毎日を、素敵に生きていくんだろうなと、安心しました。

弥生さんの元へ、「大丈夫。ありがとう。」と夏からLINE。
相変わらず説明下手なんだよね月岡くん、もうちょっとさ、何かこうないわけ?私だからわかるけど他の人だったら伝わらないよ?
なんて感じのシーン、なんか以前ありましたよね、夏くんが南雲家に行った時の報告LINEだったかな?
弥生さん、そんなこと頭の中で思ったんじゃないかな~と思いつつ、にっこり笑顔の弥生さん、可愛かったです。好き。


色鉛筆とおにぎり

南雲家で畳に落ちていた肌色の色鉛筆を拾ってケースにしまう夏。
テーブルの上には、海がスケッチブックに色鉛筆で描いた、夏と水季と海、家族三人の絵。

第1話で葬儀場で夏と海が初めて会話を交わすシーン、あの時に海ちゃんが描いていたのは、水季と海の二人の絵でした。
それがこうして、12話かけて、夏と水季と海、三人の絵になりました。

そして、色鉛筆。
同じく第1話の葬儀場で夏が拾おうとして、津野に「いいです、触らないでください」と拒絶されたのも、同じ肌色の色鉛筆でした。
思えばそこから、夏が海と、南雲家と、津野と、つながってきたんですよね。
あの時は本当にどうなることかと、この物語はどうなってしまうのかと、絶望と驚きで物凄い衝撃をくらった第1話。
3ヶ月かけて丁寧に丁寧に紡がれて、つながって、とぎれかけて、またつながって、今こうして重なる過去と現在。
そして現在は、あの頃よりもずっと明るい。
時間軸がわりとリアルな物語でしたので、余計に登場人物たちの関係性や心の変化をそばに感じられて、本当に生きてるみんなを覗かせてもらってきたという感じ。
絶望の色鉛筆が、笑顔で拾われて、よかった。

「お昼食べた?」と夏に声をかける朱音さんに、「いえ」と笑って駆け寄る夏くん。
この駆け寄り方が息子感がすごくて可愛らしかったです。
こういうさ、なんていうの?年下男の子感?わんこ感?を夏くんは出しちゃうからさ、朱音さんももう夏くんのこと好きだしさ、そうやって人の懐にすすーっと入って可愛がられるようなところがね、あるよね、夏くん。好きだよ(突然の告白)

握ったおにぎりを差し出す朱音さん。
海苔がついてる大きなおにぎり、5個くらいあるよ?(笑)
多いなって思ったけど、夏くんは2個で、他のみんなは1つずつなのかなと思うと、家族分、ぴったりか。
久々に夏くんが来て一緒にごはんを食べられるから、また翔平さんが「何合炊く?」とか聞いて、準備したのかな。愛おしい。
朱音さんにとってきっとトラウマだった、生きるためのおにぎり。
もうこんなに笑顔で、たくさんつくって、夏くんに差し出して。
いただきます、と立ったままその場で食べる夏くんの手をペチンと叩いて行儀が悪いと叱る朱音さん。
ごめんなさいと口におにぎり満杯に入ったまま謝って慌てて座ろうとする夏。
「いいわよ」と笑う朱音さん。

「健康でいてね。海にごはん食べさせるために、あなたがちゃんとごはん食べて、健康でいて。」

そう言う朱音さんの表情が、穏やかで、優しくて、もう夏のお母さんでしたね。
夏を海の父親だと認めて、海を託して、自分の息子のように、健康でいてと願う。
その朱音さんの言葉と想いを受け止めた夏は、まだ口におにぎりが入ったままだけど、しっかりと「はい」と答えて、もう一口おにぎりを頬ばります。
このシーン、この朱音さんの台詞、良かった。良すぎた。

本当にどうでもいいので誰も覚えていないと思うんですけど、私、特別編で水季の塩むすびを見た日から、朝ごはんにおにぎりを作って食べていて。(マジどうでもいい)
昨日「海のはじまり」をリアタイして、今朝おにぎりを食べた時、朱音さんのこの台詞が聞こえて来て、おにぎりを食べながら涙が滲みました(笑)

健康でいてね。
大切な人に願うことの究極って、それですよね。

うまくいかなくても、間違えても、健康であれば、歩ける。
健康だからこそ、大切な人を大切に出来る。

生方さんが仰っていたこの物語で伝えたいことのひとつが、「がん検診にいってほしい」ということでした。
人間ドッグとか、検診、行かなきゃなってシンプルに思いましたよね、この物語を観て。
きっとこの作品は目黒蓮さんのファンの方が多く視聴していると思うので、女性が一人でも多くがん検診に行くきっかけになったら本当に素晴らしいと思うし、性別問わず、みんなそれぞれ、誰かじゃなくてまず自分を労わることを大切にして、その上で、大切な誰かを大切にする、そういう気持ちが、広がっていったら素敵だな。
自分を許すこととか、他人に甘えることって、悪いことじゃないから。
無意識のうちに縛られたり忘れたりしてしまっていることを、少しだけ見つめ直して、みんなが自分に、そして誰かに、優しくあれたらいいな。


新田さん

南雲家からの帰り道、夏と海、二人で手を繋いで、ママの好きなところを話しながら歩いて行きます。
夏の左手には大きな紙袋。
これあれですね、朱音さんが前みたいにまたたくさんのお惣菜を持たせたんだろうな。
夏くんのアパートの冷蔵庫は、朱音さんとゆき子さんがつくってくれたお惣菜で、愛情たっぷりですね。

その足で立ち寄った新田写真館。
コガセン(違う)来たー!!!!!!!!!!!!
会いたかった新田さん!!いてくれてありがとう新田さん!!

海ちゃんを見て驚きつつも、すぐに笑顔になって、「いらっしゃいませ」と迎える新田さん。
夏が新田さんに海のことをどこまで話したかは知らないけれど、特に何も聞かずにフィルムを受け取って、「お預かりします」とだけ言って夏とちょっと笑い合う、そんな新田さんが、私は好きだ!!!!!!!!!!(笑)

これからも夏くんはたくさん写真を撮って、こうやって海ちゃんを連れて新田写真館にやってくるんだろうな。
海ちゃんが大きくなって反抗期や思春期を迎えた時は、「silent」のコガセンみたいに、きっといい感じのアドバイスをくれるんだろうな。
そして海ちゃんの卒業とか入学とか成人の写真を現像して見る度に、きっと泣くんでしょ?新田さん。
夏と実父・基春さんはもう直接会うことはない気がするけれど、もし基春さんが新田さんのところを訪れることがあったら、いい感じで夏の近況伝えてあげるんでしょ?
もう!新田さん!!!!!!いつもありがとうございます。
これからもずっとそこにいてください。

…って愛を叫ばずにはいられないくらい、新田さんって今回登場シーンを秒にしたらそんなに長くなかったはずなのに、この抜群の存在感、本当に好きでした。
感謝と愛を込めて、このくだりのタイトルは「新田さん」にさせていただきます。


