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ドラマ【海のはじまり】名台詞集

2024年7月期フジテレビ月9ドラマ「海のはじまり」より、心に残った台詞をまとめました。

*鑑賞時に書き起こした台詞を記録しているため、表記や文言は脚本と異なる場合があります。恐れ入りますがご了承いただけますようお願いいたします。


●作品情報

公式サイト


●名台詞集

第1話

終わりはないね。ずーっと海で、その先にまた海岸があるよ。

-南雲海「どこから?」
-南雲水季「どこから?何が?」
-南雲海「海。どこから海?」
-南雲水季「水があるところからじゃない?(波打ち際を指さして) ここから。ここ。」
-南雲海「(波が引いたのを見て) ここ、海じゃなくなった?」
-南雲水季「うーん。別に、ここからが海とかってないんじゃない?わかんないけど。海がどこから始まってるか知りたいの?うーん。難しいなあ。」
-南雲海「(水平線を指さして) 終わりはあそこ?」
-南雲水季「ああ、水平線ね。あれは終わりじゃない。終わりに見えるだけであの先もずっと海。」
-南雲海「どこが終わり?」
-南雲水季「終わりはないね。ずーっと海で、その先にまた海岸があるよ。ここみたいに。」
-南雲海「ふーん。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

第1話冒頭、海辺を歩く水季と海のシーンでの会話です。
生と死の象徴とされる海。
人や関係、命の、はじまりと終わり。
この物語のテーマが詰まったシーンでした。


いるから大丈夫。行きたい方へ行きな

「いるよ。いるから大丈夫。行きたい方へ行きな。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

物語の冒頭、波打ち際を歩く水季と海。
少し先を歩く海が不安そうに振り返った時に、水季が海にかけた言葉です。
「いるから大丈夫」。
物理的にそばにいるということと、どこかにいるということと、どこにもいないということと、心にいるということ。
この前の、「終わりはない」という台詞にも通じて、自分がいなくなってもずっといるという水季の想いを示しているようで、この物語のテーマに通じていきそうな台詞でした。

たくさん試した中で一番いいものが選べるならいいことでしょ?

-百瀬弥生「これで全部ですか?もうちょっと選択肢って増やせませんかね。この中のどれかって妥協するのは、あの、お互いによくないです。」
-同僚「数増やさせて結局あの3つのどれかになったらどうするんですか?」
-百瀬弥生「たくさん試した中で一番いいものが選べるならいいことでしょ?」

「海のはじまり」第1話 - 百瀬弥生

職場で試作品のサンプルを確認した時の弥生の台詞です。
目の前の選択肢のみに絞らず、あらゆる可能性の中から最適を選ぼうとする。
はっきりと意見を言う部分も含め、弥生の性格が垣間見えるシーンでした。


その曖昧なの万能じゃないからね

「その"うん"とさ"ううん"の間みたいな返事、やめれる?その曖昧なの、万能じゃないからね。」

「海のはじまり」第1話 -百瀬弥生

どっちともつかない曖昧な返事を繰り返す夏に、笑いながら弥生が言った言葉です。
このシーンはほのぼのした可愛らしいシーンでしたが、夏のこういう曖昧さ、夏の相手を想うがゆえに言葉を呑み込んでしまったり決定を委ねるような弱さと、今後彼は向き合っていくことになるのでしょう。

親の勘。怖いよ。

「親の勘。怖いよ。悪さ出来ないように備わってる。」

「海のはじまり」第1話 - 月岡和哉

急に帰って来た夏を見て、葬儀ではと気付いた父親の和哉の台詞です。
ドラマ「silent」では、「親の真心」という名言が出ましたが、それに通じる、親の愛や存在を感じさせる台詞でした。
和哉は夏の母の再婚相手なので、夏にとっては義理の父親ですが、この「親の勘」という台詞を、夏とは血の繋がりのない親である和哉が言ったことに、意味を感じます。


でっかい声で誰がかわいそうだの誰の責任だの

-真山純希「棺覗いてた女の子、南雲さんの娘だって。月岡待ってる間、親戚かな?話してるの聞こえちゃった。シングルマザーだったみたいで。でっかい声で誰がかわいそうだの誰の責任だの。」
-月岡夏「あんな大きい子いるんだ。」
-真山純希「な。びっくり。」
-月岡夏「何歳?」
-真山純希「どうだろう、幼稚園とかかな。びっくりだけどちょっと納得。南雲さん昔からなんか一人で生きてけそうな感じあったし。」
-月岡夏「いや生きれなかったから今葬式してんだろ。」

「海のはじまり」第1話 - 真山純希

当事者以外の部外者が、その人のことを勝手に決めつけて、勝手に定義して、勝手に語る。
本当のところなんて、本人以外にわかるわけがないのに。
生方さんの脚本に流れる重要な部分を示す台詞だったと思います。

自分より他人のこと考えちゃうだけでしょ

-南雲水季「人に合わせて興味ないとこ来れるって、すごいですよね。」
-月岡夏「よくないですよね。自分で決められなくて、人についてってばっか。」
-南雲水季「え、すごいよ。人に合わせられるのってすごいことですよ。」
-月岡夏「いや、意思がないっていうか、自分がないっていうか。」
-南雲水季「自分より他人のこと考えちゃうだけでしょ。いいことですよ。」
-月岡夏「でも、はっきりしろとか、よく言われるし。」
-南雲水季「ああ、それは確かに。曖昧な返事ばっか。」
-月岡夏「くせみたいになってて。」
-南雲水季「まあ、はいかいいえで答えられることなんて、そんなないですよ。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

大学の新歓で出会った夏と水季、二人の会話です。
この時から、夏はどこかぼんやりと曖昧で、自分の意思を前面に出さないような性格。
でもその夏の性格を、海は嫌味でもなんでもなく、肯定しました。
この後、性格は真反対の二人は付き合うようになります。


自分で自分の選択肢を狭めんな

-南雲水季「じゃあ、犬か猫かコアラかハムスターかウサギだったら?好きなの。」
-月岡夏「うーん。南雲さんは?」
-南雲水季「イルカでーす。」
-月岡夏「それ選択肢になかった…」
-南雲水季「他のあらゆる可能性から目を逸らすな。自分で自分の選択肢を狭めんな。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

学校での夏と水季の会話です。
この物語のひとつのテーマである、選ぶということに通じる、水季の価値観が分かるシーンです。

いるでしょ?パパ。

-月岡夏「お父さん、いないよね。ごめん。」
-南雲海「いるよ。いるって言ってた、ママが。いるでしょ?」
-月岡夏「あ、俺?」
-南雲海「パパ。」
-月岡夏「まあ、いるけど。」
-南雲海「でしょ。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲海

葬儀場で出会った夏と海。
夏が、父親の事を口に出してしまったものの、海を傷つけてしまったと思い「お父さんいないもんね」と謝った時に、海がまっすぐに言った言葉です。
海にとって、父親は生まれた時からずっと、会ったこともなくそばにいなかったけれど、パパはいるよということを、水季が伝えていたのでしょう。
いないけど、いるということ。
これも後に繋がりそうなキーワードでした。


聞かなくていい、ああいうの。忘れらんなくなる。

-参列者「海ちゃん。」
-南雲海「こんにちは。」
-参列者「こんにちは。海ちゃん、楽しそうね。もうちょっと大きくなったらわかるから、今はね、楽しくていいのよ。おばあちゃんのとこで元気でね。じゃあね。」
-参列者「南雲さんのとこ行くって決まったの?」
-参列者「それしかないでしょう。父親いないし。」
-参列者「ああ。可哀想に。」
-月岡夏「…かわいそうじゃないよ。聞かなくていい、ああいうの。忘れらんなくなる。」

「海のはじまり」第1話 - 月岡夏

葬儀場でお絵かきをしている海を見て、参列者が「楽しそうね。もうちょっと大きくなったらわかるから、今はね、楽しくていいのよ。」と言って去って行く。
その光景を見た夏が、海にこの言葉をかけて、イヤフォンを差し出し、学生時代の水季が海ではしゃぐ動画を海に見せてあげました。
大人の無意識の言葉が、子どもの耳にはこびりつく。
意味はすぐにわからなくても、ずっと残って、傷になる。
夏にもそういう経験があるのか、とても苦しそうな表情でこの台詞を言っていました。
相手が子どもであっても、いつも周りの人の気持ちに想いを寄せる、そんな夏の性格が伺える台詞でした。


波風立てずに生活できたらそれでいい

-月岡夏「うちの家ああだから、親に心配かけるのが一番いやで。名前ある会社なら安心するから。」
-南雲水季「…なるほどね。偉いね。」
-月岡夏「面倒くさいこと嫌なだけ。波風立てずに生活できたら、それでいいから。」

「海のはじまり」第1話 - 月岡夏

夏の部屋での水季と夏の会話です。
夏の家に対するコンプレックス的なものが垣間見えました。
家庭環境が今の夏の性格に影響を与えたのかもしれません。


夏くんは堕ろすことも産むことも出来ないんだよ

-月岡夏「他の選択肢はないの?これしかないって決めつけてるなら、考えてから決めてほしい。」
-南雲水季「考えたよ。考えて決めた。」
-月岡夏「でも…」
-南雲水季「夏くんは堕ろすことも産むことも出来ないんだよ。私が決めていいでしょ?」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

夏にいきなり人口中絶の同意書を差し出し、サインをするように頼んだ水季。
水季は1週間前に妊娠を知り、夏には言わず、ひとりで中絶する決断をした。
そんな水季を前に考えてほしいと言った夏を制して、水季が言った言葉です。
これを言われた夏は、何も言うことが出来ず、震える手でサインをしました。
この時の二人は、まだ若くて、学生で、他の選択肢を、水季も夏も考えることが出来なかったのでしょう。
水季は水季なりに悩んで、決めた。
産むにせよ堕ろすにせよ、身体の変化や負担がかかるのは女性側である中で、若さゆえの決断だったかもしれませんが、一人で決断をした水季。
そして、水季を想いながらも、"産んでほしい"でも、”考えよう"でもなく、"考えてほしい"と言った夏も、相手を想ってしまうがゆえの曖昧さを残していて。
この二人のその後の運命を変える、とても重く、考えさせられるシーンでした。

相談しても私自分の意思変わんないの

-南雲水季「夏くんに相談しても、私自分の意思変わんないの。夏くんに影響されて自分の考えとか気持ちとか変わったこと1回もないし。」
-月岡夏「それはそうかもしれないけど、急に勝手に一人で決められたら心配するし。」
-南雲水季「急に勝手に一人で決めなきゃなんない時もあるんだよ。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

電話で夏に別れを告げた水季が言った言葉です。
結局夏は、言葉を飲み込んで、そのまま別れに同意してしまいました。
自分の気持ちは自分で決めるという強さを示した水季と、自分の想いなんて届かないと諦めてしまう夏。
どちらも、優しくて、弱くて、子どもでした。

絶対幸せになるし、する。

-南雲水季「夏くんより好きな人出来ちゃった。その人のこと、夏くんより好きで、ずっと一緒にいたいんだよね。夏くんよりずっと。」
-月岡夏「誰?」
-南雲水季「内緒。秘密。」
-月岡夏「ふざけないで。」
-南雲水季「ごめん。ふざけてない。」
-月岡夏「会って話そう。」
-南雲水季「だから、夏くんの言葉で意思変わったりしないんだって。」
-月岡夏「…そうだよね。」
-南雲水季「うん。あ、その人に伝えたいことある?私が今夏くんより好きな人に。」
-月岡夏「あるわけないだろ。」
-南雲水季「なんかないの?」
-月岡夏「うん。お幸せに。」
-南雲水季「はい。わかった。伝えとく。」
-月岡夏「あのさあ」
-南雲水季「絶対幸せになるし、する。」
-月岡夏「…勝手だよね。本当にいつもずっと。」
-南雲水季「うん。マイペースなんだよね。」
-月岡夏「マイペースっていうか、我儘で頑固で薄情。」
-南雲水季「うわー。最後にすっごい悪口言われてる。」
-月岡夏「大変だと思うよその人。水季と一緒にいるの。散々振り回されてどうせ最後に捨てられる。覚悟した方がいいって、うん、そう伝えといて。」
-南雲水季「はーい。」
-月岡夏「…ごめん。」
-南雲水季「なにが?」
-月岡夏「…身体、本当に大丈夫なの?」
-南雲水季「うん。」
-月岡夏「…うん。ならいい。元気でね。」
-南雲水季「うん。ばいばい。元気でね。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲水季

