「初めて出会った日本人」と写真を撮られたアナフィラキシーの顔パンパンな日

こんばんは。
日付をまたいだけど見なかったふり。。
昨日や一昨日見てくださった方、ありがとうございます。
誰かが見てくれたというのはうれしいものですね。

昨日の最後に書いた、中国四川省のチベット人自治区(丹巴)で人生初の食物アレルギーになった日の話をしたいと思います。
長くなったので、インド洋上の機内の話はまた後日にします。


あの日、私は憧れた「青いケシの花」を見るために、四姑娘山地域に行くツアーに参加していました。

道中のホテルはどこも想像以上に綺麗で、道行く人や店の人々はみんなとても親切でほがらか、
人生で初めて四川省(中国)に足を踏み入れたけれど、素敵なところだなと思っていました。
通訳の馬さんの知識量がとんでもなく、運転手の方もすごく良い方でした。
不運野郎の自分とはいえ旅行に関しては「あたり」やすい気がしていて、
今回もあたりを引いた!と思いました。

唯一、道中で立ち寄るトイレだけは地獄のようでしたが。
(以下数行間は大変不快なトイレの話が出ますので、気になる方はとばしてください)
女性トイレに入ったら溝一本あるだけ(水は外にいるおばあちゃんが溝に向けたホースで流してくれてるけど、前の人のお尻丸見え)から始まり、
地面まで10m以上ある崖上に板を渡して板に開いた穴にGO!して汚物を崖下にGO!するスリル満点なタイプ、
そして、さえぎるもののない野原にしゃがみ込む、超ナチュラルスタイル。

当初、添乗員さんはツアー中最も若い(平均年齢60代のなかの唯一の20代の)私がこのトイレに耐えられるのかをめちゃめちゃ気にしていましたが、
私は逆にこれが面白かったので大丈夫でした。トイレがすごい度に仲良くなった上品なマダムと笑ってました。
むしろ80代のおばあちゃん方の恥ずかしがりようがすごかったですね。「トイレ休憩でーす」ってなにもない野原で降ろされたとき激おこしてました。「こんな!こんなところでしろっていうの?!動物じゃあるまいし!馬鹿にするのも大概におし!!」って怒ってました。

すみません、トイレ話で盛り上がってしまいました。
食物アレルギーの話に戻ります。


それで、ツアーの半ばに差し掛かったころ、我々は美女谷と(中国で)名高い丹巴(タンパ)地域の谷あいの村を超え、チベット人自治区のど真ん中、草原と山が広がる美しい世界を画家の聖地「新都橋」に向けバスで走っていました。

途中のトイレ休憩で、丹巴地域の高原の村へ立ち寄りました。
朱とギザギザ模様で彩られた美しい村です。80代の女性陣もトイレが綺麗で心癒されていました。
トイレ休憩ついでにツアー客たちは村を散策して、
地元の方と、日本語×中国語・チベット語でお互い全然把握できてないけどなんかジェスチャーでわかる気がする会話、を繰り広げていました。

トイレ休憩が終わるころ、
一人の男性ツアー客がみんなに地元の人から買ったらしいリンゴを配っていて、
私も一回断ったけど「おいしいから!」と言われたのでありがたく貰いました。
そして添乗員さんは結構な大声で「地元のものですから、自己判断で」とみんなに言っていました。

ミステリー好きな方はこの辺でもうお分かりいただけただろう。
この「リンゴ」こそが、私の、アナフィラキシーの原因となる、ということを。

・・・すみません、つい、夏の心霊番組みたいになってしまいました。


「食べて食べて」の声に、私も皮のままがぶりと頂き、
心の中で
『うーん、甘くもないし、少し渋みが強いし、リンゴジャムとかデザートに良さそう。そんなおいしくはない。てか皮に農薬とか使ってないかな、大丈夫?』
と、正直思いました。
私は嘘をつくとわかりやすいタイプなので、結構正直に、
「野性味あふれる味ですね。地元のものって感じで旅行感あっていいですね。」
とくれた人に言いました。リンゴをくれた男性はそれで満足してくれたようでした。
そもそも何かを人にあげようという心意気は美しくて尊いものですから、ありがたい出来事でした。
めでたしめでたし。

・・・ではなかったわけです。
食後5分後から、変な汗が出始めました。
脇や足の付け根、首など、リンパ節があるあたりが腫れていく感じとほてりがあります。
まぶたが重くなり、呼吸が荒くなり、バスの直角座席にまともに座っていられません。
周囲の座席の人が私の異変に気付き始めました。

そして80歳くらいの女性が声をかけてくれました。
「あなた!大丈夫?顔が土気色よ!!」
ご年配の方だから、発言が渋い。いや、それもう黄色人種で言うと色的に死者じゃない?って発言です。
めちゃめちゃ具合悪いのにその時はちょっとだけ「ごふっ」と笑ってしまいました。

しかしその発言のお陰で、みんな『こりゃやばそうだぜ』という雰囲気になりました。
添乗員さんや通訳さんが「どうしよう、次の目的地が街(病院がありそう)ですけど、あと4時間くらいかかりますよね?」「そうだなぁ、近くの病院だと30分くらい遠回りしたらつけそうだけど、ホテルに着くのがその分遅れるからどうしたもんかね。この辺はタクシーもいないんだよ」と話し合っています。