甘えよう

アパートに帰宅した二人。
「ここにもママがいた証拠」と、探したら出て来た数枚の水季の写真を見せてやる夏と、嬉しそうな海。
夏くん水季のもの捨てたとか言ってたけど、ちゃんとあるじゃん、よかったね。

なんか、写真っていいなってあらためて思いますね。
もう最近は私はスマホばかりで写真の現像なんて何年もしていないけれど、現像することで思い出を振り返ることが出来るし、こうやって目に見えるかたちで残すことで、救われたりあたたかくなる心ってありますもんね。
加工とかもない、そのまんまを切り取る写真って、やっぱり良さがありますよね。
夏くんはこれから、海ちゃんの成長をたくさんたくさん写真に収めていくんだろうな。
朱音さんたちの写真も撮ってあげてさ、水季のアルバムに写真が増えていったらいいな。

水季と夏の2ショット写真を見つけて嬉しそうな海。
寄り添い合って笑う二人が幸せそうで、結局この二人も、色々なボタンのかけ違いがあって、結果別れてしまって、一緒にいた時間はとても短くて、そしてもう二度と会えないけれど、確かに幸せだった時間、二人だけの思い出が、あるんだよね、と思いました。
この家で水季と弥生と海と生きるって、夏くんほんと全然引っ越さないの何で?ってちょっと面白いですけど(笑)
いつかきっと海ちゃんの成長に応じて引っ越す日は来るでしょうから、その時まではこの部屋で、たくさんの思い出とたくさんの大切な人に囲まれて、過ごせるといいなと願います。

夏、スマホに職場から連絡があったようで、明日は日曜だけど仕事になってしまったと困った様子で海に伝えます。
おばあちゃんちに行くかと夏が尋ねますが、一人でいれる、お留守番にも慣れた方がいいでしょ、と一生懸命に頑張って言う海。
悩みながらも「なるべく早く帰るね」と言った夏ですが、海の様子を見て、じっと考えて、前を向いて、「いや、甘えよう。うん。」と言います。
さあさあ!!
ここから「海のはじまり」大好き視聴者にとっては夢のような面白展開が始まりますよ!!!!(笑)

甘えよう、と言えた夏くん。よかった。
変わったね。変わろうと努力して、変わったんだね。
自分で色々な経験をして、そして水季の手紙を読んで、責任を背負うことと一人で抱え込むことは違うということを知って、夏くんも呪いから解かれて、向き合い直すことが出来たんですよね。

誰かに甘えるって、甘える側は申し訳なさを感じてしまうし、今の世の中って対価を払うことで得られるサービスが色々とあるから、近い人、リアルな関係のある人に何かを頼ったり甘えたりすることが、悪とか情けないことのように思えてしまうところがあるのかもしれません。
実際まだまだ、"親なのに"ってどうこうと、完璧に出来ていないと他人から色々言われたりとか、現実にはきっとありますもんね。
誰かや社会がいつの間にかつくった理想像みたいなものがまるで正解の答えみたいになって、そこから減点法で採点されていく感じ。
でも、全部を一人で抱えるなんて本当は無理だし、無理なことを無理やり背負ってパンクするより前に、一人でも二人でも、誰かの手を借りること、手を借りられる誰かの存在があること、そこに頼ることって健全な手段であって、出来れば誰もにそういう道があれば、人がいればいいなと願うばかりです。
甘えられたり頼られたりすることで救われたり喜びを感じる人もいるし。
助けてほしい時に助けてって言える、助けたい時に助けるよって言える、手一杯の時は今は無理って言える、そういう健全な"持ちつ持たれつ"って、やっぱり人が生きていく上では大切なことですよね。

どこか人間関係が希薄で、SNSで常につながっているようで本当にはつながれていなかったり、昔のようなご近所付き合いとかもなかなかない世の中。
そういう環境で、今現在進行形でキツい思いをしている人たちって絶対いて。
子育てとかに限らず、甘えちゃいけないって必死に自分を奮い立たせて踏ん張っている人も絶対いて。
そういう人たちが、もしこの物語を観て、少し自分を楽にしてあげることが出来たら本当に素敵だなと思います。


海とゆかいな仲間たち

翌朝、ピンポーンと鳴った夏の家のチャイム。
夏がドアを開けるとそこにいたのは…
津野ーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
津野ーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
大和じゃないんかい!!!!!!!!!!!!!!!!
津野ーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!

いやあ声出して笑いました。大爆笑。
津野くんの気まずそうな表情と「暇なんで」の台詞、最高。

甘えようと決めて、誰かに海を見てもらおうと考えたであろう夏くん。
夏くんが第一希望で津野くんの名を挙げるとは思えないんですよね。
大和や弥生さんが都合つかず津野さんに打診、という流れでもなかったようなので、これはもう、海ちゃんが夏に聞かれて「津野くんがいい!!」と即答したのではないでしょうか。
え、津野さん…と動揺しつつも、どうしても津野くんがいいと言う海ちゃんにおされて、怯えながら津野さんに連絡入れたんじゃないかな、夏くん。
そしてその津野とのLINEの画面には、前回のあの、激おこ津野の地獄の鬼LINEの履歴があったんでしょ??(笑)
なんて、勝手に経緯を妄想しながらめちゃめちゃ笑いました(笑)

ここからしばらく展開される、海とゆかいな仲間たちが夏のアパートに集結してしまうシーン。
なんかもうショートコントみたいで、じっとひたすらにこの物語を見守って来た私たちにとってはご褒美みたいな超絶面白展開で、めちゃめちゃ楽しかったです(笑)

特に細かい申し送りもなく津野に託して家を出る夏くんも夏くんだし、行ってらっしゃいと見送る嫁のような津野くんも津野くんだし(笑)
津野くん、ずっと背中にケーキ抱えています(笑)

夏が出て行きドアがパタンと閉まった時の津野くんの、これから海ちゃんを誘拐するんじゃないかくらいのサスペンスな表情(笑)
ニヤっと笑って、「海ちゃん、夏くんに内緒出来る?」からの、「ケーキ買って来ちゃった!」の笑顔。
津野くんーーーーーーーーー!!!!!!!!!(笑)
休日の図書館で豹変した津野くんが蘇りますね。
いじわるで二人分しか買ってきてないから二人で食べよう。
二人で背徳のケーキを楽しもうと、わくわくする津野くんと海ちゃんが可愛らしすぎました。

「あいつ甘やかすなとか親みたいなこと言うようになったからな~」の津野くんの小言も、「甘やかします!」と海ちゃんのほっぺをむぎゅーっとした津野くんも、可愛い。
津野くんと夏くん、いいコンビになると思うんだよな。
もう夏の自宅も知ったしね、いつでも来れるね、津野くん(笑)
しかし小田原の方からわざわざ来てあげるなんて、まぎれもなく海への愛だし、夏への愛だし、水季への愛ですね。