電話で別れを決めた際の、夏と水季の会話です。
ここで水季が言った好きな人は、海のことですね。
自分でどんどん決めてどんどん進んで行ってしまう水季の奔放さと、夏に一切を背負わせないと決めた強さ、そして夏の水季を想う優しさと一歩踏み込めない弱さ。
欠点を含めてお互い惹かれ合っていたのに、あっけなく電話1本で別れてしまう。
その儚さを感じるシーンでした。
このシーンでの目黒蓮さんのお芝居が秀逸です。

妊娠も出産もしないで父親になれちゃうんだから

-南雲朱音「気付きませんでした?あの歳の子ですよ?」
-月岡夏「6歳って…」
-南雲朱音「もうすぐ7歳になります。小学校1年生です。」
-月岡夏「…すみません、何も知らなくて…」
-南雲朱音「ええ、知らないですよね。男の人は隠されたら知りようがないですものね。妊娠も出産もしないで父親になれちゃうんだから。…そういうのないですよね?海の父親やりたいとか思わないですよね。ですよね。わかってます。押し付けようとしてるわけじゃないんです。」
-月岡夏「いや、あの…ちょっと…」
-南雲朱音「水季が勝手に我儘言って一人で勝手に産んだ結果ですから。大丈夫です。ただ、想像はしてください。この7年の水季のこと。想像はしてください。今日1日だけでも。」

「海のはじまり」第1話 - 南雲朱音

娘・水季の葬儀で夏に会った朱音が、夏に言った言葉です。
水季が夏に子どもを産む決断をしたことを一切告げなかったということを、朱音も理解していて、それでも水季を想うのなら、愛したのなら、何かしら出来ることはなかったのかと夏に対する憤りも押し殺しているような、そんな複雑な感情を抱えながら震える声で言った台詞でした。

辛いなんて思っていいほど何も知らない

-月岡夏「大学の時の同級生で、病気だったみたいで、知らなくて。」
-百瀬弥生「そっか。辛かったね。辛いね。」
-月岡夏「何も知らなかったから。辛いなんて思っていいほど、何も知らない。何も出来ない。」

「海のはじまり」第1話 - 月岡夏

葬儀の日、いつもと違う様子の夏を気にかけて様子を見にきた弥生の前での、夏の台詞です。
何か悲しいことがあった時、人は人のことを、何も知らないくせに、「辛かったね」とか「かわいそう」だとか言う。
相手を想っているからこそ、寄り添うつもりでその言葉をかけても、それはかける側のエゴなのかもしれません。


言葉の意味がわかんなくても感情は伝わってきちゃうんだよね

「わかる。俺も葬式は泣けなかった。母さん死んだ時。親戚のおばさんに"まだ小さいからわかんないよね"って言われて。わかんないとかじゃなかったんだけど。言葉の意味がわかんなくても、感情は伝わってきちゃうんだよね。」

「海のはじまり」第1話 - 月岡大和

葬儀の後に泣いたという夏に、自分も母親の葬儀の時にその場では泣けなかったと話した大和の台詞です。
今現在の海につながります。

夏くんのパパ、いつ始まるの?

-南雲海「終わるとどうなるの?」
-月岡夏「終わりは、終わりだよ。もうないってこと。帰ろう。待って、先に連絡するから。」
-南雲海「ママ終わったの?ママ終わっちゃったの?」
-月岡夏「死んじゃったんだよ。」
-南雲海「死んだらどうなるの?」
-月岡夏「ごめん。わかんない。死んだらどうなるかはわかんないけど、水季、お母さんじゃなくなるわけじゃないから。終わったんじゃないよ。」
-南雲海「夏くんは?夏くん、海のパパでしょ?夏くんのパパ、いつ始まるの?」

「海のはじまり」第1話 - 南雲海

夏の家を突然訪ねてきた海と夏の会話です。
海の子どもならではの言葉のひとつひとつが、夏を揺さぶります。
ここでも夏は、海の気持ちを想って、「終わったんじゃないよ」と言い直しました。
これから二人の関係はどうなっていくのでしょうか。


第2話

パパがいないとママもママになれないから

「パパがいない子はいないよ。パパって絶対いるの。パパがいないと、ママもママになれないから。パパが二人いる人もいるの。いていいの。」

「海のはじまり」第2話 - 南雲水季

海に自分にもパパがいるのかと聞かれた水季の台詞です。
パパが二人いる人、夏もそうですね。
この後、水季がパパに会いたいかと海に聞くと、海は、「ママの好きでいいよ」と笑います。
それを水季は、夏くんに似てると言い、涙ぐみながら笑いました。


わかった気になっちゃダメだと思った

-百瀬弥生「想像してみて、どう思ったの?」
-月岡夏「想像しただけで、わかった気になっちゃダメだと思った。」

「海のはじまり」第2話 - 月岡夏

海のことを弥生に打ち明けた夏。
朱音に水季の日々を想像してくださいと言われたことを話した時の、二人の会話です。
わかった気になっちゃいけない。
まだ戸惑いの最中にいる夏ですが、彼の性格、姿勢がわかる言葉でした。

巻き込み事故って感じよね

「彼女さんが一番巻き込み事故って感じよね。事故って言うのもあれだけど。」

「海のはじまり」第2話 - 南雲朱音

夏と朱音が喫茶店で会った時、弥生が現在の夏の恋人で、海のことを夏が打ち明けたと聞いた際の朱音の言葉です。
この物語で第1話から度々口にされる「事故」という言葉が、ここでも使われました。

なんかあってからじゃ遅いよ

-三谷彩子「私も考えたんですけど、あの産婦人科の診察、あれが怖くて。がん検診のお知らせとかももう、ポイってしてます。」
-百瀬弥生「それは受けときなよ。なんかあってからじゃ遅いよ。」
-三谷彩子「うん…でも嫌いなんだよな、病院が。」
-百瀬弥生「病院ね。嫌だよね。」

「海のはじまり」第2話 - 百瀬弥生

弥生と同僚の彩子の会話です。
がん検診については、脚本家の生方美久さんが、この物語で伝えたい事のふたつのうちのひとつに挙げられていました。
今後に繋がる台詞になりそうです。

言葉になるのが人より遅いだけ

-月岡ゆき子「言葉にするのが苦手な子だから。でもあれなの、何も考えてないんじゃないの。」
-月岡和哉「考え過ぎちゃって、言葉になるのが人より遅いだけだもんね。」

「海のはじまり」第2話 - 月岡和哉

夏のことを気にかける和哉とゆき子の会話です。
夏は実の母親のゆき子に対しても、昔からあまり自分の本音を話さない子だったということが伺えます。
言葉になるのが人より遅いだけ。
第2話で夏が弥生に海のことを打ち明けた際も、夏が言葉に詰まる間に弥生が言葉を発し、夏が思ったことを言えなくなってしまう場面がありました。


この人までいなくなったら終わり

-月岡夏「大和さ、お父さんと二人で暮らしてた時、どうだった?」
-月岡大和「どうって?」
-月岡夏「どうって…。」
-月岡大和「兄ちゃんがお母さんと二人だった時と同じじゃない?この人までいなくなったら終わり、みたいな。」

「海のはじまり」第2話 - 月岡大和

夏と大和、兄弟での会話です。
幼い頃に母親を亡くした大和と、離婚で父親がいなくなった夏。
二人とも、片親で育った期間があるからこそ、海の気持ちに寄り添える部分がありそうですね。

ずっと自分が殺したんだって思ってたから

-百瀬弥生「海ちゃん、また会ったの?ちゃんと相手出来たの?」
-月岡夏「会いに来てくれたんだけど、会わなかった。」
-百瀬弥生「あら、なんで?」
-月岡夏「先に弥生さんに全部説明したくて。曖昧にしてごまかしたから。」
-百瀬弥生「それはいつもじゃん。いつのどれ?」
-月岡夏「妊娠したことは…知ってた。」
-百瀬弥生「ん?」
-月岡夏「産んでたことを、知らなくて。」
-百瀬弥生「ごめん、どういうこと?」
-月岡夏「堕ろしたと思ってた。妊娠したことは聞いてた。知ってた。」
-百瀬弥生「月岡くんが堕ろせって言ったの?」
-月岡夏「(首を振る)」
-百瀬弥生「だよね。だと思うけど。」
-月岡夏「向こうが、意思固くて。それで同意したんだけど、すぐフラれて。その後のこと、何も知らなかった。」
-百瀬弥生「うん。」
-月岡夏「この先、あの子のことどうするかはまだわかんないけど…。でも、正直、ほっとした。生きててくれたんだなって。ずっと、自分が殺したんだって思ってたから。」
-百瀬弥生「殺したなんてことは…」
-月岡夏「あるよ。」
-百瀬弥生「その頃まだ二十歳とかでしょ?そういう選択すること珍しくないと思うし、悪いことじゃないと思う…」
-月岡夏「歳とか関係ないし、自分の意思で同意したし。もっと話し合えばよかったって。もっと出来ること考えてれば一緒に育てることだって…。その時は、そういうこと、後悔してた。その頃は…あの、別れたばっかの頃は。」
-百瀬弥生「いいよ。変な気つかわなくて。よかったよ。ずっと罪悪感抱えてるより。」
-月岡夏「…うん。」
-百瀬弥生「話せたから、会えそう?」
-月岡夏「うん。会ってくる。」
-百瀬弥生「うん。」

「海のはじまり」第2話 - 月岡夏

海とのことを考え始める前に、あらためて弥生と向き合った夏と二人の会話です。
この時夏は、珍しく弥生の声をさえぎるようにして、中絶に同意した時の後悔を語りました。
この時、弥生は夏に打ち明けませんでしたが、実は過去、妊娠し、中絶をした経験を抱えていた弥生。
この話を聞き、夏の前では落ち着いた様子で振舞った弥生ですが、一人トイレで隠れて流した涙には、とても重い荷物を感じました。

誰の子でもそうするわけじゃないから

-百瀬弥生「もしもし月岡くん?今大丈夫?海ちゃんと一緒?」
-月岡夏「大丈夫。これから行くとこ。」
-百瀬弥生「あ、ほんと?ちょうどよかった。」
-月岡夏「ん?」
-百瀬弥生「もし月岡くんがお父さんやるってなったら…」
-月岡夏「うん」
-百瀬弥生「私がお母さんやれたりするのかなって。」
-月岡夏「え?」
-百瀬弥生「決めるのは海ちゃんだけど、選択肢の中に入れてもらえたらなって。それも考えてみて。」
-月岡夏「…ごめん、そういうことは…」
-百瀬弥生「(笑って) ううん、違うからね、誰の子でもそうするわけじゃないから。」
-月岡夏「…。わかった。ありがとう。」

「海のはじまり」第2話 - 百瀬弥生

覚悟を決めたような表情で夏に電話をかけた弥生の台詞です。
いつもあらゆる選択肢を視野に入れて、最善を選ぼうとする弥生。
罪悪感からなのか、他に決意があるのかわかりませんが、この言葉が、海のもとへと向かっていく夏の足を一歩進めました。

自分の意思で選ぶことを大事にさせてあげてって

「水季からね、海のことで、これだけは絶対って言われたことがあるの。海に選ばせてあげてって。正解を教えるより、自分の意思で選ぶことを大事にさせてあげてって。手引っ張ったり、横に張りついたりしないで、後ろから見守ってあげてほしいって。」

「海のはじまり」第2話 - 南雲朱音

朱音と夏の会話の中での、朱音の言葉です。
生前の水季がどのように海を育てていたか、海にどんな人になってほしいと願っていたのか、伝わってくる言葉でした。
朱音も、考えているのはただひとつ、海の幸せ。
海が夏をもしも選ぶのであれば、この水季の言葉を胸に、一緒に考えていく存在になっていくのだろうと思います。

そこにいてね

「いてね。そこにいてね。」

「海のはじまり」第2話 - 南雲海

学校から帰宅したら、家に夏の姿を見つけた海。
海に抱き着き、学校のことを話そうと慌てて手洗いうがいをしに行った海が、ふと夏の方へ戻ってきて、言った言葉です。
明るく無邪気に振舞う海ですが、ママがいなくなったということ、そして夏がパパだということをわかっているのでしょう。
この言葉を受けた夏は、複雑な表情を浮かべました。

