電流☆
俺にとって、電流は都市である。早瀬に、座礁する辛苦の積荷に、お伽話の中の曙と来る明日の王国に俺は跪きーー豆電球を手に入れた。
俺は豆電球が好きだ。お前も豆電球が好きだ。俺とお前は、鳩に豆電球を喰らわせるのが習慣となっており、日常になっており、東の『ザック・クイント邸』のある坂に雪崩のように匿名の言説が流れるのを眺めながら、ひとつひとつの都市に手作業で明かりを灯していったのだ。
ひとつ断っておきたいのが、この詩は冗談なので、真面目に読まないように、ということ。全ての文章と同じで、書かれていることはみな電流にすぎない。私は鳩である。
俺があの滑稽な空に泣くのは電流のせいではない。物語のせいでもない。あの緑の景色の錆びた滑車が融通する、回路の両端の国家を、俺の電流が、運河を渡る貨物船とその中の空虚な手紙、そして巨大な白い雲の反映となり、都市をひとつの知識に収斂させるからだ。幾千の光明となりし裸の電流に、都市の鼓動だけが、約束された機械の単調な振動として、俺とお前の表情を行き来する。
貨物船は大地を運んだ。風景を運んだ。電流を運んだ。やがて、全ての海は白い城となった。あれは確かに電流だった。外国の切手が使われていたからね。
ウモとミハ。それが俺とお前の名前だった。
草原を撫でてごらん。
空は君のものだ。
代わりに、積荷は全て俺が頂こう。
ーーああ、豆電球は全て切れた。電流は、今日と明日の合間を通う、羞明の勉学であった。
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