出社した夏くん、オフィスには藤井さんもいます。お疲れさまです。
子ども大丈夫?と気に掛ける藤井さんに、「慣れてる人が見てくれてるんで」と夏。
「二人は慣れた?」と聞く藤井さんに、「二人は大変ですけど、助けてくれる人も多いんで」と夏。
なんかどうしよう、急に頼もしいじゃん、夏くん。涙。

夏くんが、かつての甘えん坊年下彼氏的なフェーズから一歩進化して、ちゃんと自分一人でしっかりと立つことを前提にしながらも上手く周りに頼れるようになったのがよかったですよね。
人って変われるし、変わらないことも変わることも両方、全然悪くない。
自分で生きていくために、大切な人と生きていくために、これからもたくさん間違えたり迷ったりしながら、変わったり守ったりしながら、進んで行けそうだね、夏くん。

そして夏のアパート、再び鳴るチャイム。
津野がドアを開けると、弥生さんの姿。
ここからの池松壮亮さんと有村架純さんのコントのようなお芝居合戦、気まずさがリアルで、めちゃめちゃ好きでした(笑)

海ちゃんから電話をもらってやって来たという弥生さん。
前日に夏のスマホを借りて連絡を取ったのかな?
だとしたら夏も知っていた気がするけど、津野と弥生に何も伝えていなかったの?(笑)
もしくは夏くんが見ていない隙に勝手に海ちゃんが集めたの?(笑)
どっちでも面白いけど、なんかこう、雑な感じで集められたヒーローたち、みたいな感じで、もう本当にずっと笑って観てました。
泣いたり笑ったり泣いたり泣いたり泣いたりしながら観てきて、最終回でこんなに面白がって観れるシーンがあることが、本当に嬉しかった。

夏と仲良いんですねと津野をいじる弥生さん(笑)
帰ろうとする津野、「ここにこの三人でいるの変ですよ」といつもの口調で言う津野に、「変じゃないですよ」と笑いながら言う弥生、「笑っちゃってますよ」と苦笑いの津野。
ここで終わると思いきや、ガチャンとドアが開き現れた大和。
固まる津野と弥生、その二人の真ん中で手を繋ぎ笑顔の海。
そっと扉を閉める大和。

もう!!もう!!好き!!!
海のはじまり好き!!!!!!!(愛)

なんかこの作品を観て久しぶりに?というか初めてか?こんなに笑った気がします。
ずっと観てきたからこそ嬉しいし、面白がれる、作り手のみなさんからプレゼントしてもらったような、愛しかないシーンでしたよね。
夏くんのおうちのセキュリティがばがば問題は「いちばんすきな花」の椿邸に通じる部分がありますが(笑)

夏の娘と、夏の娘の母親の同僚と、夏の元恋人と、夏の弟。
この4人を説明したらすごく変なんだけど、海ちゃんがいるから、そして水季がいたからこそ、つながりあった人たちで。
みんながここに自分の意思で来ているっていうのもよかったです。

津野くんと大和は初対面かな?
コミュ力の鬼の大和くんですから、きっとすぐに津野くんのことも攻略して、弥生さんと一緒に津野くんのこといじったりするようになるんだろうな(笑)

仕事中の夏の元へ、津野から「こうなったので先に帰ります」とLINE。
送られてきたのは、津野が撮影した、弥生・海・大和が楽しそうに笑いながらケーキを食べている写真。
その写真を見て、思わず口元に手をやって吹き出しそうになる夏。
何?やっぱり夏くんが仕組んだの?知ってて黙ってたの?(笑)
知らないけど、なんかこの、周りに上手に頼りつつたまにちょっと他人事みたいにぷぷって笑って楽しんじゃう感じの夏くんが、好きだよ(愛)

色見本を広げていたので、何か印刷のトラブルがあったのですかね?
普段は明るい時間に帰宅出来て、藤井さんのサポートもあって良さそうな環境の夏のお仕事。
やっぱりあの時早まって転職しなくてよかったねって思うし、それも藤井さんや弥生さんと話したからこそ選ばなかった道。
やっぱり人って、自分の視野が狭くなっている時にそのことに気付けないものだから、自分自身の癖や自分の環境、問題を知っていてくれてる人がそばにいるって、本当に助けになるし、そういう人とのつながりによって導かれる時ってありますよね。
夏は夏の人間関係を大事にして、夏なりに心地よい感じで、生きていけるといいね。

ちなみにケーキ、津野くんは2つしか買ってこなかったはずのケーキ。
よくよく見るとこれ多分、その2つのケーキを半分こして4つに分けてますよね。
海ちゃんと大和のケーキが半分こで、弥生さんのケーキも半分にカットされてる感じだから、きっと津野くんと半分こ。
津野くんは、海ちゃんとこっそり食べるために買って来たケーキを奪われ、海ちゃんと二人きりで過ごせる時間も奪われたわけですが(笑)、なんやかんや4人でわちゃわちゃやりながら、その輪の中に津野くんもぶつぶつ言いながらいたんだろうなって思うと、心があったかくなります。
津野くんと弥生さん、津野くんと大和、この関係こそ、海や水季がいなければつながらなかったものですもんね。
いなければよかったなんて、絶対にないよ、海ちゃん。
海ちゃんがつないで幸せにした人たちが、海ちゃんが必要とするときに、必ずそばで力になってくれるからね。
水季が残したつながりが、これからもきっと、海を守っていきますね。

津野くん

一足早く帰ろうとアパートを出た津野を追いかけてきた海ちゃん。
海ちゃんに呼ばれて振り返って笑顔になる津野くんの表情が、本当に穏やかで、愛おしそうで、いつも素敵。
しゃがんで海の目線に合わせてやる津野に、「津野くんママのこと好きだった?」と唐突に聞く海。
海ちゃん!!(笑)

え?と笑いながらも、「うん。好きだよ。」と答える津野。
海ちゃんは「好きだった?」と過去形で聞いたけれど、津野くんは「好きだよ」と現在進行形で答えました。
「ママも津野くんのこと好きだったよね」と嬉しそうな海ちゃん。
ふふっと笑って、口に指をあてて「しーっ」とする津野、はっとして「夏くんに内緒?」と聞く海。
両腕を広げる津野の胸に飛び込む海。
ぎゅーっとしながら、「また図書館行くね」と海、「待ってます」と津野。水季の口癖だね。

津野くんも、何かひとつ、乗り越えたんだね。

海ちゃんが津野にママを好きかと聞いたのは、家出から夏とわかりあえた経験を経て、ママのことを話していい、好きって言っていい、好きって聞いていい、素直な気持ちでそう思えたからこその、シンプルな「ママ好き?」だったんじゃないかなと思います。
「津野くんママのこと好きだよね?海も好き。ママも好きだったよね。」みたいな。
自分が大好きなママのことを、誰かが好きって言ってくれるのが、嬉しいんだよね。