第3話

そう思っちゃう時もあるってだけ

-百瀬弥生「早くに二人出産してこのキャリアってすごいです。」
-小出志織「それでも色々諦めたけど、自分の仕事のこと。産んでなきゃなって思う時ある。」
-百瀬弥生「後悔してるってことですか?」
-小出志織「いや後悔とは違う。そう思っちゃう時もあるってだけ。だって自分の子どもって超かわいいからね。産んでごらん。」
-三谷彩子「産みたいです。」
-小出志織「早く結婚しなよ。」
-三谷彩子「セクハラです。モラハラです。」

「海のはじまり」第3話 - 小出志織

弥生の職場の先輩・小出が、弥生と綾子と3人で食事をした際の会話の中で言った言葉です。
産んだ女性、産まなかった女性、まだそうした選択の場面に立っていない女性。
それぞれにそれぞれの想いがあること、意図せずとも、女性同士であっても、ちょっとした言葉が誰かの傷をえぐっているような場面があることを、さらっと描いたシーンだと思います。


理由なんてないでしょ?なくていいのよ。

-月岡夏「なんでか本当にわかんなくて。」
-南雲朱音「なんで好かれてるのか?」
-月岡夏「何もしてあげてないし…」
-南雲朱音「月岡さん、ご両親は?ご健在?」
-月岡夏「はい。」
-南雲朱音「ご家族は仲が良いの?」
-月岡夏「はい。わりと。」
-南雲朱音「仲が良いことに理由なんてないでしょ?なくていいのよ。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲朱音

海がなぜ自分に懐くのかわからないという夏に、朱音がかけた言葉です。
家族だから好き。シンプルに、それだけだし、それでいい。
何かをしてあげるとかしてもらうとかではなく、いてくれるから、嬉しいし好き。
そういうことですよね。

じゃあ父親になるって絶対に言うから

-月岡夏「どうして…産むことにしたんですか?」
-南雲朱音「やっぱり産むからって、それだけ。」
-月岡夏「そっか…。」
-南雲朱音「父親に知らせないのは、選べないからって。その人、私が産むって決めたら、じゃあ父親になるって絶対に言うから。他の選択肢を奪いたくないって。だから、頼りなかったとか、他に誰かいたとか、そういうんではないんですよ。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲朱音

水季が海を産む決意をした理由について夏が尋ねた時に、朱音から語られたことです。
水季は自分の意思で母親になることを選んだ。
それにより、夏は水季の意思を尊重して父親になることを決めてしまう。
そう思ったのでしょうか。
確かに女性は、物理的に産むか産まないかの選択をまず迫られますが、身体的な変化を負わない男性にとって、「親になる」とはなんなのか。
この物語のテーマに繋がるシーンでした。


親って子どもの何を想ってて、何を知らないといけないのか

「不安になるでしょ、何かあったらって言われちゃうと。練習って言うのはいやだけど、でも、練習してください。親って子どもの何を想ってて、何を知らないといけないのか。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲朱音

夏が海と出かけて行く前に、もしも何かあった時のためにと、母子手帳、保険証、家の固定電話の番号、和哉さんの携帯電話の番号を渡し、海に食べ物のアレルギーはないことと、水分補給をこまめにさせるようにと注意事項を伝えた朱音。
戸惑う様子の夏を見て、かけた言葉です。


私お母さんやれますって顔してた

-南雲朱音「ちょっと意外だった。案外すんなり受け入れてるっていうか、不思議な人ね。あの水季の相手だから掴みどころはないだろうって思ってたけど。」
南雲翔平「いいじゃない、受け入れてくれないより。それにほら、ああいう子もいるとさ、海にも彼にも安心材料になるし。」
-南雲朱音「あの子…私お母さんやれますって顔してた。」
-南雲翔平「そうかな。」
-南雲朱音「30年くらい前ね、ベビーカー見るとイライラしてたの。」
-南雲翔平「ああ、30年前はね。」
-南雲朱音「欲しくてたまらなかった分、他人のそれにイライラして、なんで私じゃないのって。」
-南雲翔平「いいんだよ。その結果水季が来てくれたんだから。」
-南雲朱音「またどっか行っちゃったけどね。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲朱音

弥生について言った朱音の言葉です。
朱音にとって水季は、長年の不妊治療の末にようやく授かった待望の娘。
そして、若くして亡くなってしまった娘。
そんな想いで産み育てた娘の場所を、すっと現れた弥生がとって変わろうとしている。
そんな風に映ってしまったのだと思います。
そんな弥生への感情や、30年前に自身がなかなか授かれなかった状況での苛立ちを、はっきりと言葉にしたこのシーンは、印象に残るものでした。


悲しいもんは悲しいって吐き出さないと

-月岡夏「学校楽しい?」
-南雲海「うん。」
-月岡夏「おばあちゃんちは?」
-南雲海「楽しい。」
-月岡夏「本当に?」
-南雲海「うん。」
-月岡夏「…なんで元気なふりするの?」
-百瀬弥生「やめなよ。」
-月岡夏「水季死んで悲しいでしょ?何してても思い出してキツいと思うし。なんで…。泣いたりすればいいのに。」
-百瀬弥生「ねえ。」
-月岡夏「水季だって元気でいてほしいって思ってると思うけど、でも、元気ぶっても意味ないし」
-百瀬弥生「そんなことないよね。みんなが優しくしてくれるから海ちゃんも元気でいられるんだもんね。」
-月岡夏「水季の代わりはいないだろうし」
-百瀬弥生「大丈夫だよ。みんなママの代わりに海ちゃんのこと助けてくれるから。」
-月岡夏「水季が死んだってことから気逸らしたってしょうがないし。悲しいもんは悲しいって吐き出さないと」
-百瀬弥生「月岡くん。…海ちゃんごめんね。頑張って元気にしてたんだよね。偉いよ。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲水季

水季が亡くなってからもずっと涙を見せない海。
そんな海を気にかけていた夏が、ついに核心に迫った時の会話です。
自分が父親になるとか、弥生が母親になるとか、そういうことの前に、まず今の海を見つめる。
そのことを、そのことだけをずっと夏は考えていたんですね。
この時、海は夏のことをまっすぐに見つめながら、夏の言葉を受けて涙を流し、夏の元に駆け寄り抱き着いて、泣きました。
そんな海を抱きしめ返しながら、夏も泣きました。
大切な人がいなくなったということを、初めてちゃんと二人で感じることが出来た瞬間でした。

二人いるんでしょ?本当のパパ。

-月岡夏「父親と弟は、俺と血が繋がってなくて。父親が前に結婚してた人が弟のお母さんで、母親が前に結婚してた人が俺のお父さん。だから、他人なんだけど、でも今は、本当のお父さんと本当の弟。…わかる?」
-南雲海「二人いるんでしょ?本当のパパ。」
-月岡夏「うん。二人いる。」
-南雲海「うん。わかった。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲海

夏の家族について聞いた海が、笑って言った言葉です。
以前水季から、「パパがいない子はいないよ。パパって絶対いるの。パパがいないと、ママもママになれないから。パパが二人いる人もいるの。いていいの。」と聞かされていた海だからこそ、「本当のパパが二人いる」ということをシンプルに受け入れて、理解しました。
大切な人はひとりじゃなくていい。そんなメッセージが伝わる台詞でした。

ママのこと考える時間

-乃木夏美「今日は元気ないねえ。」
-南雲海「うん。でも大丈夫。」
-乃木夏美「大丈夫って?」
-南雲海「今、ママのこと考える時間。元気ないけど、大丈夫。」
-乃木夏美「そう。」

「海のはじまり」第3話 - 南雲海

夏の前で涙を流すことが出来た海。
学校でおそらく初めて見せた海の様子を気にかける担任の夏美ですが、ママのことを考える時間を持とうとする海を、優しく見守ったシーンでした。
ママのことを考えてもいい。考えているって言ってもいい。元気がなくてもいい。そう思えた海ちゃんです。

よくわかってないってことかも

-月岡夏「ねえ。パパいつ始まるのって聞いてくれたけど、始めてほしいってこと?パパになってほしいってこと?」
-南雲海「ううん。夏くん、パパやらなくていいよ。」
-月岡夏「え?」
-南雲海「でも…、いなくならないで。ママとパパ一人ずつしかいないから、だからいなくならないで。」
-月岡夏「パパだからいなくならないでほしいけど、パパやらなくていいってこと?」
-南雲海「うん」
-月岡夏「ごめん、パパやるって何?」
-南雲海「わかんない。」
-月岡夏「俺もわかんないんだよね。(海を自分の膝に乗せて) 認知するとか育てるとかって、そういうの簡単に決めるのも無責任な気がするし。」
-南雲海「無責任って?」
-月岡夏「わかんない。よくわかってないってことかも。」
-南雲海「いなくならないで、は、わかる?」
-月岡夏「それはわかる。わかるし、そうしたい。水季の代わりにはなれないけど、一緒にはいれる。」
-南雲海「じゃあいて。」
-月岡夏「わかった。」

「海のはじまり」第3話 - 月岡夏

海辺での夏と海の会話です。
無責任とは何かと海に聞かれた夏。
親とは何なのか、父親の責任とは。
ぐるぐると考え続けてきた夏は、無責任とはよくわからないということかもしれないと海に答えました。

想像しただけでわかったつもりになってはいけない。
人に対して、物事に対して、ずっと貫かれている夏のこのスタンスで、海のそばで「父親」を考え続けていくことを決めた夏です。


第4話

決めてないってことすごい責めるよね

「待って。決めさせようとしないで。弥生さん何も強要はしないけど、それは助かるんだけど、決めてないってことすごい責めるよね。」

「海のはじまり」第4話 - 月岡夏

海に対して認知するのか、戸籍はどうするのか、と結論を急かそうとする弥生に対して、夏が言った言葉です。
決める途中にいて、決めようともがいているかもしれないのに、決めていないことを責める。それが誰かを追い込む。
本当はそんなことをする権利、他者にはないのに、私たちは思う以上に自分を過信して、人を追い込んでいるかもしれないということを、自覚しなければならないと思わされる台詞でした。

面倒くさくて先延ばしにしてるわけじゃないよ

「今すぐアパートで二人で暮らすなんて現実的じゃないし、学校とか会社のこともあるし。面倒くさくて先延ばしにしてるわけじゃないよ。」

「海のはじまり」第4話 - 月岡夏

先延ばしにするのは無責任だと弥生に言われた夏が、弥生に伝えた言葉です。
自分のために結論を急ぐのではなく、相手が何を望むのか、そのためにどうするのが良いのか、時間をかけてでもしっかり向き合う夏の言葉です。


母親ってポジション欲しかっただけでしょ

「水季じゃないでしょ。水季水季って、お母さん水季に会いたかったんじゃないよ。子供が欲しかっただけでしょ。母親ってポジション欲しかっただけでしょ。あーごめん、うざい。ずっとうざかったんだよねそれ本当に。母親ってそうじゃない女より偉いのかよ。治療して妊娠したらそうじゃないやつより偉いのかよ。なんなんだよ、自分の苦労ばっか。知らないよ、産まれる前のことなんか。頼んでないもん。…残念だったね、一生懸命頑張って妊娠して出来た子がこんなで。お母さんかわいそう。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲水季

水季の母・朱音に対して、水季が言った言葉です。
朱音にとって水季は長い不妊治療の末にようやく授かった待望の子。
どんなに待ち望んでいたか、朱音は何度も何度も水季に伝えてきたのでしょう。
その愛情は、受け取る水季にとっては、あたたかくばかりあるものではありませんでした。
妊娠し、中絶しようと決めた水季が、ずっと抱えていた想いを吐いた場面です。


親不孝かどうか決めるのは親だよ

-南雲水季「こんなの産まれてきたら怖い。こんな親不孝なの出てきたら怖い。」
-南雲翔平「親不孝かどうか決めるのは親だよ。子どもが勝手に決めないでくれる?」
-南雲水季「自覚あるくらい親不孝だもん」
-南雲翔平「そう。勝手にしなさい。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲翔平

母親と良い関係をうまく築けない自分のことが嫌いだった水季。
だから自分が母親になることが怖かった。
そんな自分を親不孝だと言う水季に、父・翔平がかけた言葉です。


相手に似るなら産みたい

-南雲翔平「本当は産みたいの?」
-南雲水季「相手に似るなら、産みたい。」
-南雲翔平「相手に似てほしいって思えるだなんて、それはもう、ね。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲水季

