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紹介する人は紹介される人になる――無名のプロゲーマーがファンを作るために

この記事では自分に興味を持ってくれた人をより熱心なファンにする方法ではなく、最初に興味を持ってもらう方法、つまりファンを作る方法について簡単にまとめる。

選手インタビューはファンしか読まない

プロゲーマーの人柄なんてどうでもいい、強さがすべてと考える人もいるが、プロをプロたらしめているスポンサー(お金を出す立場)からすればそんなことはまったくない。誠実で人当たりがよく、根気強くて、ファンを大切にする人ほど慕われ、尊敬され、そして重宝される。

一方で、SNSではたいしてツイートもファンとの交流もせず、大会出場時にしか「顕現」しない人もいる。どんな練習をしているのか分からず、チームメイトとの日常風景も想像ができず、ただプロチームに所属しているだけのような人だ。しかも大会で勝てないならなおさら存在感は薄く、ファンもつかない。

取り立てるネタのない人だと「露出」は余計に難しい。より広く拡散してくれるメディアからアプローチする理由がない。ファンもいない、メディアにも取り上げられない——そんなプロゲーマーに社会的価値(お金をもらう理由)があるとは考えにくい。

かといって、チームがその人を目立たせたいと思ってサイトやSNSで紹介しても、そもそも知られていないのでもっと知りたいと思う動機が生まれない。加えて、身内からの紹介なのでどんな脚色があるか判別できない。そしていきなり選手インタビューを掲載しても、ファン以外は読まない(そのファンがいないのが課題だ)。それでは、インタビューを読んでくれるようなファンを増やすにはどうしたらいいのか。

プロゲーマーを知る最初のきっかけは?

だが実は、この課題はすでに人気の選手でも同様だ。たとえ同じゲームをプレイしている人でも、興味のない選手の情報はまったく目に入ってこないからだ。何かのきっかけがないと、もっと知りたいとは思わない。

そのきっかけとは何か? 熱心なファンになってもらうための最初のきっかけとは? 

考えれば当たり前のことだが、第三者による紹介である。当事者からの情報はほとんど届かない。チーム(や直接的な利益関係のある人)からの情報は信じがたい。選手のインタビュー記事も、想像以上にファン以外には届きにくい。だからこそ、その選手(あるいはチーム)のことが好きで敬意を抱いている人が紹介していくことが必要になる。そうすることでその人の周りにまず知ってもらえる。

その第三者は選手のファンかもしれないし、メディアかもしれない(大会で活躍することも第三者が紹介してくれることに等しい)。その人が主観的または客観的に真摯に熱心に伝えることで、その選手のよさが伝わる。人は他人が心動かされている姿に心動かされるものだ。

少数のファンを大事にする

といって、そもそも紹介してくれるようなファンがいないことが課題だ。上述したようにメディアがいきなり目立つトピックもない選手個人を紹介する記事を掲載することは少ない(実際、大手ゲームメディアで選手個人を紹介するような記事はほとんど見たことがない。ウメハラやももち、Fakerくらいでは?)。

だとすれば、これからファンを作っていきたいと考えているプロゲーマーがすべきことは何か。

まず、みずから情報発信して少しでも多くの人に知ってもらうことだ。当事者からの発信に興味ゼロの状態で振り向いてくれる人はいないと書いたが、実際には少数はいる。その人たちはとても情報感度が高い。例えば、チームに所属したときの発表でTwitterを見に来て、リツイートしたりフォローしたりしてくれるような人だ。

そうした人を大事にしなければならない。(特に無名の選手だと)最初はたしかに数人かもしれないが、その少数の人たちを大事にして、ファンになってもらう。フォローするなり、お礼のリプライを送るなり、何でもいい。たった一言が印象に残る。そして、最初のファンはたいてい最後までファンでいて くれる(この記事の公開前、ちょうど7th heavenに所属したNessCycleをフォローしたらフォロバしてくれた) 。

もちろん、そのあと自分のことを紹介してくれるかどうかは分からない。でも、そこもコミュニケーション次第で、「大会出るからよかったら友達に紹介してね」なんて言える関係を作れていればいいのだ。そうしてまた新しいファンと交流し、自分のことを知ってもらい、誰かに伝えてもらう。その循環を作れれば、ファンは一気に増えていく……かもしれない。

数人から始めること。この地道なやり方が結局は大きな力となっていく。ちなみに、「フォロー&リツイートでプレゼント」みたいなキャンペーンでフォロワー数を増やすのはまったく意味がない。作りたいのはファンであって、プレゼント目当てのファンでも何でもないフォロワーではないだろう。

紹介する人は紹介される人になる

僕は以前『クラッシュ・ロワイヤル』のプロになったけんつめしを紹介する記事を書いたが(ありがたいことに直接お礼も言われた)、それはたまたまゲームに興味があって、たまたま動画を見つけたからだ。選手・チーム側がそうした偶然に頼る方法もあるが、戦略的とは言いがたい。

また、僕が改めてけんつめしをすごいと思ったのは、彼が生配信や動画でみかん坊やのすごさを語ったり、グローバルランキング1位を獲ったJACKなどを紹介していたからだ。自分だけでなく、自分がすごいと思う人を自分のファンに伝えられるその姿勢を改めて尊敬する(けんつめしに限らず、みかん坊や、ドズル、きおきおなどYouTubeで動画を上げているクラロワのトッププレイヤーはそういう人が多くて、みんなでゲームを盛り上げていこうとする雰囲気がある)。

「他人を紹介する」ことは誰でもできるが、多くの人はやらない。自分にファンをつけたいと思っている人は、なぜ他人を紹介しなくてはならないのかとすら思うだろう。しかし、紹介する人は紹介される人になるのだ(僕がここでけんつめしを紹介したように)。

第三者からの紹介はたった1ツイートでさえも大きな価値がある。焦らずに、小さな興味を持ってくれた人との信頼関係を作っていくことが大切だ。

この話はプロゲーマーやチームだけでなく、企業やブランドにも言えることである。

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