津野くんにとっては色々な想いの詰まった「好き」だったと思うけれど、「好きだよ」と現在進行形で答えたところに、津野が愛とか恋とか一度は抱いた感情も否定せずに抱えながら、でもそういうものを超えて、水季という人に出逢えたこと、一緒に過ごした時間、今目の前にいる海を愛おしく思う気持ち、これからも関わっていくということ、そういう色々な事を、津野くん自身が受け入れてひとつ乗り越えたような、そんなシーンだったと思います。

津野くんが今こうして海ちゃんと関わったり夏をサポートするのって、善意でしかなくて。
でも津野くんも、もしもそれが負担になる時が来たら、手を離して身を引いたってよくて。
そういう選択肢を津野くんは常に持てている状態で、自分の意思で海ちゃんとの関りを続けていく、自分は他人なのに関わっていいのかとか考えていた津野くんが、何か一つ、ふっきれたような感じだったんじゃないかな。
そうさせたのは海ちゃんであり、津野をつなぎ続けた夏くんでもありますよね。

津野くんは海ちゃんの父親ではないし、別に夏の友達でもないし、"他人"だけど、"他人"だからこそ、海ちゃんをとびきり甘やかしたり、父親である夏には出来ないかたちでつながることが出来る。
近所のお兄さんとか、親戚のおじさんみたいな感じで、自分の心地よい立ち位置、関わり方を見つけて、津野くんが津野くんらしく生きていってくれたら嬉しい。

場面切り替わって回想シーン。
運動会か何かの帰り道、眠る海を抱っこする津野と並んで歩く水季。
みんな両親揃ってくるから来て欲しいと海に頼まれた水季が、津野くんを海の行事に呼んだようです。

「なんで産むって言わなかったの?後悔ないの?」と聞く津野に、「はい。一人で産んでなかったら図書館で働いてないと思うし。」「そしたら津野さんとも会えてないですよ。」と笑う水季。
少し無言になって、「違いますよ?」と笑う水季。
「違うんだ」と笑う津野。
この時はまだ小さくて津野くんの腕の中にいた海ちゃんが、さっき津野くんがぎゅーっと抱きしめた海ちゃんと重なって。
海ちゃんがつないだ、水季と津野くん。
そのつながりが確かにあったし、これからもずっとある。

回想で水季と津野が歩いた道も、夏のアパート前で津野が海を抱きしめた道も、よく晴れていて、明るくて、あれ、まさに「晴明」じゃないですか!
津野くんの未来が明るいことを示すかのようなシーンで、心がすっと前を向くような気分でした。
晴れて明るい、津野くんの未来、見えそうでよかった。


弥生さん

夏のアパートにて、すっかり眠ってしまった海ちゃんにブランケットをかけてあげる弥生さん。
「弥生さん、断ってもいいんですからね。」と大和。
「ううん。ほんと楽しいから会ってるの。大丈夫。逆に月岡くんが嫌がってたらこっそり教えてね。私さっといなくなるから。」と弥生。
もしも彼女が出来たら教えますね、と笑い合う二人。

弥生さんは本当に、夏の手を離してからの良い意味での軽やかさが素敵で。
自分がいたいからそばにいるだけ。
津野くんと同様に弥生さんも、もしもそれが負担になるならいつか身を引いたっていいし、夏も同じで、弥生さんの手が重荷になる日がもしくれば、その手を拒んだっていい。
「別れた元恋人」という定義でこうやって関係が続くことを、背景を知らない他人はひそひそと何か言いがちだけれど、お互いにとって開かれた健全な関係性のもと、イーブンな関係で頼ったり頼られたりしながらいられる新しい二人のかたちになれたらいいし、なれる気がしますね。
大和がきっと何かあればいい感じに間に入ってアシストするだろうし。
弥生さんのこの生き方とか在り方って、こういう選択肢も選べるんだという開かれた可能性を示す存在だと思います。

海ちゃんの寝顔から切り替わって、弥生の回想シーン。
夏の家でテーブルに伏せて眠ってしまっていた弥生、ふと目覚めると、隣には「おはようございます」と夏の姿。
え?え?恋なんですけど!!!!!!!(黙ろう)

付き合い始めたけれど家に来たのは初めてか?くらいの頃ですかね。
映画か何かを観ている間に眠ってしまったのだと思われます。
帰ってきたドラえもん、ではないよね、それならきっと弥生さん寝ない(笑)

終電を気にして調べようとする弥生さんに、「まだあります。ギリギリに起こそうと思って。」と夏。
紳士かよ!好き!!(黙ろう)

帰ろうとうする弥生に、「すみません楽しくなかったですよね。面白い話とか出来ないし、一緒にいても楽しくないだろうなって、すごい…寝てたし。」と、情けなさそうに言う夏くん。
何これ、作戦?策士?または天然?可愛い。好き(確信)

「私が楽しいかどうかは、私が決めます。面白い話聞きたくて付き合ってません。でも、横にいて眠たくなるくらい心地いいです。それは私の楽しいなので、お構いなく。」

弥生さんのこの言葉、「好き」でしかなくて、よかったな。

しっかり者で本音はあまり語らないちょっと強がりの仮面をデフォルトで装備してしまっているような弥生さんにとって、付き合っているとはいえまだ日の浅い人の前でこんな風にうっかり眠ってしまうことなんて、きっとほとんどなかったんじゃないでしょうか。

夏くんって口数多いほうじゃないし、きっと映画か何かを無言でただひたすら集中して観てたんじゃないかな(笑)
弥生さんが無理しないといけない関係性だとしたら、きっと弥生さん、眠るどころか自分であれこれ話したりして気を遣いっぱなしだっただろうし。
まだこの時の二人はお互い敬語で、弥生さんは夏のことを「月岡さん」と呼んでいる、初々しい距離感がある二人だけれど、弥生さんの心は無意識に夏に対して開かれていて、癒されていて、弥生さんにとっての心地よさがちゃんとあって、ちゃんと好きだったんだよね。
夏も、つまらなかったですよねとか言いつつ、100%本気でそうも思ってなさそうな口ぶりというか。
夏くんはきっと楽しかったし、弥生さんとの時間、自分の横で眠っちゃう弥生さんの姿が、愛おしくて、嬉しくて、心地よかったんじゃないかな。

ここで夏が「終電ありませ~ん」みたいなチャラけたやつだったり、「終電来ますよ!」って叩き起こすようなド真面目な人だったら、この二人付き合ってないですもんね(笑)
夏の夏らしさが、弥生さんを解放して、二人なりの居心地の良い関係がちゃんとあったんだな。

私はもうこの二人に復縁してほしいとか一切求めていなくて、別に復縁するならするで二人が決めたことならなんでもいいんですけど、別れちゃったことも含めて全肯定しているので、こういう初々しい頃の二人のシーンはとても穏やかに、にこにこと鑑賞することが出来ました。

