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「ゲームで強いこと」に価値を作る──Rush Gamingがラフォーレ原宿に出店した意義

どんな象徴的な出来事も、それが書き継がれなければ歴史には残らない。また、当時どれほど偉大だった人物も、間違った評価とともに書き記されれば稀代のうつけ者として歴史に残ってしまう。

だから、たとえその場が管理者の指先1つで歪曲・消滅してしまう電子媒体であったとしても、物事をきちんと価値づけてテキストに残すことには意味がある。一般に、この行為は批評と呼ばれる。

ということで、ここでは日本のeスポーツ史において重要な里程標となったある出来事について最大限の力を振り絞って批評していこうと思う。その出来事とは、ゲーミングチームのRush Gamingがラフォーレ原宿に2019年8月16日から22日にかけてポップアップストアを出店したことだ。

それが、いったいどうしてこんなに強調するような出来事だと言えるのか? この疑問を解き明かすには多少回り道をしながら話を進めていく必要がある。当然ながら、これは僕の私見でしかない。

※掲載の写真はすべてRush Gamingからの提供。引用含め無断利用はすべて厳禁。All rights reserved by Wekids Inc. / Rush Gaming Inc.

結論:チームをブランドとして展開したことに意義がある

とはいえ、先に結論だけまとめておこう。

これまで多くのゲーミングチームが大会ごとに離合集散してきたが、その中のいくつかのチームが時代の要請から固定的・継続的に運営され始めた。さらにその中の一部のチームはビジネスとしてチームを経営し、広告やグッズ販売などによって収益を上げるようになった。

しかし、そのビジネスの射程はあくまでゲーム文化の内側に留まっており、ゲーム会社(大会オーガナイザー)やゲームユーザーを中心・対象とするものだった。チームは大会に出場する存在で、グッズ販売はあくまでファン向け。広告媒体としてチームを利用する場合も、スポンサー(広告主)がゲームユーザーへのメッセージングを期待して対価を支払う形だ。ただし、真っ当な経営ができているチームはごく少数なので、大会賞金やリーグ分配金以外で売上が作れていること自体が革新的ではあった。

だがそれも「Rush Gaming以前は」とつけ足さなければならない。そうした中でRush Gamingはさらに先に進み、チームそのものをブランドとして展開することにした。その象徴的な出来事が、ファッションとトレンドが生み出される街である原宿の中でも、とりわけ人気のブランドが集合しているラフォーレ原宿にポップアップストアを出店したことだ。

Rush Gamingが成し遂げたことは大きく4つある。

自分たちのブランド商品を販売して収益を上げる礎を作ったこと。
ゲーミングチームでありながらゲーム文化を飛び出したこと。
原宿というファッションの街にブランドとして出店したこと。
なにより、ゲームで強いことをブランド資産(金銭的な価値)に直結させたこと。

これらがeスポーツ史に語り継がれるべき価値である。そしてこの価値は、ゲームやeスポーツの面からだけで捉えられるものではない。ゲームを前提としつつも、ブランド、マーケティング、コミュニティ、カルチャー、街(土地)、あるいは包括的にビジネスとして、そして回り巡ってeスポーツの文脈において彼らの活動を紐解き評価する必要がある。

なので、結論だけで満足できない皆さんは、どうぞ続きを読んでもらえれば幸いだ。

Rush Gamingとは

最初に、Rush Gamingがどういう存在なのかを紹介したい。公式サイトにもHistoryがある。

Rush Gamingは、もともと「Call of Duty」というゲームのシリーズにおいて有志のプレイヤーが集ったクラン、Rush CLANを出自とするチームだ。ハセシンといういまも多大な影響力を誇るカリスマが率いるRush CLANでは、「CoD」の世界大会に照準を合わせたeスポーツ部門を結成した。

そのeスポーツ部門に、Rush GamingのキーパーソンであるGreedZzと目下チームを牽引するWinRedがいた。GreedZzはNgtとLightを加えたチームが大会で優勝したことをきっかけに、Rush Gamingのもう1人のキーパーソンである西谷麗と出会う。