父・翔平との会話の中での水季の台詞です。
相手に、夏くんに似るなら、産みたい。
水季が本当に夏を愛し、救われていたことがわかる言葉でした。
こんな風に思えるなら、それはもう、ね。
翔平の言葉が、水季に響きます。

そう簡単に始めたりやめれたりするもんじゃないよ

-南雲水季「お母さんになれる?こんな、お母さん大事にしないやつでも。」
-南雲翔平「いるんでしょ。」
-南雲水季「うん。」
-南雲翔平「じゃあもうお母さんだよ。そう簡単に始めたりやめれたりするもんじゃないよ。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲翔平

母親になれるか不安がる水季に、翔平がかけた言葉です。
人はいつどのように母となり父となるのか。
この物語のテーマに通じる言葉です。

人にかわいそうとか言うのやめなさい

-南雲朱音「あんた、人にかわいそうとか言うのやめなさい。知らないかもしれないけど、お母さん、幸せなの。水季産めて、生意気に育って、わがまま言われて、幸せなの。」
-南雲水季「嘘だ。」
-南雲朱音「勝手言ってなさい。でも、かわいそうとか言うのはやめなさい。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲朱音

こんな娘が出来てかわいそうだと、水季に言われた朱音が、水季に言った言葉です。
幸せは自分が決めるもの。
外野がとやかく決めつけるべきではない。
この言葉は、水季の中にずっと残っていました。


自分のために親になりたかっただけ

「殺したことある。産んでたら、今海ちゃんくらいだった子。罪悪感みたいなのがずっとあって、いい親になって子どもに必要とされれば楽になれるって、無理やり思い込もうとしてた。自分のために親になりたかっただけ。ごめん。ごめん。ごめんなさい。ごめん。本当、ずるかった。これを言う前に海ちゃんと関わるの良くなかった。絶対ダメだった。」

「海のはじまり」第4話 - 百瀬弥生

過去、中絶した経験を夏に打ち明けた時の、弥生の言葉です。
自分の罪悪感を手放すために母になろうとした弥生が、夏に打ち明けることでやっと向き合えた本音でした。


自分で自分がどうしたって許せない

-百瀬弥生「許しが欲しいわけじゃない。ただ、自分が無理で。自分で、自分がどうしたって許せない。海ちゃんにも、水季さんにも、失礼すぎる。」
-月岡夏「子どもにとっていいことなら…」
-百瀬弥生「罪悪感ってそういうことでしょ。殺したって思ってたって、そう言う言葉最初に使ったの、月岡くんだよ。ごめん。それ言うのもずるいよね。」

「海のはじまり」第4話 - 百瀬弥生

打ち明けたからと言って、その罪悪感は自分で背負うしかないし、誰かに許されたいわけではない。
どうしたって抱えていかなければいけない罪悪感。
やり直せない選択。選べなかった別の道。
弥生が夏の前で泣きながら言った台詞です。

自分だけその気持ち持ってればいいだけ

-南雲海「ママじゃないからダメなの?弥生ちゃん、海のママじゃないから、夏くんと一緒にいれないの?海のせい?」
-百瀬弥生「違うよ。海ちゃんは、何も悪くない。」
-南雲海「弥生ちゃん悪くないって、夏くん言ってたよ。誰も悪くないのに、みんな好きなのに、夏くんと一緒にいちゃだめなの?」
-百瀬弥生「そうだよね。そういうことじゃないのに、自分が許せないなんてね。そのまんま、自分だけその気持ち持ってればいいだけだよね。」

「海のはじまり」第4話 - 百瀬弥生

海と電話をしながら、弥生が言った言葉です。
罪悪感は、打ち明けても、時が経っても、消えることも消せることもない。
ずっと自分が背負っていかなければならない。
誰かに背負わせるものでもない。自分だけが持っていればいい。
全ての選択が常に正解にはならないし、間違えることばかりかもしれない。
そのすべてを背負って生きていくのは、いけるのは、本人だけ。


一緒に迷えるのは助かる。寂しくない。

-百瀬弥生「私はね、意外と相談したいタイプ。大事な人にまず話して、ちゃんと共有したいって思うタイプ。だった。本当はもっと、人に寄りかかりたい。一緒に悩んだり考えたりしてほしかったんだけど、その時の大切な人がみんな自分の考えをぽいって置いてく人たちで、寂しかった。無視してたこの数日、月岡くんさ、しつこく電話したり家に押しかけたり、ほんとしないよね。」
-月岡夏「ごめん。」
-百瀬弥生「ううん。そこがいいんだけどね。待ってくれるとこが。悪く言えば自分がない。悪く言えば他人に委ねすぎ。」
-月岡夏「悪くしか言われてない。」
-百瀬弥生「その決めきれない感じ、迷っちゃう感じ、たまにイラっとするんだけど、でも、一緒に迷えるのは、助かる。寂しくない。」
-月岡夏「…すごい悪口言われた気がする。」

「海のはじまり」第4話 - 百瀬弥生

弥生が夏に言った言葉です。
答えを出してもらうとか、導いてもらうとか、一方的に寄りかかるとか、支えるとか、そういうことではなくて、一緒に迷ってくれる人がいるということの心強さ。
ずっと孤独でずっと寂しかった弥生が、夏に救われていたこと、だからこそ夏と一緒にいたいと思っているのだということが伝わってくるシーンでした。

知らないことって知ろうとするしかないのよ

「知らないことって、知ろうとするしかないのよ。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲朱音

夏休みに1週間海と過ごしてみようと不安がりながらも考えている夏に、朱音が言った言葉です。
知らないことは、知ろうとするしかない。
至極当たり前のことですが、わかったふりをしたり、わからないふりをしたりする人って、多いかもしれませんね。
知ること。知る努力をすること。本当に大切です。

生きてた時幸せだったかもしれないよ

-南雲海「かわいそう。死んじゃったの。」
-南雲水季「うん。でも、生きてた時幸せだったかもしれないよ。」
-南雲海「そうなの?」
-南雲水季「わかんないけどね。幸せって、自分で決めることだから。」

「海のはじまり」第4話 - 南雲水季

絵本を読み、死んでしまったことがかわいそうだと言った海に、水季が返した言葉です。
幸せは自分で決めること。
人のことをかわいそうと言わない。
どちらも、水季が朱音から言われた言葉ですね。
周りはすぐに、誰かを「かわいそう」と語るけれど、その人がどんな終わり方をしたとしても、その人の人生は「かわいそう」で語られるものではない。
幸せな時間だって、ちゃんと生きていた時間だって、ある。
その人の人生は、その人生がどうだったかは、その人だけが感じていればよいこと。


第5話

嫌いでいいよ

-百瀬弥生「やってもらったなあ。すごい早くて痛いの。作業って感じ。で、お父さんやってって甘えるとお母さん怒るし、お母さん怒るからお父さんも嫌がる。だからこう、自分で自分のことやるのは、どんどん上手になった。ごめんね。いつも理由つけて親に会わせなくて。嫌いなの。好きなタイプは家族を大切にする人ですってあれ、それだったらごめん。」
-月岡夏「嫌いでいいよ。親だって人だし。」
-百瀬弥生「うん。じゃあ、嫌いなままでいる。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡夏

自分の両親のことが嫌いだと話す弥生に、夏が言った言葉です。
親だからって、家族だからって、好きになれないこともある。
それでいい。
この物語のテーマのひとつです。

心配かけると思ったんじゃないでしょ?隠せるって思ったのよ。

-月岡夏「妊娠は聞いてた。堕ろしたと思ってた。」
-月岡ゆき子「なにそれ。お母さん何も聞いてないんだけど。」
-月岡夏「心配かけると思って。」
-月岡ゆき子「隠したの?学生の分際で。彼女妊娠させて、周りに隠して中絶させたの?」
-月岡夏「させたわけじゃない。」
-月岡ゆき子「同意してそうしたってことは、あんたがそうさせたってことなの。中絶が悪いって言ってんじゃないの。産むのも堕ろすのも、その子なんだから。あんたの意思なんてどうでもいいの。でも、産むって言われたら、どうしてた?それでも隠した?心配かけると思ったんじゃないでしょ?隠せるって思ったのよ。男だから、サインして、お金出して、優しい言葉かけて、それで終わり。身体が傷つくこともないし。悪意はなかったんだろうけど、でも、そういう意味なの。隠したって、そういうことなの。」
-月岡夏「そうだと思う。隠せるって思ったんだと思う。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡ゆき子

夏から海のことについて聞いたゆき子が、夏に言った言葉です。
相手の意思を尊重したとはいえ、サインをして、堕ろして、そのことを黙っていた。
夏に決して悪意がなかったことや、水季へ向き合ったことについては親として想像がつくであろうゆき子が、あえてまっすぐに、夏の目を見て、言った言葉です。

そんな呑気なこと思うのお母さん絶対許さない

「ああよかった生きてたんだって、罪悪感なくなってすっきりって、そんな呑気なこと思うの、お母さん絶対許さない。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡ゆき子

堕ろしたと思っていたけれど、海が生きていた。
それを知って、ほっとしたと以前弥生の前で話していた夏。
そのことさえも見透かすかのように、ゆき子が言った言葉です。
生きてたから、殺していなかったから、結果オーライで罪悪感なし。
そんな問題ではないということを、このタイミングできちんと突きつけてくれる脚本でした。


弥生ちゃんの意思に異論はない

「弥生ちゃんのことは任せる。弥生ちゃんの意思に異論はない。でも、何か強要させんのは許さない。夏は、そういうのないと思うけど。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡ゆき子

夏から海について聞いた後に、ゆき子が弥生を気にかけ、夏に言った言葉です。
弥生の人生や心情を思うゆき子が、今後弥生に寄り添う存在になっていきそうです。

お金と時間無いと気持ちまでどんどんすり減ってくの

「夏と二人で生活してた頃。お金と時間無いと、気持ちまでどんどんすり減ってくの。全然美容院行けないし、行ったら行ったでなんか罪悪感すごいし。あの頃のお母さん、なんか嫌だったでしょ、綺麗じゃなくて。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡ゆき子

人生で一番大変だったのは、前の夫と離婚してから今の夫と再婚するまでの間だったと話したゆき子。
水季が海と二人きりで過ごした時間と重なる、一人で子を育てる母親としての言葉でした。

知ろうとしたほうがいいよ

「早いこと諦めつけて、人の手借りることにしたの。母親一人で寂しい思いさせないなんて、無理よ。水季ちゃんが誰にどのくらい助けてもらったか知らないけど、知ろうとしたほうがいいよ。その人から教わること、多いと思うよ。」

「海のはじまり」第5話 - 月岡ゆき子

ゆき子が再婚する前の苦労した頃に友人の協力を得ながら夏を育てた話をしながら、夏に言った言葉です。
親一人で子育てをする苦労を知っているゆき子のこの言葉を受けて、夏は、自分の知らない水季の7年間を、辿っていくことになります。

そばにいただけの他人

-津野晴明「ママの病気がわかったり、死んでから現れるなんて、みんな調子いいよね。…言ってないですよ。思っただけです。」
-三島芽衣子「…うん。気持ちはわかる。」
-津野晴明「はい。」
-三島芽衣子「家族でも何でもないんだけどさ、ずっとそばにいたのって私たちくらいで。支えてたの津野くんくらいで。居なくなったら急に外野な感じ、ちょっともやもやする。」
-津野晴明「血でも法律でも繋がってないですからね。弱いもんですよ、そばにいただけの他人なんて。」

「海のはじまり」第5話 - 津野晴明

水季がシングルマザーとして子育てをしながら亡くなるまでの間、そばで支えてきた津野と三島が、図書館でした会話です。
ずっとそばにいたのに、確かに関わったのに、結局はそばにいただけで、他人。
血のつながりをもつ「家族」を前に、積み上げた時間や想いが無力であるように感じる、二人の言葉でした。


第6話

頑張ってそうしてたんでしょうから

-田辺繁「ままならない生活だったとは思いますけど、でも、家賃滞納したことはないし、ゴミの分別もちゃんとしてたし、きちんとしたお母さんでしたよ。」
-月岡夏「ちょっと意外です。僕が知ってる頃は結構大雑把というか、自由な人だったんで。」
-田辺繁「じゃあ、より大変だったでしょうね。そういう人が頑張ってそうしてたんでしょうから。」