にこにこと見守っていた私がニヤニヤに変わったのは、この次の終電のやりとりですね。
「楽しかったです、おじゃましました」と帰ろうとする弥生さん、「明日お仕事ですか?朝早いですか?」と聞く夏に、「はい」と答える弥生さん。
引き留めたいのに引き留められない夏くん!初心だね!
(※なにわ男子の「初心LOVE」が大音量で私の脳内に再生されています)

なんかこの時の夏くんの立ち方、ちょっと頭を下げて少し猫背で手をぐーで握って体の真横にお行儀よく置いている感じが、いかにも夏くんって感じで。
そういえばいつものSnowManとしての目黒さんって、すごく姿勢が良くてキラキラしてるけれど、こういう立ち姿勢ひとつとっても、きっと夏のキャラクターを踏まえて調整して表現されているんだろうな、と今さら思いました。
ちょっともごもごした喋り方とか、自信なさげに泳ぐ目とか、「目黒蓮」じゃなくて「月岡夏」でしたもんね、終始。
大俳優さんたちに囲まれて物凄いお芝居を見せてくださった目黒さんのこれからのお芝居も、とても楽しみです。
色々な役をやって、素敵な作品に出逢ってほしいな。


で、話を初心LOVEに戻して(違)
なかなか引き留めてこない夏くんに、弥生さんがトスを上げます。

-弥生「終電って、まだあるんでしたっけ?」
-夏「ないと…思います。」
-弥生「ですよね。早朝、月岡さん起こさないようにさっといなくなるんで、まだいてもいいですか?」
-夏「いてください。」
-弥生「じゃあいます。」
-夏「はい。」

「海のはじまり」第12話(最終話)より


恋!!!!!!!!!!!!!!!!乾杯!!!

終電で引き留めた二人が、終電で別れたんだな、と思うと、ちょっぴり切ない円環ではありますが。
でも、海ちゃんのすやすや眠る顔を見ながら弥生さんがこの時のことを思い出していたとしたら、きっとそこには悲しみとかではなく、ひとつの懐かしい愛おしい思い出としての回想だったんじゃないかな。
なんかこう、ちょっともどかしい感じの関係性でもじもじする夏くんに、弥生さんがふわっとトスを上げてあげる感じ、そしてそのトスが上がったら即それに飛びつくわんこのような夏くんの感じ、この二人の感じが、可愛らしくて、眼福でした。(感謝)

今回の「海のはじまり」、月9っぽくないと言われるようなテーマの壮大さはあったけれど、こういう回想シーンの恋愛描写ってめちゃめちゃ恋だったし、ちゃんと月9っぽさもあって、すごく楽しかったな。


夏と弥生

夏のアパートを出た弥生、帰り道で仕事を終えて帰って来た夏に出会います。
この時の弥生さんの軽やかな「おう!」が、可愛らしくて、清々しくて、なんかもうこの二人大丈夫だなって安心して観ていられますね。

-弥生「海ちゃん寝ちゃって、大和くんがまだいる。ありがとね。すごい楽しかった。」
-夏「…うん。俺も。」
-弥生「うん。ん?何が?あ、休日出勤?」
-夏「あんまりそう見えてなかったと思うんだけど、俺も楽しかったんだよね。楽しかったよ。」
-弥生「そう?ならよかった。」

「海のはじまり」第12話(最終話)より


このシーンよかったなあ。よかった。ちょっと泣いた。

今日1日のありがとうと楽しかったを伝えた弥生さんに、夏くんは、弥生さんと過ごした時間に対するありがとうと楽しかったをちゃんと伝えて。
そういうことをちゃんと伝え合うことが出来ずに別れた二人でしたから、今こうして、お互いが本音で、楽しかったよ、ありがとうって言えるって、本当にいい関係だったんだろうなと思うし、ここでちゃんとこの二人は、しっかりとこれまでをおしまいにして、これからをはじめていくという感じでしたね。

別れる時に、「好きだったよ」じゃなくて「楽しかったよ」って言えるのってなんかいいな。
ありがとうをちゃんと言ってお別れ出来るのも、いいですよね。
夏くんと水季はそんな風には別れられなかったし、弥生さんと元恋人もきっとそんな感じじゃなかっただろうから。
こんな別れ方を出来るってことは、過去を捨てるんじゃなくて肯定して抱きしめられたってことだし、本当に素敵な、好きなシーンでした。
私もこんな風に夏くんと別れたいし弥生さんと別れたい。
なんかもう付き合いたいっていうか、別れたいという境地(笑)
別れ方に胸きゅんするなんて、なんてラブストーリーなんだ。

「silent」の紬と湊斗の別れ方にも少し繋がりますね。
「silent」では、紬の母・和泉さんの台詞で、「お別れする時こそね、全部相手に渡さないとだめ。中途半端にすると自分の中に残っちゃうから。」というのがありました。
別れる時に相手にぶつけるのって、ネガティブな感情や言葉になりがちかもしれないけれど、自分の中にある感謝とか楽しかったこと、あなたでよかったという気持ちをちゃんと伝えること、相手に渡すことって、本当に素敵だなと思います。
そうやって相手に渡した上で残ったものは、きっと宝物になる。
今までが、忘れたい思い出やなくしたい記憶にならずに、ずっと持っていられる宝物になることって、本当に幸せなことだし、そう出来るかどうかは、きっと今の自分次第なんですよね。

ちなみに夏くんが「あんまりそう見えてなかったと思うんだけど…」と話すシーン、ちょいっと手で耳下のあたりを掻く仕草をするのですが、これ、回想シーンで「つまらなかったですよね」って言ったシーンでも似たような仕草をしていて。
「楽しい」で繋がるシーン、きっとこの共通した仕草も意図的ですよね。
演出なのか目黒さんのお芝居なのかわからないけれど、細かくてさすがです。

有村架純さんの「そう?ならよかった。」の言い方や表情も素晴らしくて。
弥生さん、波乱万丈で相当な苦しみも味わって、でもこんなにも柔らかくて、チャーミングで、素敵な女性だったのは、有村架純さんだったからですよね。
ずっと素敵でした、弥生さん。

弥生さんを駅まで送る夏。
「パパ頑張ってるね。自信ついた?」と聞く弥生に、うんともううんともつかない曖昧な返事で笑う夏。
「またそんな返事して」と笑う弥生、「まあ、そんなないか。はいかいいえでね、答えられることなんて。」と笑います。
この弥生さんの台詞、夏と水季が新歓コンパの居酒屋で出会った時に水季が言った言葉と同じですね。
弥生さんがこう言ったのを聞いて笑った夏くん、似ていないようでとこか似ている二人に笑ったのかもしれません。