西谷はゲーム会社を主要な顧客とするスタートアップのエージェンシー、Wekidsの創業者だ。大会でチームを応援するファンに感激したという西谷はGreedZzへのスポンサードを決定。その後、Rush CLAN eスポーツ部門はRush Gaming by Wekidsとして正式にWekidsのスポンサードを受けることになる。

新生チームとして好発進できたRush Gamingは一時期国内無敵と謳われたが、その後は試合形式の変更やメンバーの激しい入れ替わり、GreedZzの故障などによって苦戦を強いられている。現状、「CoD」シリーズにおいて国内トップチームの1つではあるものの、最強チームとは言えない。

しかし、その人気はおそらくほかのゲームのチームを合わせても日本でトップクラスだと言っていいだろう。数多くのファンがチームを支えており、チームもその応援に応えている。eスポーツに詳しい業界識者に訊けば、おそらくRush Gamingはその熱狂的なファンの存在によって語られるに違いない

SNSや動画サイトでの施策、グッズの販売、ファンクラブの運営やファンサービスなどはほかのどのチームより洗練され充実している。選手の日常風景やゲーミングハウスでの料理・食事風景なども動画や写真で発信し、ファンとの絆を強めることに注力。ゲームをプレイし大会に出場すること以外の選手の顔も積極的に見せている。

ポップアップストアでタピオカミルクティーを飲むWinRed

Rush Gaming自体はGreedZzと西谷が創業者として2019年に法人化。「CoD」のチームメンバーはWinRed、Luke、Gorou、Vebra、Huntの5人で、ストリーマーとしてハセシン、GreedZz、GP、Lightがいる。缶バッジなどのいわゆるファングッズのほか、Tシャツやフーディなどのファッションアイテムの販売で売上が1000万円以上あるそうだ。ブランドとしての展開も満を持してといったところだろう。

以上がRush Gamingのあらましとなる。こうして見てみると、いまは最先端のゲーミングチームと呼んで差し支えないRush Gamingだが、その成り立ちは実に日本のeスポーツらしさがある。そしてそれこそが、先ほど述べた4つの革新的な価値に繋がってくる。

離合集散するチームとeスポーツシーン

Rush Gamingは継続的に活動しているチームだが、そもそもこの様式のチームが誕生したのは最近のことだ。しかし、その流れが生まれなければ、ゲーミングチームがブランドとして成立することは絶対になかった。

では、なぜRush Gamingのような様式のチームが誕生したのか。それ以前はどんな様式のチームが存在していたのか。

誰もが認める事実として、日本では格闘ゲームが競技としてのゲームを牽引してきた。その影にFPSもあるにはあったが、ゲームセンターを中心としたシーンの影響力が強かったのは間違いない。

格闘ゲームは基本的に1人で対戦するので、大会も1人で挑むことになる。だが、2012年まで開催されてきた国内最大規模の闘劇を筆頭に、チームを組んで出場する大会も多かった。ただし、そのチームというのは、上記で話題にしてきたチームとは少し様相が異なっている。

ここでいうチームとは固定的・継続的に活動するチームではなく、あくまでその時々の大会に出場するために組まれたチームだ。出場するプレイヤーは同じでも、チームメンバーとチーム名は気まぐれで、ほとんど1回きりのチームだった。現在でもこの様式のチームが組まれる大会は多く、例えば『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』のクーペレーションカップがそうだ。

この風潮もあって、継続的に活動するチームという様式が日本でなかなか根づかなかったのではないか、と僕は考えている(それ以外にも原因はある。ゲームやシーンが持続していく見通しが立たなかったこと、マネタイズなど継続的に活動することの価値が見出されなかったことも大きい)。

いまも若年層プレイヤーが多いゲームの大会を見てみると、その場限り、その場の思いつきで結成・命名したようなチームがたいへん多い。きっとその名前を背負っていくつもりはないのだろう。

これはFPSのチームにも言えるし、MOBAのチームにも言える。DeToNatorやDetonatioN、さらに振り返れば4dN.PSYMINのような(海外では主流だった固定的な)チームは日本の競技シーンでは例外だったのだ。

実際、『League of Legends』でも継続的に活動するチームが増えてくるのは2014年のプロリーグ発足以降である。というより、そのプロリーグ、League of Legends JAPAN Leagueはこれまで離合集散してきたチームとメンバーを固定させ、継続的に活動させることが大きな目的だったと言ってもいい。