結果、大変ツアーのみなさんに申し訳ないことに、
バスで遠回りして病院に行って、バスはちょっとそこで待っておく、
①医師が大丈夫って言う→私をバスでホテルまで連れて帰ってツアーを続ける
②医師が悩む→私を置いて、バスは次の目的地に行ってツアーを続ける
という①か②で行こう、的な話になったようです。
私は声がまともに出せないくらい喉が腫れてるので、
「すびばぜん。ごべいばぐを・・・(すみません、ごめいわくを・・・)」
とか言ってました。

脳内で
『申し訳ねぇ。リンゴだ、絶対。空気読んで食べなきゃよかった。「いらない」、「食べない」という我を突き通せばよかった。逆に迷惑かけてしまった。リンゴくれた人が悪いわけじゃないけど。』
『これ死ぬやつかな。息も苦しいし、全身にわけわかんない違和感があるんだけど。どうなんだろう。』
が悶々と巡っているうちに、
バスは病院につきました。

診察待ちの間、添乗員さんが
「原因は何でしょうか?バス酔いがひどいほうでしたか?」
と尋ねてきたので、
「りんご、たぶん、アレルギ」
と、喉が腫れてるので最低限で答えます。
添乗員さんは思案顔で、
「それは、あの男性が配っていたやつですね。ツアー上雰囲気が悪くなると良くないので、その原因については黙っておいて、なぜかわからないが体調が悪化したことにします」
と。まぁ、気持ちはわかりますので、頷いてオッケーな顔をしました。

通訳の方からは、
「ここは日本ではないから保険は適応されないし、治療費が何十万とかかる可能性がある。旅行保険に入っているならそれで対応できるかもしれない。とりあえず、クレジットカードで払っておきなさい。とはいえ、カードが使えるかわからないですけど。
ツアー中だからどうしようもないので、あまりにも状態が悪いようなら置いていきます。」
と真っ当なご意見をいただいて、
『それをはっきり言ってくれて良かった』と思いました。
私はこのとき、今回の通訳の方が馬さんで良かったと心底思いました。

チベット人自治区にある貴重な病院で、チベットの方々に『見たことない系の顔のやつ来た!』『あいつ日本人だってよ!』(多分)と見守られながら、
医師の診察を受けたわけです。

医師(美女)の診察結果は、(一緒に来てくれた通訳の馬さんが色々やりとりしてくれました)
「たぶん、話を聞くのと見た感じ、アレルギーのショック症状ですね。この薬1粒で多分良くなりますけど、ダメそうならとにかく安静にしててください。」
的な内容でした。

その時は『それだけ!それで大丈夫なの?』と不安でしたが、
後々、何度もアナフィラキシー(ショック)症状が出て日本で診てもらった時も、ステロイド系を注射するかステロイド剤を飲むかだけだったので。
この症状はステロイド系さえ体内に突っ込めば結構すぐ(1時間くらいで)減少する、というのがわかりました。

逆にステロイド系を摂取せずに放置するとそのままヤバいことになる場合も多いらしいです。
日本に居るときは毎回『迷惑や心配をかけたくない』と一人で近くの内科に駆け込むわけですが、
どの医師も私が診察室に登場した時に、
「なんで誰も付き添いがいないの!体動かすと血行が良くなって悪化するんだよ!もっと早くタクシーとかで来ていいから!・・・というか次からは怖いからタクシーでもっと大きい病院に行って!たまたまアレルギー用の注射剤の在庫がなかったら、下手したら死ぬよ!」
と怒っていました。


そして、突然の展開がやってきます。
診察室、医師の前で、
通訳の馬さんが大変言いにくそうに、
「あの、」
と声をかけてきました。
私は思いました。『出た!クレジットカードが使えなくて何十万だ!』と。
馬さんは続けます。
「こちらの医師の方、初めてなんだそうです。」
『ん?何が?』(私の脳内)
「日本人に会うのが。というか、外国人に会うのが初めてなので折角だから写真を撮りたいと。」
えっ?
「私の、ですか?え、うーん、大丈夫ですよ。」

折角の異界人(私)との出会いが顔パンパンとか。
もっと素敵なものであって欲しかったですよ・・・。

ちなみに私の顔は、アンコール・トムのバイヨン(仏頭)の微笑みに似ています。
嗤うせぇるすまん的な。
が、この時はアレルギー症状によって顔がパンパンに腫れていました。なのでどっちかというと「興福寺の仏頭」でした。

この丹巴地域のチベットの方々はシュッとした面長で、顔立ちは西アジア系というかウイグル族にも近いような、全体的に美男美女です。
この医師は中華系の人でしたが大変な美女でした。
私も「思い出に医師と撮りたい」と願い出た結果、
馬さんに撮ってもらった写真を後から見たら「美女と仏頭」が並んでいました。
この後、チベットで地元の方と撮った写真は全部、美男美女と仏頭でした。


そんな四川省の旅、私は初めてのアナフィラキシーになって、
この思い出写真を見るたびに、
『パンパン。いや、すっごいツアーの人に迷惑かけたな』
と思い出すことになります。

結局、ツアーの方は病院付近の村を散策して暇を潰してくださっていて、
我々は2時間遅れくらいで「新都橋」に辿り着きました。
途中で美しい虹の夕焼けが見え、
馬さんはひとこと、いや、みことくらい、
「美しいですね。ちなみに中国では虹は不吉なしるしとされています。いや、でも、私は美しいと思いますよ。」
と言いました。



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