夜道を並んで歩いて行く二人の背中。
もう手は繋いでいないけど、今の二人ならではの関係があって、よかったね、と思えて終われて本当によかったです。
ずっとあった夏の曖昧さも、父や母のはじまりや終わりに対する曖昧さも、そのまんまで肯定されて笑って生きていけるような、そんな救いのあるシーンでした。


水季の手紙

朝、「やばい、すっごい上手く出来た!」と、海の三つ編みが上手に出来て嬉しそうな夏。
成長したね、夏くん(涙)
ひとつひとつでいいんですよね。
一気に全部出来なくても、まだ編み込み出来なくても、大丈夫。
ひとつずつ向き合えば、いつか乗り越えられる。
今全部は無理でも、今しんどくても、"いつか"って向き合い続けるだけでいいし、それが大切なんだなと、三つ編みひとつでも伝わってきます。

水季と海の写真と、水季と夏の写真。
2枚の写真に向かって「行ってきます」と挨拶をして出発した二人。
その写真と一緒に、「夏くんへ」と書かれた水季が残した手紙も置かれています。
手紙に寄って、流れるback numberの主題歌。
ここでやっと、水季の手紙の全文が明かされました。

「夏くんへ。お久しぶりです。元気でしたか?内緒で産むと決めた事、後悔してません。夏くんはいなかったけど、海と過ごせて幸せでした。一人で海を育てたわけじゃないよ。たくさんの人に助けられてきました。たまに夏くんにいてほしいと思うことはあったけど、全然大丈夫でした。海と、海を大切にしてくれる人たちがいたからです。その人たちは絶対に夏くんのことも大切にしてくれます。一緒に過ごした人も場所も、海や夏くんのことを忘れません。頼って、甘えてください。親から子供へのいちばんの愛情って、選択肢をあげることだと思う。海には、自分の足で、自分の選んだ道を進んで欲しい。夏くんには、大きくなってく海の足跡を、後ろから見守ってほしいです。私たちがお別れしてから、夏くんはどんな風に生きてましたか?誰と出会って、誰と過ごしてきましたか?何を知って、何を大切にしてきましたか?私や海とは関係ない、夏くんだけの大切なものがあっていいはずです。思い出を捨てないでね。人は二人の人から生まれてきます。一人で生きてくなんて無理なんだよ。夏くんも誰かと生きてね。海を幸せにしながら、自分も幸せになってね。二人が一緒にいる姿が見れないのはちょっと残念だけど、想像するだけで、ちょっと幸せな気持ちになります。海と生きることを選んでくれてありがとう。海の母より。」

「海のはじまり」第12話(最終話) - 南雲水季


アパートを出て手を繋いで走るスーツ姿の夏とランドセルを背負った海。
走る二人の後ろ姿だったり、笑って走る二人の表情が、いつかの水季と海のようで。
12話かけて、水季から夏へ、海というバトンが渡ったことを感じさせます。

水季の手紙のモノローグに合わせて映る風景や人。
水季と海が暮らしたアパートの大家さん。空っぽになった部屋。
水季が働いた図書館。三島さん、津野くん。
海がいた小学校。夏美先生とクラスメイトたち、まだ飾られている海が描いた絵、水季と歩いた廊下。
月岡家、ジェンガで遊ぶ和哉さん、ゆき子さん、大和、海。
お迎えにきた夏、靴ひもを自分で結ぶ海を、黙って隣で待ってあげる姿。
職場で働く弥生、弥生の同僚、いつも通りの毎日。

なんかもう、ずっと涙で見えなかった。
ただただあたたかい涙で、ずっとそれがそこにあってほしい、みんな笑っていてねと、ただただ願ってしまいます。
映像と手紙の文章の合致度もさすがで、じんわりと心に沁みていきましたね。

水季のお墓参りにやってきた夏と海。
お墓に鳩サブレーをそっと置いてあげる海と、笑って見守る夏。
海ちゃんがまた新しい髪型をしているのも、夏くんの進化が感じられます。
冷静に考えて夏くんがパパだったらめっちゃいいな、かっこいいし優しいし髪の毛やってくれるし早く帰ってきてくれるしかっこいいし。
海ちゃんに転生したい。

夜、お風呂上りに海がやると言って夏の髪の毛を海ちゃんが乾かしてあげるシーンも、本当に二人の仲睦まじさが伝わってくるようで、ただただよかった。
ベッドには相変わらずお布団をかぶったイルカたち。
その隣のお布団で、海ちゃんをトントンしてあげながら眠る夏。
なんかもう、ここに水季がいたらとかも思わなくなっている私がいました。
だって、いるから(涙)

水季の手紙を一緒に読む夏と海。
意味を聞かれて、「海ちゃんのことが大好きってことと、ママは幸せだったってこと」と伝える夏。
説明は下手だけど要約は上手な夏くん。良いパパだよ(涙)

最後、手紙の裏側に「追伸」として書き足された水季の文字を見つけた夏でした。

水季、手紙の内容が明らかになるまで、水季はどんな気持ちでどんな想いを手紙に託したのかとあれこれ考えていましたが、今回明らかになって、きっと水季は笑顔でこの手紙を書いていたんだろうなと思いました。

「ごめんね」とか「よろしく」とか一方的な言葉は残さず、海の幸せと夏の幸せを願い、いることを選んでくれた夏に「ありがとう」を伝える。
きっと、水季が一人で海を産み育てた日々は苦労もたくさんあっただろうし、全然"全然大丈夫"じゃないこともたくさんあったと思う。
それでもきっと、水季にとって振り返ればそれは幸せでしかなくて、後悔していないということは、水季にとっての事実なんだよね。
もちろん、もっと生きることが出来ればそれがいちばんよかったけれど、自分の終わりが迫る中で、生きてきた道を幸せだと振り返ることが出来るのは、やっぱり水季が水季なりに、不器用で間違えながらも一生懸命に考えて選んで生きてきたからで、他人にどう言われようと、自分自身が自分の人生を幸せだと言えるなら、それは間違いなく幸せなんだと思います。

父親になると決めた夏のことを、水季らしく深く大きな愛情で想っていることも伝わってきて。

きっと夏くんのことだから「水季ごめん」とか思ってるんだろうな、何に謝ってるの?
どうせ夏くんだから優しいから全部背負って一人でやろうとしちゃうんじゃないかな。
全部捨てて海のために生きるって決めちゃうんじゃないかな。
そんなことを想いながら、愛と信頼を込めて、夏の背中を後ろから押すために水季が残した手紙。

夏のだめなところも、弱いところも、優しさも、愛情深さも、水季なりに知っている"夏くん"のことを精一杯に思って、夏の幸せを願った水季の気持ちが、言葉が、父になるということを背負いすぎようとした夏の心を軽くしたし、海ちゃんの不安も取り払った。
この手紙の内容が正解すぎて、完璧すぎて、水季すぎて、もう何も文句ないです。大満足。大拍手。