「海のはじまり」第6話 -田辺繁

かつて水季が海と二人で暮らしていたアパートの大家・田辺に、夏が当時の水季の様子を聞いた時の、田辺の言葉です。
女性だからといって、子どもを産んだからといって、自動的に「お母さん」になれるわけじゃない。
みんな、少しずつの努力や我慢、苦労を積み重ねて、踏ん張って、必死に、「お母さん」になる。
頑張って、「お母さん」をやる。
そんな水季の姿が浮かぶ台詞でした。


いたいからいるだけ

「ありがとう。でも、大丈夫。今は本当に、いたいからいるだけ。」

「海のはじまり」第6話 - 百瀬弥生

カップルが別れるのと夫婦が離婚するのとはわけが違う。
弥生ちゃんは弥生ちゃんの意思だけ決めたらいい。
夏に娘がいることを知った弥生のことを思ってのゆき子の伝言を伝えに来た大和に、弥生が返した言葉です。

好きな人の子どもってこんなに可愛いんだ

「好きな人の子どもってこんなに可愛いんだって。やっぱ似てるとこちょいちょいあるしね。」

「海のはじまり」第6話 -百瀬弥生

弥生が海のことを言った言葉です。
好きな人の子。
弥生の本音ですね。

産まなかったのが間違いとは思ってないの

-月岡夏「隠したのは、恥ずかしいとか悪いことだって、どっかで思ってたからだと思う。」
-百瀬弥生「私も母親と相手にしか言わなかったよ。会社は仮病で休んで、バレるの怖いからちょっと離れた病院行ったの。」
-月岡夏「そうなんだ。」
-百瀬弥生「水季さんはすごいよ。そういう決断、全部一人でして。ほんとすごい。私には出来なかった。」
-月岡夏「…後悔してるの?」
-百瀬弥生「後悔ともちょっと違うんだよね。あのタイミングであの状況でこの性格だから、産んでたとしても、一人で全部完璧にやろうとして、結果自滅してく未来が見えてる。」
-月岡夏「弥生さんは…」
-百瀬弥生「そうなりそうでしょ?」
-月岡夏「抱え込むから。」
-百瀬弥生「だから、産まなかったのが間違いとは思ってないの。正解とも言えないけど。子どもがいたら今の生活はないし、それは否定したくないんだよね。」
-月岡夏「うん。」

「海のはじまり」第6話 - 百瀬弥生

自分の過去について、弥生が言った言葉です。
その時その状況で何を選ぶか、それは本人だけが決められることで、本人だけが背負えること。
正解とは言えないけれど、その時の選択を、否定したくない。
穏やかに話した弥生の言葉が、響きました。

どちらを選択してもそれはあなたの幸せのためです

「妊娠9週で中絶しました。強い罪悪感に襲われています。彼がああしてくれたら、母がこう言ってくれたらと、罪悪感を他人のせいにしてしまい、そんな自分にまた落ち込みます。まるで自分が望んだように振る舞っていただけで、実際は、他人にすべてを委ねていました。人に与えられたものを欲しかったものだと思い込むのが、私は得意すぎました。後悔とは少し違う。でも、同じ状況の人に、同じ気持ちになってほしくありません。他人に優しくなりすぎず、物分かりのいい人間を演じず、ちょっとズルをしてでも、自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います。」

「海のはじまり」第6話 - 百瀬弥生

中絶手術のために訪れた病院で水季が手にとったご意見ノート。
そこに書かれていた、弥生の言葉です。
手術直前にこの言葉を読んだ水季は、その後に母・朱音の母子手帳を読んで、海を産むことを決意しました。
産まない選択をした弥生と、産む選択をした水季。
どちらが正しいとか、間違いとかではない。
どちらを選択しても、あなたの幸せのため。
幸せになるために、人は自分の意思で選択をして、人生をつくっていく。
あなたの幸せを願います。
この物語は、これを伝えるために、紡がれてきたのかもしれません。

あんまりないんだけどな、人に影響されること

「読んだら堕ろすの無理ってなる気がして、まだ中見てないんですけど、でも、読んで、それで決めます。人のせいにしたくない。あんまりないんだけどな、人に影響されること。」

「海のはじまり」第6話 - 南雲水季

実家で親と話し、弥生の書いたメッセージを読み、母の母子手帳を読み、産むことを決断した水季。
何事も自分の意思で決めることにこだわり、人から影響を受けないと自分でも言っていた水季の言葉です。
どこで誰かの影響をどの程度受けたとしても、どんな選択も、最後は自分の意思でするもの。
でもその意思に至るまでに受けるたくさんの影響が、選択肢を広げたり狭めたりして、選べるものも、選ぶものも、変わってくる。
そうやってした選択を、後悔するのも、正解にするのも、自分次第。
これを言った水季の表情は、前を向いていました。


死んでも終わんないわよ

-南雲水季「お母さんは?お母さん向いてた?子育て。」
-南雲朱音「向いてるわけないでしょ。短気でせっかちなんだから。」
-南雲水季「自覚あんだ。すごいね、向いてないことこんなに長く続けて。」
-南雲朱音「続けるしかないわよ。産んだら最後、子どもに振り回される人生が始まるんだから。」
-南雲水季「いつ終わるの?お嫁いくまで?死ぬまで?」
-南雲朱音「死んでも終わんないわよ。お母さんどうせ先に死ぬけど、それでも水季のお母さん続けなきゃいけないんだもん。」
-南雲水季「それは大変だね。」
-南雲朱音「あんたほんと他人の影響受けなさすぎ。普通もうちょっと気持ちが揺らいだりするでしょ。」
-南雲水季「そんなことないと思うけどね。堕ろすのやめたりしたし。」
-南雲朱音「何かあって産むことにしたの?」
-南雲水季「ん?やっぱ産もうって思っただけ。神のお告げ?」
-南雲朱音「あっそう。」

「海のはじまり」第6話 - 南雲朱音

出産直前の水季と朱音の会話です。
死んでもお母さんは終わらない。
この時はまさか水季が亡くなる未来は二人とも想像していなかったけれど、「死んでも終わんない」は、水季が亡くなった後も朱音は水季の母親であり、水季は海の母親であること、そこに終わりはないこと、水季がいなくても確かにいるということと伝える台詞でした。
また、水季が出産を決意するにあたり、大きく影響を受けた弥生と朱音の存在。
弥生と朱音はもう、そのことを知る術はないけれど、彼女たちの選択のひとつひとつが、誰かに影響を与え、命を繋いでいったこと、そのことを穏やかに伝えてくれる、第6話でした。


第7話

大人がみんな恋愛が下手なだけ

-南雲海「夏くん独り占めしてごめんね。」
-百瀬弥生「おお。もうそういう思考があるのね。」
-南雲海「弥生ちゃんも夏くん好きなのに。」
-百瀬弥生「好きなのにね。会うの我慢しちゃったりしてね。」
-南雲海「ママもそうだったの?ママと夏くん、なんでお別れしたの?ママ、津野くんとも付き合ってなかった。仲良かったのに。」
-百瀬弥生「そうなんだ。」
-南雲海「海がいるから?」
-百瀬弥生「違うと思うよ。大人がみんな、恋愛が下手なだけ。」
-南雲海「弥生ちゃんも?」
-百瀬弥生「弥生ちゃんは多分、いちばん下手くそ。」

「海のはじまり」第7話 -百瀬弥生

夏が席を外した際の、弥生と海との会話です。
大人になればなるほど、いろいろなことを理由に、本音に素直になれなかったりする。
海ちゃんのシンプルで本質を捉えた言葉が、それを痛感させます。


骨になったら、痛くない?

-月岡夏「水季、何か言ってる?」
-南雲海「ううん。喋れないよ、骨だもん。」
-月岡夏「そうだね。」
-南雲海「骨になったら、痛くない?」
-月岡夏「うん。痛くないよ。」
-南雲海「薬いらない?」
-月岡夏「うん。いらない。」
-南雲海「ふうん。よかった。」

「海のはじまり」第7話 -南雲海

間もなく四十九日を迎え、納骨となる水季。
そのことを理解した海が遺骨を抱きしめているのを見つけた時の、夏と海の言葉です。
夏が海と出会う前、水季の最期、水季がどれだけ苦しみ、海がその様子をどんな思いで見ていたのか、胸が締め付けられるシーンでした。


無理しなきゃ子どもも私も死んじゃうって

-津野晴明「大変だね、そんなちっちゃい子、一人で。無理しないでね。」
-南雲水季「無理です。みんなそう言うんですよね。大変だね、頑張って、でも無理しないでねって。いや、無理しなきゃ子どもも私も死んじゃうって。」
-津野晴明「ごめん、無神経で。」
-南雲水季「八つ当たりしました。すみません。」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

娘の生後3ヶ月で仕事を始めた水季を気に掛けた津野。
津野が悪意なしにかけた一言が引き出した、ギリギリだった水季の本音です。
この会話の後、水季は津野を頼るようになりました。
無理しないで。頑張って。
そんな言葉にさえ追い詰められてしまうことって、子育てに限らず、あるものですよね。

他人の方が頼りやすい

「他人の方が頼りやすい。その、何があったか知らないし、詮索もしないし。」

「海のはじまり」第7話 -津野晴明

ギリギリの水季の助けになろうと津野が言った言葉です。
実の親にも、海の父親である夏にも頼らないと決めた水季にとって、他人である津野は、唯一頼れる存在でした。


未だに気持ち利用してます

-南雲水季「未だに気持ち利用してます。最低です。」
-三島芽衣子「いいんだよ。したくてしてんだから。」
-南雲水季「そうですかね。」
-三島芽衣子「そうだよ。見返り求めてやってないでしょ。」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

実家にも頼らず一人で子育てをする水季にとって、津野は唯一頼れる人。
津野自ら助けを申し出てくれたといえ、自分に向けられている好意も含めてそれを利用している自分に、罪悪感を感じる水季の言葉です。


何も知らないでしょ

-南雲水季「知らない人の事、そいつ呼ばわり。私が知らせてないだけだから。」
-津野晴明「知らせた方がいいって。養育費とか、わかんないけどそういう…南雲さんこんな大変なのに何も知らずに呑気に生活してるなんて、」
-南雲水季「津野さんだって何も知らないでしょ。海の父親のこと、知らないのに悪く言わないでください。」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

水季の体調の変化を感じ取っていた津野。
水季が落とした中絶同意書の存在を知り、海の父親は何もしらないのかと水季を気に掛けるあまり口にした言葉に対して、水季がそれを制するように言った言葉です。
津野が間違っているとは、どうしても思えません。
けれど、当事者以外の他人が、当事者の事情を何も知らないというのは、事実。
いちばん近くにいるのに、線を引かれてしまった津野です。


生まれるのも死ぬのも選べない

「自分で選べないことって、生まれてくるかどうかってことぐらいだと思ってたんです。お母さんと喧嘩すると、すぐ私が生まれた時の話になって、本題とすり替えるの。産んでくれとか頼んでないし、うざって、ずっと思ってたんだけど。海のことも、産むかどうか私が決めるしかなくて。海に決めさせてあげたいけど、そうもいかなくて。でも、自分で決められないの、もう1個ありました。いつ死ぬかは、選べないんですね。生まれるのも死ぬのも、選べない。今ちょっとだけわかるんですよ。自殺する人の気持ち。死にたくないのに、わかるの。自分で選んで、そういう道…」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

病気が発覚し、入院していた水季が、津野の前で話したことです。
何事も自分の意思で決めることにこだわってきた水季。
まさか自分が死ぬなんて、そんなこと、海を一人で産み育てると決めた時の水季には、頭になんて当然なかった。
選べない死が迫る水季の、本音です。


海に会いたい

「海に会いたい。治らないかもしれない、の方がずっと大きいんです。ここにずっといて、ちょっとだけ長く生きるより、海と一緒にいる時間がちょっとでも増える方がいい。」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

少しでも望みがあるならばと治療を勧めた津野に対して、水季が言った言葉です。
いつ死ぬかは選べない。
でも、死ぬまでにどう生きるか、最後にそれを、自らの意思で選んだ水季です。


急に怖くなっちゃった

-南雲朱音「何?何かあったら言いなさいよ。今さら気遣うことないでしょ。」
-南雲水季「海のこと、不安なこと無くなったら、急に怖くなっちゃった。死ぬの、急に怖くなっちゃった。安心して逝けるみたいな、そういう感じになると思ったのに、急に…」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

