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五十歳になって生きるのが楽になった/備忘エッセイ #8

大晦日に一年の振り返りを。

日々に季節に一年に、あっという間に過ぎていく、という人が多い中、私は長く感じることが多かった。

今年は良い風が吹くと期待して帆を上げて待っていたけど、一向に吹く気配なく、待ちぼうけ。待っていたから長かったのかもしれない。

長い航海、そんな年もあるさ。

さて、今年一番の出来事は、大腸がん検診に初めて引っかかり、念のためにと受けた内視鏡検査でポリープが三つ見つかったこと。

この内視鏡が大腸をぐいぐい進撃していくのが思っていたより痛かった。人より大腸が長いとのことで時間がかかったのもあり。

ポリープ切除はこの病院ではやってなくて、手術の時は麻酔してもらって入院がいいいかもね、と医者がアドバイスしてくれたのでそうしようと。

ところが、別な病院で事前問診したら体力ありそうだから大丈夫でしょ、という感じで日帰りに。

日を改めて切除しに行ったら、三つ取ってほっとしたところで、さらに二つ見つかったので再突入。とにかく痛くて痛くて麻酔してなかったんじゃないかなぁ……あーつらかった。

そんな感じで経験者や医者から聞いた印象より個人的にはずっと大ごとだった。術後の食事や行動制限も含めて。これは自分がHSP気質というのも関係してるだろうな。

最終的にポリープは良性で術後の経過も順調。事無きを得て良かった。内視鏡検査を勧めてくれた保健師さんには心から感謝。ほっといたら悪性化したかもしれない。

で、この話題はこれで終わりかというと、続きがある。心身に変化が起きた。

まずは身体の方。食事をするとお腹が張りやすくなり、特に炭酸飲料はてきめんに。なので前よりビールが進まない。せっかく近所にクラフトビールのお店がオープンしたのに行けてない。なんてこった。

続いて心の方。

内視鏡を大腸に入れるってことは、大腸の中を空っぽにしなきゃいけないわけで、下剤を飲んでひたすら出すというのを2ヶ月の間に2回。

そうなると腸内細菌叢に影響するはずで、性格は腸内細菌によって決まるという研究結果もあり、性格が変わってもおかしくない。

主観では腹が立つことが減った気がする。文字通り「腹」の細菌たちが「立」ち上がることが減ったのか……それが細菌の数や活性が減ったせいなのか細菌の種類の入れ替わりによるものなのか、何が起こっているのだろう。

てゆーかそれってただの加齢じゃない?説も有力で。記憶力や視力諸々の低下に伴って、他者の記憶違いや誤字脱字などの粗に対し、そもそも気づきにくくなったし、気づいたとしても自分だってすることだと寛容になった。

そういえば、HSP(Highly Sensitive Person)という言葉と出会う前は、自分が人一倍繊細でさまざまな刺激に敏感な人という認識はなく、自分は普通で世の中には鈍感な人が結構いるなぁと思ってた。

それがストレスや腹立ちの元になり、生きづらさを感じていた。

現実はその逆で、自分が少数派だと知った時、ほっとしたというか「自分と同じ基準を他者に求めなくていいんだ」と生きるのが少し楽になった。

そして今年で五十歳になり、五十歳になってどう?と聞かれた時、まるっとひっくるめて「生きるのが楽になった」と言えた。

もし今HSP気質で生きづらさを感じている人がいたら、年月と共に生きるのが楽になった人もいるよ、と気休めにサンプル提供。

でもなー、世の中に対して憤りを覚え、怒りをパワーに変えて行動してきた部分もあるので、そういう源が枯渇してきたと考えると、自分の社会的な役割はどうなるんだろう。

自分の楽さが社会の楽さにつながればいいんだけど、今の世の中なにかにつけて落差が激しく。

他にも色々あった一年を振り返ろうと書き出したんだけど、総括したのは病気ネタだったという加齢現象(笑。

そういえば今日のお昼はカレーだった。こういう駄洒落も華麗に加齢?

といわけで、みなさまどうか良いお年をお迎えください。新しい年には、誰もが生きるのが楽になったと言える平和な世界になりますように。

見出しの画像は、年越しということで、そば生産量1位の幌加内の道の駅から。

バーカウンターで「あちらのお客様からです」ってあこがれます。