一人でなんか育てられないんだから、誰かと生きて、周りに頼ること。
南雲家や津野くん、水季が必死に築いてきたつながりが、今もこれからも夏と海の力になるし、夏自身が水季のいない時間に築いてきたつながりだってそう。
頼って甘えていい。
思い出を捨てなくていい。
こんな愛あるメッセージありますか。

不器用な水季なりに妊娠・出産・育児を経て、そして病と向き合って、そうやって色々と越えてきた水季だからこそ夏に送ることが出来る究極の愛であり、エールですよね。
何度も何度も読み返したい手紙だし、きっと夏も海も、迷ったら、水季に会いたくなったら、この手紙を何度も何度も読むんだろうな。

元恋人としてでもなく、妻のような立場としてでもなく、「海の母」として、水季が夏に託したメッセージ。
「海の父」として、こうしてまた水季とつながり想いを受け取った夏。
手紙の内容、すべて明かされなくてもいい!と思っていましたが、やっぱり明かしてもらえて心から嬉しいです(笑)
私も何度も読みたいくらい、12話かけて紡がれたメッセージが詰まった、大切な大切なプレゼントのような手紙でした。

ごめんなさい

近くに遊びに行くついでにと、海を連れて南雲家にやってきた夏。
嬉しそうに出迎えて「ありがとう」と笑った翔平さん。
翔平さん(涙)

翔平さんも、海のおじいちゃんとして、そして夏のお父さんとして、また自分の居場所を見つけて、水季を感じながら前を向いて生きていけそうで、本当によかったです。
翔平さん、いつもそこにいてくれて、本当にありがとうございます。
そして夏くんも、「ついで」だなんて言ってあげられるくらい、思慮深くて、翔平さんに優しい。素敵。

縁側で水季のアルバムを見ている間に夏の膝の上で眠ってしまった海。
飲み物を持って来た朱音さんに、ママ若いねって騒いで寝ちゃいましたと笑う夏くん、もう完全に海の父であり朱音さんの息子ですね。

その言葉を受けて、「若すぎたわ。本当に。」と朱音さん。
アルバムを開きながら、ゆっくりと話します。

「いつ言おうかなってタイミング探って言えてないことあるの。娘が自分より先に死ぬこと想像してみて。私たちはね、娘の遺影の写真を選んだの。それがどんなに辛いか、今なら少しはわかってくれるかなって思って、言いました。いじわるばっかり言って、ごめんなさい。可愛いでしょ?全部可愛くてね。選ぶの大変だった。」

「海のはじまり」第12話(最終話) - 南雲朱音


朱音さん(涙)
最後にすごく悲しくて、辛くて、でも愛しかなくて、涙涙のシーンでした。朱音さんが言えてなかったこと、「ごめんなさい」ですよね。

娘の遺影の写真を選ぶだなんて、どんなに辛かったことか。
どの写真も可愛くて、水季、本当に可愛くて、可愛くて仕方ない、大切な娘だった水季。
娘を亡くしたことを乗り越えるなんてきっと出来ないけれど、それでよくて、今海と向き合い親になろうとしている夏にその悲しみをわかってもらえること、それによってまたひとつ、朱音さんも癒されていくはず。
この話を夏に出来たのは、朱音さんが夏を親として、そして息子として受け入れたからだし、夏のことを、自分の可愛い娘を愛してくれた人、可愛い娘の可愛い娘を存在させてくれた人として、夏が朱音さんにとっての大切な人にちゃんとなったことも示すようなシーンでした。

それを受け止める夏の表情も、素敵だったな。
じわっと目は潤むけど、泣かない。ちゃんと受け止めている夏くん。
確かに朱音さんの言葉も、翔平さんの言葉も、津野くんの言葉もそう。
たくさんの言葉や態度が夏を揺さぶったことは事実だけれど、誰も悪くないし、みんながギリギリの状態だった。
今の夏くんだからこそ理解出来ることも多いだろうし、これから海ちゃんを育てていけばいくほど、朱音さんや翔平さん、ゆき子さんや和哉さん、水季に対して思うことや感謝することが、きっと増えていくはず。
そうやって親として成長していく夏くんが、ただ朱音さんのそばにいてあげること、そばで海と笑って健康でいること、それがきっと朱音さんの救いになりますね。

ギリギリの状態で夏くんに"いじわる"を言ってしまった朱音さん。
大人になってごめんなさいって言うってすごいことで、でもちゃんと伝えたのは、夏くんを家族として受け入れて、海と水季を託した証ですよね。
弥生さんにも津野くんにもいじわるをぶつけてしまったことがある朱音さん、きっとずっと胸につかえていたごめんねを言えた姿が、とても美しかったです。
大竹しのぶさんのお芝居を毎週見れた夏、本当に贅沢でした。

切り替わって、回想シーン。
さきほどまでの夏のように、縁側に座る水季と、水季の膝で眠る海、その横に座り、鳩サブレーを差し出す朱音。
翔平さんが水季のために一番大きい缶に入った鳩サブレーを買って来たとのこと。
「お父さんほんと好きだね私のこと」と笑う水季。
大好きだったんだよね翔平さん。
海ちゃんが以前食べていた鳩サブレーも、もしかしたらこの缶の残りだったのかもしれませんね。

-南雲水季「お母さん。海、産んでよかった。」
-南雲朱音「そう。」
-南雲水季「死にたくないんだけどね、でも、娘が自分より先にって想像したら、それに比べたらもう全然、喜んでって感じ。だから、ごめんね、お母さん。待ってるけど、でもあんま焦んないでね。お母さんせっかちだからちょっと心配。」
-南雲朱音「海、産んでくれてよかった。」
-南雲水季「うん。」
-南雲朱音「海いなかったら、お母さん寂しくてすぐ水季のところに行こうとしちゃうもん。」
-南雲水季「そ。じゃあほんと産んでよかったわ。」
-南雲朱音「うん。」
-南雲水季「海のパパがいたからだよ、海がいるの。」
-南雲朱音「うん。」
-南雲水季「優しい人だよ。」
-南雲朱音「うん。」
-南雲水季「あんまいじわる言わないであげてね。」
-南雲朱音「いじわるは言うわよ。」

「海のはじまり」第12話(最終話)より


夏と縁側で喋りながら、この日のことを思い出していたのかもしれませんね、朱音さん。

親より先に死ぬこと、子どもを先に亡くすこと。
どちらも本当に苦しい。
親が子より先に死ぬことって全然当たり前じゃないのに、どうかそれが当たり前であってほしいと願ってしまいます。

「海、産んでくれてよかった。」
一人で産むと水季が言った時に散々揉めたよねって笑えちゃうくらい、海がいて水季もいた日々はきっと、朱音さんにとっては幸せでしかなかったし、水季が残してくれた海が、夏という新しい家族とつなぎ、未来につながっていく希望になったんですよね。