残された余命を前に、海のことについて朱音に申し送りをした水季が、朱音の前でこぼした本音です。
海のことだって、不安なことだらけだったはず。
でもどうしようもなく迫るリミット。
朱音はただ、水季を抱きしめるしか出来ませんでした。


触らないで

「触らないで。家族でやるから、大丈夫です。」

「海のはじまり」第7話 -南雲朱音

水季が亡くなった後、水季の自宅の荷物を片付けるのを手伝おうとした津野に対して、朱音が言った言葉です。
いちばん近くにいたのに、水季が亡くなった途端、部外者だと線を引かれてしまった津野でした。

縋る人、居ないんだもん

-月岡ゆき子「水季ちゃんに嫉妬するでしょ?」
-百瀬弥生「嫉妬というか…」
-月岡ゆき子「私はしたな。死んじゃってるのずるいって思った。言っちゃいけないことだけど、今の弥生ちゃんになら言えるな。」
-百瀬弥生「羨ましいです。一人で大変だったと思うけど。病気も。なのに、何か知る度に、羨ましいって思うんです。綺麗な思い出がいっぱいでいいなあって。そう思う自分が嫌になります。」
-月岡ゆき子「うん。わかる。わかるけど、私は、大丈夫だった。夏がいるから。弥生ちゃんのこと心配してるのは、そういうこと。全然私と同じ立場じゃないよ。縋る人、居ないんだもん。この先、ずっと、辛くなると思う。」

「海のはじまり」第7話 -月岡ゆき子

弥生のことを気に掛けて、二人きりで話す機会を設けたゆき子が、弥生にあえて言った言葉です。
自分には夏がいたし、夏には海ちゃんがいる。
人を育てて一緒に生きていくということは、絶対に苦しい時が訪れる。
この言葉を受けて、弥生はあらためて、自分の今後を考え始めた様子です。

辛いって、羨ましかった

-月岡夏「羨ましかった。何も知らなかったから、よく知ってるから余計に辛いって、羨ましかった。自分が悲しいと思ってることなんてたいしたことない気がして。」
-百瀬弥生「大丈夫だよ。月岡くんには海ちゃんがいるから。」

「海のはじまり」第7話 -月岡夏

津野について、夏が弥生の前で言った本音です。
水季の後を追えば追うほど、自分の悲しみに蓋をせざるを得なくなった夏。
月岡くんには海ちゃんがいるからと言った弥生の気持ちも切ないシーンでした。

なんで子どもの話になると途端に父親より母親が期待されるんですか

-津野晴明「なんでそんな一生懸命っていうか、必死なんですか?」
-百瀬弥生「母親になりたいからです。」
-津野晴明「立派ですね。すごいですよね、そういう女の人の、子どもへの覚悟っていうか。」
-百瀬弥生「性別関係あります?なんで子どもの話になると途端に父親より母親が期待されるんですか。」
-津野晴明「すみません。イメージで物を言っただけなので。」
-百瀬弥生「父性ってあんま使わないけど、母性ってみんな気軽に使いますよね。無償の愛、みたいな。そんな母親ばっかりじゃないのに。」

「海のはじまり」第7話 -百瀬弥生

水季の墓参りの帰り道、弥生と津野の会話です。
母性と父性。母親と父親。
この物語のテーマに通じる会話です。


なんですか、母性って

-南雲水季「津野さん何かおすすめあります?」
-津野晴明「でも南雲さんが選んだものがいいと思うよ、母性の話だし。」
-南雲水季「母性?」
-津野晴明「うん。母の日の展示でしょ?」
-南雲水季「え、なんですか、母性って。」
-津野晴明「ん?何って?」
-南雲水季「無償の愛、とかですか?」
-津野晴明「うん、言葉にするなら。…え、ごめん、気に障ったなら。」
-南雲水季「子どもを愛せない母親なんていっぱいいるのに、"母の性"って、それが無償の愛って…。あ、引いてます?」
-津野晴明「…その通りだなって。」

「海のはじまり」第7話 -南雲水季

津野と水季の会話です。
津野が何気なく口にした母性という言葉。
弥生と同じように、水季も違和感を覚えていました。

美しく一言でまとめたい時に都合のいい言葉

「美しく一言でまとめたい時に都合のいい言葉なんでしょうね、母性って。」

「海のはじまり」第7話 -百瀬弥生

ひとつ前の母性についての会話の後の、弥生の言葉です。
女性が、母親が、子どもや家庭のために自分を捧げること。
それを美しくまとめるための言葉かもしれませんね。

知らない人のことわかんないでしょ

-津野晴明「真逆の人選んでるの、なんか腹立ってたんですけど、ちょっと似てるんですね。それはそれで腹立ちますね。」
-百瀬弥生「似てないと思いますけど。」
-津野晴明「知らないじゃないですか。知らない人のことわかんないでしょ。」
-百瀬弥生「…まあ。」

「海のはじまり」第7話 -津野晴明

弥生のことを水季と正反対の性格だと思っていた津野が、二人に通じるものを感じた後の台詞です。
好きな人の元恋人の今現在の恋人が、その好きな人と真逆なのも、似ているのも、なんかちょっと腹が立つ。
なんとも言い難い絶妙なこの気持ち、わかります。
「知らない人のことはわからない」。
これは、かつて津野が水季に言われた言葉です。


あの人、水季水季うるさいですよね

「昨日、月岡さんから電話きて。水季の墓参り来てください、水季も会いたがってると思います、って。あの人、水季水季うるさいですよね。」

「海のはじまり」第7話 -津野晴明

津野が弥生に言った言葉です。
視聴者も感じていたことを代弁してくれた津野でした。

一人で決めないでください

-津野晴明「海ちゃんが連絡先知ってるので、何か、あれば、連絡ください。」
-百瀬弥生「いやいや。」
-津野晴明「南雲さんみたいに、一人で決めないでください。」

「海のはじまり」第7話 -津野晴明

弥生との別れ際に、津野が弥生にかけた言葉です。
一人で決めないでください。
津野は、弥生とは最も遠くて、でも、気持ちや立場には近いものがあるかもしれません。


第8話

期待しちゃったか?残念だったね

-月岡夏「育ててないけど、俺の子です。だから育てられてないけど、親に会ってみたかっただけです。」
-溝江基春「育ててなくても血が繋がってる親は子どもを想ってる、離れてても愛し続けているに違いない、って期待しちゃったか?残念だったね。育ててない親なんてしょうもないってわかっちゃったね。かわいそうに。」

「海のはじまり」第8話 - 溝江基春

3歳で離婚して母親に引き取られて以来会っていなかった実の父親に会った時の、夏と父親・基春の会話です。
一抹の期待を持って会いに行ってしまった夏にとって、この時の基春の言葉は、受け入れがたく、悔しく悲しいものでした。


パパってあだ名みたいなもんでさ

「みんな違うんだよ。パパってあだ名みたいなもんでさ、みんな違う人なんだよ。」

「海のはじまり」第8話 -月岡大和

夏の実の父親・基春の印象が、義理の父親・和哉とは全然違うと戸惑っていた海に、大和がかけた言葉です。
パパはいい人。ママはいい人。そんな風に括ってそれが普通だと思ってしまいがちだけれど、あだ名で呼ばれる人は皆、それぞれ違う、別の人。
印象的な台詞でした。


一回幻滅したくらいでね

-月岡夏「弥生さんの親の話、聞いてたのに。親ってだけで期待しないって決めてたのに。」
-百瀬弥生「そういうもんだよ。私もたまに実家帰る度に、今日から上手くやれるんじゃないかって、ちょっと期待する。もう会わないの?一回幻滅したくらいでね、諦めつかないんだよね。」

「海のはじまり」第8話 -百瀬弥生

実の父親に会ったものの、思い描いていた再会にはならなかった夏。
そんな夏に、弥生がかけた言葉です。
血が繋がっているからこそ、家族だからこそ、諦めきれない。
それは枷でもあり、希望でもあり。
一言で家族と言っても、関係性を構築するのは、難しいものです。


ショックだった?理想と違って

-新田良彦「ショックだった?理想と違って。感動の再会にならなくて。」
-月岡夏「いやそういうんじゃ。でもなんか、話、違ったから。あの人、カメラ別に趣味じゃないって。」
-新田良彦「ちゃんと聞いてないでしょ?二人とも説明が下手なんだよな。そっくり。」

「海のはじまり」第8話 -新田良彦

再会した夏と基春ですが、喧嘩別れのようになってしまった二人。
間に挟まれるかたちとなった写真屋の新田が、夏に言った言葉です。
こういう時、他人の方が、親子の親子らしさを感じ取ったりするものですね。
新田のアシストを受けて、二人は再び会うことになりました。

育児が面白いなんて言ってないよ

-溝江基春「お前昔っからそうだったわ。後ろくっついてくんの。あれ面白かったな。トイレ行くだけなのにくっついてきて。面白かったんだよ。」
-月岡夏「何が?」
-溝江基春「子ども。お前毎日違うんだよ。生まれてから3つまで毎日違う顔してて、よその子は毎日同じなのに、お前毎日違うの。目が合うだけで笑うし、気付いたら歩ってるし。面白い生き物がいるもんだなあって。」
-月岡夏「母が、全然育児に協力してくれなかったって。」
-溝江基春「育児が面白いなんて言ってないよ。してないもんほとんど。」
-月岡夏「なんだそれ。」
-溝江基春「毎日違うから、残しておかないともったいない気がして、写真でも撮るかなって。勧められたの買ったら現像しなきゃいけねえやつで、面倒くせえし金かかるしで、デジカメでよかったんだよデジカメで。そうそう、それ。撮ってみるとな、素人でもいい感じになって。会わないならもう要らないから、お前に欲しいかって聞いたら、笑ったからやったの。趣味で買ったもんならやらねえよこんな高いの、3つの子に。」

「海のはじまり」第8話 -溝江基春

再会した夏と基春の会話です。
子どもは面白かったし興味があったけれど、妻が求める理想の育児は出来なかった父親だった基春。
この物語のおける新しい父親像として、非常に重要な人物です。


その優しい皆さんに支えられてしんどくなったら

-溝江基春「よくそんな急に父親なんてやる気になるな。」
-月岡夏「急じゃないです。一緒に過ごして、色々考えたんで。」
-溝江基春「昔の女が勝手に産んでたなんて俺だったら無理だな。立派立派。」
-月岡夏「立派じゃないです。」
-溝江基春「そんな責任感あんの、やっぱ俺の子と思えないわ。」
-月岡夏「ないです。無責任です。」
-溝江基春「謙遜するのも俺の子っぽくないな。」
-月岡夏「面倒くさいことになったって思ったんです。堕ろしたと思ってたから、生きてたってわかってほっとしたけど、でもただ、自分の罪悪感から解放されただけで。」
-溝江基春「面倒くさいよな。」
-月岡夏「今もう3年くらい付き合ってる人いて、普通に結婚とか考えてたし。」
-溝江基春「あちゃー。」
-月岡夏「本当にもう、全部、タイミングっていうか、最悪で。」
-溝江基春「ああ最悪だ。」
-月岡夏「知らなかったこと、責めてくる人もいるし。」
-溝江基春「隠されてたっていうのも被害者だけどな。」
-月岡夏「みんな悲しそうで、俺より辛そうで、でも多分、みんな本当に俺より辛いから。」
-溝江基春「どうかね。」
-月岡夏「しかも優しいから、言えない。こういうの言えない。怒ったりわがまま言ったり、その人達より悲しそうに出来ない。俺だって悲しいのに。嫌いになって別れたわけじゃない人、そのまま1回も会えずに…死んで。子どものことも、病気も、何も知らないまま死んで。」
-溝江基春「周りがみんな優しくて、悲しい悲しい辛い辛いっていうやつばっかなのは、しんどいな。その優しい皆さんに支えられてしんどくなったら、連絡しろよ。」

「海のはじまり」第8話 -溝江基春

基春の前で、今まで溜め込んでいた本音を言うことが出来た夏。
基春は、夏の言葉を否定せず、すべて肯定し、その上で、距離は取りながらも、しんどくなったら連絡しろよと声をかけました。
基春はやはり父親であり、夏は息子。
いびつでも、二人はやはり、親子です。