なぜチームを固定させる必要があったのか。プレイヤーとチームにファンをつけるためだ。eスポーツシーンを拡大するにはプレイヤーやチームにファンがつかなければどうしようもない。だから、興行側は確固としたチームを求めた。プロリーグはそのためにうってつけだった、というわけだ。この考え方は現在でも変わらない。

一方で、大会に出場するチームは離合集散していても、継続的に活動していたプレイヤー団体もあった。それがゲーム内のクランやギルドだ(コミュニティだと大きすぎる)。そうしたクランからは大会ごとにメンバーが選出され、出場チームが結成された。母体としてのクランは同じでメンバーも似通っているが、毎回チーム名が違うという現象はありふれていた。

クランやプレイヤーにとってはそれで都合の悪いことは何もなかった。自分たちはクランに所属していて、大会で勝てばクランの栄誉となる(ゲーム内のクランが発達しているゲームではこの傾向が強い)。しかし、興行側には都合が悪い。大会に出場しているチームにだけ栄誉が与えられるべきだからだ。ゆえに、クランは固定的でもチームが離合集散していると、どうにも興行側が望むようなシーンを形作りにくい。

Rush CLANにも「その感じ」があったのかもしれない。しかし、結果としてはGreedZzが西谷に働きかけたこともあってeスポーツ部門はRush Gamingとして独立した。メンバーは入れ替わりつつもチームとしては固定的で、継続的な活動を行なうことが可能となったのだ。

継続するチームしかブランドになりえない

言うまでもなく明らかなように、離合集散するチームがブランドとして確立することはありえない。ブランドは存続していかなければならないのだ。どうして長らく日本の競技シーンから海外チームのような確固たるブランドが生まれなかったのか、その理由は上記ではっきりとしただろう。

格闘ゲームのような個人戦のゲームでも、プレイヤー個人がYohji Yamamotoみたいなブランドとして成立しえたかもしれない。だが、現実にはそうはならず、あのウメハラですらいまはCygames Beastに所属している。ももちはいまでこそ忍ismを起業しチームとしてFudohを立ち上げたが、それ以前は自身がEvil GeniusやEcho Foxに所属していた。

なぜプレイヤー個人がブランドにはならなかったのだろうか。理由はよく分からないが、前述の「ゲームやシーンが持続していく見通しが立たなかったこと」「マネタイズなど継続的に活動することの価値が見出されなかったこと」が原因かもしれない。あるいは単純に、個人がブランド化することが社会的に一般的ではなかったからかもしれない(これらはニコ生主やYouTuberにも言えるだろう)。

いずれにせよ、この数年で日本にも継続的に活動するゲーミングチームが数多く誕生し、その中からいま初めてゲーム文化の外に飛び出してブランド展開するチームが現れた。

出店中、選手が代わる代わる滞在してサインやチェキに応えていた

これはeスポーツ市場が持続的に成長する見込みがあり、ゆえにチームに継続的な活動を行なうメリットがあり、その活動を行なうためにチームが経営を手掛けるインセンティブが発生した結果である。

メディアとしての価値、ブランドとしての価値

経営といっても収益を上げるビジネスモデルはいろいろある。いま、ゲーミングチームの多くはメディアとしての価値をセールスポイントにしようとしている。なぜなら、広告主からの収益が最も効率よく、かつスポンサードの動きが活発化しているからだ。

アピールに有効なのは数字だ。フォロワー数、視聴者数、視聴時間、エンゲージメント率などなど。DeToNatorを運営するGamingDの江尻勝は、ストリーマーが有する各種のデータをまとめ、広告主に営業を仕掛けているという。メディアとしての価値を高めるためにはさまざまな戦略や施策が考えられるだろう(多くのチームにとってはまずデータの可視化が必要だ)。

その一方で、メディア(要するに広告)以外のビジネスモデルに挑戦しているチームは多くない。たしかにファングッズの販売はどのチームも行なっているが、ファン向けで限定していると伸び代はない。新規顧客を獲得するには、ファン以外に目を向けざるをえない。だからこそ、ブランドとしての展開が必要になる。