いじわるのくだり、水季が朱音さんの事を見透かしていたようで、そして朱音さんらしくて、くすっと笑える、とても素敵な親子のシーンでした。

朱音さん、夏くんだからって感情をぶつけたわけではないし、いじわるをしたわけでもなくて。
もしも夏くんが水季と普通に結婚していたとしてもちょいちょいいじわるを言っただろうし(笑)、相手が夏くんだろうが誰だろうが、きっと"いじわる"してしまったはず。
その"いじわる"は、愛ですから。
朱音さんなりの不器用な愛を、ぽすんって受け止めたり上手く交わしたりすることの出来る夏くん、意外と良いコンビになりそうですよね。

夏がダメだったとか、そういうことじゃない。
大切な娘の娘を託す人だから、だったんですよね、朱音さんの"いじわる"。
時にピリっとチクっとさせるような人として描かれてきた朱音さんも、一人の親として、一人の女性として、不器用ながらも踏ん張って生きているんだということが描かれて、救われたような素敵なシーンでした。

一緒にいる

ラストシーンです。
海辺の水際を歩く夏と海。
先を歩く海と、少し距離をとってその後ろを歩く夏。
第1話の水季と海のシーンと同じですね。
画角もカットもそのシーンと重なるようにつくられています。
やっぱりそこにすべてがあったんだな。

あの時は少し白っぽい、曇り空のような、朝のような昼間のような、夏にも秋にも見えるような海でした。
でも今は、空は晴れて、海は青くて、陽が差していて、明るい景色の中、きらきら輝く海の前で、二人が笑っています。

海の写真を撮りながら歩く夏。
かつて海に来てはしゃぐ水季の姿をスマホで撮っていましたね。
ひとつひとつが蘇って、つながって、ああ本当に12話かけて、水季から夏にバトンが託されたんだなと感じます。

ここで流れる、水季のモノローグ。手紙の追伸です。

「追伸。海はどこから始まってるか、わかりますか?海に聞かれて、水があるところかなと曖昧な答えしか出来ませんでした。はじまりは曖昧で、終わりはきっとない。今までいなかった夏くんが、いつからか海のパパになっていて、今そこにいない私は、いなくなっても、海のママです。父親らしいことなんて出来なくていいよ。ただ、一緒にいて。いつかいなくなっても、一緒にいたことが、幸せだったと思えるように。」

「海のはじまり」第12話(最終話) - 南雲水季


全部だね。この物語の全部。

大きな海を前に、並んで立つ二人。
「夏くん、あっち行っていい?」と聞く海、夏が「いいよ」と言うと、海は歩き出します。
少し距離を取ったまま、海の後ろをついていく夏。
水季がそうしたように、夏も、海が行く道を、後ろから見守ります。

立ち止まり、少し不安そうに振り返った海。
「いるよ」と笑った夏。
笑顔になってまた歩き出した海。

第1話冒頭のタイトルバック、「海のはじまり」の文字が水平線に沿って浮かんで、前を歩く海と後ろを歩く水季。
それとぴったり重なるかのように、今回も「海のはじまり」の文字が水平線に沿って浮かび、海とその後ろを歩く夏が映し出されました。
第1話と今回のこのシーンをもしも重ねたら、まるで3人が一緒に歩いているように見えるくらい、ぴったりと、同じ。
本当に美しくて、完璧なエンディングでした。
大拍手。スタンディングオベーション。ありがとう。大好き。

はじまりは曖昧で、終わりはきっとない。
物語の全部、全部そうだね。

死んだから終わり、堕ろしたから終わり、別れたから終わり、知らなかったから終わり、隠したから終わり、じゃない。
命に対する責任や担うべき役割に対する厳しさに真摯に向き合わなければならないということは、丁寧に丁寧に、ずっと描かれてきました。

人とのつながりも、海や水季がいなければつながらなかった人たちがつながり合って、その素敵さもたくさん感じた一方で、人と人がつながり合うことの難しさもずっと描かれてきました。

誰かと関わるって、簡単じゃなくて、コミュニケーションって何度も何度も間違えてしまうし、ひとつの間違いで何かが壊れたり、誰かを傷つけてしまうし、それはどんな言葉を紡いでも取り返しがつかないことだってある。
器用そうに見える人もとても不器用だったり、分かり合えているようで何も知らなかったり、わかった気になってしまうことですれ違ってしまったり。
でも、そういうことを繰り返しながら、たくさん間違えてもがきながらも、つながろうとしていくこと、諦めないこと、対話を続けること、時間をかけること。
そういうことを重ねていくことでしか人はつながれなくて、重ねていくことで、そのつながりは宝物になる。
終わりのないコミュニケーション、すれ違いや分かり合い、そのすべてが、誰かと生きるということなんだろうなと思います。

ゆっくりと歩きながら、左側の方に抜けて消えていく海ちゃんと夏くん。
まだまだやっとスタートしたばかりの二人。
きっとこの先も、たくさんの苦労があって、傷ついたりうまくいかないこともたくさんあるけれど、この世界のどこかで、一生懸命に向き合って生きていくんだろうな。
幸せになってね。
架空の物語の登場人物に過ぎないけれど、幸せを心から願ってしまいます。

「海のはじまり」
とても壮大なテーマだったけれど、誰もが誰かの立場で関わることが出来る物語でもありました。

「観てきてよかった」
最終回を視聴して、心からそう思えて、幸せです。




はあ。終わってしまいました。でも幸せ。とても満たされています。

手紙とかノートとかドラマチックな要素もあったけれど、ただひたすらにその人たちの半径3メートルくらいの世界を描いてきた物語。
今どこかで生きている人の人生を覗きながら、自分と重ねたり、自分を確認したりしながら見つめて来た時間は、本当に楽しかったし、幸せだったし、受け取ったものがたくさんありました。
この物語が託してくれたものを、そっと自分の宝物にして、ずっと持っていたい気持ちです。

たかがドラマ、誰かにとっては響かないしハマれないし届かなかったかもしれないけれど、私には必要だったし、出会えて幸せで、本当に大切な宝物になりました。
今の気持ちでまた第1話から観直したら、また新しい解釈や感情が生まれるんだろうな。
シナリオブックも買ってしまいまして、上巻は届いたので、まだまだこの世界に浸りながら観たいと思います。

今はただただこの幸せな余韻に浸って、コロッケでもつまみながら一杯やりたい気持ちです。
この幸せを、皆さんと分かち合いたい(笑)
多分、この物語をじっくり見つめてこられた方々、私の長文を最後まで読んでくださるような方々は、きっと同じ幸せな気持ちになっているのではないでしょうか。
もしもモヤっとが残った方がいたとしても、それも含めて色々な見方や感じ方のあるひとつの物語として、とても美しい作品だったと心から思います。

「海のはじまり」
大好きです。
食べて、笑って、悩んで、健やかに、生きよう。
自分を幸せにするために、大切な人を幸せにするために。

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