興味しかなかったんだわ

-月岡夏「面白いと思えたなら、なんで一緒にいようとしなかったんですか?」
-溝江基春「久しぶりにお前抱っこした時、重くなったなあって言ったんだよ。重くなった気がしたから。そしたらゆき子がわーわー泣き出して。」
-月岡夏「なんで?」
-溝江基春「なんたら健診とかで体重が増えてないって言われて、それが気がかりで不安で心配で、ああだこうだわーわー言い出して。面白がるだけなら趣味。楽しみたい時に楽しむだけなら趣味。あなたは子どもを釣りや競馬と同じだと思ってる。…納得。興味しかなかったんだわ。責任もない。心配もしない。レンズ越しに見てただけ。」

「海のはじまり」第8話 -溝江基春

ゆき子との離婚の経緯について基春が夏に話した内容です。
興味しかなかった。
興味と愛情、関心と育児、父性と母性、父親と母親。
通じるようで、別物のようで、紙一重のようで。
難しい。難しいですね。


お前、あれ偉かったわ

「あ、お前、あれ偉かったわ。子どもの前で椅子蹴っ飛ばさなかっただろ。耐えたの偉いわ。ああいうのは面白がってるだけじゃ出来ねえよな。まあ子どもいてもいなくても、お店の椅子蹴っちゃだめなんだけどな。子どもじゃねんだから。本音言いたくなったら、連絡しろな。」

「海のはじまり」第8話 -溝江基春

再会した時、基春への怒りで、海がいなくなった後に夏は喫茶店の椅子を蹴飛ばしてしまいました。
怒りをあらわにしたその行動について、基春が言った言葉です。
どこまでも、やはり、親ですね。
親になろうとしている夏を、肯定した言葉でした。


何も言えなくなるんです

-百瀬弥生「月岡くん、優しいんです。」
-津野晴明「いいじゃないですか。」
-百瀬弥生「ふとすごく悲しそうにするし。」
津野晴明「元カノ亡くしてますからね。多少は悲しいでしょう。」
-百瀬弥生「何も言えなくなるんです。多分月岡くんもそうです。私が辛そうにするから、無駄に優しくするから、本音、言えなくなってます。」

「海のはじまり」第8話 -百瀬弥生

夏との関係について、津野との会話の中で弥生が言った言葉です。
何も言えなくなる。きっと、今だけじゃなく、この先ずっと。
将来について考える弥生が何を選ぶのか、選ばないのか、見守りましょう。


第9話

自分の思い通りにしようとしてた。甘えてた

「子どもがいるって知って、最初は面倒だと思った。このまま弥生さんと二人で、いつか家族が増えたりしながら、今はまだ二人でいたいと思ってたから。でも、今は海ちゃんもすごく大切で、弥生さんが母親になってくれたら嬉しいし、正直、そうなったら楽だと思った。一人で親になるの、不安だったから。辛そうなの少し前から感じてたけど、無視した。三人でいたかったから。なのに、無意識に無神経に、弥生さんの前でも水季の話ばっかりして、気持ち尊重するなんて口だけで、自分の思い通りにしようとしてた。甘えてた。」

「海のはじまり」第9話 - 月岡夏

自分との関係や今後について悩む弥生に、夏が言った言葉です。
弥生さんが大切。
でもそこに海が現れて、海も大切で、だから三人でいたいと思った。
夏の本音と、自分の甘えに対する自覚が、自分の言葉で弥生に伝えられました。

言えてないことがありすぎてまとまらない

「ちょっと、待ってもらってもいい?今は本音というか、言えてないことがありすぎて、まとまらない。結論もまだ出せてない。辛い。だから、自分がどうしたいかがわからない。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

夏の言葉を受けて、弥生が言った言葉です。
その場で適当に流すことをせず、ごまかすこともせず、大切な問題だからこそ、自分でもう少し考えてから話したい。
弥生の強さが感じられる言葉でした。

だから、弥生さんが読んで

「手紙読んだ?水季の。わかんないけど、母親になる人とかじゃなくて、俺と一緒に親になるかどうか悩んでくれた人に宛てたんだと思うから。だから、弥生さんが読んで。」

「海のはじまり」第9話 - 月岡夏

水季が残した「夏くんの恋人へ」という手紙を、母親になる人宛てだったらと考え読めずにいた弥生。
弥生の躊躇いを知った夏が、弥生さんに読んで欲しいと、まっすぐに伝えた言葉です。

幸せだったことは、私だけが胸を張って言える事実です

「夏くんの恋人へ
はじめまして。面倒なことに巻き込んでしまって、ごめんなさい。ハッキリしない夏くん、まだ幼い海、短気な母、気の抜けた父と、厄介な人たちに挟まれて、それはそれは窮屈だったと思います。海を妊娠しているとわかったとき、最初は中絶するつもりでした。相手のことを考え過ぎたせいです。でも、珍しく他人の言葉に影響され、自分が幸せだと思える道を選ぶことにしました。夏くんではなく、海を選びました。そのおかげで、海を産んで、一緒に過ごすことが出来た。海を見るたび、話すたび、思うたびに、正しい選択だったと思えています。多分人より短いから、幸せな人生だったと言うのはちょっと悔しいし、他人にあの子は幸せだったと勝手に想像されるのは、もっと嫌です。でも、海と過ごした時間が幸せだったことは、私だけが胸を張って言える事実です。誰も傷つけない選択なんて、きっとありません。だからといって、自分が犠牲になるのが正解とも限りません。他人に優しくなりすぎず、物分かりの良い人間を演じず、ちょっとズルをしてでも、自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。海と夏くんの幸せと同じくらい、あなたの幸せを願っています。」

「海のはじまり」第9話 - 南雲水季

水季が「夏くんの恋人へ」として残した手紙の全文です。
水季と弥生が出会うことはなかったけれど、水季は弥生が残した言葉を見て海を産むことを決め、その言葉が、巡り巡って、こうして弥生のもとへと届きました。
自分の人生、自分で、自分が幸せになるための選択をして良い。
このメッセージを受け、弥生は最終的に、夏との別れを決めました。

残すものがないと、出来るだけ直接伝えようって思える

「今会える人には書きません。残すものがないと、出来るだけ直接伝えようって思えるし、限界ギリギリまで生きられるような気がするから。」

「海のはじまり」第9話 - 南雲水季

亡くなる前、病室で夏と夏の恋人宛ての手紙を残していた水季。
津野から俺宛ての手紙はないのかと聞かれ、水季が言った言葉です。
会えるうちに、会える人に、自分の言葉で、自分の本音を伝えること。
その難しさと尊さについて、考えさせられます。

月岡くんと二人でいたかった

「誰かの役に立ててるって思いたかったの。私がいないとだめだなってことあると、やれやれって思いながら安心した。最初は居心地よかった。三人でいて楽しいし、なりたかった母親にもなれる。三人でいて何の不満もなかった。三人じゃないって気付いて。ずっとどこかに水季さんがいるの。それ感じて、奪い取ったみたいな気持ちにもなるし、水季さんのこと知らない自分だけが仲間外れみたいな疎外感もあるし。本当、仰る通りで、三人でいるの、だんだん辛くなった。でも、月岡くんのこと、好きだしなあ。海ちゃん可愛いなあ。お母さんになりたいなあ。別れたいとかじゃない。一緒にいたい。でもいると苦しい。でも、頼られると嬉しい。お母さんに間違えられて、嬉しくて苦しかった。お母さんさせてもらえるのに、水季さんにはなれないから、嫉妬してたの。私なんかよりずっと大変な思いしてきたってわかってるのに。羨ましくて仕方ない。月岡くんが水季って言うたびに、海ちゃんがママって言うたびに、羨ましいとか、悔しいとか、ちょっとずつ溜まってった。二人のことは好きだけど、二人といると、自分が嫌いになる。三人でいたい三人でいたいって言ってくれて嬉しいんだけど、嬉しいのに、やっぱり私は、月岡くんと二人でいたかった。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

弥生が夏に打ち明けた本音です。
涙が込み上げながらも努めて冷静に話をする弥生からは、考え抜いた末に出した自分のための結論なのだという意思を感じました。
そして弥生は、「海ちゃんのお母さんにはならない。月岡くんとは、別れたい。」と意思を伝え、夏は涙を流しながらも、それを静かに受け止めることしか出来ませんでした。

自分を選んだ。二人のこと選ばなかった。だから同じ。

-百瀬弥生「そっちは?言いたいこと、あとは?私が頑張ったせいで頑張らせちゃったでしょ。ちゃんと言っていいよ。」
-月岡夏「三人が無理なら、どちらか、選ばなきゃいけないなら、海ちゃんを選ぶ。」
-百瀬弥生「うん。よかった。私も、好きな人と離れても自分が納得出来る人生と、辛い気持ちのまま二人のために生きる人生、どっちにするか考えて、自分を選んだ。二人のこと選ばなかった。だから同じ。よかった。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

別れを決めた夏と弥生の会話です。
どちらも、は、選べなかった二人。
それぞれの選択をした二人です。


今日、終わるまで

「今日まではいい?駅送ったら、それで終わりにするから。それまで海ちゃんのことも忘れて、今日、終わるまで。」

「海のはじまり」第9話 - 月岡夏

別れを決めた夏と弥生。
最後、家から駅までの道のりを送る時に、弥生の手をそっと握った夏が言った言葉です。
恋人として二人が過ごした、久しぶりで、最後の時間でした。


終電あるうちは今日だよね

-百瀬弥生「ま、終電あるうちは今日だよね。」
-月岡夏「うん。今日の終電だから。」
-百瀬弥生「だよね。じゃあまだ今日だ。まだ今日。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

今日を最後に別れようとする夏と弥生の会話です。
0時を過ぎているけれど、終電はまだあるから。
握った手を離すことが出来ないまま、最後の時を駅のホームで過ごす二人です。

あんなに嫉妬してたのに、水季さんのこと好きになっちゃった

-百瀬弥生「水季さんの手紙読んで、別れるって決めたの。」
-月岡夏「何書いてあったの?」
-百瀬弥生「幸せになれる方を自分で選んでねって。あんなに嫉妬してたのに、水季さんのこと好きになっちゃった。だから、海ちゃんのことも好きなままでいれる。読んでよかった。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

駅のホームでの弥生の言葉です。
弥生はきっと、今度は罪悪感ではなく、自分の幸せのための決断が出来た。
それは、救いでした。


頑張れ。頑張れパパ。応援してる。

-月岡夏「もう少し話そう。」
-百瀬弥生「これからも、何かあったら頼って。もう二人と関わりたくないとかそういうのはないから。あ、海ちゃんのママが出来たらそれが一番だけどね。」
-月岡夏「俺やっぱり弥生さんのこと、」
-百瀬弥生「頑張れ。頑張れパパ。応援してる。ちょっとだけお母さん出来たの、本当に嬉しかった。それは本当。本当に本音。頑張れ。」

「海のはじまり」第9話 - 百瀬弥生

夏は泣いて。
弥生は涙をこらえて、夏の手を離して、夏の肩にそっと手を置いて。
電車に乗り込み遠ざかっていく弥生の背中。
ベンチに一人残り、泣きじゃくる夏。
弥生は電車で、夏はベンチで、しばらく声を殺すように泣いていました。

当たり前でしょ。そうじゃないと困ります。

-南雲朱音「どうかした?」
-月岡夏「二人で暮らしたいと思ってます。一番大切にします。他の何よりも絶対優先します。頑張ります。」
-南雲朱音「当たり前でしょ。そうじゃないと困ります。」
-月岡夏「はい。」

「海のはじまり」第9話 - 南雲朱音

弥生と別れ、一人で父親になる覚悟を決めて南雲家にやってきた夏。
いつもと違う様子に気付いた朱音が声をかけた時の、二人の会話です。
夏が時間をかけて大切な人との別れを経て辿り着いたこの決意。
それは、水季が一人で母になることを決めた時と同じもので、親としてのスタート地点にやっと立ったに過ぎません。
それでも静かに強く決意をした夏。一礼して、両手をぐっと握りしめて、南雲家へと入っていきました。


第10話

お揃いに出来るのが名字

「家族でお揃いに出来るのが名字で、家族からもらうのが名前。」

「海のはじまり」第10話 - 南雲水季

名前について海に説明をした時の水季の言葉です。


自覚とか責任とかそんなんで子ども育たないよ

-藤井博斗「ん?待って。仕事どうするって何?転職ってこと?
-月岡夏「そういう選択も、」
-藤井博斗「ないだろ。慣れない仕事しながら慣れない二人暮らしすんの?普通に転校させろよ。」
-月岡夏「子どもにストレスかけたくないんです。」
-藤井博斗「親がストレスでぼろぼろになったら、子どもに二次災害だよ?収入、減らない保証あんの?自覚とか責任とか、そんなんで子ども育たないよ。」

「海のはじまり」第10話 - 藤井博斗

娘がいること、その娘との二人暮らしを考えていることを職場の上司の藤井に打ち明けた夏に対して、藤井がかけた言葉です。


まだ海が変えなきゃだめなの?