チームのブランドとしての価値は、メディアとしての価値とはかなり異なる。メディアとしての価値が広告主のメッセージを自分たちのファンに届けられるかどうかだとすれば、ブランドとしての価値は自分たちが作った商品をファン以外にも買ってもらえるかどうかにある(もちろんファンは重要だ)。ビジネスとして近しい部分もありつつ、お金をもらう相手が違うので戦略も根本的に異なっている。

どちらが難しいか? どちらも難しい。しかし、eスポーツ業界では少なからず前者の事例は蓄積している。しかし、後者は事例もデータもない。だから、より難しいと言える。Rush Gamingのポップアップストアがeスポーツ史の里程標になったと豪語したのは、まさにこの理由による。

原宿の文脈にぶち込まれたゲーミングチーム

いや、ちょっと待て。秋葉原やなんばのソフマップや銀座ロフトでもゲーミングチームのグッズが販売されているではないか。それとRush Gamingのポップアップストアとはどう違うのか?

端的に言えば、全然違う。ソフマップはそもそもゲーム文化にとても親しく、そこでeスポーツ関連のグッズが販売されることには何の違和感もない。そこを訪れるのはおそらく大半がゲーム好きの人たちだ。

では、銀座ロフトはどうなのか。たしかに銀座という街の特別感はある。けれども、それはロフトがいま話題のeスポーツ関連のグッズを並べた一コーナーであって、どこかのチームが企画して出店しているわけではない。銀座の文脈にeスポーツが投入されたことは非常に価値があるが、ロフトの文脈に鑑みれば想像の範疇である。

そうすると、ラフォーレ原宿にRush Gamingが招待されたわけでもなく単独で出店したことは際立っている。原宿というゲーム文化と正反対の様相を呈する街に、ゲームの中でもコアオブコアなeスポーツのチームがブランドとして出店したのだ。違和感と疑問しかない。

ポップアップストアの内観、ブランドの世界観がよく表現されている

これをファンサービスの一環だと判断するのは気が早い。当然、来店客の多くはRush Gamingの既存ファンであるし、チームとしてもファン向けの意向は強かっただろう。けれど、それだけが目的ならラフォーレ原宿にポップアップストアを出店する必要などなかった。

そう、チームのファンが原宿でRush Gamingに出会うことに意義がある。ゲーム文化の中にいた人たちが、ゲーム文化やゲームコミュニティの外、すなわち原宿で出会うのだ。

Rush Gamingが大会ではなく原宿にファンを連れてきたこと。その重要性をわざわざ説明する必要はないだろう(その意味で、DeToNatorがサンリオピューロランドにファンを連れてきたことも同様の価値がある)。ファンにとっても、自分たちが応援しているチームがラフォレー原宿で通用するブランドだと知れて感慨深いのではないか。

また、そしてこれこそ僕が感銘を受けたポイントだが、ポップアップストアにはラフォーレ原宿をふらっと訪れた人がRush Gamingに遭遇する可能性が秘められている(しかも、場所は2階の飲食店コーナーの目の前)。

いままでチームや選手を知るには大会やSNSなどを通して当人たちを直接的に知るしかなかったが、ここには新しいチャネルが開かれている。ブランドや商品(店舗)を通してチームや選手を知ってもらえるのだ。そのポテンシャルをどのように評価したらいいのかまだ分からないが、知ってもらう機会が増えるのは単純にいいことだ。

eスポーツはファッションがどうたらとよく言われる。だが、Rush Gamingはそんなの知るかとばかりに単独でファッションとトレンドが生み出される街に飛び込んだ。原宿の文脈にぶち込まれたゲーミングチーム……たぶん相当の手応えがあっただろう(平日でも盛況していた)。

8月18日の様子

eスポーツとファッションはRush Gamingによって直接的に接続されてしまった。続くゲーミングチームが現れるのは時間の問題だ。そして、それは別にファッションだけに限らない。音楽など何でも可能性は広がっている。

ゲームで強いことがブランド資産に貢献する

とは書きつつも、僕が最も強調したいのは「Rush Gamingがラフォーレ原宿にポップアップストアを出店してすごいね」ということではない。ほかの何をおいても、Rush Gamingが「ゲームで強いことがブランド資産に直結する仕組み」を作ろうとしていることに注目すべきだ。

