時代ごとの女性像を楽しく理解したいあなたへ「女の子の謎を解く」/読書感想

女の子の謎を解く 三宅香帆

この本は作品中のヒロイン像の時代変遷を主に語る内容である。
女ってよくわからん的なお話ではない。


思ったよりフェミニズムの話が多かったけど、平成や昭和の作品を取り上げて、当時の女性像とかジェンダー思想がどういうものだったか・どう移り変わってきたのか説明されていて面白かった。


シンデレラストーリーの意味


シンデレラストーリーって普通の女の子が突然芸能スカウトされて一躍人気者になっちゃうみたいな意味(つまり、芸能界での労働を達成するという意味)で使われることが多い。
でも、実際のシンデレラのお話ってそもそも労働者としてこきつかわれてたシンデレラが王子様にみいられて、労働者階級を脱する話だから、今のシンデレラストリーの意味と違う。
ここに今と昔の差異があって、昔のシンデレラストーリーは恋愛によって労働を脱出するヒロインが長い間女性の憧れであったことがわかるし、今のシンデレラストーリーは自分の自己実現が理想として捉えられている。そんな感じ。


BL好きの女の子


あとBLっていうのは異性愛物語の主人公ヒロインに屈折を感じてしまう女性たちにとっての桃源郷であるという解釈もめちゃくちゃ面白い。宝塚も。
よくドラマや漫画で語られる異性愛とか現実世界の恋愛を自分ごとにできないというか,したがらない人はBL好き多いと思う。。
BL好きでテラハも好きな人,0人説。ほんまかい。


ジブリの女の子


宮崎駿作品に10歳とか12歳くらいの少女が主人公であることが多いことについてもおもろい。
ある思想家は「年齢がもっと上がると性的関心が世界を覆い尽くし、視野が狭くなり化粧をし恋の駆け引きに没頭する女性は宮崎駿にとって魅力的ではない。しかし、少女は性的に成熟する一歩手前で荒野を駆け巡る身体的成熟には達しているが、性的目的にそれを用いるほど関心がない少女が宮崎駿にとって魅力的である」と解釈している。
空を飛ぶ能力があるのはそんな少女だけみたい。
だからキキは途中で飛べなくなるとか。


その時代を制するアイドルは時代背景を反映している


AKB48→乃木坂46→欅坂46の曲のテーマや売り出し方が時代背景に沿っている話は面白かった。
まず、AKB48はグループ内で順位が決められ、アイドル自身が傷つきながら成長して行くエンタメを楽しむ。なぜそのような楽しみ方なのか。
あのアイドルが流行っていた当時、ネオリベラリズム・新自由主義的な政策や風潮が多かった。誰もが労働市場に参加し、ときにはその市場に人生を狂わされ傷ついていた。そんな競争市場に悩む状況とアイドルの行う競争を同一視していたため、AKB48が大流行したと考察している。

次に、乃木坂46は「居場所のなかった私に居場所ができた、そこが乃木坂46である」的なメンバー物語が多めで、争って傷つく場からの逃走を歌詞にしがち。
なぜAKBとは真逆なのか。
自由に競争しろと言われるこの市場から逃げたい・どこか安心できるところに落ち着きたいという欲望を乃木坂46が発見せしめたと考察している。

そして、欅坂46は集団からの脱却・個として生きること・同調圧力に屈するべきでないことを歌いがち。なぜか。
これは働き方改革が声高に叫ばれ始め、会社に頼らず自分自身のスキルで生きて行くことや老後資金自分で貯めような的な新自由主義が浸透した時代の産物が欅坂46だと考察している。
面白い。そして、これが秋元康の天才的な采配だということでもない理由がまた面白い。
その時代の少女たちを集めることによって引き起こされる力学が原因であると考えている。こんなアイドルグループにしようと思ってメンバーを厳選したわけではないということである。場当たり的に集まったメンバーでできる一番面白いコンセプトを実行することで、このような時代背景に沿ったようなグループが出来上がるみたい。おもろい。



シスターフッドっていう女性同士の連帯が語られる作品も増えているらしい。世間の圧力なんて気にしないで自由に生きようよ的な。
個を大事にして結婚なんて無理にしなくてもいいし独身だって別にいいっていう風潮がこの世界で生まれてくるのは理解できる。
私は一つ疑問に感じることがある。
その思想を持ち続けて生き続け、死んだ人間がまだまだ少ない。
新しめの価値観だものね。
だから、その理論が果たして30年後40年後の自分が納得できるのか、やっぱり結婚したいと思った時にやり直せる時期なのか考えたときに路線変更は難しくないか?と思う。
でも、性差でまた思うことは違うのでしょうか。

何が言いたいかというと自分の道をゆくのもよいが、マジョリティーに迎合することが安牌である確率が高いよね。”確率”が高い。
でも、独身も全然問題ないよね的な世界になったら、現代の適齢期じゃなくても”やっぱり私は誰かと居てみたくなった勢”が多くなれば今みたいに年齢なんて関係なくなるのかなあ。
要は50歳とかでも全然結婚しますよ的な。
「”結婚できるときにしとけ”、さもないと結婚できなくなるぞ」は結婚しなくてもいいよね的な時代の30年後には当たり前ではないのかもしません。



人間変に知恵というか賢さというか身に付けすぎでは?と最近思ってしまう。ヴィーガンとか。
「個人では基本独立することができず、男女で補完的に家庭を築き、子供を2.1人以上産む」という時代が人類という生き物において一番優れているのではないでしょうか。でも、日本に限るのか。個人で独立可能だけど、出生率も高い国もありますよね。
人類繁栄が良いのか人類存続が良いのか。(←この文の意味を後から読み返すとよくわからない)
私自身がよければ他はなんでもいいのか。
肉は食べちゃダメだけど野菜は食べていいのか。
書き続けて行くとたくさん考慮すべき点が見つかってしまうのでやめておきます。こういう話一番好きなんですけどね。むず。


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