-南雲海「ママ死んじゃったのに?ママいなくなって、海、いろんなこと変わったのに、まだ海が変えなきゃだめなの?なんで?」
-月岡夏「…大人の都合でしかないよね。」

「海のはじまり」第10話 - 南雲海

父親になる決意をした夏が、海に二人暮らしをするために転校をしなければならないという話をした時の、海の言葉です。


楽しく生きなさい

「楽しく生きなさい。夏と別れたなら、私たちとはもう他人なんだから。気にせず好き勝手して、ちゃんと幸せになんなさい。」

「海のはじまり」第10話 - 月岡ゆき子

夏と別れたことを報告しにきた弥生に対して、夏の母親であるゆき子がかけた言葉です。


頼らせてください

-月岡夏「一人で育てようと思ってる。」
-月岡ゆき子「一人は無理よ。お母さん知ってる。無理。」
-月岡夏「二人で暮らすから、頼らせてください。」
-月岡ゆき子「はい。わかりました。」

「海のはじまり」第10話 - 月岡夏

弥生と別れ、自分一人で海を育てることを決意した夏。
母・ゆき子にその報告をした時の会話です。


変わらず愛されてるから

「うちからは変わらず愛されてるから、これからも気にせず、海ちゃんと仲良くしてあげてって。」

「海のはじまり」第10話 - 月岡ゆき子

弥生と夏が別れたことを知った月岡家。
ゆき子が夏に対して言った、弥生に対する言葉です。


絶対に嫌いにならないよ

-南雲海「夏くんが言った通りにした方がいいの?海のこと嫌いになっちゃう?」
-津野晴明「いやならいやって、言いまくっていいんじゃない?」
-南雲海「夏くん困らない?」
-津野晴明「困らせたらいいよ。」
-南雲海「いいの?」
-津野晴明「いいんだよ、親なんだから。子どものことで困るのが生きがいなんだから、あの人たち。あと、絶対に嫌いにならないよ。それは大丈夫。」

「海のはじまり」第10話 - 津野晴明

夏とは一緒に暮らしたいけれど、学校は転校したくない。
その本音を気づかいして言えずにいる海と津野の会話です。


手作りじゃなきゃ愛情伝わんないなんて

「手作りじゃなきゃ愛情伝わんないなんて、そんなことないんだよね。」

「海のはじまり」第10話 - 百瀬弥生

海と公園で肉屋のコロッケを食べる弥生が言った言葉です。
以前弥生は、海がコロッケが好きだと聞き、張り切って手作りでコロッケを作りましたが、海が好きだったコロッケは、亡くなった母・水季が、スーパーで割引された時にだけ買ってくれる総菜のコロッケでした。


パパとかママじゃない大人にもちゃんと味方っているの

-南雲海「もう会えないの?」
-百瀬弥生「会えるよ。パパとかママじゃない大人にも、ちゃんと味方っているの。親に縋らなくても生きていけるし、もちろん縋ってもいい。…よくわかんないよね。」
-南雲海「夏くん、嫌いになったの?」
-百瀬弥生「ううん。好き。海ちゃんも好き。一緒に暮らしたり、家族になったり、そういうのがなくなっただけ。」

「海のはじまり」第10話 - 百瀬弥生

夏と別れたことを海に伝えた弥生が、海に対して言った言葉です。


どっちかが嫌になったら縁切ったっていい

-百瀬弥生「友達ってね、会いたい時会って、頼りたい時頼ればいいの。どっちかが嫌になったら、縁切ったっていい。わかる?」
-南雲海「仲良くしたい時だけ仲良くすればいいの?」
-百瀬弥生「そう。海ちゃんのママにはなれないけど。友達にはなれる。友達になってくれる?」
-南雲海「うん。」
-百瀬弥生「家族に話しづらいことあったら、友達に話したらいいよ。友達だから会えなくなるわけじゃない。」

「海のはじまり」第10話 - 百瀬弥生

ママにはなれないけれど、友達になれる。
弥生が海に言った言葉です。


何かを選ぶって、他の何かを妥協するってこと

-百瀬弥生「ん、転職?会社辞めんの?」
-月岡夏「ちょっと考えてて。」
-百瀬弥生「いいの?頑張ってきたのに。」
-月岡夏「子どもの気持ち優先したいし、南雲さんたち離れるの不安みたいだし。」
-百瀬弥生「何かを選ぶって、他の何かを妥協するってことだと思うよ。」
-月岡夏「うん。だから仕事、」
-百瀬弥生「仕事は生活に繋がるよ?これからの生活には海ちゃんがいるんだよ。妥協とか諦めとか、大事なもの優先するためには必要なことだよ。自分だけが犠牲になればいいってことじゃない。」

「海のはじまり」第10話 - 百瀬弥生

海が嫌がる転校をさせないために、自分の転職や引っ越しを考えている夏に対して、弥生がかけた言葉です。


ちゃんと大丈夫なところに流れ着くよ

-月岡夏「自分が背負えばいいってことでも、ないよね。」
-百瀬弥生「水季さんも言ってたよ。誰も傷つけない選択はないし、でも、自分が犠牲になればいいってことでもないよって。」
-月岡夏「手紙に?」
-百瀬弥生「うん。だから私は二人のこと傷つけたと思うけど、後悔してない。何が引っかかってんの?」
-月岡夏「弥生さんが水季から俺と海ちゃんを奪ったみたいな気持ちになるって言ってたの、あれがわかるようになった。」
-百瀬弥生「南雲さんたちから海ちゃん奪う感じ?」
-月岡夏「それで揺らいで…」
-百瀬弥生「二人で暮らすの諦めんの?」
-月岡夏「やだ。」
-百瀬弥生「やだって、子どもみたいに。」
-月岡夏「海ちゃんがやだやだっていうから。」
-百瀬弥生「大丈夫だよ。誰も悪くないんだから、ちゃんと大丈夫なところに流れ着くよ。」

「海のはじまり」第10話 - 百瀬弥生

周りを優先する夏に、弥生がかけた言葉です。

ずっとは、ないよ

-南雲海「ずっと?一緒に住んだら、ずっと一緒にいれるの?」
-月岡夏「ずっとは、ないよ。水季と今は離れてるでしょ?ずっとはないんだよ。でも、出来るだけ一緒にいる。水季がいなくなっていろんなことが変わって、それが辛いのはすごくわかる。なんで子どもばっかりって思うのもわかる。俺も思ったことある。でも、だから、出来るだけ一緒にいる。出来るだけ長く、一緒にいれること考えて決めた。一緒にいたいから、転校してほしいんだよ。」

「海のはじまり」第10話 - 月岡夏

転校をして二人で暮らすか、転校をしないで離れて暮らすか、海にどうしたいかを確認した時の会話です。


おせっかいだと思っても我慢して

「これも持ってって、煮物。ごはんとかこういうことはさせて。おせっかいだと思っても我慢して。どうやったって不安なの。」

「海のはじまり」第10話 - 南雲朱音

海と暮らそうとする夏に手作りのおかずを持たせながら、朱音が言った言葉です。


だから海、夏くんと一緒のがいい

-月岡夏「今まで通り水季と同じ南雲でもいいし、月岡に変えてもいいんだけど。」
-南雲海「わかった。月岡になる。」
-月岡夏「え?そんなにあっさりいいの?あ、嫌なら変えなくてもいいんだよ。」
-南雲海「大丈夫。なる。」
-月岡夏「あんなに色々変わるのやだって…」
-南雲海「大丈夫。変える。」
-月岡夏「おばあちゃんたちと違くなるよ?」
-南雲海「おばあちゃんたちはママと一緒だから大丈夫。」
-月岡夏「海ちゃんは水季と一緒じゃなくなっていいの?」
-南雲海「名前がママと一緒だから大丈夫。」
-月岡夏「ママは"水季"だけど。」
-南雲海「(ノートに「海」と書いて) 見て。」
-月岡夏「うん。海。」
-南雲海「さんずい。ママとちょっとお揃いなんだって。(「水季」と書く)」
-月岡夏「ああ。そっか。そうだね。」
-南雲海「名字は家族でお揃いが出来るんだって。だから海、夏くんと一緒のがいい。」
-月岡夏「うん。わかった。」

「海のはじまり」第10話 - 月岡夏

夏と暮らしていくにあたり、海の名字を南雲のままとするか月岡に変えるか、海の気持ちを思い迷っていた夏。
そんな夏と海、二人の会話です。


第11話

いた感じしなくなっちゃった

「ママは?ママいたのに、いた感じしなくなっちゃった。」

「海のはじまり」第11話 - 南雲海

母親である水季と過ごした場所を離れて夏と暮らし始めた海が言った言葉です。


いたって実感したいのかな

-月岡和哉「一緒にいた場所に行きたがるんだよね、いないのはわかってても。」
-月岡ゆき子「なんだろね、あれ。いたって実感したいのかな。」

「海のはじまり」第11話 - 月岡和哉/月岡ゆき子

ママに会いたいと一人で夏の家を飛び出した海。
夏や大和にも幼い頃にそういったことがあったと話した和哉とゆき子の言葉です。


いるいないの話してないですよ

「もう二人なんだから、今こそ前みたいに水季水季ってうるさくていいんですよ。海ちゃん、いるいないの話してないですよ。わかります?いるとかいないって話してるの月岡さんだけです。いたとかいなくなったって話してるんです。わかんないですよね、南雲さんいた時もいない時もお前いなかったもんな。...すいません、お前とか言って。」

「海のはじまり」第11話 - 津野晴明

水季の話を夏の前でしにくくなり家を飛び出した海。
海の様子に気付いた津野が、夏に言った言葉です。


なかったことにならないよ

-南雲水季「ママね、もうすぐ死んじゃうの。」
-南雲海「死んじゃったらママどこいくの?」
-南雲水季「わかんない。でも、ここからいなくなっちゃう。」
-南雲海「やだ。」
-南雲水季「ママもやだ。やだけど、死んじゃうんだって。」
-南雲海「やだ。」
-南雲水季「やだね。ママもすんごいやだ。だから、海が寂しくならないようにこれあげる。まあ寂しくなる時は絶対あるんだけど、でも、海はママがいなくても他の誰かと生きていくの。」
-南雲海「ママじゃなきゃやだ。」
-南雲水季「今度これ読んであげる。おっきくなるまでに何回も読んで、ちょっとずつわかるようになって、それからママがいなくなっても大丈夫になるから。」
-南雲海「いなくならないって言った。」
-南雲水季「いなくなるの。でも、一緒にいたことは、なかったことにならないよ。」

「海のはじまり」第11話 - 南雲水季

自分が死ぬことを海に伝えた時の、水季の言葉です。


なんで大人は死んじゃうこと“なくなる”って言うの?

「なんで大人は死んじゃうこと“なくなる”って言うの?いなくなるから?だから死んじゃった人のこといないいないって言うの?」

「海のはじまり」第11話 - 南雲海

ママはいない。そう言う夏に、海が言った言葉です。


まだパパじゃなかったから?

-南雲海「みんなが寂しいの海のせい?海、最初からいなければよかった?」
-月岡夏「そういうこと言わないで。いなければよかったとかそんなのないから。もう絶対言わないで。」
-南雲海「ママも寂しそうだった。ママいたのになんで一緒にいてくれなかったの?まだパパじゃなかったから?なんでママいた時パパになってくれなかったの?なんで二人でって言うの?なんでママいないって言うの?海、ママとずっと一緒にいたもん。いなかったの夏くんじゃん。」

「海のはじまり」第11話 - 南雲海

言えずにいた想いが溢れた海が、夏に投げた言葉です。


まだ親じゃないんだから

「大丈夫だって。責任感じないでよ。夏くんまだ親じゃないんだから。」

「海のはじまり」第11話 - 南雲水季

学生時代、中絶のために産婦人科に行く水季に付き添った夏に対して、水季が言った言葉です。
人はいつ父になるのか。
この物語のテーマです。




以上、ドラマ「海のはじまり」の名台詞集でした。

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