南東北旅行①
どうもナトリウムです。
私は架空鉄道趣味の一環で「架空列車を旅行記っぽく描く」という小説をときどき書いています。
その方が臨場感や現実感が出るからなんですが、一方で実際の旅行の後でTwitterに投稿している旅行記はそれとは全然違って淡々としていることに気が付きました(1ツイート140字以内に収めないといけないので)。
ということで、もうちょっと情景描写に重きを置いた、鉄道オタク以外でも万人にある程度読みやすく、かつ軽い語り口で読みやすい旅行記を試みてみようという感じで本記事を書いています。前置きが長くなりましたが、どうぞご笑覧ください。
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南東北旅行②
南東北旅行③
南東北旅行④
南東北旅行⑤
1.山形新幹線つばさ号
2022年7月2日、東武野田線に揺られてやってきたのは早朝6時半の大宮駅。自宅から一番近いこの新幹線駅が東北・北陸方面各地への玄関口となっているので重宝しているが、とはいえ久しぶりの早朝出発でまだ身体が起ききっていない感じがする。先の行程で必要になるきっぷをその辺の券売機で適当に発券しつつ新幹線改札に入り、売店で買い物をしてからホームへ上がる頃には気分も乗って来た。
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大宮駅の新幹線構内は幾度となく旅のスタート地点としてきたので、パブロフの犬的にテンションが上がるものがある。今回最初に乗るのは山形新幹線つばさ121号山形・新庄行き。つばさ号は初乗車でもある。
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新幹線の中では古参になってきたE3系、オタクは古い車両が好きなので良い感じである。ミニ新幹線なので座席が2-2列の在来線サイズの車体、それだけでも思った以上に「新幹線」感がないものだ。最近の車両に比べて窓が大きめなのも嬉しいポイント。
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大宮を出て列車の速度も乗って来たところで朝ごはんにする。「朝食」という単語と共存することが稀な飲料が写っているが、時間は関係なく「行きの車中では飲む」というのが私の信条である(とはいえ7時前という時間は過去最速級だが)。
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私は乗り鉄するとき進行方向右側が好みだったりする。列車は左側通行なので右側にはすれ違う列車が見えるし、駅のホームが上下線の間にある「島式」でも向かい合っている「対向式」でも右側からなら見えるので駅の通過も確実に確認できる。
が、東北方面では毎回それでちょっと後悔している気もする。というのも、北に行く旅行でこれをやると行き=朝に東側、帰り=夕方に西側に座ることになるため、なんか毎回眩しいのだ。車窓は見たいしせっかくのデカい窓でブラインドを閉めるのも負けた気がするので、大体は顔面に煌々と光を浴びながら酒を飲むことになる。冬ならまだぽかぽかして心地よいまであるが、さすがにこの時期はシンプルに暑い。
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酒を飲んで上機嫌になっていれば1時間やそこらあっという間である。7時半過ぎ、つばさ号は福島駅に到着した。
さて、オタク旅行はここからが本番である。ここから先、ミニ新幹線である山形新幹線は在来線の奥羽本線へ直通する。実質「在来線特急」なわけだ(実際にミニ新幹線は正式名称を「新幹線直行特急」と言う)。懐古主義の鉄道オタクは在来線特急での旅に憧れを持っているものなので、その意味でミニ新幹線は実は趣味ポイントが高い。
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福島駅を出発すると、つばさ号は東北新幹線と分かれて左にカーブし、地上へ降りて行く。そのまま奥羽本線の線路に乗っかれば車窓はもう「在来線」だ。景色を遮る壁も無いし普通に踏切もある。この在来線区間が新幹線区間より長い2時間もあるのだからたまらない。
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さて、列車はいま福島駅を離れ西に向かっている。福島は太平洋側で、これから向かう山形は日本海側。つまり、列車はこれから日本列島の背骨、中央分水嶺を越えるわけだ。奥羽本線においては板谷峠という峠がそれにあたり、なおかつ今回のつばさ号乗車のオタク的ピークでもある。
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天気にも恵まれ、青すぎる空と鮮やか過ぎる緑が山の旅路を楽しませる。
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つばさ号、という列車名の歴史は長い。1960年代に上野~山形~秋田で運転を開始した奥羽本線特急列車が最初に名乗った愛称だ。新幹線化した後も、ほとんど同じルートを走るこの列車にそのまま名前が受け継がれた。そして福島より北では名前だけでなく走っている線路も同じと来た。確かに車両は新幹線のそれだが、無形的な、形而上的な意味では今も昔も何も変わらない「つばさ号」が存在し続けているのだ。
…みたいなことを考えながら飲む酒が最高に美味いのです。
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最高になっているとやがて峠を越え切り、盆地に駆け下りれば米沢駅。楽しい楽しい峠越えであった。
列車は進路を北に取り、山形・新庄へ着実に進んでいく。が、ここから先は単線なのでときおり途中駅に運転停車してはすれ違い待ちをするなんていう光景が繰り広げられる。これもまた古き良き列車らしい風情だ。
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緑の稲が一面に植わった夏の水田、夏って感じがする(語彙力)。山脈との距離感が東北のこの辺りの車窓らしい。
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そんなこんなで9時半、終点新庄の一つ手前の大石田駅で私はつばさ号を下車した。
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