どういうことか。これまで、そしてつい最近も、ゲームで強いだけのプレイヤーにたいした(金銭的な)価値はないという言説がTwitterを飛び交ってきた。現状に即せばそのとおりだ。いくらゲームで強くても、それをマネタイズするのは簡単ではない。ファンがいなければ広告収入もない。

だから、プロゲーマーはゲームで強いこと以外に魅力をアピールし、人気を獲得しなければならない(そしてメディアとしての価値を高める)。たしかにプロゲーマーをエンターテイナーとして見るのは少し物哀しいが、構造上どうしようもない。と、いままでなら言えていた。

Rush Gamingは、その状況を変えてしまう仕組みを作り出そうとしている。

メンバー個々人だけでなく、ブランドとしてのチームに人気があれば商品は売れる。チームが人気を得てくれるから、選手は練習や大会に集中できる。そして大会に勝てば、チーム(と選手)の人気は向上する。つまり、チームがブランドとして展開されていれば、所属する選手がゲームで強ければ強いほどブランド資産が作られていくことになる。そのブランド資産が金銭的な価値に繋がる。

要するに、ゲームで強いことが金銭的な価値になる! これこそ競技シーンを志向する多くのプレイヤーが求めていることではないか。少なくとも、強いこと自体に広く価値が見出される前段階としてでも。

西谷はゲームで強いだけのプレイヤーに興味はないと常々言っている。しかしその実、チームをブランド化することによって、ゲームで強いことに価値を作ろうとしているのだ。

そう考えると、なぜプレイヤーがEvil GeniusesやRed Bull Athletesに憧れるのかが理解できる。ゲームで強いことが価値になる環境が用意されているからだ。日本でもTeam GRAPHTを筆頭に格闘ゲームプレイヤーのチームがいろいろとでき上がってきた背景も読み取れるし、ゲームと全然関係のない企業が社内でゲーミングチームを結成することの狙いにも通じる。

もちろん、チームをブランドとして展開するのはチーム運営陣のほかにチーム経営陣が必要になる。チームのビジネスを手掛ける人材だ。これからの日本のeスポーツシーンでは、海外同様にチームのビジネスを成功させるためのスキルがより求められるようになっていくのではと思われる。

革新は小さな一歩から始まる

やや勇み足で書いてきたが、Rush Gamingの一歩は大きくはない。1つのチームがラフォーレ原宿に出店しただけで、商品も多くはファン向けのものだった。そもそもビジネスとしてブランドを成功に導くのは簡単ではなく、Rush Gamingはその端緒についたばかりだ。

となると、『荒野行動』の荒野王者決定戦やテレビ東京のSTAGE:0のように、莫大な費用をかけて華麗な演出が施した大会のほうがeスポーツを次なるステージへ運び発展させていると思えるかもしれない。

けれど、いくら演出が派手で巧みになったところで、チームが継続的に活動できるようになるわけではないし、プレイヤーがゲームで強いことによって金銭的な価値を生み出せるようになるわけでもない。演出の発展はあくまで大会の発展であって、シーン全体に関わるような革新ではない。豪華絢爛な大会が開催されている陰で、出場するチームがぎりぎりかろうじて活動できている状況だとしたら、それは健全なeスポーツシーンと言えるだろうか。

LJLなど一部のプロリーグでは、参加するためにチームが真っ当に経営されているかという条件が課されるようになってきた。運営ではなく経営だ(LJLの場合はチームが所属する法人の売上5000万円以上)。これはチームが真っ当に運営されているかどうか、選手が対価を得られているかどうかを見極めるための基準であり、リーグを健全に運営していくベターな判断だと言える。

それなりの企業がプロチームを所有しているなら何の問題もない。しかし、Rush Gamingのような草の根から上がってきたチームや法人化しただけのチームにとっては生半可なことではないだろう。ただでさえチーム運営に四苦八苦している状況で、チーム経営にも条件が課されてしまってはにっちもさっちもいかない。

ゲーム会社やリーグは、別にチームの経営を助けてくれるわけではない。チームは自力で稼がなければならない。そのための道筋の1つを、Rush Gamingは切り開こうとしている。

その姿を応援しないわけにはいかない。革新はいつも小さな一歩から始まるのだ。


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