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再掲【詩】「何か」

言葉連ねれば連ねるほどに見えなくなった
僕が欲しかったものと君が欲しかったものは
やはり違いすぎた

言葉費やせば費やすほどに分からなくなった
僕が見たかった場所と君が見たかった場所は
同じ方角じゃなかった

夢を夢だと思い始めたら何もかも空しくなって
恋は恋であったとしても冷えた身体なら醒めていく
嘘を嘘だと認めたときに何かが音を立てて壊れた

この距離では心は見えないから想像するしかない
読み取るしかない言葉ならことさらに不安を煽る
思い込みを疑いはじめたときに二人を繋いだ何かが切れた

昔から独り歩くのには慣れているから今の状況はどうってことない
それでも一度味わった果実の味はなかなか忘れられない
君と並んで歩いた風景は徐々に薄れていったけどまだ消えてくれない

言葉連ねれば連ねるほどに見えなくなる
言葉費やせば費やすほどに分からなくなる
僕は何が欲しくて何が見たくてこの街で君に出逢い恋をした?
それとも薄々分かっていながらも分からないフリをしてる?
疑いはじめたらキリがないけど結局は分からないから疑い続けてる

夢は夢でしかないと思い始めたら心が虚しくなって
恋は恋であったけれども色褪せているから醒めていく
嘘を嘘だと認めた途端に僕の何かが音を立てて崩れた

この心では距離を越えられないから冷めていくだけ
繰り返される言葉が次第次第に想いを殺す毒になる
僕は迷路の出口を見つけることができないまま諦めて目を閉じた

誰もいない道を独り歩いているとほんの少しだけ寂しさが手を振った
身体が震えてしまうのは絶対に薄着と寒さのせいだろう
君と並んで歩いた風景はもう過去の記憶の中で「これから」のことじゃない

言葉連ねれば連ねるほどに見えないまま
言葉費やせば費やすほどに分からないまま
過去を振り返れば振り返るほどに哀しくなる
記憶をたどればたどるほどに僕のどこかが疼く

僕は何が欲しくて何が見たくてこの街で君に出逢い恋をした?
君は僕に何を求めていた?
君は僕の何を見つめてた?

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