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eスポーツチームはファッションを通じて何を実現するのか? NYXL、FaZe、C9の場合

日本でもeスポーツにファッションの価値が取り入れられるようになってきたが、アメリカのチームはもっと先を走っているなぁと感じた記事を見つけたので紹介したい。

それはESPNで連載されているEmily Randのコラム「Esports fashion with Emily Rand」で、eスポーツシーンの最先端で活動するチームがファッションおよびファッションブランドとどのような関係を作り、どういった取り組みをしているのかがテーマとなっている。

これまで3本が公開されていて、第1回ではNew York Excelsior、第2回ではFaZe Clan、第3回ではCloud9が取り上げられている。

僕が面白いと思ったのは、それぞれのチームが自分たちの直面している文化的な課題を解決するためにファッションを活用している点だ。

文化と言語の壁を超えるために──NYXL

連載の第1回「Ever Upward」で取り上げられるNew York ExcelsiorはOverwatch Leagueに参戦しているチームだ。同リーグはフランチャイズ制で、出場チームは北米、中韓、英仏の各都市をホームグラウンドとしている。

New York Excelsiorはその名のとおりニューヨークをホームとしているが、結成時にLW Blueという韓国のチームが中核となったため、選手は全員韓国人。それゆえに、ニューヨークのファンを作るにあたって、言語や文化が壁になってしまったという。

どうすればその壁を壊し、ニューヨークの人に受け入れてもらえるのか? オーナー企業のAndboxは韓国の文化がファッショナブルであること、同社の顧客がファッションに敏感であることを利用して、選手の意見を最大限に取り入れたアイテムを開発することに。

2018年のOverwatch LeagueでNYXLは決勝に進めなかったが、ブルックリンで開いたポップアップストアには大勢のファンが並んだそうだ。しかも、選手は7時間にもわたってサインを書き続けた。

ファッションブランドのMitchell&Nessとのコラボでは、ヤンキースへのノスタルジーを感じられるようなジャケットやジャージを制作。さらにニューヨークの標語である「Ever Upward」(Excelsiorと同じ意味)をキーワードに、ニューヨークタイムズのクロスワードパズルをモチーフにしたTシャツも。

NYXLの試みは、その土地の文化と融合して新しい文化を作っていく媒体としてファッションが活用されたよい例だろう。

新しいホームでブランドを根づかせるために──FaZe

第2回「FaZe lean on Offset to build brand in Atlanta」では『CoD』で人気のFaZe Clanが登場する。

FaZeはカルフォルニア州ロサンゼルス生まれでありながら、Call of Duty Leagueにはジョージア州アトランタのチーム、Atlanta FaZeとして参戦している(Atlanta Esports Venturesとのパートナーシップ)。

アトランタの人はプロスポーツチームに関心がないことで有名な一方で、一度でも好きと思ってもらえたら一生のファンになってくれるという。NYXLの場合は言語が特に大きな壁だったが、FaZeの場合はすでにロサンゼルスに拠点がある中で新しいホームグラウンドのアトランタに受け入れてもらうというなかなか困難な課題に直面することになった。

この課題に対する取り組み方はNYXLと似ている。1つは、FaZe ClanのオリジナルロゴにAtlanta FaZeの「AF」を加えて、#FaZeUpの赤い指をリブランディングしたり。また、ジョージア州の愛称「ピーチステイト」にちなんで桃のマークを用いたピーチパーカーを販売したり(あっという間に売りきれたそうだ)。

なにより、タイトルにもあるようにラッパーのOffsetとのコラボが大きな影響を与えたようだ。Offsetはジョージア州出身で、FaZeに投資もしている。

Overwatch LeagueもCall of Duty Leagueも都市をベースとしたフランチャイズ制ということで、ホームグラウンドとなる地域の文化と当該のチームがどう向き合うかは非常に重要な課題だ。まったくの新規チームならまだしも、既存の人気チームがその土地に移るときは特に気を配らなければならない。

NYXLもFaZeも、その地域で愛されているシンボルをファッションに取り入れ、文化を尊重しながらそこにチームの色を溶け込ませている。ローカルファンほど大切にすべき存在はいないわけで、その架け橋としてファッションを用いる手法はとても有効だろう。

新世代のイメージに刷新するために──C9

第3回「Puma helps Cloud9 enter new era」ではCloud9とPumaの取り組みが紹介される。

古くからのC9ファンにとって最も印象に残っている選手は、2013年夏から数年間LCSを戦ってきたBalls、Meteos、Hai、Sneaky、LemonNationだとLandは書いている。

しかし、現在ではほとんどの選手が入れ替わり(Sneakyはオーナーになっている)、新世代のチームが誕生しているにもかかわらず、そのギャップを埋めることができていなかった。ファンにとってのC9のイメージが刷新されていなかったのだ。

C9は新世代を特徴づけるために、Pumaとコラボしてファッションアイテムを制作した。それは1990年代のにおいがしつつ、現代的な要素を取り入れたもの。特に男女別け隔てなく着られることを目指した。

また、Pumaの担当者がC9のホームであるカルフォルニアに出向き、現在の選手たちが普段どんな生活をし、どんな服を身に着けているかをつぶさに観察したという。さらに、担当者は試合会場に赴いてC9のファンをも観察し、インスピレーションを得たそうだ。

でき上がったコレクションのPVがあるので、それも紹介しておく(こちら)。C9のメンバーが出演しているが、ファッションブランドの春コレと言われても信じてしまいそうになる。実際、そう見えるようなクリエイティブを志向しているはずだ。

こうした施策で強すぎる旧世代のイメージを新世代が乗り越えていけるかどうかは、まだ分からない。試みは始まったばかりだが、リブランディングのためにファッション(外見)を刷新するのは王道であり、継続して認識を塗り替えていくしかない。

日本でのeスポーツ×ファッション

ということで、「Esports fashion with Emily Rand」を紹介してきた。日本でのこうした取り組み、つまりeスポーツ×ファッションはどんな感じかというと、現状は機能性を追求したり、かっこよさをアピールしたり、単にマネタイズしたりする手段としてファッションが用いられていることが多い。

上記の3チームが取り組んでいる課題からは一歩遅れているという印象は否めない。でも、まずはチームが強くなってもらわないといけない。ファッションで文化的な課題を解決しうるのはその土台があってこそだ。

いろんなチームがファッションに積極的になってきており、ファッションブランド側も少しずつeスポーツに関心を持ち始めている。この流れがより強くなっていってほしいと思う。

※ちなみに僕の考えとしては、経済的課題→文化的課題→社会的課題→国際的課題という具合に課題が進展する。

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🍵ミ
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ようこそ、eスポーツブランド研究家の謎部えむです。 日本のeスポーツシーンをマーケティングの観点から考察・分析しています。 関心がある方はぜひマガジン「happy esports」をフォローください。 noteを活用したい方のための相談室を始めましたので「仕事依頼」よりどうぞ。
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